◆モー乳総合スレッド◆

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11
加護乳・石川乳…色々ありますが、
巨乳から貧乳まで乳総合スレッド宜しく。
2アフォ:02/01/16 11:35 ID:kR4bY9eg
     ___
    /     \     ________
   /   ∧ ∧ \  /
  |     ・ ・   | < 氏ねよおめーら
  |     )●(  |  \________
  \     ー   ノ
    \____/
3名無しさん。。。:02/01/16 19:19 ID:Pgu0jbnv
え?…2?お、俺が2だって?こ、この俺が2をゲットだって???
…やったー!!やった!2ゲットだよ〜!


      , -―- 、
    ////| | | | h.
   /////亅| | | | | | h.
  /////亅|亅|亅| |亅|.
  ( .| |/ (●.     (●.|)
  | | ||  ~"  ∪ ~゛ |   / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
  | | ||ゝ   ー―  /|  < あまり似てないけど後藤だよ〜
  | || | |/ゝ .__ /|.||   \_____________
  | | |ノ    ̄ ||~\||.|
4 :02/01/16 22:53 ID:kUMS61q7
ダメだこりゃ・・・
5名無し娘。:02/01/17 00:28 ID:DoJpxPrr
次行ってみよ〜
6いやみんな!そんなことはね〜〜ぞいいスレじゃないか!!:02/01/17 00:35 ID:qRs0qEm5
我チチフェティ!
あげとこ〜〜〜!!
ヤッパりかちぃちぃ
7SAGE:02/01/17 00:39 ID:X58o4moJ
       ____
     ,: 三ニ三ミミ;、-、     \/   ̄   | --十 i   、.__/__ \  ,   ____|__l l ー十
     xX''     `YY"゙ミ、    ∠=ー  ̄ヽ |  __|.  |   | /  ヽ  /   __|   ,二i ̄
    彡"     ..______.  ミ.    (___   ノ. | (__i゙'' し      ノ /^ヽ_ノ (__ (__
    :::::             ::;
   ,=ミ______=三ミ ji,=三ミi
   i 、'ーーー|,-・ー |=|,ー・- |                ,-v-、
   i; '::  ::: ーー" ゙i ,ーー'j             / _ノ_ノ:^)
    ーi:: ::i:  /`^ー゙`、_ ..i           / _ノ_ノ_ノ /)
     |:::. ゙"i _,,.-==-、;゙゙i             / ノ ノノ//
     〉::.:..  丶 " ゙̄ .'.ノ       ____  /  ______ ノ
   / i, `ー-、.,____,___ノ\____("  `ー" 、    ノ
 ー'/  'i. ヽ、 ,二ニ/   \       ``ー-、   ゙   ノ
  /   'i、 /\ /      >       ( `ー''"ー'"
  \   'i," (__) /   /         \ /ノ
8AA:02/01/17 00:41 ID:qRs0qEm5
↑SAGEとかいってあげてんじゃねーよ!!
ここは大物スレのよかん!!
9SAGE:02/01/17 00:46 ID:X58o4moJ
           /:::ヽ  ∧   ∧   ∧ /:::::ヽ ∧  ∧
   ∧  ∧  /:::::::ヽ / ヽ / ヽ /  / ::::::ヽ/ ヽ / ヽ
ヽ / ヽ / ヽ / ::::::::::ヽ/   V   V  /:::::::::::ヽ   V   V
 V   V   / ::::::::::: ヽ______/:::::::::::::::ヽ_
        /   _  :::::::::::::::::::::::::::  _   ::::::::::ヽ
      /  /。  ヽ_ ヽ V /::: / 。ヽ  ::::::::::::\
     /  / ̄ ̄ ̄/  ____ ヽ ̄ ̄ ̄\ :::::::::::::::ヽ   \
 /  .| :::::::::::::::::::: /  / ┬ーーー| ヽ  ::::::::::::::::::::::::::::::: :: | \
     | :::::::   :::   |ヽ´      |   :::        ::::::::: |   \
/   .| ::::     :: だまらっしゃーい| :         ::::::: | \ \
    | :::       | |  ⊂ニニ::ヽ| |           :::: | \
/ /.| :       | |    |::::::ヽ:::::::| |           ::| \ \\
//  | :        |    |:::::::|::::::::|            :| \\\\\
/ / .| :       | ┌┌┌┌┌ |           : | \\ \\\
//  \      ├―----‐-――┤           | \\\ \\\  \\\
10ねぇ、名乗って:02/01/17 00:53 ID:KMvSRKff
       / ____ヽ           /  ̄   ̄ \
       |  | /, −、, -、l           /、          ヽ
       | _| -|  ・|< ||           |・ |―-、       |
   , ―-、 (6  _ー っ-´、}         q -´ 二 ヽ      |
   | -⊂) \ ヽ_  ̄ ̄ノノ          ノ_ ー  |     |
    | ̄ ̄|/ (_ ∧ ̄ / 、 \        \. ̄`  |      /
    ヽ  ` ,.|     ̄  |  |         O===== |
      `− ´ |       | _|        /          |
         |       (t  )       /    /      |
  「>>1をファックしてくるよ」             「あっそ」
11\:02/01/17 00:55 ID:X58o4moJ










               ,ィミ,        ,ィミ,               フ
                彡 ミ        彡 ミ,            ヤ | >>1削除依頼はだしたのか?
             ,,彡   ミ、、、、、、、、彡  ミ,     (⌒)    レ  |
            彡;:;:             ミ,    (  ヽ   ヤ
         〜三;:;:::::              彡〜  ノ  ノ   レ
         ~~三:;:;:;:::::  -=・=-   -=・=- 三~~ ヽ (    :     ;;
         ~~彡::;:;:;:;:::..     ___     ,三~~ ( ノ ,,,,,  :      ;;
          ~~彡;:;:;:;:;:;:;:.    |┴┴|    ,ミ~~ ノノ ;'" ,,ノ―、     ,;'
          ~~彡:;:;:;:;:;:;:;:;.  ノ――| ---==ニノ ,;'′ >=ニ(二二二()
     ,...-''''""~~,::;:;::;::;::;::;'            ミ,,  ,;'′  ゝ--〈
____,;";;:;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;:;:;:;:;:;:;:;            i! ミ,,,,;'′   `ー‐'
           ::::ミミミ:;:;:;:           ミ::      ,;' ̄ ̄ ̄ ̄|  \___/
            :::::ミミミ:;:;:           ミ:::,   ,::''′        |.    \/
            ::::ミミミ:;:;::       ,;+''"~~゙+、~'''''~          |     |
             ::::ミミミ:;:;:;:     ,+'"     ミ::::           .|   ━┷━━━┳━━━━
               :::::ミミミ:;:;:;:;:  >':;:       ミ::              |             ┃
             ::::::ミミミ:;:;:;:;:;../;:;:;:       :"             |             ┃
              ::::::::ミミミミ:;:/;:;:;:;:    ,.+"''-、________|__         ┃
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄;':;:;:;:   ,.+'"    ミ、              l          ┃
                 ::::::ミ;:;:;:;:.. ..ミ::::;:     ミ              . l          ┃
                  ::::::しUUU┘::::ミ:;:     ミ               l          ┃
                  ::::::::::::::::::::::::::└UUUじ                 l          ┃
__________________________________..,l          ┃
                                                 ━━━┻━━━
12.:02/01/17 00:58 ID:qy7qt4Ol
どかーん!
(⌒⌒⌒)
 ||

