梨華ちゃんの話です。 モーニング娘。の梨華ちゃんではなく、
普通に高校を出て、大学生になっている梨華ちゃんの話です。
では、どうぞお付き合いくださいぃ。
もうすぐ春。いや、暦の上ではもう春だけど、寒かったりするなぁ、まだ。
もう慣れた仕事だけど、やっぱ毎日クタクタになる。でも、充実感はある。
だからこんな日曜日は妙にヒマが出来る。
だからベッドの下からエロ本を出そうとしてると、部屋のドアが開いた。
梨華が来た。
「あ、いらっしゃい!」
本を引っ張り出す姿はかなりコッケイに見えるらしく、笑いながら近寄ってくる。
「またそんな本見てたの?」
「見てない、見てない! 誓ったじゃん!!」
「あの時全部捨てたはずなのにねー」
「違うって、コレ友達が置いてったんだよ!!」
「ホント〜?」
「・・・・・・ウソです・・。」
コツッとおでこをぶつけてきた。 そのまま、ノリでキスして・・・
やることやった後、梨華が静寂を破った。
「あのねー、驚かないでよ?」
「ん? ま、内容によるけど。」
「いっつもそういう風に返すね」
イタズラな子を見るような瞳で言った。
「わかったわかった、マジメに聞きますっ。」
「あのね、お父さんが、肩叩きにあいました。」
「・・・・・・・マジで!?」
「んー・・・マジ。」
だんだん梨華の表情が寂しげになっていく。
「大変だべ!!オレにできることあったらなんでもするから。」
「ホント?・・・じゃぁ、ひとつだけ、オネガイあるの。」
「・・・なに?」
「あたしのこと・・・忘れてくれない?」
「ん!?」
そりゃあ驚く。本気で言ってるとも思えない。忘れろはないよ。
梨華はうつむいてなにも言わない。
「梨華、イヤだよ、オレ。 忘れないし、そもそも別れないしさ!」
「んもー、わかってよ〜、別れなきゃいけないってこともぉ〜」
「なんでさ。」
「引っ越すの・・。」
「イヤ、梨華残ればいいじゃん!大学もあるし!」
「だからダメなんだってば!」
梨華はもう半分泣いてる。
「絶対、ムリ?」
「ん、どこにそんなお金があるの!ってひっぱたかれた・・・」
「オレがなんとかするよ!貯金あるし!結構あるよ!!ずっと貯めてるから。」
そう、チャラチャラしてそうだけど、マジメに働いて、
我がFCをオーバーホールしてやりたい。 で、いろいろいじりたいから、かなり貯めてある。
だから、親のスネをかじって、一人暮らししてないワケ。
「知ってるよ・・・でもクルマ、改造するんでしょ?」
「そんなんいつでもできるから!」
「ありがとう」
心が晴れた、梨華と離れないですむ。 それを考えたら、オーバーホールも見送っていい。
「だけど・・・やっぱムリみたい・・・」
「ん!?」
そのあと、ずっと説得してみたけど、やっぱり梨華とオレじゃなにも変えられないみたいだ。
結局引っ越しちゃうんだって。
更に驚いたのが、引越しの日、明日なんだって。
「ねぇ、泊まってもいい?」
「ん?いいけど、怒られない?」
「大丈夫。 ちょっと静かにしてて、電話するから。」
梨華は、女友達集まって夜を過ごすとウソをついた。
うちに泊まるときはいつもこう。
電話を切ると、誇らしげに笑って見せた。でもどこか寂しそう。
ふたり最後の夜を、いつもとかわらず過ごした。
逆に、最後だから、なんて意識すると、余計寂しくなるから。
でも、いつもよりもっとくっついて眠った。
明日、梨華との恋愛が止まるんだ・・・
不覚!! 寝過ごした!!っつーか、梨華が気づいたらいなかった!
