モーニング一家ー安倍ちゃんの誕生日

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38牧野唯
びしょ濡れになった安倍が、家の中に戻ってきたのは、それから1時間後。
5人は、石川が作った朝ご飯を食べながら、無言でTVを眺めていた。
「よし!それじゃ、計画をたてる!!」
突然そう言って立ち上がった安倍は、分厚いファイルを取り出し、どん!と机の上に広げる。
「これは・・・!」
「そう。モーニング家イベントマニュアルその3、緊急編・8!台風マニュアルだ!!」
おぉ〜!!と4人は、キレイにファイルされたそれを覗き込んだ。
「すごーい、なっち・・・」溜息まじりに呟く吉澤。
「いつ作ったんだよ、これ・・・」同じく呟く矢口の隣で、石川はぽつりと
「なっちって、ヒマだよね・・・」
はっと凍りつく4人!
矢口は思わず息を飲んだ。・・・で、慌てて口を両手で押さえる。
(うわぁぁ、梨華ちゃん!!言っちゃったぁぁぁ!!)
私知らない!と視線をそらせた後藤の隣で、吉澤は顔色ひとつ変えずに成り行きを見守っている。
沈黙がその場を、4秒ほど支配した・・・。
「で、何するの?これ」
全く変わらない口調でそう続けた石川に、安倍もようやく我に返る。
「あ、ああ・・・まず、私と梨華ちゃんが外担当。板貼る続きと、車庫からロウソク持ってきたりするって事で。
 ごっちんは買い物担当な。ケッコー多めに買い置きしといて」
「私は私は?」
「あ?矢口は・・・じゃあ、朝ご飯の皿洗い!」
はぁーい、と矢口が呟くと、
「じゃ、私は買い物付き合うね」という吉澤。
「えぇぇ!?よっすぃー来るのぉぉ!?」
露骨に「嫌っ!」っていう口調で後藤が叫ぶ。
「何。大丈夫だって、後藤」
「荷物もちにもなんないじゃん、よっすぃーだったらぁ」
「じゃ、私が運転するからっ」
「ほんとに大丈夫ぅ!?よっすぃー、風に飛ばされたりするんじゃないのぉぉ!?」
「はいはいはいはい!!」
ぱんぱん、と手を叩いて安倍が立ち上がった。
「そーゆー事で!次の集合は、昼ご飯の12時!それまで解散!!」
はぁーい・・・と5人はそれぞれの持ち場へ移動する事になったのだ。


39牧野唯:02/01/31 18:36 ID:IRxU5XXl
そして夜。(突然)
外はますます風が強くなり、ついに停電まで起こってしまった・・・。
「まっくら・・・」絶望的な声で呟いたのは、クッションを両手で抱えている矢口。
安倍の耳がぴくりと動いた!
「見ろ矢口!ほら!!」
しゅ!とマッチを擦ると、安部はロウソクに火をつける。
「うわー」「きれーい」
「そうだろ?こーゆー時こそ、遊びの精神が大切ってゆーかな・・・」
それはクリスマス用のキャンドルスタンドだった。
下のロウソクの熱で、上の飾りがくるくる回るやつ。
りんりんりん、と素敵な音もなっている。
「すごーい!なっちぃ」
矢口は大喜び。大きな目を、さらに大きくしてキャンドルに見とれている。
暗闇の中で安倍はもう、とろっとろだった。
(つ、つかんだぁぁ!!)
心の中で、思わずガッツポーズだ。
この時まで、安倍は人生最高の喜びをかみ締めていたのだった・・・。しかし・・・。