1 :
1フレーズ目:
ここはなんて光と声に包まれた場所なんだろう。私は初めてステージに
立った時そう心の中で呟いた。
誰にもわからないように、瞬間、目を閉じる。まぶたを再び開けた時、たく
さんの人の歓声とギラギラするライトの光に、私は押しつぶされそうになっ
た。
私はモーニング娘に加入して初めてのコンサートで、Mr.Moonlightの
歌い出し担当だった。この曲の歌詞を見せられた時、なんて自分にぴったり
した歌詞なんだろうと思った。私は本当に愛が欲しかった。幼い時からずっと。
だから自分の声が採用されてCDの歌い出しが自分になったときは、とても
嬉しかった。実際私はうちに帰ってから泣いた。泣きながら歌った。涙が口
のなかに入って、塩辛い味がした。
プロデューサーのつんくさんは「新垣の歌が一番よかった。ここは新垣が
ぴったりだと思うから」と言っていたよ、とマネージャーさんが私たち新メン
バーに告げた。
一番上手に歌えていた愛ちゃんは少し腑に落ちないような顔をしていたけ
ど「おめでとう里沙ちゃん、良かったね」と言ってくれた。
麻琴ちゃんとあさ美ちゃんは手を叩いて一緒に喜んでくれた。私はと言えば、
うっすらと笑みを浮かべていたと思う。周囲には自信ありげな生意気そうな
表情に見えたかもしれない。
でも決してそういう感情から私は笑っていたのではなかった。
「愛をください」と叫ぶことに慣れた自分が、このフレーズを歌うことの
滑稽さが、なんとはなしに可笑しかったのだ。
でも加入して初めての歌で、「愛をください」という自分の声がCDに
なってたくさんの人の耳に入るということは、足が震えるほど嬉しかった。
私はコンサートで、テレビの歌の収録で、このフレーズを歌いながら、
心のなかで願っていた。
誰か、私に愛をください。私の叫びを受け止めてください。
2 :
:02/01/21 22:13 ID:5Rsx3MYN
123
3 :
裕次郎の兄です:02/01/21 22:13 ID:Kqg8dsTc
残念ながらあげません。
さげながら書くので地味に進行させてください…
5 :
名無し募集中。。。:02/01/21 22:56 ID:shsKFQLC
へたくそ。
8 :
名無しさん:02/01/22 07:06 ID:qlh3hAak
これ小学生の作文?
この間も変態小説(作文)を書いてた奴じゃないの。
よく駄文を恥ずかしげもなく載せられるよねぇ・・・。
10 :
名無し:02/01/22 09:51 ID:gzX6Apv0
⊆ニ(二(ニニ⊇ ⊆ニ(二(ニニ⊇
./ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ヽ
/ ____/_________________ヽ
,/ ̄ ̄ ┏━, / ̄ ̄ ̄|| ||. ̄ ̄ ̄ ̄ |||  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄...| |
,/ ∧ ∧. i┸i //. ∧ ∧ || / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
_.,/ (´∀` ) | :::|// *Ё ) <
>>1を迎えに来ました。
|/,,,,,へ⊂ ヽ .// ,/ ノ/ ||\______________
,/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄//|_/ ̄ ̄ ̄|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|
|~ ゜ ̄゜ ̄ ̄ ̄~~| ̄ ̄ =。|┃ | ━━━━━...............|
|______: |,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,|,,,,゜,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,, | ,,,,,,,,安田病院,,,,,,,,,,,[|
._|]0::∴:::0::[二二il:] ,-―-、 ,,| | . [|
|====== ;...........| /,  ̄ヽ |~~|. | /,  ̄ヽ | {|
ヽニ[_]ヾニニヽ''''''|―-|.(※)|':|''''|.'''''''''''''''''''''''''''''|''''''''|.(※)|:|'''''''''''''''''/
ゞゝ三ノ ̄ ̄ ̄ ゞゝ_ノ ̄ ̄ゞゝ三ノ ̄ ̄ ̄ ゞゝ_ノ
書けない奴らが煽るのやめれ
私が育った環境は、それほど特殊ではないと思う。自分のような子供は、
どこにでもいるだろう。
その大勢の子供のなかの一人が私だということ、ただそれだけのことだ。
