元気爆発メロン記念日

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15マングース西浦
「何するんですか!!」
もしあの厳しい4ヶ月の特訓が無ければ今の砲撃で死んでいたかもしれない。
斉藤が憤りを露わにする。
「仕事なんでな…悪く思うな。お前ら全員始末するように言われている」

「な…一体どういう…!しまった!」
気付いた時は既に遅かった。
全身の99%が金属で出来た斉藤の体は既に膝のあたりまで砂漠の砂に沈んでしまっていた。
「な…なんでーー!?」
体の半分程度が金属で出来ている大谷も、村田も砂に足を取られている。

「はははは!!見たか!」
真矢は背中に下げていた二本の長い棒を手に取るとそれで砂漠の地面を叩き始めた。

「そ…そんな…」
真矢が地面を叩くことによって砂漠に地震が起こり、それによってさらに
斉藤らの体が砂に沈んでいくのだ。斉藤は腰のあたりまで沈んでしまっている。
このままでは窒息死は必至である…その時、
「えーい!」
「うおっ!」
地震が止まった。
真矢の手を止めたのは柴田の飛び蹴りだった。
柴田は唯一生身なので砂漠に足を取られずに済んだのだ。
「小癪な小娘め!」
横薙ぎに払われた棒を素早く避ける柴田。

その時、柴田の口からとんでもない言葉が!
「もう止めて下さい。イベントに遅れちゃいます」

(な…なんだって?)
真矢の戦いを眺めていた石黒が感嘆の息を吐いた。
(こんな時にもイベントのことを考えてるなんて…所詮ただの地方回りのイベントなのに)

「だ、黙りやがれ!!俺達は傭兵部隊だ!!信用を失ったら飯の食い上げなんだよ!」
なりふりかまわず長い棒を振りまわす真矢。
しかし柴田はリズム感よくそれをかわしていく。
真矢の棒はかすりもしなかった。
「ハァ…ハァ…」
流石の真矢も次第にスタミナが切れてくる。
「く…くそぉ…」
真矢が力を振り絞り棒を振り上げようとしたその時だった。

「あんた!もうやめなよ!」

石黒の声が砂漠に響いた。
「もういい…真矢、あんたの負けだよ」
「う…うるせえ…俺は負けてねえ…いや、負けるわけにはいかねえんだ…」
真矢の目に宿った闘志はまだ消えていない。
「傭兵は信用が大事ったって失った信用はまた取り戻せばいい…
 …大の男が面子なんか気にしてるんじゃないよ」
「め…面子のためなんかじゃねぇ…この仕事の報酬がパアになったらお前の
 腹の中にいる子供はどうす…はっ!」
真矢がはっとしたように口を閉じた。

根が優しい真矢は乱暴者を演じることでその優しさを隠していた。
優しい男など軟弱者だと常に馬鹿にしていたからだ。
音楽の道を断念し傭兵になったのも実は仕事が無かったからでも、
才能に限界を感じたからでも無かった。
傭兵が一番手っ取り早く家族の為に大金を稼げる仕事だったからだ。
しかし真矢は常に
『俺は暴れるのが好きだから傭兵になった』
そう言っていた。
そんな真矢が極限状態でつい石黒への愛情、つまり本音を人前で口に出してしまったのだ…

「あんた…私のことをそんな風に…」

石黒の両目に涙が浮かんでいる。
「彩…素直になれなくてごめんよ…」
真矢も同様だった。
「いいの。いいのよ…」
人目をはばからず抱き合う2人。

「夫婦愛かっけー…」
その一部始終を吉澤は物陰から見ていた。
メロン記念日の戦い振りを見届けた吉澤は我に返る。
「…おなかすいたしもう帰ろうっと」
吉澤はそのまま日本に帰っていった。

「あの…私達車が無くなっちゃったんですけど…」
取り残された柴田が遠慮がちに2人に声を掛ける。
「私達の車勝手に乗っていっていいよ」

石黒に言われた通り車に乗りイベント会場へと向かう4人。
この日のイベントも大成功に終わった。

登場人物

飯田圭織
モーニング娘。ハロープロジェクト評議会議員。背が高い。チタン製。仲間思い。老けている。
吉澤ひとみ
モーニング娘。背が高い。半分くらいセラミック製。空を飛べる。強い。馬鹿。
真矢
ルナセア隊隊長。太鼓が得意。太っている。
石黒彩
ルナセア隊副隊長。なぜか真矢と結婚している。妊娠している。