陣営は村から20分ほどジープを走らせれば着く場所にあった。
陣営について見廻っていた石黒が見知らぬ顔が1人部下に混ざっていることに気付く。
石黒は珍しい物を見るような顔で陣営をうろつくその少女に声を掛けた。
「あんた誰?」
「吉澤ひとみです。よっすぃーって呼んで下さい」
石黒はすぐにそれがモーニング娘。のメンバーの1人ということに気付いた。
「あ、あんた、こんなとこまでどうやって…」
「飛んできました」
吉澤は体の半分以上が軽量な硬質セラミックで出来ており、
『かっけー』が口癖だけに鳥の『カッコウ』の10倍くらいのスピードで空を飛ぶことができる。
「ちょ…いいからちょっとこっち来て」
何かに気付いたのか石黒が慌てながら吉澤の手を引く。
物陰に隠れて人目を確認し、吉澤に静かに言葉をかける。
「…あんた、絶対に真矢に見つかったら駄目だよ。あいつは変態なんだから…
モーニング娘。と見たら手当たりしだいなんだ。私だってあいつから無理矢理…」
「え!?」
石黒は一瞬つまらないことを言ってしまった、という表情を見せたが
すぐに表情を戻すと、吉澤に視線を戻した。
「まあ来ちゃったものはしょうがない…終わったらちゃんと日本に送ってあげるからさ」
「私日本から飛んできたんですよ」
「はいはい」
石黒はまさか吉澤が本当に空を飛んできたとは思わない。
「奴等が来ます!」
見張り役の声が陣営に響いた。
「じゃあ分かったね!?ちゃんとここに隠れてるんだよ」
「はい」
石黒は言い残すと、戦闘配置に着くためにその場を離れた。
――一方、車内のメロン記念日
「なんだ?あれ!?」
最初にリーダー村田が前方300メートルにある敵陣営に気付いた。
「何か嫌な歓迎ムードなんだけど」
続いて、斉藤が自分達に向けて狙いを定めているバズーカ砲に気付く。
「や…やばい!」
ブォォーー!!
大谷が炎を吐いて移動用のバスの側面に大穴を開け
そこから次々と脱出した。
砲弾が無人のバスを直撃したのはその直後だった。
「やるな…この俺様のバズーカ砲をかわしやがるとは」
隊長真矢が姿を現す。