(・e・)

もうおこったぞう
13名無し募集中。。。:02/01/17 03:09 ID:WwLG7GIq
>>!2
なんか可愛いぞ(w
14名無し募集中。。。 :02/01/17 11:34 ID:PUbDhtlo
15?:02/01/17 11:37 ID:dfY4AbcX
>>14
石川?
>>15
梨華ちゃんでしょ?*^^*
17名前いれてちょ。。。:02/01/17 12:54 ID:PUbDhtlo
18名前いれてちょ。。。:02/01/17 12:57 ID:PUbDhtlo
19名前いれてちょ。。。:02/01/17 12:59 ID:PUbDhtlo
20名前いれてちょ。。。:02/01/17 13:11 ID:PUbDhtlo
21ねぇ、名乗って :02/01/17 17:29 ID:vf9ZF5K2
加護亜依ちゃんのおっきな乳房について(パート14)
http://tv.2ch.net/test/read.cgi/ainotane/1011207054/

石川梨華の「乳、よせまっせー!」
http://tv.2ch.net/test/read.cgi/ainotane/1010562576/

☆◆★●高橋 愛の乳スレ●★◆☆
http://tv.2ch.net/test/read.cgi/ainotane/1011170962/

ののたんの未完成なオパーイ萌え〜
http://tv.2ch.net/test/read.cgi/ainotane/1010803106/
22(^▽^)ローン:02/01/17 20:25 ID:31XhQLEH
やっぱり、保田乳だ!!
( `.∀´)<ヤッスー乳マンセー!!
( `.∀´)<ヤッスー乳マンセー!!
23ねぇ、名乗って:02/01/17 20:32 ID:/1wUEDlW
age
24名無し募集中。。。:02/01/19 01:33 ID:gDApuAQ6
かご乳>ごま乳>りか乳>あい乳萌え
25名無し娘。:02/01/24 11:24 ID:w8FfOlq2
廃スレっぽいので、適当に小説風味を始めます。
見つけた人がいましたら保全してくれるとありがたいです。
更新頻度は謎。頑張ります。


タイトル:『カオリ星人』
26名無し娘。:02/01/24 11:25 ID:w8FfOlq2
「また明日ー」
「うん、またねー」
 下校中の少女二人が互いに別れを告げる。なんて事のない日常。
 このお話しの主人公「辻 希美」は、そんな普通の中学生。2年生と言うふわふわした
学年に沿うように、些細な悩みの他に大した苦労もなく、今日まで過ごしてきた。

 今日までは……。
27名無し娘。:02/01/24 11:25 ID:w8FfOlq2
第1話『遭遇』

「お腹空いたれすねぇ、パン屋さんにちょっと寄ってみるのれす」
 辻希美、通称ののちゃんは、いたって普通の女の子。少しだけ空想癖があって、
舌足らずな喋り方をしてしまう以外は。
 そんなののちゃんは、今日も今日とて、買い食いを画策していた。

 この角を曲がれば、いつものパン屋がすぐそこにある。テストの点も悪くなかったし、
自分へのご褒美のつもりで、大好きなあげぱんを買おう。とても楽しい一時。
 駆け足気味で角を曲がるののちゃん。
 しかし、その目に飛び込んできたのは、のどかな街の風景でもなく、
いつものパン屋『ベーカーあべ』でもなく、銀色にキラキラ輝く壁。
 ドシーン。

「いったーい!」

 ぶつかった勢いで転んでしまったののちゃんの耳に、少し怒ったような声が聞こえた。
「ごめんなさいれす、申し訳ないのれす」
 おっちょこちょいのののちゃんには、咄嗟に謝ってしまう癖があった。転んだのは自分の方だったが、
この時もとりあえず謝罪の意を示した。

「ん、いいよ。壊れてないみたいだし。そっちこそ大丈夫?」
 返ってきた優しい声色に惹かれ、ののちゃんが顔を起こす。見ると、綺麗なお姉さんが立っていた。
自分の姉より年上かな、そんな風に思えた。
「平気れ……」
 途中まで言いかけたののちゃんは、思わず自分の目を疑う。目の前にいる人の、首より下、
そう、服装。何かが間違っている。何かどころか、全て間違っている。いや、これはこれでいいのか?

 銀色のスーツ。身体のラインがくっきり浮き出てる、まるで全身タイツの様な格好。
この異様な自体に、ののちゃんは幼い脳をフルに回転させ、結論を導く。きっとこの人はタレントさん。
テレビの撮影なんだ。そうだ。
「邪魔してしまって、すまないのれす。どうお詫びすれば」
 再び謝るののちゃんに対し、そのお姉さんが少し声を荒げた。
「ってかさ、あんた謝り過ぎ。そういうのカオリ良くないと思う。大体さ、
すぐに謝る人に限って、全然反省してないんだよね。
 カオリ思うに;イさっはひ;opurewifnん久江を良いyal;sd
をいれhおい言えwフィ上ゐいdfrg46ウ四拾六145t345w4thjjdsh負へウfフ………………」

(長いのれす)
 最初の方は理解出来たののちゃんだったが、いつまでも終わらない説教に、正直逃げたくなっていた。
 あげぱんを買って、家でゆっくりマンガでも読みつつ、幸せに浸る。
 そんなささやかな願いなのに。

「あ……」
 勇気を振り絞ったののちゃんは、変な格好のお姉さんの演説を遮る。
「なに? カオリ終わってないんですけど」
「あ、あの、これ、テレビの撮影かなにかれすか?」
「はあ? テレビ? なにそれ。ちょっと待ってね」
 怪訝な表情から一転、腕に付いているブレスレットの様な物をいじるお姉さん。

「んーっと。あ、なるほどね、箱型受像投影機の事かあ。いきなり英国語言われたからカオリ混乱したよ。
翻訳機間違えて持ってきたのかと思った。でもあんたの方も間違ってるよ。正しくはテレビジョンだし」
「はぁ……。じゃあお姉さんは、誰なんれすか?」
「ごめーん! すっかり言うの忘れてた。カオリはね、カオリ星から来たの。よろしくね」
 もはや事態はののちゃんの理解を超えていた。バタン。
「うわ! いきなりどうしたの??」
 ののちゃんは深い眠りの中に。
28名無し娘。:02/01/25 09:26 ID:36BBkTa8
第2話『カオリ星人』

 少し離れた所から聞こえてくる物音。鼻をくすぐる甘い香り。体を覆う柔らかい感触。ぼんやりとした視線を
天井に向ける。穏やかなクリーム色。
「おかあさん?」
「ん? あー目が覚めたみたいだね。急に倒れるからさ、カオリ超焦ったよ」
 まどろんでいたののちゃんの意識が、突然現実世界にひっぱられる。
 ガバッ。
 背を起こしたののちゃんの前には、先ほどのお姉さんの顔が迫っていた。銀色のスーツから伸びた手が
額に触れる。そして、えんぴつの様なものを再び額に当てる。

「熱は下がったみたいね」
「ココはどこれすか?」
「今説明するから、もう少し横になってな。ね」
 ののちゃんをもう一度寝かせ、自分は部屋の隅から引っ張ってきた椅子に座るお姉さん。
優しい笑顔をしている。不思議な感覚につつまれてはいたが、恐怖は感じていなかった。

