元気爆発メロン記念日

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16マングース西浦
第3話 『救出』

メロン記念日は3日後にインドでのイベントを控え、
一度雑誌の取材のために東京に帰ることになっていた。
そして日本に帰ったメロン記念日のメンバーは日本の余りの変化に愕然とさせられることになったのである。
まず初めに空港に到着するなり機内放送でモーニング娘。の曲がかかった。
空港内でもモーニング娘。の曲しかかからない。
空港内での人々の会話には端々に『ごっちん』『なっち』などといった単語が必ず混ざっている。

モーニング娘。が軍事クーデターによって日本政府を転覆させ政権を強奪しまったのだ。

「い…一体どうなっているの?…たった1日日本にいなかっただけなのに…」
まるで便を間違えて違う国に来てしまったような気分の4人だった。
「とにかく、UFA本部に行って聞いてみようよ」
UFA本部に到着した4人は再び度肝を抜かれることになる。
無機質な鉄筋コンクリートのビルだったUFA本部がまるで戦国時代の
天守閣のような姿に様変わりしているのである。

「嘘でしょ…」

その時、
「貴様ら、メロン記念日だな!?」
4人に気付いた警備員が声を掛ける。
「そ…そうですけど」
2日前までこんな厳重な警備は無かったはずなのに…
そう思いながらも返答した4人は思わぬ言葉を聞くことになった。
「貴様ら全員逮捕する!」
「な…なんで…!?」
全速力で逃げる4人に警備員はおいつけるはずも無かった。

しかし、何がどうなっているのか…公園に逃げ込んだ4人は途方に暮れていた。
数日前までは味方だったUFA本部が敵になってしまったとでもいうのか…
そんな時、知った顔が4人の前に姿を現した。
「また会ったね」
「市井さん…」
市井紗耶香である。4人にとって敵では無いはずだった。
「一体何がどうなってるんですか?」

市井から一部始終を聞かされた4人はまるで夢の世界にでも送り込まれたような気分だった。
モーニング娘。が軍事クーデターで日本政府を乗っ取り、つんくがモーニング娘。評議会議長、
山崎直樹という男がモーニング娘。統一国家の初代大王に就任し世界の軍事支配を開始したという。
安倍なつみと新メンバーから1人がロシア方面、飯田圭織と新メンバー1人はアフリカ方面、
保田圭と新メンバー2人はヨーロッパ方面を、辻希美、加護亜依の2人は中東方面、
石川梨華、吉澤ひとみの2人はオセアニア方面をそれぞれ侵攻しているという。
矢口真里は日本最大の総合商社T&M。カンパニー(タンポポアンドミニモニ。カンパニー)
の経営を任され、中澤は日本軍代表となり、後藤はつんくの補佐官となった。
つんくは
『地球上に全人類が待ち望んだモーニング娘。統一国家を樹立する』
そう言っているという。
そして、その際にモーニング娘。を除くハロープロジェクトの植民地支配も合わせて発表された。
17マングース西浦:02/02/01 07:52 ID:DObrrRuK
「モーニング娘。統一国家…って…」
絶望的な状況だが、市井の表情に暗いものは無かった。
市井は続ける。
「でも、つんくさんは最初に一つ大きな失敗をしたね…」
「何ですか!?」
「世界に進出する前にハロプロを完全に屈服させられなかったってこと」
はっとする4人。
「へ…平家さんは無事なんですか!?」
ここで始めて市井の表情が暗くなる。

「無事は無事だけど…ある意味死んでるのと同じだね」
「どういうこと?」
市井は新聞を差し出すことで答えた。
「『私、平家みちよはモーニング娘。統一国家を支持します…』…って何これ!?」
「へ、平家さんがこんなことを言うはずが無いよ!!」

「かつてのグランプリ受賞者が利用されてるんだよ…全く酷いことを…」
市井の表情が更に曇る。
つんくら首脳部はかつての勝者に公開の場でモーニング娘。を称える内容の
発言をさせることで国家の正当性を強調しようとしているのだ。
絶句する4人。

