元気爆発メロン記念日

このエントリーをはてなブックマークに追加
84マングース西浦
9話 『躍動』
「はぁ…はぁ…はぁ…」
爆発の熱気を顔で受けながら、石川は息を切らせていた。
やってしまった…中澤裕子を、同乗者も巻き添えにこの世から抹殺してしまった。
もはや立ち止まることは出来ない。
石川はついに自分の手で本格的に火蓋を切ったのだ。
しかし…

「早く救護の人間を呼んでくれ!」

兵士の一人が叫んでいるのを石川の聴覚が察知した。
だが…
あの高さと、あの爆発である。

「もう手遅れよ…中澤さんは、名誉の戦死をしたの」

虚ろな目で、石川が口を開く。
「名誉の戦死!?」
石川の声を聞いた兵士が振り返る。
「いいから…中澤さんの名誉のために、そういうことにしておくの…
 中澤さんは最期まで勇敢だった…みんなも、『本当のこと』は絶対人に言っちゃだめ」
中澤裕子はもうこの世にいない。
あの、憎らしい中澤は…そう思いたい石川だったが、胸が苦しかった。
憎らしく思っていたはずの中澤だったはずなのにどうして…
石川はまだ気付いていない。
石川は中澤を愛していた。
恋人に向ける恋愛の愛とは違う。家族愛の愛とも違う。
モーニング娘。の一員にしか分からない、メンバー愛の愛である。