「どこから話そうかなぁ。んとさ、私はこのお星の人間じゃないの。名前は地球風に発音するとィーダ・カオリ。
カオリ年下の人に下の名で呼ばれるの好きじゃないから、ィーダさんとかそんな感じで呼んで」
「いいらさんれすか」
「ィーダ」
「いいらさん」
「ィーダだよ。んもう、まあいいか。発音が難しいのかなあ」
 ののちゃんは舌足らずなので仕様がないのです。

「でね、ののちゃんが居るのは私の宇宙船の中。高次元ドライブ機能搭載の最新型だよ。
宇宙の端から端まで90年で移動出来るの。そんで、この部屋はカオリの寝室」
 どうして自分の名を知ってるのか、こういへんろあいぶって何? たくさんの疑問が
浮かんでは消えて行くののちゃんだったが、何をどう聞けば良いのかわからないので、
とりあえず「わかった」という顔をする。

「カオリはね、ののちゃん達が地球って呼んでるこの星に、あ、本当はこの星はハロー星って言うんだよ、
知ってた?」
 首を振るののちゃん。
「そうだよね、ウチらが勝手に呼んでるだけだから。この星の人は知らなくて当然だよね」

 少し考えた顔をした後、思い立った様に手に持った箱をいじる。と、部屋の中が急に暗くなり、
目の前に青い板が現れた。
29名無し娘。:02/01/25 09:26 ID:36BBkTa8
「これは空間モニタ。まーテレビジョン見たいなもん」
 説明を聞いているうちに、青い板に幾つかの円と記号、数字が浮ぶ。
「このね、小さい点があるでしょ。これが、この星の人が言うところの太陽系」
 カオリの指し示した点が大きくなる。
「ね? 見た事あるでしょ?」
 大きくなった点は、確かに科学の教科書で見たことがある、太陽と惑星の形になった。

 拡大された太陽系と、その横に映し出された青い地球の映像を見ながら、
思わずののちゃんはつぶやいた。
「キレイれすねえ」
「うん……すっごい綺麗だよね。この青と白と茶色の絶妙なバランス。こんな素敵な星、
カオリの住んでた星系にも無かったよ」
 いつの間にかののちゃんの横に寝転がっていたカオリが言う。
「じゃ次はもっと大きなお話しね」
 大きくなっていた太陽が再び小さくなり、また点に戻る。そして今度は点すら判別出来なくなり、
大きな渦が現れた。

「これが太陽系のある銀河。ウチらはテレート銀河って呼んでるの。ぶっちゃけ、かなり田舎だよ」
 ののちゃんの顔を覗きこみながら、少しだけイジワルそうな顔をするいいらさん。
「そうだ、スゴイの見せたげるよ」
 そう言って立ちあがると、部屋の出入り口に向かう。
「こっち来て」
 言われるままいいらさんの横に立つ。先ほどまで光っていた青い板が一瞬消える。次の瞬間、
部屋中がまばゆい光につつまわれた。
「わ……」

 ちりばめられた宝石か、夜空に舞う白雪のごとく、室内に満ちる小さな光の粒。
 あまりの美しさに、言葉を失うののちゃん。
「これは……」
「このね、粒が見える?」
 しゃがみ込みながら、床から数センチにある光を指差す。
「これがテレート銀河」
 いいらさんの細い指先に注意を向けるののちゃん。そこには、本当に小さな小さな光の粒があった。
顔を近づけてよく見ると、確かに渦を巻いているのが判る。

「ここにののは住んでるんれすか?」
「そうだよ」
「小さいれすねえ」
「うん。とっても小さいし、近くに他の銀河が少ないの。星系間連合にも所属してない。
滅多に人がこない田舎の銀河」
 また田舎と言ったいいらさんに、ちょっとだけムッとする。

「じゃあいいらさんはどこの人なんれすか」
「カオリ? カオリはカオリ星って言ったじゃん」
「田舎生まれのののには、カオリ星なんてわからないのれす」
「怒ったの?」
「別に怒ってないれすよ」
 笑いを噛み殺しているのか、ひとしきり顔を伏せるいいらさん。

「そんじゃね、こっち来て」
 出入り口から真反対へ歩き、今度はそこを見ろという仕草をする。その指先にも、小さな光の粒があった。
「これが?」
「これはサポロ銀河。結構大きな銀河だよ。ホカイ星系にあるの。お隣さんは星系間連合の本拠地、
ホンシュウ星系だから、超都会。」
「へー」
 と言ってはみたものの、実際何の事やらのののちゃんだった。
30名無し娘。:02/01/25 09:27 ID:36BBkTa8
「このサポロ銀河の端っこに、箱庭惑星があるの。そこがカオリ星。本当は違う名称だけどね。
でもカオリしか住んでないから、カオリ星って呼んでるんだよ」
 言いながら、手に持った箱をいじるカオリ。次第に小さな粒が球体になる。
「この星はね、カオリが自分で作ったんだよ。超面倒だったけど、30年ローンで場所買って立てたの。
面倒つっても、ほとんどはロボットが作ってんだけどさ」
 野球ボールほどの大きさだった球体は、今や部屋を埋めるほど大きくなっていた。

「これがカオリ星れすかあ。自分の星なんてすごいれすねー」
 素直に感動するののちゃん。いいらさんは少し照れたように頭を掻く。
「まーねー。なんつーかカオリって優秀だからさ。学校であったコンテストで優勝しちゃって。
人工惑星キット貰ったんだよねー。こう見えても、科学者目指してんだよねー」
「このお星は、どのくらいの大きさなんれすか?」
「ぶッ。お、大きさ? 大きさは……」
 何やらごにょごにょとつぶやく。聞き取れなかったので、もう一度ののちゃんは聞いてみた。

「6畳と10畳の二間。キッチンと小さなテラス。バストイレは別」
「のののおウチの方が、3部屋多いれすよ」
 無邪気な笑顔をするののちゃん。
「……。応募書類よく見なかったんだもん。こんな小さいなんて知らなかったんだもん」
 肩をガックリと落としうなだれた姿は、とても優秀な宇宙人に見えなかった。
31名無し娘。:02/01/26 12:03 ID:H9Tf1Lmi
自分で保全。今日明日と家にいないので更新は月曜に。
っつか誰も見てなさそうだ。
別に読まなくても通りすがりでも良いので、保全してくださると、
感謝感激雨あられ。キーーーーーンッ!
32 ◆moujqRHk :02/01/26 18:41 ID:qNc7cxbB
練習
33 ◆BI2EKkq. :02/01/26 18:42 ID:qNc7cxbB
a
34 ◆ECR2h5z2 :02/01/26 18:43 ID:qNc7cxbB
35 ◆L8wkmIjE :02/01/26 18:44 ID:qNc7cxbB
終わり
36 ◆KOSINeo. :02/01/27 07:52 ID:qKfWTZf4
小説総合スレッドで紹介&更新情報掲載しても良いですか?
http://tv.2ch.net/test/read.cgi/ainotane/1000493808/
37名無し娘。:02/01/27 12:04 ID:vRn1kAb4
出先でネットカフェ行くのも本当にどうかと思う。アホだ。
>>32-35
ありがとう。トリプはラウンジかどっかのトリプスレで不思議の国のトリッパーを落すと、
多少は自分が使いたいの使えるよ。
っつかただの保全なのかな。
>>36
こんなんでヨロシければどうぞおながいします。
いつも助かってますよ。