何かの本で読んだことがある。幸福な家庭のかたちは似通っているけど、
不幸な家庭のかたちは、それぞれに違う、と。
だけど私はこの言葉は間違っていると思う。本当に不幸な家庭は、吐き
気がするくらい似通っていて、救いがないくらいの単純さを持っている。
だから私は自分の家庭がどういったものだったか、ここに記すことは
しない。それはあまりにも退屈な作業だし、思い出すのが困難な記憶の
抽斗に無理に押し込めてあるからだ。
私はその抽斗のなかにあるものにできるだけ関わりたくなかったし、
いつからかその方法を自分で見つけ出していた。市立の図書館で一日中本
を読んだり、友達と横浜の街を足が痛くなるまで歩いたり、ペットショ
ップで目が痛くなるまでハムスターやチンチラを眺めたり、公園で
ボールが見えなくなるまでフリースローの練習をしたり。
そして私をいちばん解き放ってくれる時間が一つあった。それは横浜に
ある芸能事務所でのささやかな仕事だった。子供を中心に扱うその事務
所がくれる仕事は、ポスターやイベントでの無邪気な子供としての笑顔
を作ればよかった。ふわふわした洋服を着て、綺麗に編んでもらった
髪を揺らして、私はにっこりと微笑む。ポスターのなかで笑っている
私は、いかにも幸せで満たされた女の子に見えた。
なんの不安も心配もなくて、お菓子を作ることとおしゃれをすることに
興味があって、一日の大半を笑ってすごしているような女の子。
撮影のあいだの数時間だけ、自分はそんな女の子になれたような気が
していた。
私は仕事の帰りに決まってコンビニに寄って、バイト代の入った茶封筒
から千円札を取り出し、好きな漫画とアイスクリームを買う。そして
店を出て鞄からその日の撮影で試し撮り用に撮ったポラロイド写真を
取り出す。それは少しひんやりとしていて、写真のなかの私の笑顔は
沈みかけた陽の光のなかでははっきり捉えることができない。ゆっくり
とそれを握りつぶして、備え付けのゴミ箱に捨てる。
私の笑顔が見たい、そんなふうに言ってくれる人は、これから帰る場所には
いなかったからだ。
13 :
ねえ、名乗って:02/01/22 20:24 ID:UAmfQXY4
創作文芸板でやったらいい。
へたくそ
>>1 目のつけ所に感心しました。
叩きは予想していたはず。
期待しているのでがんばってください。
16 :
ねえ、名乗って:02/01/22 20:40 ID:UAmfQXY4
まあ、新垣とは全く違う架空のお話なので
新垣の印象が変わることはないけどね。
17 :
名無し募集中。。。:02/01/22 20:45 ID:9qR0pqM4
にいにいあげ
読んでて吐き気がしてきた(w
お前等新垣が主役だからって叩きすぎだろ
言いがかりつける阿呆童貞は死ね。
作者期待してる
20 :
ねえ、名乗って:02/01/22 20:54 ID:V6OrXs4t
新垣が主役だというだけで、グロ小説になってしまいましたとさ。
続きが読みたくてちょっとドキドキしてきたよ。
2chだと大変だと思うけど、完結まで頑張って欲しいな。
22 :
ねえ、名乗って:02/01/22 21:02 ID:LBFj5Tw7
ぷ。コネ小説のほうがよっぽどおもしろいっちゅーに。
23 :
1:02/01/22 21:26 ID:ZdbcQrJI
読んでくださった方ありがとうございます。
地道に2、3日に一回くらい更新していきます。
応援レスはすべて1の自演です。
>>24 そんなこと書いてもさ、1には
「自分の書いた投稿」と「自分以外の人が書いたレス」の
区別はつくんだよね。
たとえ周りがどう思ってもね。
26 :
ねえ、名乗って:02/01/22 22:07 ID:lbc6vngh
1が区別がつかないわけないじゃん・・・
ぷ。
学校でいじめられている24の捌け口=モー板
28 :
ねえ、名乗って:02/01/22 22:12 ID:wceR8JDF
↑何、この人。
川o・-・)<・・・ガンバッテクダサイ・・・
30 :
ねえ、名乗って:02/01/22 22:20 ID:wceR8JDF
何を?
>>26 そうだよね。そうでしょ? だから、1さえわかってくれれば
続きが読めるかも知れないからそれでいいってことよ。
2、3日に一回しか更新できないなら、
荒しも叩きもスレ保全に役立つって考えればいいよ1。
32 :
ねえ、名乗って:02/01/22 22:48 ID:wceR8JDF
そういう意味じゃないと思うが。
wceR8JDF=24
基地外だなコイツ(w
粘着にも程がある
26も同じ人と一応想像してるけどさ、
ここまで粘着な人はもしかしたら私と同じように
続きが読みたいのではないかと…(w
35 :
名無し募集中。。。:02/01/22 23:09 ID:hEZI7pPR
膝膝
36 :
ねえ、名乗って:02/01/22 23:12 ID:F5QEUBgd
げらげら。
新垣は特に好きでもないけど応援してるぞ>作者
がむばれ!
