「く…苦しい…」
ついに石川は地に膝をついた。
…戻って来て…中澤さん、戻って来てまた私を叱って…
しかしもう中澤は永久に帰らない。
その時、
「い…いやぁぁぁー!!」
慌ただしいヘリポートに、1人の女性の悲鳴が響いた。
「い…いや…紗耶香…祐ちゃん…そんな…」
悲鳴の主は後藤真希だった。
爆発音を聞きつけて駆けつけた後藤は、兵士から中澤と市井が搭乗するヘリが墜落したことを
知らされた。
「り…梨華ちゃん…どういうことなの…?戦死って…こんなところで戦死なんてありえないじゃない…」
UFA本部屋上のヘリポート。
戦場ではない。
「うぅ…」
石川はようやく立ち上がると、後藤を無視してその場を去ろうとした。
「り…梨華ちゃん!?」
「戦死と言ったら戦死…事故でも事件でもなく、戦死なの…」
石川は苦しそうに言い捨てると、その場を去って行った。
「…紗耶香…」
まだ話したいことがあった…もう一度会って話したいことがあったのに…
後藤は、最後に市井と話した時のことを思い出していた。
あれは、つんくの本当の気持ちを知り、市井にこれ以上情報を流すわけにはいかない。
そう伝えた時のことだった。
――
『ありがとう後藤。また情報があったら頼むね』
「そのことなんだけど…もうこれでこういうことは最後にしたいの」
『…なんで?どうしたの!?』
つんくは私達のことを思ってくれていた。
そのつんくのことを裏切るようなことは出来ない。
後藤はこの時決意していた。
「もう影でつんくさんを裏切りたくないの…」