安倍の右手

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73銀杏猫
あんまり時間も無いので1時間だけということで、部屋へ入るとさっそく本を開いて曲を選ぶ。
「あ、娘の曲いっぱいはいってるなぁ」
シングルの曲、アルバムの曲、ほぼ網羅されている。
「なっち、言っとくけど」
「んー?」
「私娘の曲歌わないからね」
「えぇ〜!」
「歌わないったら歌わないの」
「はいはい、わかりました。ま、明日香の歌が聞ければそれでよいよ」
・・・。
わかってるよ、歌いたくないこと。
その気持ちはなんとなくだけど私にはわかるんだ・・・。
74銀杏猫:02/02/05 01:22 ID:Hl7b/kOC
「じゃ、明日香から、どーぞ」
「へーい」
本をぱらぱらとめくっていた明日香は目をとめると、おもむろにリモコンを操作した。

どきどき・・・。
うあー、ものすごい期待と緊張。こんなのは、昔好きなアーティストの
コンサートを見に行ったとき以来かもしれないなぁ。
ほんの少し時間を置いてイントロが流れ始める。
それは最近良く聞く女性ヴォーカリストの曲だった。
そのとたん、マイク片手に所在無さげにうろうろとしていた明日香も
ぴたっと位置を決め、「歌うたい」の顔になる。
おお!なんか、素敵・・・。
もう私は、「モーニング娘。の安倍なつみ」ではない。福田明日香という少女の
1ファンと化していた。
久しぶりに明日香の歌声が聞けるんだ。
あのころ私を魅了した歌声が・・・。
75銀杏猫:02/02/05 01:23 ID:Hl7b/kOC
マイクを構えた明日香は、とたんに凛とした表情を見せる。
それは歌への情熱の証。
イントロが終わって、Aメロが始まる・・・同時に私のどきどきは頂点へ。
そして・・・
明日香が歌いだした瞬間、それまでの部屋の空気が一変した。