★モー娘の後藤真希が三階建ての3億円豪邸

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149あなたのようになりたかった
転機は突然舞い込んだ。
あの事故の発表からの過熱報道がようやく落ち着きを見せ始め、わたし達も
12人でもダンスフォーメーションにようやく体が馴染んできた頃だった。
条件付とはいえ、ソロに選ばれたのだ。
本当ならば、デビューはもう少し先の予定だったらしいのだが、わたしの
事故に関して、世間の受け止め方がおおむね同情的で、それならば、
話題性のあるうちにという話だった。
しかし、そんなことはわたしにとってはどうでも良いことだった。
(おめでとう!)
マネージャーからその話を聞かされた後、一瞬の間を置いてそう言ってくれた
彼女の言葉だけで、どれほど救われたことか。
150あなたのようになりたかった:02/03/15 19:46 ID:zWw4uv1P
わたしにとって、最初この状況下では、すべてのことは梨華ちゃんのためだった。
“事故”によって、彼女の体を奪ってしまった罪悪感から、そして、いずれ
訪れるであろう彼女の体との別れの時を考えて、できるだけ彼女らしく
振舞うことが、彼女のためであり、わたしの義務だと考えていた。しかし、
ソロの話を聞かされた夜、わたしの最もわたしらしい部分が、わたしの中で
主張をはじめたことで、どこまでいってもわたしはわたしでしかないことに
気付かされた。それでも、もし、彼女が望むならわたしは、その思いを
もう一度心の底に封印し、彼女のために生きようと思っていた。しかし、
予想を越えた優しさで、彼女は、時にわたし自身嫌気がするわたしのそうした
部分も含めて、受け入れてくれたのだ。
それによって、少し自分らしく生きることを許された気がし、今日に
至るのだが、それでも、やはりソロ決定を聞かされたときは喜びよりも、
彼女がどう思うかという不安の方が先立った。
151あなたのようになりたかった:02/03/15 19:47 ID:zWw4uv1P
そして、彼女が喜んでくれているとわかって、はじめてわたしも共に
喜ぶことができた。つまり、いつの間にかわたしは、再びすべてが彼女の
ためであれば良いと考えるようになっていたのである。しかし、今度は前の
義務感のようなものではなく、より無意識に近い部分でそう思っていたのだ。
さらに、最近では、以前彼女に抱いていた歪んだ憧れのような思いも
感じなくなっていた。それは、わたしが、彼女として振舞っているからではなく、
他人からいたわられ、愛される彼女を第三者として誇らしく思えるように
なってきたのである。
この二つの変化に気付いた時、おかしなことにわたしは嬉しくて
しょうがなかった。こうした変化は、わたし自身の存在を薄めていっている
ことなのに、それが嬉しいなんて。自分でもわけが分からないが、たぶん、
こうしてわたしと彼女の距離が近付き、ゼロになっていくことこそが
今のわたしにとって何よりも大切なことなんだと思った。
152あなたのようになりたかった:02/03/15 19:47 ID:zWw4uv1P
「でも、みんなには悪いことしちゃったかも。」
(そんなことないよ、だってこれは、ごっちんの実力で勝ち取ったんだから、
 ごっちんのものだよ)
自分の気持ちが悟られないように、照れ隠しで何気なく言っただけだった。
本当はみんなに悪いなんてそんなに思ってなかった、それよりも、彼女を
喜ばせたい、そう思っていたんだから。
しかし、こう言ってくれた彼女の言葉をなぜわたしはこの時文字通り
受け取ってしまったのだろう。後になって思えば、この時の台詞が持つ意味を
もっと深く考えていれば、わたし達は違う未来を歩んでいたかもしれないのに。