38 :
ねえ、名乗って:02/01/22 23:16 ID:m/38TLTJ
主人公を紺野に変更しましょう。
40 :
:02/01/22 23:26 ID:hEZI7pPR
>>38 紺野ならこんなに叩かれなかっただろうな…
41 :
作者:02/01/22 23:48 ID:iYybwzor
>>39 あ、いいですよ。いつまで続けられるかわかんないですけど
がんばります(w
42 :
3フレーズ目:02/01/23 20:07 ID:PMoU/3Jz
私は自分がそれほど可愛くもないことも知っていた。
自分に対する容姿の評価は、いつも醜いと普通の中間あたりをさまよ
っている感じだった。私がポスターやイベントなどの人前に出る仕事を
貰えていたのは、少しばかり明るい子供らしい表情ができたからだと、
今では思う。実際はかすみがかかったような薄暗い気持ちが常に私
を支配していたけれど、それに気づく大人は皆無に等しかった。
ひどく醜いとは思わなかったけど、たいして可愛くもない。私は鏡を見る
たびにそう思っていた。
夏にあったモーニング娘のオーディションで、私はますますその思いを
強めることになる。
世の中にはどうしてこうも美しかったり可愛かったりする女の子が多いの
だろう。日本中の綺麗な女の子を集めたのではないかと思えるほど、
オーディション会場の待機場所である平凡なビルの一室は華やかな光
に溢れていた。私はといえば、なぜこんな場所にきてしまったのだろうと
後悔しはじめていた。長い時間うつむきながらスカートの些細なしわを何
度も指でこすっているうちに、自分の名前を呼ぶ声が聞こえた。
私は一応の元気を保った返事をして立ち上がり、審査会場のドアを
開けた。
次の瞬間、スタジオの奥から走るオレンジ色の強いライトの光が私の目をくらませ、私は目を
開けることができなかった。
その感覚は私に、春に行ったモーニング娘。のコンサートのことを思い出
させた。
(こんな光のなかで、もっともっとおおきな光のなかで、あのひとたちは歌
ってったっけ…)
私はあの時、動くことができなかった。ほとんど瞬きさえしていなかった
だろう。
私はうらやましかったのだ。会場いっぱいにあふれる歓声と拍手、太陽
のような暖かで眩しいライトの光、その中心の中心で、あのひとたちは
受け入れられ、愛されて、これ以上ないほどに輝いていた。
ステージからずいぶん離れた末席に座る自分は、薄汚れたはつかねず
みみたいだ。私は恥ずかしさに赤くなった頬を何度も手のひらでこすった。
そして、いつのまにか彼女たちに嫉妬している自分に、私は気づいた。
誰にも口に出して言うことはなかったけど、一度でいいから自分もあの
ひとたちのように強く愛されてみたい、とそうひそかに願うようになってい
た。
あの会場に満たされて、彼女たちが一身に浴びていた、圧倒的な密度
の愛。そんな愛が自分に与えられたら、免疫のない私はきっとショック
で死んでしまうだろうな、そんなふうに想像すると可笑しかった。
モーニング娘になんかなれるわけもないのに、そんな想像をする自分も
可笑しかった。
そんなことを考えながら、審査員の前で歌ったことを覚えている。
43 :
イイ!:02/01/23 20:11 ID:xuEiA3Au
川o・-・)ノ <頑張れ新垣ちゃん
44 :
ねえ名乗る:02/01/23 23:07 ID:L8xrhbWX
新垣の小説めずらしいね がんばって
ちょっと新垣好きになったかも(w
46 :
wh:02/01/24 07:06 ID:PNaNiMAm
にいにいコンフィデレーション
47 :
:02/01/24 10:40 ID:3KCKK1Tg
正直かなり・・・いい!!
がんばれ。
48 :
4フレーズ目:02/01/24 19:27 ID:jzrZdCDY
最近になって麻琴ちゃんとよくあの頃のことを話す。麻琴ちゃんはほんと
泣き虫だったよね、私がそんなふうに言うと照れたように麻琴ちゃんは
笑う。家族と離れた寂しさやレッスンの辛さから、あの頃の麻琴ちゃんは
本当によく泣いた。そのうち身体のなかの涙が全部枯れ果ててしまうん
じゃないか、私はそんな心配をしたものだ。私は年上の彼女がしゃくり上
げるのを見て、どうしたらいいのかもわからずに、ただ話を聞いてあげる
としかできなかった。
「里沙ちゃんは反対に、全然泣かなかったよね。でも、今だから笑ってい
えるけど」 麻琴ちゃんはいたずらっぽい表情を浮かべて、でも半分意を
決したように私に言った。「里沙ちゃんからは『絶対人前では泣かない』っ
ていうのがびしびし伝わってきて。…なんでこの子は、こんなに強がら
なきゃないんだろうって、ずっと不思議だった。少し怖かった」
そうだったよね、ほんとそうだった、私は頷く。あの頃の私は、強くなり
たいといつも思っていた。誰よりも強く、絶対に傷つかないように。
自分が最終審査に残ったと知った時、月並みな喜びや驚きよりも先に、
なにかわからない熱いものが身体のなかに生まれたことを、私は感じ
ていた。1次を通過したのも奇跡だと思っていたし、それを知ったときは
ただただ慌て、驚くしかなかった。 でも、もしかしたら私は、モーニング
娘になれるのかもしれない。今みたいなぼんやりした灰色の空気のなか
にいる新垣里沙じゃなくて、たくさんの人に愛されて明るい光のなかで
生きる新垣里沙に。そう考えるとそんな自分を想像すると、心臓が
激しく鼓動した。モーニング娘。になったら、こんな腐りきった家を
自分から切り離すことができる、もっと陽のあたる場所へ私は進んで
いける。そうだ、絶対私はモーニング娘に入りたいんだ。入らなくちゃいけ
ないんだ。
強くならなければ、そう思った。オーディションに合格して厳しいレッス
ンを受けるようになってからは、自分のなかのその思いは一層確固とし
たものになった。私は強い。もう誰にも傷つけられることはない。
私はもう誰にも涙を見せない。そんなふうにずっと、心のなかで繰り返し
ていた。
私は暖かい光のなかで永遠に生きていくんだ。もう絶対冷たくて暗い場
所には引き返さないから。
あの頃の自分を思い出すと、笑ってしまう。私はまだ一二歳の子供
だというのに、鉄のような強さを身につけようと必死だった。
私は初めてのコンサートで、ずっと憧れつづけたあの光のなかに立
つことができた。だけれどその光は、これ以上ないくらいに華やかで
はあったけれど、けっして暖かなものではなかった。
そこにあったのは、私をかたくなに拒否する沈黙と、罵声だった。
49 :
:02/01/24 20:27 ID:cQrZ981y
新垣…
50 :
名無し:02/01/24 20:50 ID:IO0jruZq
この小説が終わった頃にはここで新垣叩きをしていた奴等が叩かれまくることに1000ペリカ
この間も変態小説(作文)を書いてた奴じゃないの。
よく駄文を恥ずかしげもなく載せられるよねぇ・・・。
52 :
nanasi:02/01/24 23:58 ID:3xaJaRP6
なかなかイイ!
