モーニング一家ー安倍ちゃんの誕生日

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24牧野唯
安倍は上機嫌だった。
それはそうだろう、今彼女の運転する車の助手席には、3人の手によって着飾れた矢口がいる。
そして車はもちろん海に向かっているのだから。
「ねぇ、なっちぃ・・・」
シートにちっちゃく、借りてきた猫も真っ青なくらい大人しくおさまった矢口が小声で恐る恐る安倍を仰いだ。
「うん?」
「・・・・・誕生日プレゼント、私って、さぁ・・・・」
「うん」
「なんか、他にほしいものとか・・・」
「ないよ」
「や、だって、こんな、さぁ・・・」
「最高じゃん!矢口、忙しくてなかなかこんな機会ないんだしさ!家でなんかすることはあっても
 遠出ってのは」
にこ!ときらきらビームを発射されて、さらに矢口は恐縮する。ちなみに彼女らがどんな仕事
に就いているのかは謎であるが、矢口はここでもやっぱり多忙らしい。
「で、でもぉ・・・」
「え、もしかして、やだった?」
「え!?いや!?そんなことないけど!」
「あのさ、見せたいものがあるんだ」
一瞬耳を後ろにたらした安倍だったが、すぐに立ち直るとさらに深くアクセルを踏み込む。
時間が時間なだけの道は空いていて、絶好のドライブシチュエーションだ。
「なに・・・、あ」
石川の見立てたスリムパンツの、ほっそい腰のあたりで、バイブにしていた携帯が矢口の言葉を止めた。
ポケットから出して確認すると、画面には「後藤」の文字。
25牧野唯:02/01/26 02:24 ID:yOLj/4CU
「もしもし・・・後藤?」
『あ、真里っぺ!どう?』
「どうって・・・どうもこうも・・・」
『ちゃんと奉仕してる?』
吉澤に代わったらしい。
(奉仕ってなんだよ奉仕って!)
ちら、と横の安倍を盗み見ながら、「今まだ車の中だけど」と返す。また後藤に戻って、
今度は小声でこう言ってきた。
『悪いとは思ってるんだよ、おしつけちゃってさぁ。でもたまにはさ、ね?なっちいつも
 私達のためにいろいろ企画してくれるし、恩返しと思ってここはひちつ』
「もぉいいけど・・・」
なんかなっち超楽しそうだし、と心の中で付け加える。そうだ、なっちが楽しいなら。
自分とドライブごときでなっちがこんな嬉しそうな顔してくれるなら・・・!
「・・・・ふふふふ」
『・・・真里っぺ?』
「ああごめん、今ちょっと意識飛んじゃった★ま、朝ご飯までには帰るから・・・帰る、よな?なっち・・・」
「もちろん」
『ん、じゃ頑張ってね!』
「後藤その励まし方はどうかと」
『だって、・・・・え?何梨華ちゃん・・・』
後ろの方で石川の声がかすかに聞こえたと思うと、後藤が言った。
『真里っぺ、梨華ちゃんが帰りに朝ご飯の材料買って来てって言ってる』
「・・・・ああ、うん。…わかった。安倍に言っとく」
矢口がそう答えた瞬間。
え、石川の用ってそれだけ?それで電話してみろって言ってたのー?という至極平和な吉澤の問いかけを最後に、
通話は絶たれたのだった・・・。