ホバーで出発するとの連絡があってからすでに30分。
そろそろ到着してもよい頃だ。
おっ通信がはいったわよ。
「街に到着したよ。でもねぇ、おかしいんだよ。誰も居ない。ケイちゃん?映像届いている?」
ヤグチの言葉 どおり街に人の姿が見えない。
映像の隅でブタの鼻をしている約二名が居るがこの際無視する。
「まずは開発事務所へ行ってみて。そこまでの間にも誰か居ないか注意して。
ただし一般の住宅への進入は避けるように。」
あたしは短く指示を出す。
開発事務所まで結局猫の子一匹見つけられなかった。
開発事務所は5階立てだが結構広い辺が200mぐらいあるビルが2つある。
ヤグチは自分の分隊を右側、ミカの分隊を左側の探索にあてる。
最初1階を分隊全員で捜索したが効率の悪さに気付きヤグチは、さらに分隊を2人一組に分けた。
「そこの2人2階を探索して、ののとあいぼんは3階、あなたは私と4階。
何も発見できなかったら5階のおどり場へ集合。
何かあったら無線で呼ぶ。いいね、みんな。」
こくりと肯くと一斉に階段を駈けあがってゆく。
ののとあいぼんは、とても立派な部屋へ入り込んだ。ここの責任者の部屋だろうか?
床はマホガ二ーがに貼られ毛の長い赤絨毯が敷かれ、壁は渋い一面のオーク貼である。
「おんなのこーはみんなまっーてるゥひぃなぁまつぅり〜」
皆と別れてからノノはずーと歌を歌いつづけとるのや。
本当にお子ちゃまやなぁ。ちょとからかったろ。
うーんと、よっしゃ、あのクロアゼットの中に隠れたろか。
アイボンは、先廻りすると大きなクロアゼットの戸をそっと開けてもぐりこむ。
「…。あいぼん?あれっ?あいぼんはどこれすか?」
うへへ。探し始めたで。
って、何で引出しの中を探すのかいなぁ。
そんなとこにはいらんて。
壁のスイッチいじり始めよった。
部屋の電灯がついたり消えたり繰り返す。
やがて、壁の一部が開き幾つものモニター群が姿をあらわした。
「あっ、ヤグチさんら。ミカさんもいる。てへてへ。これで寂しくないのれす。」
ののは椅子に腰かけると背負っていたリックから、チョコレートを出して食べ始める。
なんや、緊張感のないやつやな。せやけど旨そうやな。一つ貰いにいこかな。
ん?なんやらこっちを見とるで…
「あいぼん、みっけなのれす」
「なんや、見つかってしもうたのか。」
クロアゼットから這いだした。
「なんで見つかったん?」
「ののの目はごまかせないのれす」
見るとモニターの1つに自分が大写しになっている。
「おもろいなぁ。皆の姿が丸見えやん。」
「あいぼんもチョコレート食べましゅか?」
「うん、ちょうだい。」
ののがリックを持ちかえるときにスイッチの一つに微妙にあたってしまっていた。
それは、侵入者通報ボタンであった。
4階はまるで迷路の様だった。
大きな部屋から小さい部屋へ続くドアがいくつもある。
ドアに向うたび交代で援護姿勢をとる。
何個か目のドアに近づいたときに多数の足音が響いてきた。
突然ドアが焼かれ中から幾筋もの光条が差し込んでくる。
「…!」
突入しようとドアの横に立っていた陸戦隊員の顔が硬直する。
驚きに手にしていたレーザーのトリガーが引かれ窓ガラスをうち抜いた。
あと少しでも撃つタイミングが遅れていれば、彼女はハチの巣になっていたところだ。
援護しようと机を盾にして構えていたヤグチも声も出せなかった。
一瞬の驚き。しかしその驚きも次の斉射で冷静な判断力がよみがえった。
無線で呼びかける。
「みんな、早く建物から出て。ミカ、応急陣地になりそうな場所を探して」
ドアが蹴破られる。
兵士?いや人型のアンドロイドだ。
真横から至近距離で陸戦隊員がレーザーを撃つ。
胸を射抜かれてそのままもんどりうつ。
続く一体の頭部をヤグチがレイガン(拳銃型レーザ)で撃ち機能停止させた。
「あたしらも引くよ」
陸戦隊員に声をかけ一気に駆けだした。
3階では、2人はまだモニター画面を見いっていた。
ヤグチたちの映像もドアをレザーが貫通した所までは見ている。
その直後モニターがブラックアウトしてヤグチからの叫ぶような撤収命令を聞いた。
二人は、不安にかきたてられながらも走り出す。
すでにミカはロータりーの植え込みや花壇に兵士を2人づつを配置してヤグチたちが合流するのを待っていた。
ホバークラフトもロータりーに位置を変えている。
何にが起きたのかは、わからないがとにかくヤグチ達の入ったビルの出ロに対する防衛体制は整った。