53 :
名無しさん:02/01/25 01:34 ID:PjPLFJLb
JUNON読んだんですね。
新垣押しなんで続き期待してます。
あと、できれば所々一行空白を入れていただけると読みやすいのですが。
では、がんばってください。
コンサートが始まる直前に、矢口さんは緊張する私たちに言った。大丈夫、
お客さんは私たちの味方だからね、と。
初めて経験することは、いろいろな発見を与えてくれる。
私はそれまで知らなかった。ステージの下から私に投げかけられる声が、
こんなに自分にはっきりと届くということ。私は知らなかった。
声援は幅の広い曖昧な帯のようになって、自分を包み込むものだと思っていた。
そのなかで自分は歌うんだと思っていた。
いや、違う。私以外のメンバーは観客の声など聞き分けられないだろう。
しかし私だけが聞き分けることができた。
彼女たちに向けられた声援は、それほど種類がない。それはくるおしく
名前を呼ぶものであったり、直接的な賛美の言葉だったりする。
それらはひとつに美しくまとまり、受ける側を気持ちよくさせる。
それにくらべて、私に向けられた声は非常にバラエティーに富んでいた。
だから私はそれを聞き取ることができたのだろう。
人を貶め、傷つけ、ぼろぼろにする言葉は、この世の中に星の数ほど
あった。
ただそのことを、私が知らなかった。「死ね」と誰かに怒鳴られると
いうこと、それも、たくさんの見ず知らずの人間から。そんな経験は、
それまで十三年生きてきたなかでは、私にはなかった。
さまざまな種類の言葉が、ばらばらのまま、ガラスの欠片のように
私に突き刺さった。彼らは私の血を見がっていた。
何人の人がこの会場にいるんだろう。確か八千人、いや一万人って
スタッフの人が言っていたような気がする。私は先輩たちの後ろで
覚えたてのダンスを踊りながら、ショックと緊張で麻痺した頭でぼ
んやりと考えていた。
私がMCで喋ると、会場は水を打ったように一瞬、静まり返る。
そして、その静寂を縫うように、いろいろな言葉が聞こえてきた。
その言葉は私をあきらかに拒否していて、見えない力で私の頬を
めちゃめちゃにぶった。
このたくさんの人の、どのくらいの人が私を目障りに思っているん
だろう。
3分の1?2分の1?もしかしたらここにいる一万人の人が
全部、私を憎んでいるのかもしれない。グロテスクでどろどろした
悪意が、この会場いっぱいに充満しているように私には思えた。
息を吸い込むと、毒を飲み込んだように苦い味がした。
私以外のメンバーはみんな楽しそうに、汗をきらきら輝かせながら
踊っている。
私がいるところとは違う、弾けるように明るい光のなかで、みんな
笑っている。
ここは暗くてじめじめして、すごく嫌な匂いがするのに。
またダンスの振りが遅れてしまった。愛ちゃんが私の方を心配そうに
見ている。ちゃんと、みんなの足をひっぱらないように、踊らなくちゃ。
でも、吐き気がこみ上げてくる。胃が何か別の生き物みたいだ。さっきから
ずっと、小さくなったり大きくなったりして暴れている。
早くここから逃げ出したい。綺麗な空気をすいたい。どこでもいいから、
早く。ここじゃない、違う場所へ。
また遠くの暗がりから声がした。私は思わず耳を塞ぎたくなった。
>>53 ご指摘ありがとうございます。以後できるだけそうしてみます。
私は新垣ヲタではないんですが、その分客観的に書ける・・・かな?
ほんとは紺野さんのを書こうと思ったんですが、やはりJUNONを
読んで彼女の物語性が自分のなかでなんとなく失われてしまい(w
現在にいたります。
57 :
ねえ、名乗って:02/01/25 21:05 ID:OWDWq8mY
ほぜんあげ
58 :
悪くないかも:02/01/25 21:30 ID:IeWPbPSx
ブックマークしたよ
59 :
名無しすぺしゃる:02/01/25 21:35 ID:QezqsAxQ
やるね、作者。sage進行しようか?
本人識別するあれ・・・なんでしたっけ?
つけてもらえるといいんですけどね・・・
ていうか、新垣は自分のことをかわいいと思ってるね。
62 :
作者:02/01/25 23:03 ID:Z71hSad6
>>59 小説スレのルールがよくわからないのですが
そうしたほうが良いのかな。基本的にsageで書くつもりでいますが・・・。
>>60 必要ないかな・・・と思うのですが、必要になったらつけますね。
63 :
む:02/01/25 23:17 ID:XQByCAAP
こんな堅い文章のモ娘小説も珍しいと思われ
64 :
名無し募集中。。。:02/01/26 00:13 ID:iyMLsoCt
カタ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
川o・-・)__ カタ___ _ < 里沙たん頑張れ〜
( つ_ || ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| . \_________
|\.|| konkon |.