「助けようよ…平家さんを…今の私達には私達をまとめてくれる人が必要だよ」
柴田が沈黙を破った。
「でも…どうやって!?」
「私達には力がある」
「そうか…この力で」
「…じゃ、じゃあまずハロプロのみんなに連絡を取ってみるよ」
村田が電波を発信したが、連絡が取れたのはカントリー娘。になったばかりという
あさみという名の少女ただ1人だった。
仲間だったりんねは突然始まった侵攻に脅えて逃げ出し、行方知れずになってしまったという。
りんねは体の4分の3が馬で出来ており臆病な動物だった。
そしてこのあさみは体の3分の2が犬で出来ており仲間意識が強い。
心強い新戦力となった。
稲葉貴子やシェキドル、三佳千夏などは既に各国に飛んでいるらしい。

「戦力は5人か…」
「私も出来るだけ支援させてもらうよ」
市井の情報支援も受け、平家救出作戦が始まった。

それからしばらくして市井がUFA本部の見取り図を持って来た。
なぜこんなものを…メロン記念日とあさみの5人は怪訝に思ったが市井は答えなかった。
それだけは教えられないという。
市井はモーニング娘。との間に特別なルートを持っているらしい。

村田と斉藤の2人が比較的警備が緩い東側の崖を登って地上から内部に侵入、
あとの3人が下水道を通って内部に侵入し、直接平家のいる謹慎室に潜入することとなった。
18マングース西浦:02/02/01 23:05 ID:QKfeEKyJ
救出作戦は肩透かしを覚えるほど簡単に成功した。
地上から潜入した2人が電撃攻撃と全身の99%が金属で出来ている体から繰り出す無双のパワーファイトで
警備員の気を引いている隙に大谷、柴田ら3人が下水道から体の3分の2が犬で出来ているあさみの
鼻を利かせて平家の部屋の真下の位置まで移動し、
「ここだワン!」
とあさみに促された大谷が火炎で床を溶かし直接平家の部屋に潜入、まんまと救出に成功したのである。

――つんく評議会議長執務室
つんく議長の部屋には平家の脱走に焦るつんくと後藤がいた。
「後藤、警備は一体どないなっとんねん?」
「ごめんなさい、まさかこんなことになるなんて…ちょっと昼寝してるあいだに…」
後藤はただただ怒るつんくに謝り続けていた。
この救出作戦の大成功に自分が関わっているということは市井と後藤、2人だけの秘密だった。
市井にUFA本部の見取り図を流したのは後藤だったのだ。
(つんくさんごめんなさい…でも、市井ちゃんは今でも私の大事な仲間なんです)
その時、中澤が入室してきた。
「つんくさん、やってもうたって感じですね」
「中澤、ノックしてから入って来い言うとるやろ」
「そんなこと言うてる場合やないでしょ」
言い返せないつんくに更に中澤が言う。
「平家も今はアレやとは言うてももともとグランプリはグランプリ…
 やっぱ処分しといた方が良かったんや無いですか!?」

「でもな…『平家』言う名前は惜しい…」
「そないなしょうもないこと言うてるから逃げられたんちゃいます!?」
「うるさい黙っとけ…く…時間が無い言うのに…」
つんくは最近違和感を覚えるようになった自分の左胸に手を当てた。

即日平家と、メロン記念日の手配書が全国の自治体に配られることになった。

――一方、救出作戦に成功したハロプロメンバー達
救出作戦に成功して以来平家はまだ一度も口を開いていなかった。
「平家さん…私達を導いて下さい」
「…」
柴田の呼びかけにも沈黙が続く。
「いくらモーニング娘。が大きいからって…こんなの絶対に間違ってる…ですよね!?平家さん」
まだ平家は何も言わなかった。
一度自分かわいさにメロン記念日を見捨てた自分…そのような負い目のある平家は
この4人に堂々と顔見せ出来る気持ちでは無かった。

「みっちゃん、これ食べなよ」
そんな時、市井が平家に何かを差し出した。
突然のことに一瞬驚いた平家だったがそれを受け取る。
見てみるとそれは透き通るように赤い色をした木苺だった。
平家は意を決したようにそれを口の中に放り込む。

「…うわっ!すっぱ!なんやのこれ!?」

「あはははは!!」
平家が初めて口にした言葉に、そこにいた全員が笑いに包まれる。
その笑いが静まった頃、市井が再び口を開いた。

「それが、今のハロープロジェクトの味だよ」
「ハロプロの味?」
市井は微笑んで続ける。
「今はまだ小っちゃくて、すっぱくて、アクが強くて食べられたものじゃない…
 その木苺でもあと数ヶ月も自然の猛威に耐えれば甘くておいしい木苺になる。
 でも、ここでしおれたらもう二度とおいしい木苺にはなれないんだよ」
「…」

