1 :
b:
モー娘。の後藤真希が三階建てのバリアフリー
3億円豪邸建設で親孝行!!
2 :
名無し:02/02/01 22:47 ID:XJv6Nis/
ありゃりゃ誰も2を書いてくれないんだ。
かわいそうだから,わつぃがらくらく2ゲット。
1から二日経っているが、まだ誰も書かないとは、どういうことだ?
なるへそ
test
ここもらっていいですか?
■■あなたのようになりたかった■■
7 :
プロローグ:02/02/06 02:13 ID:PLjpwyQ7
「ど、どおもぉ、チャ、チャーミー石川です・・・・・・」
「スイマセーン、石川さん、もう少し元気よくお願いします!」
やる気があるのかないのか、かの泣くような声に対して、明らかに苛立ちを含んだ
スタッフの声がスタジオに響く、しかし、それに対してわたしは、どうしても
申し訳ないと思うことができなかった。
「誰が一番イライラしてると思ってんの!」これが、このときの率直な気持ち。
実際できないものはできないのだ。
「ちょっとお、石川、あんたいいかげんにしいや。7回やで、7回!
やる気ないんやったら・・・・・・。」
たった一言、つかみの台詞だけが繰り返されるリテイクについにキレた裕ちゃん、
しかし、わたしと眼があった瞬間、固まる。
そりゃそうだろう、イライラが最高潮で眉間にしわよりまくり、視線なんかまさに
突き刺さらんばかり、なのにその瞳からはとめどなく涙がこぼれるてるという、
裕ちゃんの短くない人生経験の中でもたぶん初めて見る矛盾だらけの表情は、
怒りを不気味なものへの恐怖感にすりかえるには十分な威力を持っていた。
「それじゃ、もう1回行きますんで!」
事務的なスタッフの口調を合図に、止まっていたスタジオの時間が再び動き始める。
涙で乱れた化粧を直してもらいながら、わたしは今日幾度となく感じた不条理を
もう一度心の中へ繰り返す。
「(どうして、よりによってここなのよ)」
鏡を使わずに自分の顔を見ることができるか?
とんちやなぞなぞの問題じゃなくて、本気でこう訊かれたらたぶん世界中の人の
答えは決まって同じだと思う。けど、わたしは違う。答えは「できる。」
その日、わたしは初めて自分の寝顔というもの見た。
ガラス越しに見たその姿は、たくさんの機械に囲まれ、鼻と口にはチューブまで
差し込まれていて、時々機械から聞こえる空気を送り出す音がとても惨めだった。
しかし、それ以上にわたしを悲しくさせたのは、周りですすり泣くなっち、圭織、
圭ちゃん、やぐっつあんの4人の姿と、そして、瞳からわたしの意思とは関係なく
零れ落ちるの涙だった。
みんな、壊れた蛇口をハンカチでふさぐように顔を覆って、声を殺して泣いてた。
「・・・・・・ごっつあん。」
絞り出すような声は誰の声か分からない。時々わたしを呼ぶ声は、ひどくわたしを
混乱させた。正直、こんな場所さっさと出て行きたかったが、そんなことが
できるはずもなく、できることといえば、頬を伝う涙を時々拭いながら、
この理不尽な状況についてぼんやりと思いをめぐらすくらいだった。
夜、いつも通り仕事が終わって、いつも通り家に帰ろうとして、いつも通り
あの道を渡ろうとした。
覚えているのはそこまで。
後で聞いたところによると、酔払い運転だったらしい。
見通しの良くない交差点、急いでいたわたし、一瞬の判断が遅れたドライバー。
不運が重なっただけだった。
そして、わたしはここに辿り着いた。
どうしてこんなことになったのか、どうしてここなのか、どうしてこの人だったのか、
これが幸運なことなのか、はたまた破滅の始まりなのか、それを判断するには
まだ時間も材料も足りない。ただ分かっているのは、この出来事が“神様のいたずら”
という超が10個はつく非科学的な言葉でしか言い表せないってことだけだ。
先に気がついたのは宿主じゃなくて、わたしのほうだった。
「どこ、ここ?」
見慣れない天井、いつもと違う匂いがする布団。思いがけない光景を見て、
誰にともなく、思わず出た言葉は他人の声だった。
確かに前の日のスケジュールはハードだった。朝一の撮影に始まって、取材と
収録の嵐、それになんかの打ち合わせまで、まったく労働基準法ってもんを・・・・・・
回想から始まった不満を中断して、もっと大事なことを思い出す。
「この声、わたしじゃない。」
はっとして飛び起きて、その見知らぬ部屋を見渡す、いや、見知らぬことも
ないような部屋だ。
絶対にわたしの趣味じゃないピンク色のパジャマ、それに包まれた体を見下ろす。
これもわたしのとちょっと違う、悔しいけどこっちの方がちょっと育ってる感じだ。
あまり好ましくない予感が、だんだんと確信へと変わっていく。おぼろげな記憶を
元に、洗面所へ急ぐ、部屋を出て、それほど長くない廊下の右側の扉。案の定そこは
洗面所だった。わずかな希望を勇気に変えて目当てのものを覗き込んだ。
「・・・・・・そんな。」
鏡に映ったその顔は、予想通りのものだった。
「何でよりによって、他にもメンバーはいるだろうが」驚きよりも何よりも、これが
最初の感想だった。
「梨華ちゃん・・・・・・。」
(はい?)
こうして、わたしの、いやわたしたちの奇妙な生活は始った。
耳鳴りなんか比べ物にならないこの不快感をどう説明すればいいのか
あまりに非現実的な状況、それをまっすぐ受け止められるほどわたしの精神は
強くなかった。
「ねえ、とりあえず泣くのやめて話し合わない。」
応答はない。その代わりに聞こえてくるのは、嗚咽する姿が目に浮かぶような
泣き声だけ。
「あのねえ、こっちだってこんな馬鹿げた事態に泣き出したいの我慢してるんだよ。
それなのに何が悲しくて人の涙ばっかり拭かなきゃならないわけ?」
空になったティッシュの箱を思いっきり壁に投げつけて、拳で涙をぬぐう。
何がうっとしいってこの自分の感情とは関係なくとめどなく流れる涙。
(・・・・・・う、うっ、ごめんね。泣き止む・・・・・・)
ようやくこちらの意思が伝わったのは、いつも通り、こっちが怒っているぞ、
って態度を行動で表したときになってからだった。
依然しゃくりあげ続ける元宿主、いや、宿主は今も彼女か?まあ、なんにせよ
梨華ちゃんとポツリポツリと話をするうちにこの体の仕組みがいくつか分かってきた。
簡単にいえば、1つの体に2つの心なのだが、それぞれに管轄みたいなものが
あるらしい。
たとえば、体を動かしたり、声を出すのはわたしの意思でなんとでもなる。けど、
どういうわけか涙だけは梨華ちゃんの管轄らしくて、こっちの気分なんか
一切無視してさっきからの調子で垂れ流しだ。
まあ、泣きたい気持ちは分からなくはない。そりゃ誰だって朝起きて目が覚めたら、
自分の体が他人にのっとられてたら泣きたくもなるだろう。しかも、
この場合身内にだ。
そして、唯一残された自己主張の手段が涙。泣かずして何をしよう。
と、頭で理解はできるが、それをかわいそうと思えるほど私にも余裕はない。
できることなら一緒になって泣いてしまいたいが、頭の中でこれだけ泣かれると
なんだか逆に覚めてしまって、冷静になってしまう。
「落ち着いた?」
(うん)
「ところでさあ、やっぱこうやって声に出さないと聞こえないの?
こう、テレパシーみたいに頭の中で会話できないの?」
(無理みたい・・・・・・ごっちんが見てるものとか聞いてる声なんかは分かるけど、
テレビ見てるみたいなんだもん)
「そう。」
起床からはや1時間。いまだに時々しゃくりあげてはいるが、それなりに
落ち着いてきたらしく、ようやく会話らしい会話ができるようになってきた。
とはいっても、その内容といえばお互いの状況確認程度で、これからどうするなんて
ことはお互い何も言えずにいた。
しかし、何があっても時間というやつは決してその歩みを止めることはない。
わたしたちが、どんなに異常な事態に巻き込まれていてもその他のところでは、
いつも通りに時は流れ、当然、不幸な事故に遭った少女は救急車で病院に運ばれるし、
その少女が芸能人なら、所属事務所に連絡が行き、更にその芸能人が
後藤真希ちゃんだったりなんかすると、朝一で学校行ってないメンバーの家には
招集令がかかったりするのだ。
「みんな辛いだろうけど、泣いてたって後藤が戻ってくるわけじゃないんだよ。
こんな時くらい休ませてあげたいけど、頑張って仕事行こ、ね?」
冷静を装うマネージャーの鼻声と消毒液の匂いが、わたしの無意味な回想に終わりを
告げ、同時に大変なことを思い出させた。
「仕事!・・・・・・ですか?」
考えてみれば当然のことで、未成年だろうがなんだろうが仕事を持っている
わたしたちとしては、おいそれとそれを休むわけには行かない。しかし、しかしだ
(ごっちぃ〜ん、どうするの?)
その通り、どうしよう?
歌とダンス・・・・・・は多分大丈夫!梨華ちゃんに悪いからあんまりはっきり
言えないけど、まあ要するに下手な人が上手くするのは難しいけど、その逆なら
きっと可能だ。
ただ、問題はその他諸々。確か今日はハロモニの収録日、ハロモニといえば・・・・・・
(ごっちん、そんなに落ち込まないで、うっ、う)
落ち込んでるのはオマエだろ、ってツッコミも入れられないほどの号泣を
さっきから脳内で繰り広げる梨華ちゃん。
わたしはというと、今日の収録で46テイクという伝説をつくったこと、
それによって裕ちゃんとの間で冷戦の兆候が生まれたこと、さらには、
そこまでやったのに明日撮り直しになったことなんかよりもいかにして
梨華ちゃんを黙らせるかを真剣に考えていた。
人間っていうのは自分に余裕があってこそ他人に優しくできるんだなあと、
しみじみ感じる。
(怒ってる?)
