★「なんで娘。応援してるの?」に対する解答999★

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41オレンジジュース

翌日の仕事場には、なっちはいなかった。
ずっと前から分かっていた事だ。
だけどそれが、少し寂しくもあり少しホッともした。
「ごっちん」
「ふぁい?」
ちょうどお菓子を口に入れたばかりの私の返事に
呼んだ超本人の圭ちゃんが笑った。
「あんた、それ間抜けすぎだよ」
「圭ちゃんが呼んだんじゃん」
おかしそうに謝る圭ちゃんに、私は先を促した。
誰も戻ってきていない楽屋で圭ちゃんが言い難そうに切り出した。
「最近、紗耶香と連絡とってる?」
「いちーちゃん?とってないよ?」
私が不思議そうな顔をすると圭ちゃんは納得した様に頷いて、
それならいいと楽屋から出ていった。
いちーちゃんの顔が頭に浮かんだ。
それは意外とひさしぶりの事で、私は寧ろその事の方に驚いた。
前だったら、そんな事はなかったのに。
毎日、彼女に会えない事を嘆いていたのに。
42オレンジジュース:02/02/06 00:04 ID:5mSnZCYX

頭の何処かで昨日のなっちの言葉が浮かんだ。
『やっぱり、紗耶香がいなくて寂しい?』
いちーちゃんがいなくて寂しいと、思えない事の方が寂しかった。
ぼんやりとソファに座っていると、あの頃の光景が今でも目に浮かんできた。
今が嫌いな訳じゃない。
昔の方が良かったと憂鬱な気持ちになっている訳でもない。
だけど、否、だからこそ、今も昔の映像がちらついた。
「なっちぃ」
「はい?」
ちょうどドアが開いて入ってきた人が驚いた声を私に聞かせた。
振り向くと、そこにはたった今呼んだばかりの相手が困惑して立っていた。
「よく、分かったね」
なっちは私と目があった途端に笑顔を見せた。
「呼んだだけだったんだけどね」
彼女が笑うから、私も笑った。
なっちは荷物を置いて、ハンガーに吊るされてあった洋服を手にとった。
「見ないでね」
「なんで?いいじゃん。女同士なんだし」
「いいから。見ないでってば」
恥ずかしそうに手で目を覆わせたなっちはがさごそ音をたてた。
43オレンジジュース:02/02/06 00:05 ID:5mSnZCYX

昨日までは普通に着替えてたのに、と私が目を覆いながら言うと、
なっちは拗ねたような口ぶりで言い返して来た。
「だって、昨日までごっちんは私の事好きなんて言わなかったじゃないさ」
「ねぇ、もう見てもいい?」
「もちょっと駄目」
なっちの声が少し甘えてる様に聞こえた。
初期のメンバーに対してならまだしも、私には出した事のない声だった。
「ねぇ、もういい?」
「んー。駄目」
目の前で聞こえた声に、思わず両手を下げると
そこにはちょっと怒った顔をしたなっちがいた。
「駄目って言ったのに」
「もう終ってるんじゃん」
私が笑うと、なっちもしかつめらしい顔を止めた。
なっちが私の隣に座って、ファッション誌を開いた。
「なっちぃ」
寄り掛かると、なっちは首をかしげて私の頭の上に頭を乗せた。
さらさらした髪の毛がくすぐったかった。
この空気が続けばいいと思ってた。
だけど、人生というのはそうそう上手くいっていくばかりじゃないらしい。