'\,,|==========|
どどこをどう走ったのか覚えていない。悪意のたちこめたステージから
解放されると、私は逃げ出すように走っていた。
舞台裏にあるスタッフ専用のトイレ。個室に鍵をかけると、私は床に
ぺたりと座り込んでいた。
息が弾むのを抑えられない。肩を上下させるたびに、着慣れないきらび
やかなステージ用の衣装がざわざわと耳障りな音を立てる。こんなもの
今すぐ脱いでしまって、トイレに流してしまいたかった。
寒くもないのに、歯がかちかちと鳴る。私は震えていた。震えながら、
自分はなんて孤独なんだろうと思った。ひとりっきりでトイレの床なんかに
座り込んでがたがた震えている自分が、ひどく惨めでちっぽけな存在に
感じた。
洗面所の蛇口から落ちる水滴の音だけが、トイレのなかに響いていた。
そのほかには何の音も聞こえなかった。ぴちょん、ぴちょん、ぴちょん…
そんなふうに規則正しくはじける水の音を私は放心しながら聞いていた。
どのくらいの時間が経ったのだろう。早くみんなのいる場所へ戻らなくて
は、と自分をせかした。きっと先輩たちも断りなく消えた私を怒っているだ
ろう。
のろのろと立ち上がり、鍵に手をかける。でも、どうしても鍵を開けて、
外へでていくことができなかった。今この扉をあけたら、さっき自分を
飲み込もうとした圧倒的な悪意が、たちまち流れ込んできそうな気がした。
ステージの記憶がフラッシュ・バックのように自分のなかに蘇る。
実際にはあそこにあった何倍ものの大きさの無名の憎しみが、私には向けら
れているんだ…そんなふうに考えると胃がはげしく痙攣して、吐き気が急激に
こみ上げてきた。我慢できずに私は便器に吐いた。苦しくて、涙が出た。吐く
ものがなくなっても、私の胃は何かを吐き出そうとするのをやめなかった。
苦い胃液がぽたぽたと唇から流れ落ちた。
誰かに愛されたいと思っていた。そんな漠然としたイメージが私を
モーニング娘に入りたいと、そう願わせた。でも、愛されるってどんなふうに?
愛されたことなんてないから全然わからない。そんなこともわからないくせに
私はないものねだりをしていたんだろう。なんて馬鹿だったんだろう。
「じゃあ、いいじゃない」私は涙を手の甲で拭いながら心の中でつぶやいた。
「これまでと何も変わらないってだけ。それだけだよ」
「りさちん…、りさちん…」扉を叩く音がする。
鍵を開けると、そこにはあさ美ちゃんが立っていた。膝に真っ白な包帯が
巻いてある。怪我した足で、ここまで心配して探しにきてくれたんだろう。
あさ美ちゃんは目にいっぱい涙をためていた。あさ美ちゃんは私より一つ
上だけど、なにかの動物の仔のようでとても可愛い。
あさ美ちゃんなら、いつかモーニング娘としてみんなに愛されるように
なるんだろう。でも、私は…、私はこれからどうなるんだろう。
私はあさ美ちゃんの胸にすがって泣いてしまいたかった。わんわん泣いて
しまいたかった。でももう一人の自分がそれを押しとどめた。
「勘違いしないで」私はあさ美ちゃんに言った。「緊張のしすぎでちょっと
具合が悪くなっただけだから。泣いてたりしてたわけじゃないから」
あさ美ちゃんは唇を噛んで、何も言わないで、じっと私を見つめていた。
私は彼女に精一杯笑いかけた。そうでもしないと、涙がこぼれてきそうだった。
「ごめんね。早く戻ろう。きっと怒られちゃうね、飯田さんに『なにやってん
のっ!』って」
66 :
名無し募集中。。。:02/01/26 15:48 ID:LCBANGJs
あれほど毛嫌いしてた新垣を好きになりそう。
67 :
作者:02/01/26 17:01 ID:DqYWsmX3
また脱字というか余字が…
一行目「どどこに」→「どこに」
次は小川で小説書いたら「小川を好きになりそう」って書く奴続出だな
描写がリアルで(・∀・)イイ!
作者さん頑張れ!!
70 :
ねえ、名乗って:02/01/26 22:07 ID:CblnKpHK
作者さん最高!めっちゃおもろい。
嫌がらせのようにageる人がいるね(w
作者さんがんばれ!!
保全
なんか新垣応援したくなった。
74 :
作者:02/01/28 23:33 ID:ED+xTgg5
読んでくれた方ありがたいです
ちょっとつまってしまったので保全・・・
マターリいきます
>>作者様
おもしろいです。
作者さんのペースでぜんぜん構いません。
次も期待しています。
期待保全
保全
保全
ほぜむ
芸能人になる、それがどういうことなのかわかっていたつもりだった。
普通の人として生きていた時の、きっと何倍も愛されて、何倍も嫌われること。
それが有名になるっていうことなんだろうと。
あさ美ちゃんと楽屋に戻った自分を、叱った人はいなかった。
私はといえば、コミカルな人形を演じることに成功していた。笑顔を頬が
痛くなるくらい保ち続け、しきりに「楽しかった」を連発した。
人形になってしまおうと思った。感情を捨てるのだ。心を捨ててしまえ
ばいい。なぜそんな簡単なことに気づかなかったんだろう。はじめからそうして
いれば、傷つかずに済んだのに。
人形になろう。人形は愛されることなんか望まない。
薄い氷のような笑顔を浮かべ続ける私に、矢口さんは言った。
「新垣、前に言ったことは嘘じゃないからね。お客さんは新垣のことを見ていて
くれる。今はわからないかもしれないけど、いつかきっとわかるよ」
矢口さんは熱のこもった先輩らしい声で話し続ける。
私はまた、軽薄なつくりの人形のように頷く。
(別に見てくれなくてもいいよ。愛されなくてもいいし。大体愛なんてどんなもの
かも知らないんだから)
雨が降り始めていた。私は矢口さんの話を聞きながら、窓に打ち付けられる
雨のしずくを、視界の隅でみていた。
(あの雨みたいに、冷たい心で生きられたらいい)
「矢口さん、私、頑張ります」
機械がしゃべっているみたいな声だな、と自分でも思った。
「歌も、ダンスも、頑張って、トークもうまくできるようになって、それで…」
矢口さんは私の次の言葉を待っていた。じっと私の目を上目遣いで見ている。
(…頑張って、それで?)