更新明日です、お待ちくださいまし。
38名無し募集中。。。:02/01/28 01:53 ID:8Ke+iQtv
かお乳はあれ以上でかいと、かえってあの完璧なトルソのバランス
が崩れる。85センチあるからカップはあれで十分。
39名無し娘。:02/01/28 10:07 ID:klA1DgkO
しばらくは大人しく説明を聞いていたののちゃんだったが、急に鳴りだしたお腹の音によって、
自分がパン屋に行く途中だった事を思い出した。
「てへへ。のの、お腹が空いてしまったのれす」
 頬を赤らめながらお腹をさするののちゃん。
 気持ち良く話していたのを遮られ、少々不機嫌な面持ちをしたいいらさんではあったが、
何か良い事を思いついたかの様に、ののちゃんをキッチンへと誘った。

 いいらさんに即されて寝室を出ると、そこはすぐキッチンとダイニングになっていた。
 言われるがままにののちゃんが席に着くと、脇のオーブンらしきものから、
とても良い匂いが漂ってきた。
「丁度パン焼いてるとこだから、それでも食べる? さっき買った生地で作ってるんだけど」
「本当れすか! はいはいっ! 食べるのれす!」
「へへ。カオリ料理好きだからさ、特注しちゃって、この船に合うキッチンを作ってもらったんだよね」

 少し音のずれた鼻歌を歌いつつ、小躍りしながらオーブンの前に立ついいらさん。聞いた
ことも無い曲ではあったが、なんだかののちゃんも楽しくなってきた。
「うん。カンペキだ。マジやばいかもしんない。カオリね、いつも良いお嫁さんになるねって
言われるんだよね」
 ワクワクしながら待つののちゃんの前に、大きな皿に盛られたパンが並ぶ。が、
それを目にした途端、ののちゃんは何かいけないものを感じた。
40名無し娘。:02/01/28 10:12 ID:klA1DgkO
確かに、そこから漂う匂いは、焼きたてのパンだった。思わず食欲を誘われる、そんな香りだった。
しかし、色が、ヤバイ。青と緑とオレンジだ。
 ののちゃんは思い出していた。小学校の頃、半分だけ残した食パン。帰宅途中に食べよう、
そう思っていた。でも、掃除当番だったののちゃんは、すっかりそれを忘れていた。翌日学校へ来た時、
今日は持って帰らなきゃ、そう思った。学校で捨ててしまうと、先生に怒られるから。
 そう考えつづけて2週間が経ったある日、かつて食パンだった物は、食パンではなくなっていた。
 その時と同じ色。

「いいらさん……」
 重い口を開くののちゃん。いいらさんはまだオーブンの前に居まし

た。
「これは、なんれすか?」
「ん? パンだけど。美味しそうでしょ?」
「パンれすか……」
「パンだよ。どうしたの? 美味しくなかったの?」
「いえ、そういう訳ではないというかなんと言うか……」

 残りのパンを運び合い向かいに座ったいいらさんは、不思議そうな顔でののちゃんを見た。
「食べてないじゃん。お腹空いてないの?」
「……」
「変なの。言ってくれなきゃカオリわかんないよ」
 そう言い捨てると、さっさと自分はパンを食べ始めた。モグ、モグ。
「何だよー、超美味しいじゃんよ。やっぱポポンタ菌を付けて正解だったね。こんな美味しくなったよ」
「! ポポンタ菌ってなんれすか!?」
「うっそ、知らないの? 調味料じゃん。旅先の食品にはコレって、こんなの常識だよ」
「食べれるんれすか?」
「はあ? カオリ食べてるでしょ? 失敬だよキミ。これだからハロー星の人間は島星根性丸出しって言われるんだ。
カオリがここに来た理由も知らないで!」
 とうとういいらさんは怒り出してしまいました。
41名無し娘。:02/01/28 10:17 ID:klA1DgkO
変なとこで改行されちった。「オーブンの前に居ました」です。
>>38
再利用のネタ小説スレにたまにこういうのあるけど、
こういうの書き込む人って、タイトルと1だけ見て書きこむんだろうか。
他にどんなレスが付いてるか気にならんのかな。
と言いつつも、飯田の話しだし一応関連つけてるのか。
飯田乳、漏れも好きよ。尻の方が好きやけど。
バランスはあれで完璧だよねー。
4238:02/01/28 16:55 ID:tAKoYGUt
>>41
乳スレとして再再利用を図ったまでのこと。ネタ小説は好きな
ように書くがよかろうし、本来のスレタイトル通りの書き込み
も排除されることはないと信じる。ちなみにオレもかお尻も好
き。
43名無し募集中。。。:02/01/30 04:02 ID:kL3mxAdY
保全
44名無し募集中。。。:02/01/31 03:58 ID:vyk26MGP
保全
45名無し募集中。。。:02/02/02 07:28 ID:3RzUWYS8
保全
46名無し募集中。。。:02/02/03 00:58 ID:q4oPz9cs
保全
47名無し娘。:02/02/03 12:02 ID:1dmFubvz
「ののちゃん」ておいっ!
って感じで普段使わない文章で書いちゃったので、いきなり挫折気味です。
直して載せ直すか、頑張ってこれで行くか、色々推敲してます。
今週には結論出しますので、期待せずにいてください。
面倒だったら保全やめちゃってもいいっす(←無責任
自分でやりますんで。完結はさせます。
48これが答えだよ>作者:02/02/04 03:40 ID:7713MSJi
保全(w
49名無し募集中。。。:02/02/05 01:02 ID:t+bVAaN3
保全
50名無し募集中。。。:02/02/06 08:14 ID:u41+NTyv
作者コメント待ち保全
51名無し募集中。。。:02/02/08 04:07 ID:rnqCnpvQ
保全しとく
52名無し娘。:02/02/08 09:30 ID:TLWUa0zl
>>48-51
保全どうもでやんす。感謝です
>>50
ののちゃんでいきまっさ。

んで、これから載せるのは、改定版です。新規更新じゃないっす。
微妙に変ってる程度なので、読まなくても全然大丈夫です。
更新は明日より。
53名無し娘。:02/02/08 09:31 ID:TLWUa0zl
「また明日ー」
「うん、またねー」
 下校中の少女二人が互いに別れを告げる。なんて事のない日常。
 このお話しの主人公「辻 希美」は、そんな普通の中学生。2年生と言うふわふわした
学年に沿うように、些細な悩みの他に大した苦労もなく、今日まで過ごしてきのです。

 今日までは……。

第一話『遭遇』

「お腹空いたれすねぇ、パン屋さんにちょっと寄ってみるのれす」
 辻希美、通称ののちゃんは、いたって普通の女の子。少しだけ空想癖があって、
舌足らずな喋り方をしてしまう以外は。
 そんなののちゃんは、今日も今日とて、買い食いを画策していました。

 この角を曲がれば、いつものパン屋がすぐそこに。テストの点も悪くなかったし、
自分へのご褒美のつもりで大好きなあげぱんを買おう。とても楽しい一時です。
 駆け足気味で角を曲がるののちゃん。
 しかし、その目に飛び込んできたのは、のどかな街の風景でもなく、
いつものパン屋『ベーカーあべ』でもなく、銀色にキラキラ輝く壁。
 ドシーン。

「いったーい!」

 ぶつかった勢いで転んでしまったののちゃんの耳に、少し怒ったような声が聞こえました。
「ごめんなさいれす、申し訳ないのれす」
 おっちょこちょいのののちゃんには、咄嗟に謝ってしまう癖がありました。転んだのは
自分の方でしたが、この時もとりあえず謝罪の意を示すののちゃん。

「ん、いいよ。壊れてないみたいだし。そっちこそ大丈夫?」
 返ってきた優しい声色に惹かれ、ののちゃんが顔を起こします。見ると、綺麗なお姉さんが
立っていました。自分の姉より年上かな、そんな風に思えました。
「平気れ……」
 途中まで言いかけたののちゃんは、思わず自分の目を疑いました。目の前にいる人の、
首より下、そう、服装。何かが間違ってる。何かどころか、全て間違ってる。いや、
これはこれでいいのかな?