「平家さん、これまでのことは全部忘れて下さい。私達はこれからなんです」
斉藤の言葉に平家は感謝するように一度頭を下げると、
ようやく話し始めた。
「…ごめんね…みんな…私弱い子やった…今からでもええならできる限りのことさせてもらうわ」

この日、ハロープロジェクト独立正規軍は旗揚げしたのである。

メロン記念日がイベントの為にインドへ旅立ったのと、オーストラリア戦線にいた
三佳千夏が大怪我を負い戦線を離脱したのは同じ翌日のことだった。

あさみ
カントリー娘。小さい。体の3分の2が犬で出来ている。元気がいい。
三佳千夏
第一次妹分計画合格者。足が長い。再起不能になったからもう出ない。
19マングース西浦:02/02/01 23:08 ID:QKfeEKyJ
第4話 『烙印』
インドに渡り稲葉部隊と合流し戦力を補充した独立正規軍のメロン記念日柴田大谷と平家は
買い付けた武器の受け取りに向かっていた。
「平家さん、新しい武器がみんなに渡れば少しはモーニング娘。と戦えるようになる!?」
「どうやろね…今回買い付けたのは連発式のガス銃やから今までの銀玉鉄砲よりは
 かなりマシにはなるやろけど」

質問に答えながらも平家は大谷に不安を与えないように気遣っていた。
どう考えてもこちらとモーニング娘。では戦力が違い過ぎる。
相手のモーニング娘。はステルス戦闘機や誘導ミサイルを完全配備しているのだ。
CD売り上げにしてもモーニング娘が100万枚超なのに対して独立正規軍は全員分合わせても
10万枚に届くかどうかの数字でしかない。
その為の今回のインドでのイベントではあるのだが…
単身オーストラリアでイベントを決行した三佳千夏は客が3人しか集まらなかったダメージで
再起不能となり戦線を離脱してしまっている。

パパパパパ…
「すごい!平家さん、ガス銃すごいって!まず銀玉鉄砲とは音からして違う感じ!」
「銀玉鉄砲は『ビーン、ビーン』いうバネの音やったからね」

「…」

はしゃぐ大谷の一方で柴田はガス銃を見たまま固まっている。
「どないした?」
声を掛けられた柴田はようやく視線を動かすと、
咎めるような表情で口を開いた。
「これ…この銃T&M。カンパニーの銃じゃないですか」

T&M。カンパニー(タンポポアンドミニモニ。カンパニーまたの名をトレードアンドマーチャンダイズ
カンパニー)はモーニング娘。の矢口真里が代表を務める日本最大手の総合商社である。

「あ、ほんとだ。T&M。って書いてある」
大谷も言われてようやく銃身に刻まれた製造社名に気付く。
一応それを消そうと表面を僅かに削った後はあるが、まだ充分社名は確認出来た。
「なんでT&M。カンパニーなんかから武器を買ったんですか!?」
「柴田、あんたはまだ若すぎる」
「だって…T&M。カンパニーは敵じゃないですか!」
柴田には理解できなかった。
なんで戦っている相手から武器を買わなければならないのか…

「柴田、私だって国産のワインがおいしいんやったら国産のワインでええとも思う。
 でもな、悲しいことに国産のワインってヨーロッパのワインと比べると味が落ちんのよ。
 そやから私はわざわざイタリア製のワインを買ってるの…分かるね!?」
「だからって敵から武器を買わなくても…」
「…柴田、人間を敵味方、たったふたつの簡単なレッテルで分けたらあかんよ。
 レッテルで言えばあんたもモーニング娘。も正確には同じハロープロジェクトの一員なんやから」

柴田はもう言い返せなかった。

――T&M。カンパニー社長室
T&M。カンパニーの若き代表矢口真里が受話器を取って誰かと話をしている。
「今回はありがとう…ホントのこと言うと経営マジで厳しかったんだ」
『いいんだよ…気にしないで。でも矢口さんも大変だね』
「…うん、大体いきなりつんくさんから『お前は明日から社長だ』とか言われてさぁ、
 …そんなの無理に決まってるっつーの!もうね、アホかと」
『はは…』
「でしょ!?だいたい表向きには『T&M。カンパニーは矢口が勝手に作った会社です』
 ってことにされてるけど私一回も社長になりたいなんて言ったこともないし思ったこともないんだよ」
『はは…まぁでもこれでハロプロの全員がモー娘。の敵じゃ無いって分かったでしょ!?』
なかば上ずっている矢口の声と比較して
話している相手の声はあくまで冷静だった。なげやりに近いと言ってもいい。
「う…うん、ありがとう。本当に感謝してる。じゃあまた連絡してよ」
『うん、いい話があったらね』
「待ってるからね、りんねちゃん」
ガチャ…