「あんまり。」
そして、30分後、放置が今のところ一番有効らしいことが分かった。
なだめても、すかしても泣き止まないので諦めて流れる涙もそのままにテレビを
見ていたら、ようやく話し合いをしなくては、って気になったらしい。
「どうするこれから?」
(・・・・・・がんばって)
「頑張って、ってそんな簡単にいうけどねそんな昨日まで普通にやってきて
突然『ど〜も〜!チャーミー石川です。みんなハッピー!?』ってそんな
恥ずかしいことできるわけないでしょ。」
(恥ずかしくないもん、お仕事だもん。それに今ちょっとできてたし)
「みんなの前でやるのが恥ずかしいの。」
そう、恥ずかしいのだ。その何というか、バカ殿は別にいい。変なおじさんも大丈夫。
でもチャーミー石川は嫌だ。恥ずかしいのベクトルが違うというか、上手く
言えないけどとにかくやりたくない。
(困るよ)
平行線の話し合いが、分厚い沈黙に変わって暫くして、ポツリと呟いた
梨華ちゃんの声は、それまでのどんな泣き声後よりも弱々しくて、
小さな迷子みたいだった。
(せっかく・・・・・・わたし歌も上手くないし、お芝居も下手だけど、やっと
・・・・・・帰る場所がなくなっちゃうよ)
事故に遭って、突然違う体を与えられたショックで忘れていたが、
梨華ちゃんにとっては私は侵略者だったことを思い出した。梨華ちゃんが
あんまりにもよく泣くから、だから本当は私のほうがかわいそうだと無意識に
思ってた。けど、それがとんでもない思い上がりだって気付かされた。
自分の見ている前で、自分の居場所が失われていく、それも他人の
わがままによって。その恐怖を思うと、今頬を伝う涙が誰のものか
分からなくなった。
「明日、頑張るね。」
梨華ちゃんの声が、絶えず聞こえてくる異常な一日の中で初めてこの状況に
感謝した。それは小さな変化で、きっと対面で話していたら見落として
しまっただろう。
私が呟くようにいった台詞に声には出さなかったが、梨華ちゃんは最高の笑顔で
応えてくれた。それはもちろん目には見えなかったが、心の中で花が
開いたような、そんなあたたかさがふわりと広がった。
(ありがとう)
「いいよ、わたしの為でもあるんだから、これからはこの体食べさして
いかなきゃならないわけだし。
だから、梨華ちゃんもいろいろとアドバイスよろしく。」
(もちろん!)
この状況を諦めたわけでも、受け入れたわけでもない。だけど、なぜか朝よりも
今こうして梨華ちゃんと泣いた後の方が少し楽になった気がした。これからの
事を考えると、不安でいっぱいのはずなのに。
「さてと、それじゃお風呂入りますか。これからお世話になる体だし、
きれ〜に隅々まで洗ってあげないとね。」
(えっ、そんな、目つむってお風呂・・・・・・)
「無理!大体これからはお風呂もトイレもぜ〜んぶ一緒なんだから。
あっ、梨華ちゃん男関係も今のうちにちゃんと教えてよね、誰と、どこまで
すすんでるか。
それじゃ、改めて、よろしくね。」
(いやっ〜!!)
@ノハ@
( ‘д‘)<イイ!!
(・∀・)イイ!! 激しく期待
>19
@ノハ@
( ‘д‘)<おおきに
>20
よろしくお願いします
(見つけんの早いですね(w )
>21
dat逝かないようにガンガリます
寒いのは嫌いだ。だけど冬特有のあのガラスのように引き締まった空気は好きだ。
だけど今日ばかりは、高く澄んだ空も体の中を洗い流すような風も嫌味にしか
感じられない。
足が重い。これは現場で裕ちゃんと会うのが憂鬱だから。これはしょうがない、
だってわたしが悪いんだから。だけど、頭が重いのは納得いかない。
「ねえ〜、梨華ちゃん、いつまで怒ってんの?ちゃんと教えてくれなきゃ、
『ど〜も〜』って上手くできないよお」
(・・・・・・知らない)
そう、朝からずっとこの調子なのだ。こちらから話し掛けてもほとんど返事は
しないくせに、ブツブツと聞こえるように(というか、全部聞こえるのが
性質が悪い)文句を言い続けている。
「大体さあ、梨華ちゃんが寝坊なのが悪いんだよ。生理現象はこっちの
管轄なんだから、梨華ちゃんが起きるまでトイレ我慢してたら膀胱炎に
なっちゃうよ。」
(でも、黙ってトイレ行くことないじゃない)
「あんのねえ、そんな事言ってたらこれから先どうするの?それに起きてる時に
行かれる方が恥ずかしいんじゃないの?」
(じゃあ、回数決めよ。トイレは1日3回とか、シャワーは1回とか)
「それってすごく非生産的だと思わない?」
(・・・・・・思う)
「大体ねえ、梨華ちゃんは気にしすぎなんだよ!」
結局仕事場に着くまでに結論は出ず、楽屋に向かう廊下でもさっきまでの
テンションそのままに話し合いを続けていてふと気付いた。そう、これは
話し合いではないのだ、少なくとも傍から見れば。ただでさえ電波、交信系が
いるグループだと思われがちなのに、そのうえ、普段お嬢さんキャラやってる
梨華ちゃんまで独り言シャウトしているなんて噂が広がったら、それこそ
グループの方向性すら変わりかねない。
嫌な予感に引っ張られるように来た道を振り向くと、思ったとおり怪訝そうに
見つめる視線が2つ3つ。とりあえず、にっこり笑ってみるが、思いっきり
目をそらされた・・・・・・鬱だ、早く楽屋行こ。
ふぅ、ますます足が重い。
(ごっちん、ファイト!)
嗚呼、これまた頭が重い。
「やっぱりごっつあんのことか?」
そして楽屋の空気も重かった。
昨日のことでてっきり怒られるかと思っていたけど、祐ちゃんはことのほか
優しかった。
「もし、悩み事あるんやったら、スタッフの人に言うて台詞減らしてもらうし。
あっ、もしかしてあれか、最近アドリブやらそうとし過ぎたんが辛かったんか?」
わたしの事故のことで、裕ちゃん自身もショックを受けているはずなのに、
出てくる言葉といえば、梨華ちゃんをいたわるものばかりで、こういう時
さすが元リーダーなんだなあって思う。
けど、それと同時にその優しさがチクリと胸を刺す。
勘違いしてはいけないのだ。この優しさはわたしではなくて、梨華ちゃんに
向けられたものなのだ。
「大丈夫です。今日はきちんとできそうですから、それより中澤さんも
元気出してくださいね。」
「そうやな、頑張ろな。」
きっと梨華ちゃんならこう言うだろうな、と思って言った台詞が嬉しかったのか、
目頭を抑えて祐ちゃんは自分の楽屋に戻っていった。きっと裕ちゃんにとって
梨華ちゃんたち4期以降のメンバーっていうのは、プライベートで涙を
見せられる相手じゃないんだと思った。
(中澤さん泣いてたね)
「うん。」
(がんばろうね)
「うん。」
そう、梨華ちゃんのためにも、そして、こういう時だからこそみんなのために
頑張らないといけない、それが今の私にできることなのだから。
「それでは、また来週。チャオ〜!」
「はーい、OKです。お疲れ様でした。」
きめの台詞を言い終わった瞬間、明らかに形式以上の拍手がスタジオに響いた。
いわゆる一発OK、まあこれが本来のわたしの実力なんだけどね、
とちょっと得意になってしまいそうなくらい気持ちいい。それに、
ハジケたキャラっていうのもなかなかクセになりそうだ。
「石川、あんたよう頑張ったなあ。」
「石川さん、今日最高でしたよ。」
「ホント、けど、それを昨日やってくれてたら。」
「もう、それは言わないで下さいよお、反省してるんだから。」
いやあ、ほんといい気分。なんだか事故ったことも忘れてしまいそう。
(ごっちんすごいねえ、わたしだって一回で終わったことなんかないのに)
まあ、言いたい事はひとまず置いといて、梨華ちゃんも喜んでくれてる
みたいだし、今日のところは全部よしとしよう。結構不安だったけど
とりあえずお仕事に関してはだいぶメドが立ったし。
「けど、ホンマ心配やってんで。石川は矢口やごっちんと違って弱いところが
あるし、ちょっとしたことで落ち込むからホンマ目離されへんわ。」
言いながら祐ちゃんが方を叩くと、周りにいたスタッフの人たちも
みんな口々に「そうだそうだ」ってはやし立てる。
確かに梨華ちゃんは昔と比べて、ずいぶん強くなった。しかし、それは
あくまでも昔と比べての話で、やっぱりこの梨華ちゃんの打たれ弱さというか
儚さはウィークポイントであると同時に、こうやって人を惹きつけてしまう
チャームポイントであることを思い知らされる。
27 :
名無し:02/02/09 09:24 ID:Dt3xVgVi
面白い 期待
おもしろいっす
期待してます(w
<27<28
( ´д`) <ありがとう、今後とも・・・・・・Zzz
(ねえ、ごっちんどうしたの)
「うん、どうもしないよ、なんで?」
(なんかね、ごっちんが元気ないと部屋が暗くなったような気がするの)
「部屋?電気ついてるよ。」
(ううん、部屋っていうか今わたしがいるところかな、その代わりごっちんが
嬉しいと部屋が明るくなるの。なんとなくだけど)
「ふ〜ん。でも、なんでもないよ。」
部屋かあ。テレパシーがないって分かったときは不便だなと思ったけど、
実は考えてることがバレないで良かったって思ってたのに、これはちょっと
厄介だなあ。
というよりも、無意識の気分を正確に悟られる方がかなり性質が悪い気がする。
こりゃちょっとしたことで落ち込んだりできない、なかなかストレスが
溜まりそうな予感だ。
(ところでえ、チャンネル変えてほしいなあ。わたし日曜日は早く帰れた日は
見たい番組あるんだ。
あれ?今ムッとした、怒った?なんで、どうして?)
「能天気だから!」
いたずら好きの神様、もしかして本当に不幸なのは実はわたしなんですか?