 銀色に輝くスーツ。身体のラインがくっきり浮き出て、まるで全身タイツの様な格好。
この異様な自体にののちゃんは幼い脳をフルに回転させ、結論を導きました。
 きっとこの人はタレントさん。テレビの撮影なんだ。そうに違いない。
「邪魔してしまって、すまないのれす。どうお詫びすればいいか」
 再び謝るののちゃんに対し、そのお姉さんは少し声を荒げました。
「ってかさ、あんた謝り過ぎ。そういうのカオリ良くないと思う。大体さ、
すぐに謝る人に限って、全然反省してないんだよね。
 カオリ思うに――」
54名無し娘。:02/02/08 09:32 ID:TLWUa0zl
(な、長いのれす)
 最初の方は理解出来たののちゃんでしたが、いつまでも経っても終わる事のない説教に、
正直逃げたくなっていました。
 あげぱんを買って、家でゆっくりマンガでも読みつつ、幸せに浸る。
 そんなささやかな願いなのに。

「あ……」
 勇気を振り絞ったののちゃん、声を発してお姉さんの演説を遮ります。
「なに? カオリ終わってないんですけど」
「あ、あの、これ、テレビの撮影かなにかれすか?」
「はあ? テレビ? なにそれ。ちょっと待ってね」
 怪訝な表情から一転、腕に巻いている、ブレスレットの様な物をいじるお姉さん。

「んーっと。あ、なるほどね、箱型受像投影機の事かあ。いきなり英国語言われたからカオリ混乱したよ。
翻訳機間違えて持ってきたのかと思った。でもあんたの方も間違ってるよ。正しくはテレビジョンだし」
「はぁ……。じゃあお姉さんは、誰なんれすか?」
「ごめーん! すっかり言うの忘れてた。カオリはね、カオリ星から来たの。よろしくね」
 もはや事態は、ののちゃんの理解を超えていました。……バタン。
「うわ! いきなりどうしたの??」
 ののちゃんは、深い、眠りの中に。
55名無し娘。:02/02/08 09:32 ID:TLWUa0zl
第2話『カオリ星人』

 少し離れた所から聞こえてくる物音。鼻をくすぐる甘い香り。体を覆う柔らかい感触。
ぼんやりとした視線を天井に向ける。穏やかなクリーム色の世界。
「おかあさん?」
「んー? あー目が覚めたみたいだね。急に倒れるからさ、カオリ超焦ったよ」
 まどろんでいたののちゃんの意識が、突然現実世界にひっぱられます。
 ガバッ。
 背を起こしたののちゃんの前には、先ほど出会ったお姉さんの顔が迫っていました。
銀色のスーツから伸びた手が、額に触れる。そして、えんぴつの様なものを再び額に。

「熱は下がったみたいね」
「ココはどこなのれすか?」
「今説明するから。もう少し横になってな、ね」
 ののちゃんをもう一度横にさせると、部屋の隅にあった椅子を引っ張ってくるお姉さん。
優しい笑顔をしていました。
 不思議な感覚に包まれるののちゃんでしたが、恐怖は感じませんでした。

「どこから話そうかなぁ。んとさ、私はこのお星の人間じゃないの。名前は地球風に発音するとィーダ・カオリ。
カオリ年下の人に下の名で呼ばれるの好きじゃないから、ィーダさんとかそんな感じで呼んで」
「いいらさんれすか」
「ィーダ」
「いいらさん」
「ィーダだよ。んもう、まあいいか。発音が難しいのかなあ」
 ののちゃんは舌足らずなので仕様がないのです。

「でね、ののちゃんが居るのは私の宇宙船の中。高次元ドライブ機能搭載の最新型だよ。
宇宙の端から端まで90年で移動出来るの。そんで、この部屋はカオリの寝室」
 どうして自分の名を知ってるのか、こういへんろあいぶって何? 
 たくさんの疑問が浮かんでは消えて行くののちゃん。しかし、
何をどう聞けば良いのかもわからないので、とりあえず「わかった」という顔をします。

「カオリはね、ののちゃん達が地球って呼んでるこの星に、あ、本当はこの星はハロー星って言うんだよ、
知ってた?」
 首を振るののちゃん。
「そうだよね、ウチらが勝手に呼んでるだけだから。この星の人は知らなくて当然だよね」

 少し考えた顔をし、それから思い立った様子で、手に持った箱をいじるお姉さん。
 カチリ。
 スイッチを入れたような音すると同時に、部屋の中が急に暗くなり、ののちゃんの前に、
薄く光る青い板が現れました。

「これは空間モニタ。まーテレビジョン見たいなもん」
 ののちゃんがポカンとしている内に、青い板には、幾つかの円と記号、
そして数字が浮んでいます。
「このね、小さい点があるでしょ。これが、この星の人が言うところの太陽系」
 いいらさんの指し示した点が、大きくなりました。
「ね? 見た事あるでしょ?」
 大きくなった点は、科学の教科書で見たことのあった、太陽とその惑星の形になりました。
56名無し娘。:02/02/08 09:33 ID:TLWUa0zl
 拡大された太陽系と、その横に映し出された青い地球の映像を見ながら、
思わずののちゃんはつぶやきました。
「キレイれすねえ」
「うん……、すっごい綺麗だよね。この青と白と茶色の絶妙なバランス。こんな素敵な星、
カオリの住んでた星系にも無かったよ」
 いつの間にか、ののちゃんの横に寝転がっていたいいらさんが言います。
「じゃ次はもっと大きなお話しね」
 大きくなっていた太陽が再び小さくなり、また点に。そして今度は点すら判別出来なくなり、
大きな渦が現れました。

「これが太陽系のある銀河。ウチらはテレート銀河って呼んでるの。ぶっちゃけ、かなり田舎だよ」
 ののちゃんの顔を覗きこみながら、少しだけイジワルそうな顔をするいいらさん。
「そうだ、スゴイの見せたげるよ」
 そう言って立ちあがると、部屋の出入り口に向かいました。
「こっち来て」
 言われるままいいらさんの横に立つののちゃん。
 先ほどまであった青い板が一瞬にして消え、次の一瞬で、部屋全体が、
溢れんばかりの光に包まれました。
「わぁ……」

 ちりばめられた宝石か、夜空に舞い落ちる白雪のごとく、室内に満ちる小さな光の粒。
 そのあまりの美しさに、言葉を失うののちゃん。
「これは……」
「このね、粒が見える?」
 しゃがみ込みながら、いいらさんは床から数センチにある光を指差します。
「これがテレート銀河」
 細い指先に注意を向けるとそこには、本当に小さな小さな光の粒がありました。
顔を近づけてよく見ると、確かに渦を巻いているのが判ります。

