42 :
牧野唯:
そろそろ、日付も変わろうという頃。
うとうとしていた矢口は、がくん!と頭を落とした。
「ぅわ」
「真里っぺ・・・そろそろ寝たら?」
石川の声に、目を覚ました矢口は、「うーん」と言いながら立ち上がる。
「じゃ、私も寝るわ」
一緒に立ち上がった石川を、安倍はロウソクに消化蓋をかぶせながら見送った。
「おー。暗いから、気をつけてよ」
去っていく二人の足音を聞きながら、安倍は心の中で叫んでいた。
(夜はこれから。これからだぜ!!きっと、矢口は暗い中だと、ぜってー怖がるから・・・
そこに私がそっと、ホットココアなんか持っていったら・・・!)
よし!と一人で頷いて、安倍はいそいそとキッチンへ入っていく。
(えーと、ミルクあっためて・・・。砂糖は多めかな・・・)
暗い中でも、迷う事なく砂糖の壺を手に取れる安倍。さすが日本一!さすがけもの!!
一方リビングに残された二人は・・・。
「真っ暗だねぇ」
「よっすぃー、暗いの平気?」
「んー、別に・・・」
「うそぉ!いっつも、ちっちゃい電気つけて寝るくせにぃぃ!」
「えー、大丈夫だって!ひとりの時はやだけど・・・」
「あっ、そぉなんだぁぁ。ふぅーん」
「・・・わ!」
「どぉぉーしたの、よっすぃー」
「なんか、今、耳に触った!」
「えぇ?何それ」
「う!今度はほっぺに・・・!!」
「うわーやだー!!お化けじゃないのぉ?台風の時はよく出るってゆーしさぁ・・・」
「あー、分かった、ごっちんでしょ」
「遅っ!!」
「やめろよー」
「やめないよー」
「もーくすぐったいじゃん」
「えぇー、どれどれ。こしょこしょこしょ」
「あはははははは。やだ、後藤ぅ」
「お前らぁ!!」
43 :
牧野唯:02/02/03 11:36 ID:SG/+r1i2
ついに、きっちんの安倍が叫んだ。
「暗闇の中でじゃれんなよ!声だけ聞こえると、なんかヤ!!」
「はぁーい」
仕方なく立ち上がった後藤は、当然のように吉澤の腕を取る。
「じゃ、私達も、もー寝るわ」
「オヤスミ、なっち」
「オヤスミ、頑張ってねー」
(あいつら・・・もしかして、私が何しよーとしてるか分かってる?)
二人の声を聞きながら、安倍はちょっと考え込んでしまうのだった。しかし・・・。
「うわぁぁ!」がっちゃーん!!
「ちょっと、よっすぃー!危ないってぇ!」
「だってなんかあったんだもん!足元に!!」
「もー。ちゃんと気をつけなきゃだめじゃん!ほら、私につかまっていーから!!」
「あ、ありがと。ごっちん」
「お前ら!早く寝ろ!!」
階段に向かって吠えた安倍は、急いで作業を再開したのだった。
「よっすぃー、今日一緒に寝る?」
「え。ほんと?」
(私・・・やだ、この家にいんの・・・)
安倍は、沸騰しはじめたミルク鍋を見ながら、こっそり呟いた・・・。
44 :
牧野唯:02/02/03 11:45 ID:SG/+r1i2
ようやくホットココアを完成させた安倍は、いそいそと矢口の部屋に向かっていた。
(待ってろ、矢口!今私が・・・!!)
ふふふ、と笑いを浮かべながら、階段を上っていった安倍の目の前で
「りか〜!!!」
ばたん!ちドアを開けて、矢口が石川の部屋に飛び込んでいったではないか!!
(うそ!何、これ!!?)
慌ててトレイを床に置いた安倍は、石川の部屋のドアにべたっと張り付く。
「りか〜!」
「何、真里っぺ・・・」
「い、い、いっしょに・・・」
「あーもー。ほら、入んなよ」
「やったぁ」
(嘘だ!!)
がっくりと項垂れた安倍はもう、自分を責める事しか出来なかった・・・。
(ばかばか、私の馬鹿!!)と・・・。
第二話 ■完■
第三話に続く・・・予定