翌日は、事故の日以来の見た目には12人、実際は13人そろっての初仕事だった。
わたしの扱いは“お休み“、オープニングでさらっと言ってそれで
おしまいだった。
事故から3日たっても、わたしの容態は依然として予断を許さない状況らしく、
メンバーをはじめとした一部の関係者には事情説明はされたようだが、
基本的には対外的な発表をせず、マスコミには緘口令を布くというのが
当面の対応らしい。
(やっぱり楽屋暗いよね)
「まあね。盛り上がられても嫌だけどね。」
楽屋よりも一個上の階のトイレなら、こうして梨華ちゃんと話していても
まず誰かが来ることはない。事故のショックを受けて、中学生の
メンバーなんかは、ちょっと情緒不安定になっているらしく、そんな中で
わたしが独り言をブツブツ言うわけにもいかないので、結構気を使う。
(でも、1本目の収録は結構盛り上がってたよね、よっすぃなんかいつもよりも
ハイテンションだったし)
「うん。みんなそれなりに考えてるんだよ、きっと。」
我ながら当り障りのない応対だと思ったが、この時のわたしは、
さっきの収録よりも、この次の2本目への不安よりも、もっと大きな何かが
頭の内側にへばりついていて、それがあまりにも大きな音になって、
わたしを苛立たせるから、他のことはあまり考えられなかった。
「石川、元気ないね。ご飯ちゃんと食べてる?」
「ちょっと顔色悪いんじゃない、夜きちんと寝てる?」
「梨華ちゃん、退屈?雑誌貸してあげよっか?」
「ちょっとジュース買いに行くねんけど、一緒に行かへん?」
「石川さん、疲れてるんだったら少し横になったらどうですか?」
等々、それほど長くない待ち時間の間に梨華ちゃんがメンバーから
かけられた言葉の数々。先輩、同期、後輩、年上、そして、年下、そんなの
一切関係なしにいたわられまくる梨華ちゃん。最初こそ気分も良かったけど、
だんだんイライラしてきた。だって、みんなわたしの話題より先に梨華ちゃんの
心配するから。決して拗ねて言ってるわけじゃいない、決して。ただ、
どう考えても、生死の狭間をさまよってるメンバーの方が
心配されるべきだと考えてしまう、それがわたしでなくても。
ただ、そうは言ってはみるものの、たぶん自分も事故の当事者じゃなければ、
同じことするだろうなと思う。そして、それが悔しい。
(またなんか難しいこと考えてるでしょ)
「そんなことないよ、どうしたのまた部屋暗くなった?」
(なった、あんまり隠し事しないでね。何でも相談乗るから)
「ははっ、ありがと。」
(あ〜、もうまじめに聞いてない。大体わたしの方が年上なんだからね)
相談なんかできるはずない。それにこれはたぶん悩みなんかじゃない、
言うなれば嫉妬。それは醜く、人に一番知られたくない感情。
いつの頃からか梨華ちゃんを見る私の目は、他のメンバーを見るそれとは
違っていた。それが加入してすぐからか、梨華ちゃんが次第に“メンバー“に
なってきた頃から、それとも、梨華ちゃんが梨華ちゃんとして
注目されるようになった時からか、思い出せないけれど、確かにわたしは
梨華ちゃんに対して無意識に、また、時に意識として感じられるほどに
特別な感情を持つようになっていた。
それは屈折した憧れなのか、ただの嫉妬か、もしかしたら憎しみのような
ものかもしれない。ただ、そんな心の澱みが存在することをはっきりと
感じたのはこの3日間、いや、他のメンバーと接したもっと短い
時間の中でだった。
梨華ちゃんになったことで、わたしは梨華ちゃんに対して抱いていた感情を
痛いほど思い知らされた。
しかし、今のわたしには梨華ちゃんと2人で梨華ちゃんを演じるしかないし、
それがベストの選択であり、そうするべきだと思っていた。少なくとも、
この休憩中は。
作者さんおつかれです。
35 :
名無し:02/02/10 15:44 ID:uydALxHQ
頑張ってください(w
感情がリアル・・・。期待してます。
37 :
ななし:02/02/10 22:19 ID:UlwnS8Mq
はじめまして。なかなか楽しい小説ですね。今後も期待してます!
保全
お、おもろい
保全
>34-41
( ^▽^)<レスありがとう、保全感謝
そして書くの遅くて申し訳
( ^▽^)<かちゅーしゃつかったらトリップが変わってしまった?
気にしないで下さい
「ソロですか?」
「そう、まだ決定じゃないけどね。」
視覚と聴覚はわたしを通して梨華ちゃんも共有できるみたいだけど、残念ながら
味覚はわたしの独占市場。目の前の食べごろのタン塩を見ては、さっきから
恨めしそうにぶつぶつ言ってる。
「でも、何で突然そんなことになったんですか?」
「そりゃやっぱり、アレでしょ。」
アレとは言わずと知れたわたしの事故のことだろう。
仕事の後、集まったのはやぐっつあんとよっすぃ、そして、わたしの
3人だけだった。みんな個人の仕事やプライベートが忙しいだけでなく、
やっぱりいつも通りワイワイという気分ではないようだ。わたしも他の
メンバーにならって断ろうかとも思ったけど、梨華ちゃんとの相談の結果、
一緒に行く方が普段の梨華ちゃんと違和感がないだろうということで
ついて来たのだが、やぐっつあんの口から出た言葉は驚くべきものだった。
「それで、誰がやるんですか?」
「いや、まだ本当に何も決まってないような状態らしいからなんとも
言えないけど、今回は完全にアイドル路線から離して、ソロアーティストとして
勝負するつもりらしいから、圭ちゃんとか圭織が有力じゃないかと矢口としては
睨んでるんだけどね。」
知ってはいたが、芸能界は時間の流れが速いと再確認させられた。
わたしの事故からまだ3日目、なのにもうその穴を埋める計画が
持ち上がっていて、その話はどこからともなく現場レベルにまで落ちてきている。
この夜の食事会は、梨華ちゃんとして目覚めた朝に次いで大きなショックを
わたしに与えた。わたしに代わるソロを立てる計画があることではない。
その夜のやぐっつあんとよっすぃの眼の輝きが、あまりに熱かったのだ。
2人とも口にこそ出さないが、虎視眈々と目の前のチャンスを
掴もうとしているのが、熱を帯びた口調から容易に感じられた。
加入してすぐに当時の新ユニットに抜擢され、本体でもメインを取り、
ソロデビューもした。そんなわたしを、みんながどう思っているかなんて
あまり考えたことなかった。そりゃちょっとは、考えたけど、それでも
普段みんなと接する中で、それはあまり必要のないことだと思っていた。
しかし、今目の前で、わたしの体を心配するよりも、ソロという言葉に
熱を込める2人を見ていると、彼女たちが感じていたのは、もしかしたら
わたしが梨華ちゃんに対して持っている感情と同じなのかもしれないと思った。
それは持たざる者が持てる者に抱く憧憬と嫉妬が混在した感情。しかし、
それを知るにはわたしたちの距離は、いつもあまりにも近すぎた。
(あんまり気にしないほうがいいよ)
「起きてたの?」
食事会の途中くらいからまったく喋らなくなって、さっきのシャワーも
昨日みたいに大騒ぎしなかったから、てっきり今日はもう寝たもんだと思ってた。
(みんなやっぱりソロは夢だもん。別にごっちんのこと好きじゃない
ってわけじゃないんだよ)
「分かってる、気にしてないよ。
って、そんなごまかし通用しないか。」
どんなに明るい声を出しても、いくら顔で笑ってみたところで、今の
梨華ちゃんには通用しないことを思い出して、おかしなことに少し
楽になった気がした。
「どうしたらいいかな?」
(もう決めてるんでしょ)
そう言った梨華ちゃんの声はわたしが今一番ほしい色と温度を持っていた。
すっと胸の奥にしみこむようなその声を聞いた瞬間、梨華ちゃんの笑顔が
見えた気がした。それはテレビ用の弾けるような笑顔じゃなくて、
メンバーにも時々しか見せない陽だまりのような、無邪気なだけでなく、
包み込む強さも兼ね備えたわたしが好きな笑顔だった。
しかし、それは決してわたしが手に入れることができないものである事も
分かっていた
今日の帰り道、わたしは今回のソロ争いに参加し、梨華ちゃんの体でそれを
掴むことに決めていた。
梨華ちゃんのために彼女になりきるというのであれば、それは決して
良策ではない。しかし、ソロという言葉が持つ響きは、押し隠そうとしていた
わたしの野心に火をつけてしまった。
自分でも嫌になる。強すぎる競争心と独占欲はわたしの強みでもあり、
他人には知られたくない部分でもあった。
しかし、今は違う。隠そうとしても隠し切れない。
ソロの話を聞いてからのわたしの心のざわめきを、梨華ちゃんは部屋の中で
ずっと感じていたのだろう。
いくら作った表情や偽りを含んだ言葉で隠そうとしても、それが
通用しない相手がいるというのはとても不便だ。しかし、その相手が
そんな自分を認めてくれるというのは、なんて気分がいいんだろう。
もしかしたら、わたしが梨華ちゃんに感じている気持ちまでも彼女は
知っているのかもしれない。しかし、その夜はそんなことはどうでも良いことに
思えた。ただ、梨華ちゃんを大切にした、そう思った。
「ねえ、梨華ちゃん今日は見たいテレビないの?」
(そうだねえ、じゃあ8にして)
「了解。」
ただ、こんなことしか思いつかない自分がちょっと情けない。
48 :
名無し:02/02/14 18:52 ID:J+ATAC1y
交信してる(w
どうなるんだこれから(w
49 :
2:02/02/15 22:09 ID:tVImZr1x
漏れが2をゲットしたスレは、長生きする傾向にある。このスレも例外ではなかった。
50 :
50:02/02/16 02:43 ID:eT0HQTDv
俺が50をゲットしたスレは、長生きする傾向にある。このスレも例外ではなかった。
51 :
51:02/02/17 01:08 ID:y1pVokyL
俺が51をゲットしたスレは、長生きする傾向にある。このスレも例外ではなかった。
52 :
52:02/02/17 07:50 ID:qjFe33rZ
俺が52をゲットしたスレは、長生きする傾向にある。このスレも例外ではなかった。
53 :
ななし:02/02/17 21:02 ID:6zGi4d8M
保全
54 :
54:02/02/18 13:02 ID:XNSHNZNk
激しく続きキボーン!
55 :
シーマン:02/02/18 13:11 ID:g/y99wVj
,.--、
く^ゝ // `ー、
H ///// ~`‐-、 ,..、
ヾ~ヽ __,,,,---''"")))))ヾー-、 ~\ / ノ
__,.-| i―'''"" )))))))))))))))))))`ヽ、ノ _/ /
/;― | i!- 、 )))))))))))))))))))))))) ̄)) ヽ i
/ ` " : ヽ、:::::::::))))::::::::::::::::)))))))::::::::::::))))::::::| |
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| | ;::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::,,.-''" |
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| `”'" "”` ! ,.-" ̄)/////// ,.-'"
ヾ , 、 i,,.--=二、_,,,..-‐'"
ヽ `〜" / `ー-'
ヽ ⊂⊃ ノ
`ヽ、_,,,,-'
______/\_______________
/
55get
56 :
56:02/02/18 14:37 ID:XNSHNZNk
早く見たい!
57 :
57:02/02/18 14:41 ID:XNSHNZNk
スレのタイトルからして、誰も相手にしてくれそうに
ないんで落ちるのが心配だ。本日もかなり下までいってたし。
作者さん、なんとかお願い!