私は続く言葉を必死で考えた。でも何もでてこない。娘。のメンバーでいると
いうことで、いったい何を求めているっていうんだろう。
宙に浮いた言葉を取り繕うように、私はぎこちなく笑った。
胸にぽっかりあいた空洞が、たまらなく苦しかった。
私は感情を器用にとりのぞくこともできない、無力で賢くもない、どうしよう
もなく生身の、子供だった。でも私は、その事実から無理やり目を逸らした。
>作者
お帰り。
保全してた甲斐があったよ(w
保全
>作者
実は週イチ更新?
作者様
タイトル見たとき正直期待していなかったのですが(失敬)
読んでいくうちにハマってしまいました。
自分はアンチ新垣ではないですが、読み終えて訪れるこの罪悪感はなんだろう・・・
いろいろと考えさせられます。
次の更新期待してます。
私が想像していたよりも仕事ははるかに忙しく、毎日が飛ぶように過ぎていった。
たまに完全に何の仕事もない日があると、私は学校へも行かず、自室にこもって、
ベッドの上で毛布にくるまりながら過ごした。
人工的な闇のなかで心臓の音を聞いていると、自分の輪郭がはっきりしてくる
ような気がする。
モーニング娘。に入って四ヶ月。何かが変わったんだろうか?私はどこが変わった?
ベッドのそばに置いてある手鏡を手にとり、自分の顔を映してみる。13歳にしては
少し疲れすぎている、微妙にこわばった顔がそこにはあった。
本当にこれでよかったんだろうか。憧れだったモーニング娘。でいることに少し
だけ馴染んだ今になって、そんなふうに考えることが多くなった。
その疑問を抱いたのは私だけではなかったと思う。先輩たちとの間にある歴然と
した実力の差にショックを受けたり、初めて飛び込む大人の厳しい世界に戸惑ったり
することは何度もあった。
私より断然可愛くて、才能もセンスもあるのに、他の三人は自信がない、と
たびたび涙を流した。そんなに泣くことないのに、私は彼女たちを慰めながら、そう
思っていた。歌やダンスが上手くいかなくても、絶対に泣かない自信はあった。
そんな努力はたいして辛くも痒くもないように思えた。
そういった種類の努力は前向きで、明るい。
私は他の三人がしなくていいような種類の努力をする必要があった。それは
ネガティブで、暗くて惨めな努力だ。
自分が把握できないくらいの量の嫌悪を、感じないようになること。どんなことを
言われても、気にしないようにすること。人気がなくても、傷つかない強さを
身に付けること。
コンサートで歌ったり踊ったりする時の自分は、もはや私ではないのだ、と
そう何度も言い聞かせる。ステージにたつ「新垣里沙」という人形を、私は
遠くから操る。人形はどんなことを言われても、泣きもしないし、傷つくこと
もない。
「あなたたちは勘違いしてる」
人形に向かって汚い言葉を浴びせる観客に、私は心のなかでつぶやく。
「私は人形だから、別にあなたに好かれようとも愛されようとも思っていないのに。
私がそんな言葉で傷ついて、泣き出すとでも思った?」
そんなふうに自分を空っぽにして無感情で仕事をやりすごすことが、傷つかない
ための最良の手段だと思っていた。そんな私の心あらずな歌やダンスを見て、
何人かの先輩は私に落胆し、的外れなアドバイスをしてきたりした。
「新垣、せっかく観に来てくれたお客さんに、精一杯の努力を見せなきゃダメだよ」
そんなふうに先輩たちは言った。
誰にもわかってもらえないだろうから言わなかったけれど、私は自分がしなければ
ならない努力は、最大限にしていた。私の精神状態はぼろぼろだった。何も感じない
ように奥のほうに押しやった心は、すっかり錆びついていた。私はそれを表に出して
誰かに感づかれることを恐れた。どこからきたのかわからないような苦しさに
押しつぶされそうなときは、私は自分を奮い起こして笑った。
私、ほんとうにモーニング娘。になってよかったんだろうか・・・。そんな疑問を
打ち消すために、くだらない冗談を言ったりして、人を笑わせたりした。
いつかのコンサートが終わったあとで、いつものように人形になりきっていた私に、
後藤さんが手紙をくれたことがあった。
きっと手紙のなかで後藤さんはすごく怒っているにちがいない、そんなふうに
私は思い、怖くて封を切ることができなかった。机の一番上の引き出しに入れた
まま、もう一ヶ月も経つ。私は他人のマイナスの感情に敏感になりすぎていた。
(あの手紙、開けてみようか…)
私は毛布のなかに顔をうずめながら、ぼんやりそう思った。
ぱさぱさに乾ききった心のままで、今にもバランスを崩しそうな精神のままで、
いつまでもモーニング娘としていられるわけがない。夢を与えられる立場で
いられるわけがない。
もうやめよう。あきらめよう。愛されようと望むことも。明るい場所で生きて
いくことも。みんな幻だったんだ・・・。
ひどく自暴自棄な気持ちで毛布の穴から抜け出して、机の引き出しを開ける。
薄い水色の封筒に、後藤さんの字で「新垣へ」と書いてあった。
(後藤さんに怒られた手紙なんて、モーニング娘。のいい思い出だよね)
そう考えると、憂鬱になりそうな手紙を開けるのも怖くなくなっていた。
封筒と同じ色の綺麗な色をした便箋は、羽のように軽かった。
新垣へ。
お客さんに愛されるのはむずかしくっても、
お客さんを新垣が愛することは、100パーセントできるんだよ。
後藤真希 より。
手紙のなかにあるひとつひとつの文字が目に突き刺さってくるよう
で痛かった。頬に身体中の血液が集まってくるような気がした。
「馬鹿にしないで。馬鹿にしないでよ」
私はそうつぶやきながら、便箋をびりびりに破った。後藤さんの字が
こなごなになって消えてしまっても、破くのをやめられなかった。
私はいつのまにか、とても久しぶりに、心から泣いていた。
>>81 いつも保全していただいて有難うございます
>>83 うっ、確かに(w
>>84 嬉しいです。せめて完結できるよう頑張ります
88 :
ねえ、名乗って:02/02/07 23:06 ID:Z17aFow0
↑これは作者?