「フ…」
『りんねちゃん』と呼ばれた女性は受話器を下ろすと自嘲気味に特徴的な厚い唇の端を歪めた。
「やっちゃったよ…ついに…」
りんねは長い間牧場で働いて来て、ようやくアイドルとしてデビューすることが出来た苦労人である。
芸能界デビューさえ出来れば華々しい世界だけが待っている…しかし、現実は厳しかった。
思ったほどCDは売れず、しばらくするとこのハロープロジェクトの迫害が始まったのである。
りんねの精神は疲れ果てていた。
そんな時出会った相手にりんねは自分の運命を委ねてしまったのだ。
りんねは体の4分の3が馬で出来ており人一倍、いや馬一倍足は速いが臆病な動物だった。
20マングース西浦:02/02/01 23:10 ID:QKfeEKyJ
――再度、インド
この頃、ハロプロ独立正規軍は夕方のイベントに向けての作戦会議を進めていた。
「それじゃ作戦説明を始めます。夕方5時からメロン記念日がイベントを行う会場はここ、
 そして会場に向かう道の途中にモーニング娘。軍が築いたらしいでかい砦があるみたい。
 ここを破らんことにはイベント会場まで辿り着くことも出来んわけ」
よーし…そう肩を鳴らしたメロン記念日の横から口を挟んだ者がいた。

「あのさぁ、この作戦はうちらに任せてもらいたいんやけど」

稲葉貴子だった。
稲葉貴子は体の半分が振り付け師で出来ておりダンスの達人ではあったが戦闘力に関しては未知数である。
「稲葉さん大丈夫なんですか!?」
斉藤が心配そうに聞くのを見て笑うと、稲葉は答えた。
「作戦さえ実行できればええわけやろ!?それやったら別に絶対に主人公である
 メロン記念日が戦わなあかんいう決まりは無いわけや…ちゃうか!?」
「それは…そうですけど…」
返す言葉の無いメロン記念日を見た稲葉は自分の部隊から1人の少女を呼び出した。
呼び出された少女はわけも分からず不安そうな表情でキョロキョロしている。
「今回の作戦はこの子1人で充分や」

「えーーー!?」

少女が驚きの声を上げる。
「この子『えーーー!?』とか言ってますよ」
しかし稲葉は安心させるようにその少女の肩に手を乗せる。
「この子は『松浦亜弥』言うて、ハロプロの期待の新人なんよ」
「だからってたった一人でなんて…」
「あんたらかてたった4人でルナセア隊を撃退したんやろ?それやったらこの子だって出来るはずや。
 あんたらはイベント控えてんねんから、のんびり休んどき」
松浦は訴えかけるように無言で首を横に振っているが稲葉は気付かないふりをしている。
どう見ても作戦は成功しそうも無い…

しかし平家は
「分かった。じゃああっちゃん、松浦さん、頼むわ」
そう言って作戦会議を終えてしまった。

それだけで作戦会議を終えて司令官テントに向かおうとする平家を追いかけて柴田が呼び止める。
「なんでですか?」
「なんでって何が!?」
平家は柴田が何を言っているのかも分からないような顔をしている。
「何がって…あの松浦さんで本当に大丈夫なんですか?」

「大丈夫やって。稲葉のあっちゃんはああいう時にいい加減なことを言う人やないし」
稲葉貴子は体の半分が振り付け師出来ており、モーニング娘。軍の参謀長であり
乗り越えなければならない師の夏まゆみには
まだ遠く及ばないものの陣形(フォーメーション)のエキスパートである。
平家の作戦参謀格だった。
平家は作戦行動面において稲葉に全面的に信頼を置いている。
「でも普通に考えてあれじゃ勝てないと思います」
「そう?でも私体動かすんは得意やないからこういうのはあっちゃんに任せるって
 最初に約束したんよ」
平家は体の90%が平家物語で出来ている為に矢玉の飛び交う前線での戦闘には向かない。
最終的には必ず負けてしまうからだ。
「松浦さんは若すぎますよ」
「柴田、人は見掛けや歳で判断したらあかんよ。それにあんたらもイベント控えてるんやから
 リハーサルとかやっといたほうがええんと違う!?」
柴田は言い返さなかったが、少しでも危険になればすぐに救出に向かうことに決めた。
21マングース西浦:02/02/01 23:13 ID:QKfeEKyJ
それから数十分後作戦が開始され松浦が不安な足取りで砦に近づいて行く。
松浦は体の80%がなんか雑誌の裏表紙の裏の通販とかでよく売ってる
幸運の鉱石みたいなので出来ているが、実戦の経験も無ければまだ特別な訓練も受けていない。
松浦の不安げな瞳には巨大な砦が不気味に映っていた。
それでも松浦は必死で歩を進めていく。
(松浦さん…気をつけて…)
祈る柴田。
その時だった。

「あはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは」
「わっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっ」
砦の到るところから不気味な笑い声が響く。

「!…こ…こわ…」

(怖いです稲葉さん…)
不安げな表情で振り返る松浦に、稲葉はしかし更に前進するように促した。

「だ…大丈夫なの!?」
戦況を見守るメロン記念日。
リーダー格の村田が不安げに口を開いた。
「分かんないよそんなの」
大谷が唇をとんがらせて不安げな村田に答える。
今回の作戦は新加入の稲葉貴子が半ば強引に決定させてしまったものであり、
メロン記念日には出番すら与えられなかったからだ。
(大丈夫なはずが無いよ…)
柴田は遠い松浦の背中に真剣な視線を向けていた。

タタタタ…
ついに不気味な笑い声を切り裂くように砦の中段程の場所から銃声が響いた。
銃声は連発式のライフル銃のものである。
「危ない!」
柴田が茂みを飛び出し、松浦の救出に向かったその時だった。

「こ…こわーい!!」

ダダダダダダダダ…
松浦の両手の指先から砦に向けいくつもの銃弾が吐き出される。
砦の壁面が次第に崩れ、敵からの銃声も止んだところで松浦が屈み込む。
独立正規軍のメンバーが息を呑んで見守る前で、膝の皿のあたりが開口した。
それと同時に大声を上げる松浦。
「ミサイル発射!」
ボッ…
その声に続いて発射された脛の中に収納されていたミサイルが、砦を大破させてしまった。

「な…なにこれ…」

一瞬の出来事に唖然とする柴田。
松浦は最新型の妹分である。両手は機関銃で両膝には3発ずつ対空、対地空ミサイルが塔載されている。
たった一人で一個中隊並みの戦力を持っているのだ。
問題は松浦は気が弱く、それを使いこなせないという一点だった。

「そ…そんなことより、今ので怪我した人とかいたらたいへんだよ!」
斉藤が大破した砦へと駆け寄る。
いくら敵とはいえむやみに人の命を奪うことは出来ない。
斉藤に促されるように全員が砦を駆け上る。

しかし、そこにあったものは意外なものだった。
「あはははははは…」
この不気味な笑い声は砦の到るところに設置された笑い袋から発せられていたものだったのだ。
しかも、砦を守っていたのはライフル銃で松浦を威嚇した兵士ただ一人だけだった。
笑い袋は戦力を巨大に見せるためのものだったのである。
その兵士は左足に怪我を負っていたが命に別状はなかった。
22マングース西浦:02/02/01 23:15 ID:QKfeEKyJ
この兵士は、上官が作った作品を守るためにハロプロ軍にたった一人で立ち向かおうとしたのだ。
勝てるか勝てないかなどということは最初から考えてもいない。
勝利を約束された戦いなど存在しないのだ。
兵士はただ勝利を信じ前線で全力を尽くすだけ…

そう、今のメロン記念日はデビュー出来るかどうかも分からない先の見えない暗闇の中で
前線で、全力を尽くし目の前の一つ一つのイベントで着実に成功を重ねていくしかないのだ…
その行為が善か悪か!?それを決めるのは勝手な後世の歴史家である。

この日のイベントは稲葉がフォーメーションの監修をつとめ、大成功に終わった。

稲葉貴子
メンバー募集中。体の半分が振り付け師。稲葉部隊のリーダー。年寄り。前歯が大きい。
松浦亜弥
まだデビューしていない。ラッキーストーンで出来ている。ラッキーガール。期待の新人。

矢口真里
モーニング娘。会社を押し付けられた。粘土で出来ている。背が低い。あわてんぼう。
石川梨華
モーニング娘。黒い。吉澤と一緒に南米に行かされて不満。弱い。ずるがしこい。