58 :
58:02/02/18 14:46 ID:uCHJ2lYy
俺が58をゲットしたスレは、長生きする傾向にある。このスレも例外ではなかった。
59 :
59:02/02/18 16:42 ID:GPe4jRfA
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. ,;ミ ;;;;:::::::::ミ "゙" "゙"ミ :::::::::::::ミ ,,
ミ" ミ
ミ" ミ
ミ ミ ぁぁぁぁ・・・
ミ > < ミ
ミ "", 、"" ミ
ミ ---- l l l --- ミ
ミ ---- 丶_ノ丶_ノ --- ミ
ミ,, ミ
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ミ """ ""ミ
ミ ミ
ミ,, ミ
ミ ミ ミ
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ミ "ミ ミ
ミ;,,,.,.,..... ミ,,,,,... ..,,,,,,,... ...,,,,,... ... ...,,,,,,,... ...,,,,ミ
60 :
:02/02/18 17:25 ID:ZZPIm+ms
1億円の平屋にでも住んでみたいもんだ。
61 :
ネコ:02/02/18 19:13 ID:Mx3PaTcf
60GET!!!後藤真希万歳 最高!!!
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
(´´
∧∧ ) (´⌒(´
⊂(゚Д゚⊂⌒`つ≡≡≡(´⌒;;;≡≡≡=
 ̄ ̄ (´⌒(´⌒;;
ズザーーーーーッ
アレ61かよ
今日はたまたま見つけたスレで良質の小説を見つけるなあ
これで二つ目。ここの板の住民は文才があるねえ。だから保全
ほぜーん
保全
ほぜーん
66 :
日本:02/02/20 09:53 ID:5AV9SRmo
ミミ彡ミミミ彡彡ミミミミ
,,彡彡彡ミミミ彡彡彡彡彡彡
ミミ彡彡゙゙゙゙゙""""""""ヾ彡彡彡
ミミ彡゙ ミミ彡彡
ミミ彡゙ _ _ ミミミ彡
ミミ彡 '´ ̄ヽ '´ ̄` ,|ミミ彡
ミミ彡  ゚̄ ̄' 〈 ゚̄ ̄ .|ミミ彡
彡| | |ミ彡
彡| ´-し`) /|ミ|ミ /よくやった 感動した ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
ゞ| 、,! |ソ < 警視庁IT科に保全メール出しました。
ヽ '´ ̄ ̄ ̄`ノ / \________
,.|\、 ' /|、
 ̄ ̄| `\.`──'´/ | ̄ ̄`
\ ~\,,/~ /
\/▽\/
67 :
jgk:02/02/20 14:44 ID:iJuwbfZa
kp
68 :
今だ:02/02/20 17:20 ID:U4Frqkgf
| 今だ!
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄
ヒョイ , ∧∧
( _(,,゜Д゜) ミ ___
⊂___,.つつ て. ) クルリ
彡 ⊂ .ノ
(" ) ∧∧ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
. ∨∨ 彡 (,,゜Д゜) < 68!
/ ,つ \_______
〜、 ノつ スタッ !
.(/
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
69 :
名無し募集中。。。:02/02/20 17:21 ID:4UQplnMV
つあああっ
70 :
ネコ:02/02/20 17:31 ID:U4Frqkgf
70GET!!!後藤真希万歳 最高!!!
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
(´´
∧∧ ) (´⌒(´
⊂(゚Д゚⊂⌒`つ≡≡≡(´⌒;;;≡≡≡=
 ̄ ̄ (´⌒(´⌒;;
ズザーーーーーッ
遅くなってモウシワケ
そして、保全とっても感謝してます。
レス(感想の方)励みになってます。
「ジブン、ホンマに石川か?」
今をときめく名プロデューサーの第一声は、アドバイスでもダメ出しでも
なかった。
歌の途中で火をつけようとして、そのままになった煙草を下唇にぶらぶら
引っ付けながら、目を点にしたつんくさんは今まで最高に笑わしてくれた。
「ちょっとチェックするから、隣で待っといて。」
暫くして我を取り戻したつんくさんに言われるまま、ざわめきの残るスタジオを
出るわたしの胸は、してやったりの喜びで躍っていた。
できは予想よりも良く、手ごたえはあった。
ソロの話を聞いた夜から今日まで、いろんな葛藤や迷いはあった。わたしの
やろうとしていることが、本当に正しいのか、また、依然として、心の底の方で
ぶすぶすとくすぐりつづける梨華ちゃんに対する負の感情のこと。しかし、
それでも今はソロデビューという目の前にぶら下げられた目標に向かって
突き進むことに決めた。
それは、最初はわたしの野心から始ったものだった。しかし、日を追うごとに
ある予感が、わたしの背中を押していることに気付いた。それは、わたしが
梨華ちゃんの体で、梨華ちゃんが成し得なかったことをする、そのことで
わたしたちの何かが変わるのではないか。
根拠も何も泣いただの予感。それは予感と呼ぶにはあまりに頼りない
希望的観測だったが、それでもその時のわたしたちは、そんなものにでも
頼ってしまうほど無意識の不安定を抱えていたのかもしれない。
結局、その日は録りなおしもなかった。まあ、正式なレコーディングではなく、
ソロを決めるためだけの審査会みたいなものだから、当然そんなものは元々
ないんだけど、上出来だったことは間違いなく、かなり嬉しい。
それにしても、ソロ候補に入れてほしいと言ったときのマネージャーたちの
リアクションと今日録り終わった時のギャップは何度思い出しても笑える。
最初はなっち、圭織、圭ちゃん、やぐっつあんの4人から選ぶ予定だった
らしいが、「審査会受けさしてくれないんだったら、脱退する。」が
決め手となり、今日の運びとなったのだ。
(上手くいってよかったね)
梨華ちゃんが声をかけてきたのは、髪を乾かしている時だった。
あの日から早1週間が経とうとしていた。最近ではさすがにもう慣れたのか、
シャワーやトイレのたびに大騒ぎすることもなくなったが、それでも、
まだ恥ずかしいのか、最中は無口になって、こうして、事が済んでから
声をかけてくる。
「まあね、けどちょっと不機嫌?」
(う〜ん、そんなこともないけど、でも、やっぱりちょっと悔しいかな。
特につんくさんの『ジブン、ホンマに、石川か?』はちょっとムカついた)
梨華ちゃんは真性の音痴ではない。つまり、練習次第で直る音痴だ。
それに必要以上に普段から喉を大切にしていることもあって、この数日の
特訓でそこそこのレベルまでにはなった。しかし、それはあくまでもそこそこの
レベルであって、ソロシンガーとして通用するほどではない。メンバー相手でも
他の4人の候補と比べても一段落ちる。
(ソロ選ばれるかな?)
「さあ、でもあの人好きじゃん。”可能性”って言葉。」
そう、賭けるとすれば、誰も予想だにしなかった梨華ちゃんの急成長ぶり。
そこに可能性を見出してくれれば、芽はある。
「ねえ、本当はソロに選ばれない方が嬉しいんじゃないの。」
つんくさんの話で少し和んだのをチャンスとばかりに、この数日ずっと
訊きたかった質問を沈黙の間にぶつけてみた。もし、このソロの話が、
梨華ちゃんに決まれば、梨華ちゃんの中でわたしが占める割合が今以上に
増えることは間違いない。そんな状況を彼女は思うのか。
(たぶん、選ばれない方が嬉しいってことはないないと思うよ。)
梨華ちゃん自身もこうした状況を上手く捉えきれていなくて、感じるままの
気持ちを、言葉にするのが難しいのか、ゆっくりと言葉を選びながら続けた。
(でも、不安になるの。今わたしたちが共有している状況って言うのは普通の
ことじゃない。だから、それがもし普通になった時に、その間に手に入れたものが
大きければ大きいほど、失う痛みが大きくなりそうで)
後半の消え入りそうな声は、彼女の不安を如実に表していた。
本気で彼女のことを思うのならば、わたしの存在を許してくれた彼女のために、
彼女になりきるべきなのか。しかし、自分を殺して演じつづけることを
優しい彼女はどう思うか、それは逆に傷つけることになるのではないか。
正解が見つかりそうにない迷路。ただ、その中にあって一つだけ確かなことは、
彼女を苦しませる原因はわたしで、それを癒せる可能性を持っているのも今は、
わたしだけということ。
「大丈夫、わたしはずっと梨華ちゃんを・・・・・・梨華ちゃんのそばにいるよ。」
(大丈夫だよ、心配させちゃったみたいだね。
それに、いつまでもいられたらデートもできないじゃない)
冗談めかして大丈夫と言う彼女の優しさに涙が出そうだったが、
今のわたしにはそれはできない。
「えっー、いっつもデートみたいなもんじゃん。」
それは、優しさと軽さが紙一重の夜だった。
しかし、わたしの言葉に嘘はなかった。本気だった。
口先で言ったんじゃない「ずっと一緒に」と。
75 :
ななし:02/02/20 22:39 ID:UDTGpcrC
おっ!更新されていますね。これからもがんばってください!
76 :
57:02/02/21 13:50 ID:jVyVNbik
なんか、面白い展開になってきた!真希ちゃんの心理描写や、梨華ちゃんの
セリフなんかとてもリアルで面白いです!
77 :
57:02/02/21 16:25 ID:jVyVNbik
も一度age!
保全
ageるといろいろあるってのに……
めげずに更新してくれて感謝です>作者
80 :
ネコ:02/02/22 10:51 ID:1wNvghkd
80GET!!!後藤真希万歳 最高!!!
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
(´´
∧∧ ) (´⌒(´
⊂(゚Д゚⊂⌒`つ≡≡≡(´⌒;;;≡≡≡=
 ̄ ̄ (´⌒(´⌒;;
ズザーーーーーッ
もうどうでもいいやw
保全・・・。
83 :
はえ?:02/02/23 16:13 ID:J65WT8+7
このスレの2はスゴイね! こんなこともあるんだ!
84 :
84:02/02/24 04:10 ID:m5g5WloZ
俺が84をゲットしたスレは、長生きする傾向にある。このスレも例外ではなかった。
85 :
:02/02/24 12:41 ID:3CFtcUZZ
うい
>>作者さん、
細かいけど、「祐ちゃん」→「裕ちゃん」や。
@ノハ@
( ‘д‘)<おもしろいので、期待してんで。がんばってください。
87 :
87:02/02/24 19:30 ID:Qy/y/mRf
ミ"^;, ,ミ"^;,
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ミ' ;;::::::ミ ミ ..::::::::ミ
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ミ" ミ
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ミ ミ ぁぁぁぁ・・・
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ミ,, ミ
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ミ """ ""ミ
ミ ミ
ミ,, ミ
ミ ミ ミ
,,,,,,,,,,ミ ミ
ミ "ミ ミ
ミ;,,,.,.,..... ミ,,,,,... ..,,,,,,,... ...,,,,,... ... ...,,,,,,,... ...,,,,ミ
おもしろい。
すげー糞スレの予感・・・と思い覗いてみたら良スレ。
今までの小説スレの中でも最高に面白いyo!
89 :
57:02/02/25 13:45 ID:t8up3A27
良スレ保全!
