通信を切った後、アヤカは暫く受話器を置かず考えていた。
もしかしたら何か裏があるのではないか…しかし石川の口調は普段と変わらぬものだった。
ひょっとたら石川は普段から何かを企んでいるような裏表のある人間なのではないか?
いや、考え過ぎか…まだ16歳の石川にそんな野心などあるはずがない…そう考えなおした。
アヤカは早速信頼する2人の仲間にたった今の電話の内容を話し始めた。
「私はアヤカちゃんについていくから」
「(アヤカの思った通りにしたらいい。私の目の前にいくつかの選択肢があったなら私は
迷わずその中で最も早く戦争を終わらせることが出来るであろう可能性が高い手段を選択するだろう)」
そう言って肯くミカとレフアを見て、アヤカはある程度心を決めた。
(そう、完全に優位な立場に立ってからの独立なんかじゃなくても、和平の話し合いの席で
こちらが優位になる条約を結べばいい。平家さんや稲葉さんには無理でも私にならそれは出来る…
そしてそれが一番平和的で確実で、スピーディーでエレガントなベストの方法のはず…
私がちゃんとやってみせれば平家さんもきっと分かってくれるよね)
一方受話器を置いた石川は不気味な笑みを浮かべていた。
「ふふふ…アヤカさんには断わる理由なんか無いはず…あと面倒なのは中澤…」
――
この頃、すでに夕食を終えたメロン記念日は新しい衣装を探すため街を散策していた。
ステージ衣装だから出来るだけ目立つものがいい、もしくはグループとしての調和を優先するか。
それとも普段街でも着れるようなカジュアルなものを…
などと迷っているうちに時間はあっと言う間に過ぎていってしまう。
めぼしいものは幾つかあったものの、結局この日は決めることが出来なかった。
仕方なく帰路につくことになった4人と1匹(あさみ)。
「早く帰ろうよ。なんか最近物騒だし」
この頃、アフリカには奇妙な事件が続発するようになっていた。
夜になると、街に長い髪を振り乱した背の高い化け物が出没し民間人に危害を加えては
目にも留まらぬ速さで走り去ってしまうというものだった。
被害は既にアフリカ全土に広がっている。
現在メロン記念日らが留まっている町もその被害対象外ではなかったのだ。