89 :
88:02/02/07 23:07 ID:Z17aFow0
スマソ ageてしまった
主人公が新垣じゃなかったらよかったのにねぇ・・作者。
91 :
:02/02/08 00:00 ID:rG7RVPcN
いや、新垣じゃなければいけない話だろ。
92 :
:02/02/08 00:01 ID:gcv3zulg
>>90 この小説は、新垣だから意味があるんだろ。
>>作者
面白いので頑張ってください。
なんか同じ奴が自演で応援レスをつけているとしか思えない
94 :
初レスです:02/02/08 10:53 ID:buObcjWy
胸につまされるものがあります。
どういう結末を迎えるのでしょう。この小説も、現実も・・。
( 〜^◇^)<とりあえず、前髪おろしてみなよー!
JUNONの個人写真は、今まで見た中でいちばん可愛くてちょっとビックリした。
あれなら、高橋はともかく小川や紺野には勝るとも劣らないとオモタよ。
劣るとも勝らないだろ?
>>93 戻って来たのかい、あなた。
思ってたとおり、よっぽど続きが気になるんだね。
私もだよ。
97 :
92:02/02/09 00:38 ID:LHKDzcKK
>>93 うざいね君は・・・
嫌なら見なければいいのに。
>>95 劣りはしないと思うよ。
勝るとも劣らない、もまた言い過ぎでしょー。
遜色(ひけは)とらない、くらいでしょ。
JUNONのグラビアは、自分は客観的にみて
高橋>新垣≧紺野≧≧小川だとオモタけど。
保全
ま、(ё)は不細工てのが定説ですから。
hozen
つづききたいほぜん
期待保全
作者>
文章の書き方が、最初の方より巧くなってきましたね!!
期待です。sage
105 :
ハヘホ:02/02/15 05:09 ID:NLcRYhqU
手紙の主が、下積み時代なしに、あっという間にセンターに立った後藤だから、今ひとつ
説得力がなぁ・・・
矢口か飯田か保田あたりのほうがヨカタかも。
後藤が新メンのいちばんの憧れの存在だからか、見てなさそうで見てるっぽいのが後藤だから
この役は後藤が適任だと、作者さんは感じたんだろうけど。
あと、この紺野は(・∀・)イイ!!
そろそろ更新の予感……
107 :
名無し紺野:02/02/16 11:32 ID:fgYu7zjB
やべえ、落ちるぞ。
期待age!
>>105 たぶんうたばんで5期に手紙を渡したエピソードがあったから
後藤にしたんじゃないかな
俺的にはかなりハマったよ。後藤・・・
ほぜん
保全
いいねこれ!作者期待保全
(・∀・)イイ!!
>>作者
期待してます。
by 罰ゲームで小説書く人
113 :
作者:02/02/20 00:26 ID:kVyAbPq0
なんか長いこと更新してなくてスミマセン。(3日に一回とか昔言ったような気がしますが・・・)
114 :
マロン:02/02/20 22:54 ID:90dbdGoG
そうゆうなら更新して栗
(ё)<後藤サイコー!!