90 :
プリンス羊:02/02/25 13:49 ID:ZRT4iHEv
ごちむスレかと思ってきてみれば全然ちがうじゃないか!
でも良スレ。
91 :
57:02/02/25 15:13 ID:t8up3A27
保全!
.。oO (ageンナ!( ^▽^)
( ^▽^)<・・・保全・・・。( ´ Д `)
93 :
名無し:02/02/27 03:18 ID:TbMX0YTb
ほぜ
94 :
ほげ:02/02/27 14:24 ID:d7viTFmd
魔鬼なつ(略
95 :
ほげ:02/02/27 14:25 ID:d7viTFmd
あ、終わってんのか
96 :
96:02/02/27 15:01 ID:ZbKTaF+A
作者さん、早く次が読みたいのですが…
97 :
名無番長7:02/02/27 16:37 ID:BH39Kw2T
97
98 :
96:02/02/27 17:38 ID:ZbKTaF+A
作者続き待望保全!
ところでこの小説、最後に石川(後藤)が三階建ての3億円豪邸建てるの?
100 :
名無し7:02/02/27 20:16 ID:/ODIWAnP
99
101 :
名無し7 :02/02/27 20:17 ID:/ODIWAnP
100 だった
102 :
名無し募集中。。。:02/02/27 20:19 ID:7ZTsTUt8
俺んちは2階建てで1500万円なんだけど。
3億円だと40階建てでないと納得できんぞ。
103 :
名無し募集中。。。:02/02/27 21:01 ID:wXFZ0a3h
いやーおもしろいですなー。
作者さんゆっくりでいいんでがむばってくださいな。
104 :
速 報:02/02/27 21:02 ID:gk7eGcMi
保全
106 :
106:02/02/28 17:43 ID:ReJEWVwI
保全
107 :
107:02/03/01 16:55 ID:aoyKp/ST
保全!
>>86 細かくないッス。モウシワケ。気つけます。
>>99 先に言われたのでやめます
>>102 うちの田舎では家一軒買うともう一軒ついてきますが、なにか
その他、感想くれた方々、保全してくれた方々。毎度のことながら
感謝してます。
本当に書くのが遅くてスイマセン。月末忙しかったんです、許してください
翌朝、携帯が鳴ったのはまだ日も明けきらない時間だった。
集められたのは5期メンと辻加護、すなわち、中学生メンバー以外の6人だった。
「忙しい中、朝早くに申し訳ないと思ったけど、大事なことだからきちんと
聞いてほしい。」
メンバーの他には、いつも一緒の現場マネージャー以外にも事務所の
お偉いさんたちも来ていて、彼らの徹夜明けの疲労を覆い隠すほどの緊張した
面持ちが、ただ事でない事態を感じさせた。
「今日、後藤の事故を公表することにした。新聞各社には昨日の深夜に
通知したから、おそらく今頃配られている今朝のスポーツ紙にはそのことが
載ってると思う。
あと、今日は9時からテレビ向けの会見もする。」
普段はあまり顔を合わすこともないチーフマネージャーは、できるだけ事務的に
伝えようとするのだが、最後にはうつむき、声を詰まらせ私たちのほうを
見ることができなかった。
「・・・・・・どうして?」
誰とはなく呟いた、当然の疑問だ。
今までは事故のことはひた隠してきたのに、今日になって、それもこんな
どたばたしたやり方で発表することにしたのか。メンバーの視線がチーフマネに
集まるが、それに応えたのはうつむいたままの彼ではなく、病院でも一緒だった
マネージャーの狂ったような泣き声だった。
「後藤は、後藤はもう目を覚まさないのよ!」
――わたしが目を覚まさない。――
激しい感情を帯びた彼女の言葉は、なぜかとても無機質で、その意味は
最初どうしてもわたしには伝わらなかった。
昨夜遅く、わたしの家族から連絡があり、それまでの経過、および、現在の
状況から病院側が下した結論が事務所にも伝えられたらしい。
らしい、というのも、その時は、心の奥の方で、声を殺して泣いている
もう一人の被害者をどうやって慰めようか、そのことばかりを考えていて、
誰の声ももうわたしの耳には届いていなかったのだ。
自らの肉体、それはかけがえのない物であったはずなのに、ほんの短い
時間の中でわたしにはそれよりも大切なものができてしまった。それは、
単に大きな驚きではなく、奇妙な喜びと一抹の寂しさを含んでいた。
111 :
さんたたん。:02/03/02 09:07 ID:0l8qzBNa
ってことは、ごっちんの肉体は、完全になくなってまうのけ?
精神が肉体に戻ることはもう、ないのけ?
はぁ、鬱だ。
梨華ちゃんの肉体に一生、2人入っているとも考えられないし。
どうなるんだ??
まちがってageてまった。スマソ。
脳死ケテーイということかな?
面白いなあ。
最後まで付き合うので、よろしく。
115 :
炎の魂:02/03/02 17:02 ID:NM6E20zz
保全age
116 :
:02/03/02 17:03 ID:bpz1VXaV
あげちゃだめ…
117 :
炎の魂 :02/03/02 20:56 ID:svI0wPOK
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._v-''¨`.,,vー─-、 .,,vー─-、 .¨'ーu_
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r′ | .リ.
.\,,_ ._,,,vrh、、,_ ._)
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118 :
名無し募集中。。。:02/03/02 21:11 ID:PKumKC+1
この設定どっかでみたぞ
119 :
チャ―ミー:02/03/02 22:47 ID:hSaJv44s
>>118 なっちとごっちんのでしょ?でもこれ面白い!期待してます^^
120 :
ネコ:02/03/03 11:20 ID:PauR0LhX
120GET!!!後藤真希万歳 最高!!!
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
(´´
∧∧ ) (´⌒(´
⊂(゚Д゚⊂⌒`つ≡≡≡(´⌒;;;≡≡≡=
 ̄ ̄ (´⌒(´⌒;;
ズザーーーーーッ
ホゼーン
122 :
新垣里沙:02/03/04 12:36 ID:93gSN3oo
あなたのようになりたかった
後藤の魂が石川の中にいるのだから、意識不明の状態が続くのは当然よ。
早く後藤の魂を本人に戻せば意識は回復するわよ。
>122
すみません。もう一度お願いします
124 :
がんばれ、ごっつぁん:02/03/04 14:27 ID:giSWrS8p
保全!
125 :
梨花ちゃんでちゅー:02/03/04 20:24 ID:pR/j6pnH
▼\ /▼
\ \ / /
\ ~⌒~⌒⌒ \/
( /~⌒⌒⌒ヽ)
( /γノノノノ @ヽ
|\ | |( | ∩ ∩|)| / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
\ \ | 从ゝ_▽_从 < ヨロシクでチュウ♪
/ / / \ ー=_ノ \_____
\ \ / |
\ \| _)
●●/ \_) /
●| /
\ ⊃⊃
―⊃⊃⌒
126 :
がんばれ、ごっつぁん:02/03/05 18:53 ID:hhJiYym/
良スレ、定期保全!
127 :
泣くな!チャーミー:02/03/07 11:54 ID:6Tv8qSK/
保全。
128 :
名無しさん:02/03/07 11:54 ID:kDMgs9Hl
129 :
泣くな!チャーミー:02/03/07 14:41 ID:6Tv8qSK/
次の更新はいつであろうか?
130 :
石川梨華:02/03/09 13:24 ID:vNSOXaV2
▼\ /▼
\ \ / /
\ ~⌒~⌒⌒ \/
( /~⌒⌒⌒ヽ)
( /γノノノノ @ヽ
|\ | |( | ∩ ∩|)| / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
\ \ | 从ゝ_▽_从 < ヨロシクでチュウ♪
/ / / \ ー=_ノ \_____
\ \ / |
\ \| _)
●●/ \_) /
●| /
\ ⊃⊃
―⊃⊃⌒
131 :
チャ―ミー:02/03/09 13:51 ID:QpePWIBn
hozen
132 :
河村隆一のちんぽ画像:02/03/09 14:09 ID:q5VwlyrN
俺よりひとつ上の娘っこが3億の豪邸!
すごいっすねー!
(帰るトコなくなっちゃったね)
「うん。」
静かな午後だった。
本当に静かだった。いつもなら、モーニング娘。が来る、それだけでもう
局中のスタッフが他の出演者に気を使いまくる。それくらい騒々しい
グループなのにその日は、わたしたちの楽屋を中心にして建物の中すべてが、
冷たい静けさに包まれていた。
「それにしても、新曲皮肉だよね。we're aliveって、こっちはもう・・・・・・」
(生きてるよ!そんなこと言わないで!)
白々しく避けても通れず、茶化すこともできない重みは、わたしたち
二人の間にもその巨体をたしかに横たわらせていた。
「ごめんなさい。」
今日はトイレじゃない。
トイレの個室はもうすでに何人かのメンバーが占領してしまっていて、
こうやって廊下の休憩場所みたいな、いつもなら人通りが多いところの方が
かえって独りになれる。
ベンチに座って、自動販売機の心地よい振動にもたれかかっているわたしは、
とてもはかなげな少女に見えるのか、通る人たちはみんな目も合わすことなく、
立ち去っていく。
普段なら雑誌や新聞が山積みされているテーブルも今日は日経すら置いてない。
まさにわたしたちへの扱いは腫れ物だ。
(大丈夫だよ、きっと戻れるよ)
わずかに泣き声だが、それでもわたしを励まそうと一生懸命な梨華ちゃん。
しかし、わたしは今日告げられたわたしの体のことよりも、彼女の
その言葉の方に強い感情を覚えた。それは、何かを失った後のような、
切なくて、寂しくて、やりきれない、そんな感じだった。
たまたまかぶったのかよ。まあいいけど。
「梨華ちゃんは、わたしがいなくなったほうがいいの?」
馬鹿げた問いかけだ。しかし、言葉はわたしの意思とは関係なく口をついた。
たった数日のうちにわたしは、このありえない状況を受け入れ、その中で
失いたくないものを手に入れてしまったのだろうか。それは、以前のわたしと
わたしを取り巻いていたすべてを、否定することになるのではないだろうか。
しかし、それでも願ってしまったのだ。
(わかならない)
そして、その願いは一瞬の間の後に否定されることはなく、むしろ、
いくらか叶えられた。
自らの肉体が侵略されるという、耐えがたいはずの状況にありながら、
彼女もまたわたし同様にこの短い日々の中で受け入れることから、
何かを手に入れてしまったのかもしれない。
彼女の言葉を借りれば、この“普通じゃない”日常の中で、まったく違う
2人だったわたしたちは、一人の人間として、同じ何かを手にしつつある。
肉体との別離は、ありえないはずだった未来をほんの少しリアルに
突きつけることで、そんな2人の繋がっている部分をあらわにした。
その夜、生まれて2回目に見た私の寝顔は、前に見た時よりも、少し
痩せていたが、青白く、透き通るような肌の色は、我ながらおそろしく
綺麗だった。
「手を伸ばせば届きそうなのにね」
言いながらそっと触れた病室と廊下を仕切るガラスは、しびれるほど冷たく、
それがじわりとわたしの中に広がっていくようで、慌てて手を離した。
(どうしてなんだろうね)
声に悲しみの色はなかった。ただ、不思議なだけ、そう言っているように
聞こえて、それは少しわたしを嬉しくさせた。
「帰ろっか。」
別に何をしに来たわけでもない。ただ、なんとなく今日は、二人ともここに
来た方がいいような気がしただけだった。だから、梨華ちゃんの応えは少し
意外だった。
(ううん、もう少し見てよう)
なぜか、その声はわたしをぞくりとさせた。甘いようで、それでいて冷たい、
不思議な響きで、あえて言えばうっとりという表現になるだろうか、
そんな感じで、それはわたしの思考を停止させる程だった。
気がついた時には、わたしの手は汗とガラスを押さえつける感触で
ひどくしびれていた。
138 :
:02/03/10 22:27 ID:3UbGbLx3
更新ありがとう。
139 :
泣くな!チャーミー:02/03/11 16:23 ID:L5X8WJwV
おっ!更新されてますね!また週末まで保全!