「ここにののは住んでるんれすか?」
「そうだよ」
「小さいれすねえ」
「うん。とっても小さいし、近くに他の銀河が少ないの。星系間連合にも所属してない。
滅多に人がこない田舎の銀河」
 田舎という言葉に反応したののちゃんは、少しムッとしました。
57名無し娘。:02/02/08 09:34 ID:TLWUa0zl
「じゃあいいらさんはどこの人なんれすか」
「カオリ? カオリはカオリ星って言ったじゃん」
「田舎生まれのののには、カオリ星なんてわからないのれす」
「怒ったの?」
「別に怒ってないれすよ」
 笑いを噛み殺すがごとく、ひとしきり顔を伏せるいいらさん。上下するのは肩のみ。

「そいじゃあね、こっち来て」
 出入り口から真反対、部屋の奥まった所まで歩いたいいらさんは、今度は
そこを見ろという仕草をします。その指先にも、小さな光の粒がありました。
「これが?」
「これはサポロ銀河。結構大きな銀河だよ。ホカイ星系にあるの。お隣さんは星系間連合の本拠地、
ホンシュウ星系って言って、超都会」
「へー」
 と言ってはみたものの、実際は、何の事やらのののちゃんでした。

「このサポロ銀河の端っこに、箱庭惑星があるの。そこがカオリ星。本当は違う名称だけどね。
でもカオリしか住んでないから、カオリ星って呼んでるんだよ」
 説明しつつ、手に持った箱をいじるいいらさん。小さかった粒が、次第に球体に。
「この星はね、カオリが自分で作ったんだよ。超面倒だったけど、30年ローンで場所買って立てたの。
面倒つっても、ほとんどはロボットが作ってんだけどさ」
 野球ボールほどの大きさだった球体が、今や部屋を埋めるほどの大きさになっていました。

「これがカオリ星れすかあ。自分の星なんてすごいれすねー」
 素直に感動するののちゃん。いいらさんは照れたように頭を掻きます。
「まーねー。なんつーかカオリって優秀だからさ。学校であったコンテストで優勝しちゃって。
人工惑星キット貰ったんだよねー。こう見えても、科学者目指してんだよねー」
「このお星は、どのくらいの大きさなんれすか?」
「ぶッ。お、大きさ? 大きさは……」
 何やらごにょごにょとつぶやくいいらさん。聞き取れなかったので、
ののちゃんはもう一度聞いてみました。

「んもう。6畳と10畳がある二間。キッチンと小さな可愛いテラス。
しかもバスとトイレは別なんだから」
「だったらのののおウチの方が3部屋も多いのれす」
 自分ちの方が勝っていたと、無邪気な笑顔をするののちゃん。
「……。だってさ。応募書類よく見なかったんだもん。細かい文字で書いてあったんだもん。
こんな小さいなんて知らなかったんだよ」
 肩を落としうなだれる姿は、とてもじゃないけど、優秀な宇宙人には見えませんでした。
58名無し娘。:02/02/08 09:35 ID:TLWUa0zl
 そうやって、しばらくは大人しく説明を聞いていたののちゃん。
 けれども、突然に鳴りだしたお腹の音が、非情にも自分の本来の目的、
パン屋に行く最中だったという事を、思い出させてしまいました。
「てへへ。のの、お腹が空いてしまったのれす」
 頬を赤らめながらお腹をさするののちゃん。
 またも自分の話しを遮られ、少々不機嫌な面持ちをするいいらさんでしたが、
今度は何か良い事を思いついたのか、ののちゃんをキッチンへと誘いました。

 寝室を出るとすぐそこは、キッチンとダイニング。
 言われるがままにののちゃんが席に着くと、脇のオーブンらしきものから、とても良い匂いが
漂ってきました。
「丁度パン焼いてるとこだからさ、それ食べる? さっき買った生地で作ってるんだけど」
「本当れすかあ! はいはいっ! 食べます! いただくのれす!」
「へへ、カオリ料理好きだからさ。特注でね、この船に合うキッチンを作ってもらったんだ」

 少し音のずれた鼻歌を歌いつつ、小躍りしながらオーブンの前に立ついいらさん。聞いた
ことのない曲でしたが、何だかののちゃんも楽しくなってきました。
「うん。カンペキだ。マジヤバイかもしんない。カオリね、いっつも良いお嫁さんになるねって
言われるんだよね」
 ワクワクしながら待つののちゃんの前に、大きな皿に盛られたパンが並びます。
 がしかし、それを目にした途端に、何かいけないものを感じました。

 確かに、そこから漂う匂いは、焼きたてのパンのものです。思わず食欲を誘われる、
そんな香りでした。だけども、色がおかしい。青いのです。
 ののちゃんは思い出していました。
 小学校の頃、半分だけ残した給食のパン。帰宅途中に食べようと思って。でも、
掃除当番だったののちゃんは、すっかりそれを忘れたのです。
 翌日学校へ来た時に、今日こそ持って帰らなきゃ、そう思いました。
 学校で捨ててしまうと、先生に怒られるから。
 
 そう考えつづけて2週間ほど経った日、かつて食パンだった物体は、
食パンではなくなっていました。あの時と、同じ色。
59名無し娘。:02/02/08 09:35 ID:TLWUa0zl
「いいらさん……」
 重い口を開くののちゃん。依然として、いいらさんはオーブンの前にいます。
「これは、なんれすか?」
「ん? パンだけど。美味しそうでしょ?」
「パンれすか……」
「パンだよ。どうしたの? 美味しくなかったの?」
「いえ、そういう訳ではないと言うかなんと言うか……」

 残りのパンを運び終わり向かいの席に着いたいいらさんは、不思議そうな顔をして、
ののちゃんを見つめました。
「食べてないじゃん。お腹空いてないの?」
「……」
「変なの。ちゃんと言ってくれなきゃカオリわかんないよ」
 そう言いうと、さっさと自分はパンを食べ始めます。
 モグ、モグ。
「何だよー、超美味しいじゃんよ。やっぱポポンタ菌を付けて正解だったね。こんなに美味しくなった」
「ポ、ポポンタ菌!?」
「な、なによ突然。ビックリするじゃんか」
「ポポンタ菌って何れすか?」
「うっそ、知らないの? 調味料じゃん。旅先の食品にはコレって、小学生でも知ってるよ」

 奇妙なパンを美味しそうに食べ続ける、そんないいらさんに対し、ののちゃんは質問を続けました。
「食べれるんれすか? だって変な色してますよ?」
「は? カオリが食べてるじゃん」
 そんな風に言れても、一度湧きあがった不信感はなかなか拭えません。なにより、
目の前に居るのは自分とは違う星の人間。
 何事も無かったように接していた今までの方が、むしろ変だったのではと、ののちゃんは思い始めました。

「何でそんな目で見てんの」
「いいらさんは地球の人じゃないんれすよね」
「さっき言ったじゃん」
「……」
「何が言いたいのよ」
「……」
「すぐそうやって黙る」
 二人の間を、次第に険悪なムードが漂います。
 いいらさんは既に食事をやめていました。
60名無し娘。:02/02/08 09:36 ID:TLWUa0zl
「食べたいって、ののちゃんが言ったから出したのに」
「……らって」
「言いたい事があるなら声に出しなさいよ」
 相手の目を見ながら、意を決するののちゃん。