>作者
マイペースでどうぞ
とりあえず保全。続き期待してます〜
期待しつつ保全
保全
マターリ保全
ポッカリ保全
川o・-・)ノ<保全しにきました。
まず、リキッドファンデーションを小豆大に掌にのせる。水につけて
固く絞ったスポンジにハードファンデーションをひとなで取り、掌の
リキッドと、強く混ぜ合わせる。スポンジもプロ用の、大きく5角形に
カットされた厚いものだ。モーニング娘。に加入したての頃、メイクさんに
メイクの基礎的なやり方を教えてもらって、こわごわスポンジで頬を
撫でたことを懐かしく思い出す。まだ半年も経っていないのに。
私はその頃に比べれば、少しだけ慣れた手つきで、化粧をする。楽屋に
並んだいくつもの鏡。私の隣であさ美ちゃんがマニュキュアを塗っている。
「緊張、するね」
あさ美ちゃんは、誰かに話し掛けているのか、それとも単なる独り言なのか、
それが判断つきかねるようなトーンで言葉を発する時がある。鏡ごしのあさ美
ちゃんは私ではなく、マニュキュアを塗る人差し指に集中しているようだ。
私はとりあえず、そうだね、と答える。
私の答えは辻さんと吉澤さんの賑やかな声に掻き消された。楽屋の中央に
おかれたテーブルに二人で座り、何かひそひそ囁きあっては時折大きな笑い
声を上げている。
「やっぱり先輩、だよね。ライブの前だっていうのに、全然緊張してない、ね」
塗りたての爪に息を吹きかけながら、あさ美ちゃんはゆっくり話す。
あさ美ちゃんこそ全然、まったく緊張してないように見えるよ、私はそんなふうに
軽口を叩いて笑う。この半年の間、緊張する時間の直前は、そうやって他愛も
ないふざけ合いをすることで、かちこちに固まってしまいそうな身体をほぐして
いた。でも、これも今日で最後だ。
「ねえ、この鏡についてるライト」私は鏡のまわりをいくつも取り囲む電球を
指差す。
「これ初めて観たときにさ、『わー、楽屋って感じだねー』って二人で感動したの、
憶えてる?」
あさ美ちゃんも懐かしそうに笑う。
「憶えてる。あの時は見るものが全部初めてで、いちいち感動してたねえ」
電球を手のひらで包むと、じんわりと熱い。でも思ったよりは、それほど
熱くない。
「あさ美ちゃん、ごめんね」
指の間から漏れてくる光を見つめながら、私は言った。
「もうこうやって、楽屋でおしゃべりしたり、一緒に頑張ったり、できなくなっちゃった」
鏡のなかのあさ美ちゃんは、意味がわからない、という表情で私の次の言葉を待っている。
「今日のコンサートで、私、モーニング娘を辞めるんだ」
ステージに出る直前に、メンバー全員で輪になり、手を重ね合わせる。十三人分の
嵩高く積まれた手。このなかに自分の手が含まれていることに、気を失ってしまいそうな
ほどの喜びをおぼえた日もあった。そして今の私は、ここから手を引き抜くことばかり
考えている。
今日のコンサートの一番最初の曲は、Mr.Moonlight。曲の歌い出しは偶然にも私だった。
闇の底に沈んだステージの、中央の立ち位置をめざして、私は歩く。客席も闇の底だ。
無数の黒い虫がうごめいているように私には見える。
あなたたちに憎まれたくはなかった。ただ、少しだけ愛されてみたかった。
遠くからやってくる力強い光が私を射た。私は歌わなければならない。
124 :
作者:02/03/06 20:47 ID:45/yVBKJ
あーこんなへたれ小説を保全していただいてありがとうございます。
正直全然書けなくてやめちゃおっかな、と思ったりもしましたが、
新垣さんに申し訳ないので最後まで書きます。
それでは。
125 :
ヘルスマン:02/03/06 21:09 ID:1ugW3hQJ
落ちそうだ
一回あげ匿
あげる意味が分からん
作者さんは女性?
最初からそんな気がしてたけど、最後の更新ではぼ確信。
どう落とすか楽しみ!!
>作者
更新ありがとう
待ってたよ
全然へタレっぽくないよ。プロっぽい感じがする。
がんばって最後まで書き上げてください。
130 :
:02/03/12 19:31 ID:7dKLmVZd
保全ビクス
ホゼム
期待保全
保全
ま、待たせてもらおう
135 :
名無し募集中。。。:02/03/17 01:20 ID:f3yyLorl
age
(・e・)<「アワビはあんまり好きじゃないんですけど」
(・e・)y-~~<「フカヒレ大好きなんですよ〜」
137 :
:02/03/18 18:35 ID:8wipHVpE
歌え!お豆!!
139 :
:02/03/19 03:11 ID:dTy+7jcn
hozen
140 :
保全:02/03/19 23:24 ID:dTy+7jcn
(゚Д゚)<最終話に期待する奴ぁ、Hell Yeah!だ。
141 :
:02/03/21 01:59 ID:CKXaXThC
維持
142 :
:02/03/22 04:03 ID:OL0j/Vxu
保全
新垣&作者がんばれ
144 :
:02/03/23 13:34 ID:2WGzLk/h
age
保全
146 :
:02/03/28 05:15 ID:5vymRn50
待ってるZE!
147 :
:02/03/30 04:23 ID:kuUpVDaV
維持
いじいじ
149 :
:02/04/01 21:29 ID:wiDESCKw
目指せ最下層
保全
hozen
153 :
:02/04/06 17:27 ID:m3dUgdvv
保全
保全
156 :
菜名氏:02/04/10 14:32 ID:GJydFaDT
>>127 作者さんが書いてるメイク方法は、LaLaTVでやってる「かづきれいこの元気が出る
メイク」でかづきれいこさんが教えてる方法そのまんまなので、断定するのは早急
だと思われ。
保全
158 :
名無し募集中。。。:02/04/14 21:13 ID:oUrXEKxP
保全
1ヶ月も続きが書けないのかよ。
>>159 新垣小説のスレだからって煽らないでください
保全
hozen
163 :
保全くん:02/04/21 00:38 ID:QApi+psQ
保全
保全
165 :
保全:02/04/25 05:46 ID:nQdrQAqj
保全
hozen
167 :
保全:02/04/28 08:19 ID:M8pwxvhl
たまにはageてもいいんじゃないか?
と言いつつsageで保全
168 :
:02/04/29 01:06 ID:Pl24vJOC
ちょもage
保全は揚げる必要なし。
保全