140 :
140:02/03/12 13:41 ID:1RIotDbg
h
141 :
卍マル:02/03/12 14:24 ID:3Bt8iTnK
ごっつぁんてかおりんやなっち(推定年収3,800万)より
もらってんの?三億稼ぐ前にドロップアウトすると思うケド。
>>141 オレもそれは思った。まあ即金じゃなくてローン組んでるんだろうけど。
ソロ二発が全収入にどう響いているのだろうか。
...などと、無理やりスレタイトル通りの話に戻してみる。
更新嬉しく保全
144 :
泣くな!チャーミー:02/03/13 14:53 ID:dfd16DnC
本日も保全!
保全
146 :
:02/03/15 11:32 ID:tyAYdZdU
age-chao
147 :
147:02/03/15 14:45 ID:Stzznv01
最高におもしろいです。作者さん、頑張って!
>>141-142 何気なくこの死にスレを選んだんだけど、実際この話ほんとうなんだろうか?
>>147 なんか気使わしてスイマセン(w
それと、毎度の事ながら保全感謝してます。なかなかこれないので助かります。
転機は突然舞い込んだ。
あの事故の発表からの過熱報道がようやく落ち着きを見せ始め、わたし達も
12人でもダンスフォーメーションにようやく体が馴染んできた頃だった。
条件付とはいえ、ソロに選ばれたのだ。
本当ならば、デビューはもう少し先の予定だったらしいのだが、わたしの
事故に関して、世間の受け止め方がおおむね同情的で、それならば、
話題性のあるうちにという話だった。
しかし、そんなことはわたしにとってはどうでも良いことだった。
(おめでとう!)
マネージャーからその話を聞かされた後、一瞬の間を置いてそう言ってくれた
彼女の言葉だけで、どれほど救われたことか。
わたしにとって、最初この状況下では、すべてのことは梨華ちゃんのためだった。
“事故”によって、彼女の体を奪ってしまった罪悪感から、そして、いずれ
訪れるであろう彼女の体との別れの時を考えて、できるだけ彼女らしく
振舞うことが、彼女のためであり、わたしの義務だと考えていた。しかし、
ソロの話を聞かされた夜、わたしの最もわたしらしい部分が、わたしの中で
主張をはじめたことで、どこまでいってもわたしはわたしでしかないことに
気付かされた。それでも、もし、彼女が望むならわたしは、その思いを
もう一度心の底に封印し、彼女のために生きようと思っていた。しかし、
予想を越えた優しさで、彼女は、時にわたし自身嫌気がするわたしのそうした
部分も含めて、受け入れてくれたのだ。
それによって、少し自分らしく生きることを許された気がし、今日に
至るのだが、それでも、やはりソロ決定を聞かされたときは喜びよりも、
彼女がどう思うかという不安の方が先立った。
そして、彼女が喜んでくれているとわかって、はじめてわたしも共に
喜ぶことができた。つまり、いつの間にかわたしは、再びすべてが彼女の
ためであれば良いと考えるようになっていたのである。しかし、今度は前の
義務感のようなものではなく、より無意識に近い部分でそう思っていたのだ。
さらに、最近では、以前彼女に抱いていた歪んだ憧れのような思いも
感じなくなっていた。それは、わたしが、彼女として振舞っているからではなく、
他人からいたわられ、愛される彼女を第三者として誇らしく思えるように
なってきたのである。
この二つの変化に気付いた時、おかしなことにわたしは嬉しくて
しょうがなかった。こうした変化は、わたし自身の存在を薄めていっている
ことなのに、それが嬉しいなんて。自分でもわけが分からないが、たぶん、
こうしてわたしと彼女の距離が近付き、ゼロになっていくことこそが
今のわたしにとって何よりも大切なことなんだと思った。
「でも、みんなには悪いことしちゃったかも。」
(そんなことないよ、だってこれは、ごっちんの実力で勝ち取ったんだから、
ごっちんのものだよ)
自分の気持ちが悟られないように、照れ隠しで何気なく言っただけだった。
本当はみんなに悪いなんてそんなに思ってなかった、それよりも、彼女を
喜ばせたい、そう思っていたんだから。
しかし、こう言ってくれた彼女の言葉をなぜわたしはこの時文字通り
受け取ってしまったのだろう。後になって思えば、この時の台詞が持つ意味を
もっと深く考えていれば、わたし達は違う未来を歩んでいたかもしれないのに。
うわぉ!更新してるぅ。楽しみに読ませてもらってます。
どうなるんだ?いしごま気になる!
やた!更新だい!ぬおぉ!この先どうなる!?
おかみさ――――ん!面白いですよ――――!!
更新感謝
156 :
:02/03/17 06:17 ID:XBcNb0bc
おもろいsage
157 :
;::02/03/17 19:07 ID:ph0j5Qhe
おもろいage
158 :
泣くな!チャーミー:02/03/18 14:45 ID:xfv1BYsP
おおっ!更新されてますね。これからどうなるんだ?
159 :
名無し:02/03/18 14:52 ID:NJ/4E0BX
sageよう
160 :
b-cr:02/03/19 08:12 ID:ZZD0+Fj3
たまたま閲覧したスレがまるで違う内容なのでびっくり
特に斬新なプロットとは思わないけど
彼女たちのメディアでは見られない姿の一端が見られた気がして楽しめました
連載の終了時にはちゃんと次の展開が明示されているところも好感持てます
一週間に一度の連載を楽しみにしていますので
これからもがんばってください
161 :
:02/03/19 22:58 ID:cZRTRfyZ
age-chao
162 :
名無し:02/03/20 00:09 ID:uyu8qBKh
それではsageましょう
163 :
ハロモニ:02/03/20 18:20 ID:le9uu+el
なんだ!スレタイトルの内容とまるで違う展開になってるけど
面白い!
作者さん、頑張って下さい。期待してまっす。
164 :
すげ。:02/03/20 18:22 ID:plrz8XD9
後藤もすごいな。
阿部、矢口、飯田の所得税は三、四千万だったから、
この後藤って言う人はまだ未成年だけど、親が
八千万ぐらい払ってんだろうな。
>>165 確かに。 やっぱり一般人とはレベルが違うね。
だからあんまり盲ムスには親近感が沸かなかったんだ。
まだヒバムスのほうが親近感がもてるよ。
168 :
:02/03/20 19:20 ID:AGjwaW18
nanisagetonnja-
169 :
名無し募集中。。。:02/03/20 19:21 ID:yHChUKVv
あげて荒らしたいの?
じゃあげるか
170げっと
171 :
ー:02/03/20 19:42 ID:1xiBgWga
165 名前:ID:yV5Xuhbt :02/03/20 18:57 ID:zzP9ug5l
阿部、矢口、飯田の所得税は三、四千万だったから、
この後藤って言う人はまだ未成年だけど、親が
八千万ぐらい払ってんだろうな。
166 名前:ID:zzP9ug5l :02/03/20 19:01 ID:zzP9ug5l
>>165 確かに。 やっぱり一般人とはレベルが違うね。
だからあんまり盲ムスには親近感が沸かなかったんだ。
まだヒバムスのほうが親近感がもてるよ。
>171
( ´,_ゝ`)プッ あんまりいじめんなよ。
自分の意図したことがあまり伝わってないと思われ
ぷぅ0−
まあ、あまりイジメんなよ
175 :
名無し募集中。。。 :02/03/20 22:19 ID:GhBNopyg
( ´,_ゝ`)←この顔文字はむかつくが、作ったやつは天才。
よく見たら小説スレだった
177 :
:02/03/21 14:47 ID:LxqsSVYX
age-chao
178 :
名無し募集中。。。:02/03/21 17:09 ID:KWiDhxII
思わぬ掘り出し物だったので、ageる。
179 :
:02/03/21 17:10 ID:9xX0PXGp
sage
180 :
名無し:02/03/21 22:15 ID:JYzwwNHR
甘いなーみんな!! このスレの2を見てご覧よ!!
奇跡だぜ。このスレで一番えらいのは、2! 二日の間何もなかったなんて
信じられん。
もうちょっと早く更新しようとは思っているんですが、
毎度の事ながらスイマセン、そして、感想と保全ありがとうございます
ソロの仕事が始れば、今までよりもずっと忙しくなることは分かっていた。
しかし、最近の忙しさを考えれば、一人で行動することで、二人きりになれる
時間が増えることは喜ばしいことだと考えていた。
このところ本当に忙しくて、家に帰ってもすぐ寝てしまうことが多くて、
梨華ちゃんとしっかり話す機会があまりなかった。お陰で梨華ちゃんも
退屈なのか眠り癖がついてしまったらしく、気がつくと寝てることが増えた。
だから、何度呼びかけても返事がなくて、後で聞くと寝ていたなんてことも
少なくない。
いつも一緒にいるのに、遠距離恋愛のカップルみたくすれ違いの毎日だね、
そう言うと彼女は静かに笑っていた。
しかし、そんな満たされない私の気持ちとは裏腹に、仕事は至って順調だった。
ソロでビューの条件として出された、わたしらしさ、すなわち、後藤真希らしさを
消す事は簡単ではなかったが、これも梨華ちゃんのお陰でなんとかなった。
もともとわたしが歌っているのだから、わたしの歌い方になってしまうのは
しょうがないと思っていたが、どういうわけか梨華ちゃんが一緒に
歌うことによって、聞いている人には違った印象を与えるらしいのだ。
梨華ちゃんの声は、わたしにしか聞こえないはずなのに、それでも、
彼女の何かがわたしが出す声、彼女の体を通して伝わっているのかもしれない。
「石川あんた上手くなったね。」
最初にそう言ってくれたのは、やっぱり圭ちゃんだった。
最後までソロの候補として、わたしと残っていた彼女、メンバーはみんな
大切だけれど、それでも、わたしにとってかなり大切な友達で、
梨華ちゃんにとっても尊敬する一番身近な先輩。そんな彼女だからこそ、
わたしたちの変化に一番敏感だったのかもしれない。
もちろん、ソロデビューの前後には他の人たちからも歌についてはずいぶん
誉められた。しかし、ケイちゃんの言い方は少し違った。
ただ祝福しているだけでなく、少し心配している風だった。
本当のことは知らないはずなのに、圭ちゃんは彼女の見る石川梨華に何かを
感じていたのかもしれない。だけど、それは何も知らずにわたしを取り囲む
人たちの声と常識という名のフィルターによって覆い隠されてしまったのだろう。
(疲れない?)