「らって。らってそんなのは親切の押し売りれすよ!」
「押し売りって。別にそんなつもりじゃ」
 途惑いの表情を見せるいいらさん。
 それを見た途端、やり切れない想いがののちゃんを支配しました。
「宇宙人の作った料理なんて食べれないのれす!」
 退くに退けなくなったののちゃんは、思わず怒鳴り声をあげ、勢いで皿を押しのけます。と、
パンの盛られた皿が床に落ち、音を立てて割れてしまいました。
 
「なにすんのよ!」
 咄嗟に腕を伸ばすいいらさん。その手はののちゃんを掴もうとしましたが、
寸ででののちゃんは避けます。
 かわしながら、ののちゃんは吐き捨てる様に言いました。
「宇宙人のくせに」

 不意におとずれる一瞬の間。続くいいらさんの叫び。
「フザケンナよ! だから僻地の人間は嫌なんだっ!」
 とうとういいらさんは怒り出してしまいました。
61名無し募集中。。。:02/02/09 15:54 ID:7D4IEGox
保全します
62ねぇ、名乗って:02/02/10 23:46 ID:mLZfQglK
保全しとこう
63名無し募集中。。。:02/02/11 23:12 ID:yuuJWwWI
保全
64名無し募集中。。。:02/02/12 23:13 ID:MSw/yHdO
保全でもするか
65名無し娘。:02/02/13 10:54 ID:4L9G2ppb
自分で保全。
毎日メモ帳開くんです。メモ帳。
そしたらなんか書いては消し書いては消しなんです。
で、よく見たらなんか自分の書き込みがあって、更新は明日、とか書いてるんです。
もうね、アホかと。馬鹿かと。

はいアホでバカでした。ごめんなさい。最早頑張ります、いつか絶対更新、
としか言い様が無いです。自分で保全しますので、ご勘弁ください。
66名無し娘。:02/02/14 10:54 ID:IqOKbWK5
hozem
67名無し募集中。。。:02/02/15 02:54 ID:ph/GMK4/
保全
68名無し募集中。。。:02/02/16 04:03 ID:AAzFtTCP
作者をひっそり応援しつつ保全
69名無し娘。:02/02/16 11:38 ID:2M/mNPP8
『お友達』

「宇宙人宇宙人って。じゃあおめーらは何様だ。こっちから見ればそっちも宇宙人だっつの」
 声を荒げるいいらさん。本気で怒っているらしく、言葉使いがいきなり変わってしまいました。
 でも、言われっ放しになるわけにはいかないののちゃんです。何と言われても、
ここは間違いなく地球なのですから。
「ののが住んでる星に、勝手に来たのはいいらさんの方じゃないれすか。いくらいいらさんでも、
ののも怒るのれすよ」
「ハハッ、勝手ときたの。そう、勝手か。カオリが来た理由も知らないでよく言えるね」
「来た理由なんて知らないれすよ。いいらさん言ってないじゃないれすか」
「じゃあ教えたげるよ、ちゃんと聞けよな」
「聞きますよ。バカにしないでくらさい」

 紅茶の入ったカップを手に取り、口元へ運ぶいいらさん。「ふぅ」と息をつきながら、歩き始めます。
「カオリがこの星、ハロー星を知ったのは中学の時だよ。課外授業で宇宙の勉強してる時。
 一人一人が惑星を決めて、その星の事を調べて発表したの。みんな大きくて有名な惑星選んだけどね、
カオリだけは、自分たちの星からずっと離れたこの星が気になった。小さくてど田舎な星だったけど、
とっても綺麗だったんだよ。そこに妙に惹かれた。
 でもね、調べれば調べるほど、そこに住んでる人がいかに身勝手な人間達だってわかった。
 貴重な資源を好き放題使って『それがどうしたの?』って顔してる。
 確かに自分の星の資源だよ、連合決議で決められた条約にも、自星の権利としてそれは認められてるし、
準加入に過ぎないハロー星は口出しをされる義務はない。
 知らないだろうけど、いわゆる大国って呼ばれる国はもう、この星以外にも人間がいる事は知ってるの。
数十年前から一応の交流はあるんだよ」

 ののちゃんはビックリしました。
 学校の友達に、UFOとかそういう事が大好きな子が一人いましたが、
その子のお話しはいつも半信半疑で聞いていました。とてもじゃないけど、信じられなかったからです。
 しかし、まさか自分がそれを経験する事になるなんて。
70名無し娘。:02/02/16 11:39 ID:2M/mNPP8
「でもさ、カオリ思うの。それってやっぱ自分勝手じゃない?
 宇宙は有限なんだよ? 自分達だけが良ければって気持ちを持ってたら、いつか破綻する。
そんな風にして他星間の戦争に発展した例はいくつもある。本来ウチらは助け合うべきなんだよ。
 カオリはね、それをハロー星の人に伝えたくて、一生懸命勉強して、惑星間航空士の資格をとった。
惑星連合の研究所にも就職した。僻地環境対策のエキスパート目指した。
 ハロー星への出張が決まった時は、本当に嬉しかったよ。夢が叶ったって。
 何が出来るかわかんないけど、この目でハロー星を見れるってだけで、決まった日からろくに寝れなかった」

 身振り手振りを交え、あれこれと表情を変えながら喋るいいらさんは、
もう怒ってる感じではありませんでした。
 むしろ、疲れ果てたような、悲しい顔に変っていました。
 手にしたままのカップを再び口に運ぶと、ポカンとしてるののちゃんの隣に座りました。
 ののちゃんは、いいらさんの顔を覗き込もうとしましたが、うつむき加減のその横顔は、
長い髪によって隠されていました。

「カオリがここに来てから、もう半年も経った。その間あちこちの国に行ったよ。
 なのにさ、どこへ行ってもみんな適当にあしらうわけ。そりゃこっちはたった一人の使節団だよ。
 連合事務局に無理やり頼みこんで決めてもらったんだもん、諸々の費用だってほんのちょっと」
 いいらさんの声のトーンが、次第に小さくなりました。
 見れば、いじけた様にテーブルに伏しています。組んだ腕の間から、ボソボソと声がしました。

「まぁ確かに、カオリが変にこの星にこだわり過ぎてるだけだけどさ。
 所長にも友達にもお世話になった先生にもみんなに止められたけどさ。
 みんなハロー星のことちゃんと知らないんだ。田舎だから放っておけばって、そんな風に思ってる。
 期待されてないのはわかってる。余計なお世話なのもわかってる。
 きっと変な奴ってバカにされてんだ」
71名無し娘。:02/02/16 11:39 ID:2M/mNPP8
 感情の起伏が激しい人。ののちゃんは、いいらさんの事をそう思いました。
 何故なら、さっきまで怒っていたのに、今度は涙声になっているからです。
(そして、とても繊細な人)
 会ってからまだそれほど経っていないけど、何だかいいらさんがとても愛しく感じました。

 顔を真っ赤にして、時にはちょっと涙ぐみながら、懸命に説明してくれたいいらさん。
 とっても長い話しだったけど、ののちゃんにはみんなわかりました。

 語るだけ語り尽くしたいいらさんは、ののちゃんの方を向き、謝りました。
「いいらさん……」
「ホントごめんね。情緒不安定だよね。小さい頃から言われてた。自分でもわかってんだけど、
どうしても熱くなっちゃうんだ。ののちゃんが悪いわけじゃないのにね」
「ののは大丈夫れす。でも……」
 少し濡れたまつげ越しに見えるいいらさんの瞳。本当に寂しそうな瞳。