でも、梨華が寝てたところはまだ温かい、梨華が帰ってからまだあんまり経ってないみたい。
ソッコー着替えて、クルマのキーを掴んだ、つもりが無い。 キーがいつも置く場所にない。
ルーズなオレも、カギだけはここに置くはずなのに・・・そんなこと考えてるヒマはねぇな。
梨華も歩きだ、走りゃ間に合う!!
勢いよく外に出れば、まあどしゃぶりという言葉がよく似合う。
うるさいほど雨が降っている。
傘は、ジャマになりそうだからささないことにした。
ガムシャラに走った。 こういう時、乳酸の蓄積を感じない。
あ、タクシーとか拾われてたら追いつけないじゃん。
でも、走り続けた。 梨華の背中が見える気がするから。
横断歩道に梨華はいた。 よかった、ちょうど止まってる。
追いつきそうになったとき青になった。 覚えとけよ信号!
1歩踏み出す梨華の腕をつかんだ。 驚いた顔で振り返った。
いや、意外と疲れてる自分に気づいた。息が切れてる。
「どうしたの?」
「オレがききたぃ・・・なんで勝手にいなくなるかなぁ・・」
「とりあえず座ろ」
アーケードの下のベンチに座った。
「なんで追いかけてきたの?」
困った顔で言う。
「や、ちゃんとさよならしたいから。」
むせび泣き始めた。
「泣きたくなかったの・・・涙見せたくなかったの・・。」
抱きたいけど、抱いちゃいけないような気がして、体が動かなかった。
「忘れないよ、梨華。」
ぼろぼろ涙をこぼしながら、うなずいた。
「はぁ〜、・・・梨華と結婚できるかなぁ〜、とか思ってた。オレ。」
「やだね・・・別れたくない・・・」
梨華がそっと、手を握った。
お、これも面白いですね。
頑張ってください。
何も言えないなー・・・もう、昨日話したいこと全部話しちゃったか・・。
それとも、言葉が見つからないか・・。
バイバイって言えないな・・。 言ったら、ホントに終わっちゃうんだ。
「つらい?」
「つらい決まってるじゃん・・・。」
「想い出すだろな。 楽しかったときのこと・・・。」
梨華の瞳から、さらに大きな涙が落ちた気がした。
「言わないで・・・」
「泣くなよぉ〜・・・」
いきなりの別れ、心の準備もできないままに。
こんな瞬間のことなんて、考えもしなかった。
梨華の電話が鳴った。
家からみたい。 帰って来い、だろうな。
涙を、ゴシゴシ拭って、鼻水をすすって、笑顔を作ってみせた。
「えへっ、じゃぁ、もう行くね。」
「ん、もう泣くなよ?」
「大丈夫! 今まで、ありがとう。」
「オレこそ、いろいろありがとな。」
「傘、返す。 おばさんにお礼言っといて。」
「ん?どうやって帰るの?」
「時間ないから、タクシー拾う。」
触れるだけのキスをした。
「帰ったら、フェラーリの中見てみて。」
梨華は、オレに手を振って、タクシーに乗り込んだ。
オレも、小さく手を振った。
家路についた。 結構走ったんだなぁ。 傘はあえてささなかった。
泣いてるから。
>154 さんくす! 次、最終回です!
家についた。 家族がなんか言ってるけど、無視しといた。
デリケートなハートにズカズカ入ってくんじゃねーよ・・・。
フェラーリっつってたな・・・。
そのフェラーリとは、F40 1:18モデルのことだと思う。
言われたとおり、見てみると、FCのキーと白いメモ帳に書かれた手紙。
手紙は、「ありふれた言葉しかでてこないよ ありがとう 」
と書かれただけ。 正直な気持ちなんだろうな・・・。
その後、その手紙はサイフに入れて、別れを吹っ切るように、
FCのオーバーホールをした。 その際に、タービンを交換して、クラッチを替えて、
エアロをつけたり、かなり手を加えた。
まだまだ走ってくれ。
この地味なブルーのFCのナビシートに、違う華が咲くまで。
−FCに咲く黄色い華− 完
ありがとうございましたー!
3,4篇とか言って7篇にもなってしまいました。
やっぱショート楽ですわ!