部屋での久しぶりの会話の始まりは、梨華ちゃんの心配そうな声だった。
「どうしたの突然。」
(最近忙しいから。
わたしは、今までと全然変わらないけど、ごっちんはどうなのかなって)
「そりゃ、寝る時間とか、休みは減ったけど。けど、大丈夫だよ。」
(そう。)
心配させたくなくて言ったつもりだったのに、期待していたような返事は
返ってこなかった。がっかりしたような、寂しげな、聞いているこちらまで
悲しい気分にさせる声だった。
「どうしたの、梨華ちゃん?」
(・・・・・・ううん、どうもしないよ、ただごっちんはすごいなって。
これかも頑張ろうね!)
強がりというには、あまりにも分かり易すぎた。だけど、わたしがもう一度何かを
聞こうとする前に、彼女は「明日も早いから」そんな、取って付けたような
台詞を残して、眠ってしまった。
そして、その日から、いくらわたしが呼びかけても、
梨華ちゃんが応えることはなかった。
お!更新!!む!?
な、、、なんか、、、、、なんか切ないね、、、、、、、
ハ―、、、、、、切ね―、、、、、けどたまんね!
186 :
炎の魂:02/03/22 21:14 ID:fgWkFG8B
| 今だ!
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄
ヒョイ , ∧∧
( _(,,゜Д゜) ミ ___
⊂___,.つつ て. ) クルリ
彡 ⊂ .ノ
(" ) ∧∧ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
. ∨∨ 彡 (,,゜Д゜) < 186!
/ ,つ \_______
〜、 ノつ スタッ !
.(/
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
187 :
名無し募集中@:02/03/22 21:17 ID:fgWkFG8B
糞スレだな
189 :
:02/03/22 21:48 ID:8bTahvT2
>188-189
糞レスだな
191 :
un:02/03/23 01:25 ID:0RqGlse0
192 :
自由だ!:02/03/23 01:44 ID:/5sGHFLA
昨年、その後藤宅に行ってきた。たしかにすごい豪邸だ!
193 :
亜依と平和:02/03/23 03:05 ID:j5kXxGds
良すれ。age。
194 :
姫っ子 ◆wnnMDWyQ :02/03/23 04:46 ID:x0UBaAcR
316マンも月にもらえてるなんて・・・
195 :
炎の魂:02/03/23 09:15 ID:+Ahhh6+q
195GET!!!後藤真希万歳 最高!!!
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
(´´
∧∧ ) (´⌒(´
⊂(゚Д゚⊂⌒`つ≡≡≡(´⌒;;;≡≡≡=
 ̄ ̄ (´⌒(´⌒;;
ズザーーーーーッ
196 :
b-cr:02/03/23 09:41 ID:R2X+My6t
更新ごくろうさまです
でも ここの出演者のセリフのなかで
石川だけが本人の声で聞こえてくる気がするのはナゼだろう?
たぶん筆者の筆力によるものだろうな
後藤はそれほど落としていないけど他の出演者はさほど掘り下げていない
石川だけがかなり心象描写にエッジを付けている
主人公の1人でありながら姿を見せないのだから
そんな工夫も必要なんだろうね
とにかく毎週楽しんでいます
無理せずにがんばってください
後藤がやたら哲学的なのはやっぱ違和感あるが
>>196-197 すごい読んでくれているみたいで嬉しいです。
これまで保全、感想でお世話になった方々ありがとうございました
この話はこれでとりあえず最後です。言い訳は後ほど
小さな時から春が好きだった。
冬よりも優しくて、夏よりも穏やかな、そんな季節が好きだった。
だから、おかしな話だが、その時が春でよかった、そう思った。
それは、ソロアーティスト石川梨華が世間でもだいぶ浸透し始め、
梨華ちゃんが返事をしなくなってから三日目のことだった。
季節はずれに暖かで、すべてが幸福に感じられそうな陽気の日。
わたしは死んだ。
正確には肉体との完全なる別れ、それはさすがに悲しかった。精神はいまだに
生きているとか、人間の生とは一体なんのかとか、そんな理屈ではなく、
悲しかった。
たとえるなら、とても仲の良かった友達が転校してしまって、もう一生遭えない。
そう言われたらこんな気持ちになるのかもしれない。
けれど、それでも涙は出なかった。
つまり、梨華ちゃんはまだわたしの中にいて、彼女はわたしが死んだことを
知らないのだろう。でなければ、今頃わたしは号泣しているはずだから。
人一倍優しくて、だからこそ泣き虫な彼女を思いながら、わたしはかつての
わたしに別れを告げた。
その夜、夢を見た。
わたしは、今日失ったはずのわたしの体だった。
そして、梨華ちゃんは二人いた。
二人はよく似ていた。見た目は全然見分けがつかないほどだ。
だけど、二人はまったく違っていた。わたしにはそれがよく分かった。そして、
わたしは二人ともよく知っていた。
二人は、わたしと一緒にいたいと言った。だけど、それはできないと言うと、
とても悲しそうな顔をしていた。
かわいそうになったので、わたしはどちらか一人ならいいよ、そう言った。
すると、いつの間にか、梨華ちゃんは一人になっていた。
(目が覚めた?)
三日ぶりに聞く梨華ちゃんの声は、それまでいなかったことを悪びれるでもなく、
いつも通り過ぎて、まだ夢の続きかと思った。
「どこに行ってたの?」
(ずっといたよ)
そう言った彼女が見せてくれたのは、わたしが大好きな柔らかな笑顔だった。
だけど、わたしはもうそれをうらやましいと思ったりはしなかった。ただ、
いとおしかった。
「わたし死んじゃったんだよ。」
彼女を悲しませたくて言ったんじゃない、ただ、言わなければならない、
そんな気がしたのだ。
そして、彼女もそれを分かっていた。もしかしたら泣き出してしまうかも
しれない、そんな私の心配をよそに、彼女の応える声は希望に溢れていた。
(ううん、ごっちんは、いいえ、あなたは死んでないよ。生まれたんだよ)
すべてを理解した。
「いつから知ってたの?」
(あなたよりもずっと前に、もしかしたら最初からかもしれない。)
「ねえ、梨華ちゃんはどこにいくの?」
(どこにも行かないよ)
気がつくと、頬を熱いものが伝っていた。それはまぎれもなく
わたしのものだった。
「ずっとこうしていたいよ。」
(だめよ、わたしはもう叶ってしまったもの)
本当に満足したようにそう言うと、彼女はさっきよりももっとあたたかく
微笑んだ。まるで、今日の帰り道に見つけた陽だまりみたいだった。
「そうだ、わたしまだ無理だよ。梨華ちゃんみたいに笑えないよ。」
(大丈夫。笑えるよ。
でも、どうしても笑えないときは思い出して。
あなたのようになりたかった、そう思ってるわたしがいたことを)
あれからいろいろあった。メンバーが一人いなくなったのだから、
本当にいろいろあった。
だけど、わたしが梨華ちゃんと話すことは一度もなかった。
何度も呼びかけたし、たくさん考えた。だけど、今でも分からない。
あの夜の夢は誰の夢なのか、梨華ちゃんは最後に嘘をついたのか、そして、
わたしは誰なのか。
もう最近は自分の名前を後藤真希と書きそうになることもなくなった、だけど、
わたしは石川梨華でもない。わたしの知っている梨華ちゃんはもっと
強い人だった。
少なくとも、夜目が覚めて、暗い部屋で夜明けまで泣いたりしない。
だけど、わたしは人前では決して泣かない。そんなことをしたら、梨華ちゃんの
期待を裏切ってしまう。
そう、わたしは頑張らないといけない、強く、そして、かっこ良く。それは
とても辛いことだ。だけど、時々弱音を吐かしてくれる人もいる、そんな
わたしの強がりを知っていてくれる人もいる。
その人と一緒に、ずっと一緒に。約束は少し形を変えてわたしを支え続ける。
「ど〜も〜!チャーミー石川です!」
今日もスタジオにわたしの元気な声が響く。
だけど、時々訊きたくなる。
(ねえ、わたしはあなたのように笑ってますか)
おしまい
とりあえず"終わらせ”ました。スイマセン
後半飛ばしてしまいました、だって、4月から忙しいんですもの・・・・・・
できれば、違う形でもう一回・・・・・・いや、何も言うまい
それでは、本当に感想と保全には感謝しています。ありがとうございました。
206 :
名無し:02/03/23 15:57 ID:uYbn44u/
お疲れ様でしたー!
面白かったでーす
207 :
泣くな!チャーミー:02/03/23 18:39 ID:/q7ScoLd
えっ!これで終了ですか?うーん、作者さん、ご苦労さまです!
久しぶりにいいストーリーに出会えて感謝してます。住人の多い
モ板のこれだけのスレの中で、作者さんの小説に出会えて
すごく良かったです。また、暇なときにでも次回作期待してます!
その時も作者さんだとわかるようにしてもらえれば…
必ず探しますので。
ありがとうございました!
小説とか妄想でカキコするの激しくキモイと思うんですが。
なんかアッチの匂いがするんで(兄ヲタとか同人とか)
>208
ふーん。すごいね。帰っていいよ
キモイと思ってるなら読むなヴォケ
CD買ったりコンサ行く奴の方がキモイ
211 :
b-cr:02/03/23 22:52 ID:R2X+My6t
脱稿ごくろうさま
おもしろかったです
最後は少年ジャンプ連載のおもしろいんだけど人気のない作品
みたいな感じになってしまったのはしょうがないね
それでも十分意図は伝わってきたから
もしも余裕ができてきましたら
リファインもしくは新作をお待ちしています
作者さん、ご苦労さまでした。
細かく柔らかな心理描写に作者さんの気合が感じられて
読んでて何か心にぐっとくるものがありました。
どうやら作者さん本人もこれで完結とは思っていないようなのでまた、、、、、
期待しています。
とにかくとても楽しませていただきました。ありがとうございました。
最後にもう一度心より、
ご苦労様でした。
213 :
名無し募集中。。。:02/03/24 04:32 ID:2h8+yDpU
おつかれさまでした、楽しんで読ませてもらいました
ただ何度読んでも分からないことが・・・
結局人格転移物というよりは多重人格物だったのでしょうか???
