は? 何か?        

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48MR娘。
安倍なつみは自分の肩に頭を預けて眠っている飯田圭織の顔をそっと覗き込んだ。
飯田が少し眠りたいと言ったので、30分程仮眠をとらせることにしたのだ。
ただひたすら寝入っている飯田の顔は、とてもこのゲームに乗っているようには見えない。
安倍も、飯田はもちろん他のメンバーの誰かがやる気になっているとは思いたくなかった。
しかし――もし仮に、メンバーの誰かがやる気になっていたとしても、本当は殺し合いなんてしたくない
はずだ。安倍はそう信じていた。
手元にある飯田の支給武器のメガフォンと、近くに見える灯台に目をやる。
――やっぱ、言ってみよう。私が考えてること。
ふと、自分の肩にかかっている重さがなくなったのに気付いた安倍が顔を上げると、飯田が目を覚ましていた。
「カオリ、起きた?」
「ん・・・ごめんね、私だけ寝ちゃって」
「ううん、いいよ」
安倍は答えながら、「考えていること」を話す決心をして唇を噛みしめた。
「あのね・・・なっちずっと考えてたんだ。これからのこと」
「これからのこと?」
飯田が小首をかしげた。
「うん。なっちはみんなに呼びかけてみようと思うんだ。みんなで集まって、どうすればいいか考えようよ」
「なっち・・・何言ってるの?」
飯田は引き止めるような目で、安倍の顔を覗き込んだ。
「気持ちはわかるよ・・・でも、私だって信じたくないけど、多分他にやる気になってるコがいるんだよ?」
飯田の言葉に、安倍は頷いた。
「確かに、やる気になってる人もいるかもしれない。でも、本当はみんな、こんなことしたくないはずだよ」
安倍は優しい口調で、そっと言葉を返した。
「カオリが嫌なら、なっちは1人でもやる。そのメガフォン、借りてもいいかな?」
「なっち・・・・・・」
飯田は返す言葉もなく、顔を伏せた。安倍は立ち上がると、飯田のメガフォンを取り歩き出した。
「・・・待って、私も行く」
飯田はリュックを肩に掛け、安倍に駆け寄った。
「カオリ・・・」
安倍は少し戸惑ったように、飯田を見た。
「みんな、来てくれるといいね」
飯田ははにかんだように笑った。
「ありがとう、カオリ」
2人は灯台に向かって、歩き出した。

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