こういう事きくのは野暮だとは思ったのですが、好きな小説なのでどうしてもたしかめたくて
ご迷惑ならすいません
お前等 いい物書いてる奴を
煽るだけじゃイヤなのさ
スキがあれば揚げ足とって
汚れるスレを見たくてうずうず
そのくせ決まった顔で 批評家を気取りやがって
手前の腐れた自スレは 自演に宣伝何でもOK
ファソダッタノニ オワッチャッタ
215 :
炎の魂:02/03/24 13:29 ID:54vPuWan
| 今だ!
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄
ヒョイ , ∧∧
( _(,,゜Д゜) ミ ___
⊂___,.つつ て. ) クルリ
彡 ⊂ .ノ
(" ) ∧∧ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
. ∨∨ 彡 (,,゜Д゜) < 215!
/ ,つ \_______
〜、 ノつ スタッ !
.(/
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
>214
漏れは「洗礼」を思い出したけどな
いしごまの微妙な関係がうまく「せつなさ」になって表現されてたと思います。
ジンワリと染み込んでくるような良いお話でした。
最後が駆け足になってしまったのが本当に残念。
お時間が取れるようになったら、是非ディレクターズカットを見せて頂きたいです。
219 :
219:02/03/25 12:48 ID:se54nRBI
なんか終わっちゃって残念!
ラストは読んでて、ちょっと涙ウルウルでした。
なんだか春が来たんだなあと、ほのぼのできました。
作者さん、ありがとうございました。
また、あたたかみのある作品待ってます。
220 :
炎の魂:02/03/25 13:10 ID:xWzfqZ8W
220GET!!!後藤真希万歳 最高!!!
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
(´´
∧∧ ) (´⌒(´
⊂(゚Д゚⊂⌒`つ≡≡≡(´⌒;;;≡≡≡=
 ̄ ̄ (´⌒(´⌒;;
ズザーーーーーッ
221 :
:02/03/25 14:49 ID:KTCB9aMz
終らせましたねw
もうすこし展開するするかと思いましたが
お疲れさまでしたw
>>217 そう、それ。
読み終わってタイトル見直したら浮かんできた
後半はしりすぎたと自覚しながらも、時間に追われ脱稿
にもかかわらず、身に余る言葉の数々、大変嬉しいです
指摘は糧に、激励は活力にし、また頑張りたいと思います。
すべてのレスに感謝していますが、特に気になったものが・・・・・・
>>213 乱暴な言い方ですが、どう取って頂いても結構です
と、いうのも書き物は、書き上げた時点で書き手の手を離れ、あとは
読み手の解釈にゆだねられるべきかと
なので、たとえ意図通り伝わらなくてもそれは、書き手の力不足です。
>>216-217 マンガでしょうか?
設定が似ているのであれば、興味あるので一度読ませていただきます
貴重な情報ありがとうございます
これをもって、私はこのスレから消えます
もし、他にここで書きたい方がいればどうぞ(って、私のスレじゃないですが)
マジレス、長文失礼しました
224 :
聞きかじり:02/03/26 12:33 ID:snz1n25+
おつかれさまでした、楽しんで読ませてもらいました。
何度読んでも分からないところがあって納得できない部分もありましたが、心理描写
については本当に上手なので感心しました。
僕の解釈としては、最終的に石川は自分の体の全てを後藤に譲る事を決心した・・か
後藤の肉体が完全に死んだ時、石川の肉体精神ともに後藤のものになる。・・なんで
すが、どっちにしてもおかしい事が出てきてしまうんですよね。
225 :
名無し。:02/03/26 13:36 ID:ihb8SK/k
後藤の新居には、矢口や安倍も泊まりに行ってるみたいだね。後藤がうれしそうに語ったみたい
>>224 なるほど
自分は、ごっちん=石川が本物の後藤へのあこがれからつくりあげた
二つ目の人格。かなと思ってましたが、その方が綺麗ですね
けど、結局この解釈でも分からないことが・・・・・・
作者さんはああいってるけど知りたいなあ
つまり、
『後藤が石川の肉体を乗っ取って、石川と後藤の意志の
疎通も徐々に出来なくなっていく。だけど石川の魂は、
後藤の声も含む外界を認識できている』
ということ?
>>227 いや、そもそも後藤が石川の体に入ってきたという前提がひっかけだとおもう。
石川の中の後藤は石川が生み出した架空の人格で、最後にはそれが主人格になったと
229 :
:02/03/26 23:20 ID:YA0hq3LW
誰かのために生きてみたって
Tomorrow never knows
230 :
聞きかじり:02/03/27 12:21 ID:DetGGbsW
>>227 でもストーリーの最初を読むとやはり後藤は事故で意識不明になっているんですよね。
ちょっと強引だけど事故にあったのは石川でその後のストーリーは全て意識不明石川
の夢の中の話で、意識不明の後藤の姿が実際の石川の姿ならば・・
オレは
>>228 が正しいと思う。
石川が最後の方に言った
>あなたは死んでないよ。生まれたんだよ
と言うところなどからそう思う。
元の石川が後藤のようになりたくて、
後藤の人格のコピーを石川が作った。
自分としても
石川が後藤への憧れ(目標?尊敬もあるか?)から後藤の死(事故)を受け入れる
ことができないために作り出した人格だと思う。当然無意識で。
どの考え方にしても矛盾が出てしまうのは、作者さんが最後を駆け足にしてしまった
からで、仕方がないと思う。次回作に期待。
言葉足らずでスマソ
>228
あーなるほどね。確かにその方が解りやすいな。
234 :
ほい!:02/03/29 14:38 ID:K+xGmhmh
>>228 ふむ!その解釈の仕方だったらうまく繋がりそうだね!
235 :
、(・ω・;)ノ:02/03/30 22:39 ID:99X48pD3
なんとなく参加・・・
236 :
:02/03/30 22:53 ID:7s8GIWuh
>>2 まで2日間もカキコがなかったこのスレは何?
237 :
後藤ユウキ:02/03/31 21:00 ID:1f2HKc3P
今月のGirlPOPのインタビューでも最近いいことあった瞬間って問いに
ごまが「最近梨華ちゃんとか家に泊まったり,そういうのがすごい楽しい。
家族っぽく楽しめることが,いいことかなって思う」って。
おもしろかった。
ただ、駆け足になっちゃったのは読み手としては残念。
解釈としては228が合ってるっぽいね、全然気付かなかった・・・
作者さん、おつかれさま。
239 :
239:02/04/03 13:08 ID:x+PBj7r3
保全
240 :
hi:02/04/03 13:09 ID:8Knj3hEa
241 :
名無し:02/04/03 16:08 ID:4pLAhevm
新しいやつかとオモタ
242 :
ななしさん:02/04/04 14:07 ID:MZITQK7d
保全!
243 :
名無し:02/04/04 15:22 ID:RbaKYiT4
244 :
名無し:02/04/04 16:01 ID:vxgC45xN
分かりやすいブラクラだな
245 :
名無し募集中。。。:02/04/05 01:12 ID:fgbSd8fu
246 :
246:02/04/09 13:05 ID:lBw8n+KJ
激しく保全
247 :
ああ!:02/04/11 15:34 ID:Jsb17Uy0
保全
/⌒⌒⌒ヽ
/ヽ / 从从从从)
| ) | (9 (O O) |リ
|| 从リ| ゝ | < 姉ちゃんお帰り!
|| ヽ 〜 /
\  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄  ̄ ̄ ̄ ̄)___
〃 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄/ 。 。 / ̄ ̄ ̄ / / 〃⌒i
| / / / / i::::::::::i
____| . ./ / / | ____|;;;;;;;;;;;i
[__]___| |⌒V ・ V⌒i Uし'[_] |
| || | i ∩ i i | || |
| ||____|__________.| .|\_(| .|)._| .|_____| || |
|(________| |____| |_____.| || |
| LLLLLLLLLLLL ._| |LLLL.L | |LLLLLLLL | ||_____|
| || | | / \ | || | ||
|_|| / .ノ ヽ ヽ .|_|| |_||
249 :
名無し:02/04/11 21:41 ID:eo7+E961
( ´ Д `)<めっ
250 :
:02/04/12 17:48 ID:rR8H80O7
ユウキの部屋は豪邸の地下にあるのかな?
251 :
名無し ◆d70djpGA :02/04/13 16:38 ID:9Wnnqtyx
消えるつもりでしたが、保全してくれている方がいるようなので
結論から。このスレでは今後私が何かを書く事はありません。
もともと、某所閉鎖危機の折、この場を間借りしただけなので、元の住処に帰ります。
リライトする事があってもたぶん別の場所です。
出すぎたことだとも思いましたが、変に気を持たして保全していただくのも悪いので
これで本当に消えます。お邪魔しました。
ごめんなさい
253 :
:02/04/14 21:19 ID:zTUaOT87
面白かったです
254 :
それは、:02/04/15 12:45 ID:UUPnHNSx
255 :
かわいい:02/04/15 12:50 ID:QPOh/czX
256 :
256:02/04/16 16:38 ID:UZB4btXo
それでも保全
257 :
sage:02/04/17 15:00 ID:zDT8564M
保全
258 :
258:02/04/19 14:51 ID:y6Zm4U5y
保全!
259 :
:02/04/21 12:45 ID:JI2wH2qZ
保全
260 :
保全:02/04/21 16:50 ID:I2fGACEX
誰か、何か書いてくれ…
261 :
:02/04/21 16:52 ID:lEjy2Bzo
もういいじゃないの?
それよりこのスレの本題のほうが俺は気になる。
あの後藤の家の近くの建設予定地が、そうなのかどうなのか。
262 :
保全:02/04/22 00:32 ID:79DCVd0J
まだスレは余ってる。
誰か、書いてくれ…。
263 :
保全:02/04/22 13:40 ID:VJ3Qk6B1
しっかり保全
264 :
ごま萌え:02/04/24 13:46 ID:w5kae/xW
ごっちん保全委員会
保全。。
266 :
保全中:02/04/26 12:45 ID:WQETUs2d
保全!
保全
保全。
保全中!
保全
271 :
りっかち:02/05/01 13:40 ID:7/6koj7Y
保全
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