 ののちゃんは、傍らに座るいいらさんの背中を優しく撫でました。
 大人の人にこんな事をするのは初めてだったけど、これが今自分が表せる精一杯の気持ち。
 きっと伝わると信じて。

 ののちゃん自身、よくひとから子供っぽいって言われました。自分では充分に大人な気持ちでいるのに、
他人から見るとそうではないようです。
 いいらさんを見ていると、そんな自分を見ている気分になりました。
 よく笑って、よく泣いて、少しのことにも驚いて、腹を立てて、喜んで。
 夢を大切にして、純粋過ぎて、ちょっとバカにされて。それでもみんなが大好きで。

 年も外見も随分違ったけど、心はとても似てる。
 だから、今のいいらさんに必要なのはこれ。
 これでいい。

 温かいパンの香りに包まれながら、ののちゃんはいつまでも背中を撫で続けました。
72名無し娘。:02/02/16 11:42 ID:PhT4bzn7
>>61-68
保全どうもです。
73ねぇ、名乗って:02/02/17 02:10 ID:Z9ZaDAwV
>作者
おかえり。早かったねw
マイペースでよいので続けてください……
74名無し募集中。。。:02/02/18 07:10 ID:zHBfH5FZ
保全します
75名無し募集中。。。:02/02/19 03:34 ID:jil8Iayl
保全
76名無し募集中。。。:02/02/20 03:16 ID:eqdHJH5z
hozen
77ねぇ、名乗って:02/02/21 05:24 ID:cEz/l6Xb
保全したり
78名無し募集中。。。:02/02/22 04:31 ID:3Py0fAgv
保全
79名無し娘。:02/02/22 12:07 ID:zXITZnHg
hozem
80morning:02/02/23 23:04 ID:SSQTjaM5

モーニング娘 の水着画像あります。
微乳〜巨乳の人がそろってますね。。。

http://plaza.harmonix.ne.jp/~lala/idol.html
81ねぇ、名乗って:02/02/25 05:36 ID:T8jDhZwK
保全だね
82名無し募集中。。。:02/02/26 07:35 ID:SMOKZ0ae
保全してみたい
83名無し娘。:02/02/27 09:58 ID:YwHFYc+1
ごめんなさい。保全
84ねぇ、名乗って:02/03/01 05:33 ID:kBufviZw
保全しよう
85 :02/03/03 20:49 ID:mMsLcPqk
テスト
86ねぇ、名乗って:02/03/05 06:58 ID:qegNevD4
してみよう保全
加護乳萌え〜
88名無し募集中。。。 :02/03/08 18:35 ID:uI0SOgDW
ヽ(`Д´)ノ ウワァァァァーーーーーーン!!!
89ななちんぼ:02/03/08 21:35 ID:C55662N8
小説系より漏れはデータとかの方が好きなんだが…
ガイシュツかもしれんが5期面も含めて改めて
ランキングやってみたいね
90名無し募集中。。。:02/03/08 22:05 ID:jt0pEwoR
    B W H
加護86D-60-83
石川83C-56-86
後藤82C-59-87
紺野82C-60-84
保田84C-60-86
高橋81B-58-82
飯田85B-59-88
安倍79B-64-86
矢口78B-55-82
吉澤78A-60-86
新垣77A-56-78
小川77A-58-82
辻  80A-66-84
91名無し募集中。。。:02/03/09 04:03 ID:hFGCckqp
>>90
thx
92ねぇ、名乗って:02/03/10 04:22 ID:YPMW0sff
小説期待保全
93名無し募集中。。。:02/03/11 11:10 ID:c33cnWeF
>>92
同意保全
94名無し募集中。。。:02/03/15 05:39 ID:wjk79y0i
保全
95名無し募集中。。。:02/03/16 03:26 ID:Bm1Pe7yo
期待保全
96 :02/03/16 14:52 ID:V09JVZub
97名無し募集中。。。:02/03/17 09:22 ID:xKzlU0aq
>>96
トラップ保全感謝w
98名無し:02/03/17 10:57 ID:tyTdE47w
この梨華乳はスゴイ!
http://rika.on.arena.ne.jp/cgi-bin/source/rika0117.jpg
本物乳か偽乳か・・・?
本物ならすげぇ。
99 :02/03/17 10:57 ID:GzDOhUyM
99
100 :02/03/17 10:59 ID:mH42S6XL
100
101名無し募集中。。。:02/03/17 18:50 ID:LM6Zp9/C
∩_∩
       (・∀・; )<
       /)/ノ
       ⌒⌒) ) ))
     ハ|ハ ヽ 
   ⊂(;`.∀´ )つ < っ・・・
 
102:02/03/17 19:11 ID:ph0j5Qhe
新メンバーの愛ちゃんはフェラ上手とても****
とは思えなかったよ
103:02/03/17 23:38 ID:UjPQTEy0
いっちゃえ〜〜
104名無し娘。:02/03/18 09:35 ID:7zyS+qC5
背を撫でたことが気持ち良かったのか、ふと気付くといいらさんは、
ののちゃんの胸に頭を預ける形で、寝入っていました。
 僅かに上下するその頭に、自らも頭を傾けると、いいらさんの身体を通して、
自分の鼓動と、そしていいらさんの鼓動が、合わせて聞こえた気がして。
 その響きが妙に心地よくて。

 呼気と体温によって暖められた、それほど大きくもない室内。
 わずかばかりの空調の音が支配する部屋の中心に、ちょこんと置かれた木目調の綺麗なテーブル。
 その脇に座る二人は今、日曜の午後にも似たまどろみの中、しずかに眠っていました。
 寄り添うようにして重なる、いいらさんとののちゃん。

 この、いつまでも続くかに思われた時間の流れを堰き止めたのは、
突然に顔を起こしたいいらさん。
「イツッ!」
「あ、ごめん。でもさ、時間だいじょぶ?」
「え!?」

 すっかり忘れていましたが、ののちゃんがここへ来たのは下校途中のはずでした。
「い、今何時れすか?」
「んっと。ヤバッ、もう7時過ぎちゃってるよお!」
「えー! きっとお母さんが心配してるのれすよ、早く帰らないと」
「急ごう、カオリ送ってくから」

 慌ててよだれを拭くいいらさん。少しですが、どうやら垂れてしまった様です。
 恐る恐る、制服のスカートに視線を下ろしたののちゃん、案の定、
涎で濡れていました。お漏らししたみたいですが、この際気にしてはいられません。
「いいらさんちは電話ありますか? いちお電話したいのれすけど」
「そうだね、それがいいね。はいこれ。赤いボタン押して、市外局番から入力すれば繋がる」
 バタバタと慌てながら、いいらさんは小さな箱を投げ渡してくれました。
105名無し娘。:02/03/18 09:36 ID:7zyS+qC5
「……」
「急がなきゃ急がなきゃ。わーっ」
 ガチャーン。

「……」
「げーマジでー、これ高かったのにー。何やってんだよもう」

「……」
「キーはどこだろ。どこだ。どこ行ったんだ。ああもう」

「……」
「財布もないよお。どこ置い、ん」
 早送りのビデオみたく動いていたいいらさんが、急停止します。

「どした?」
 ようやく、ののちゃんの熱い視線に気付くいいらさん。
「そのう。赤いボタン、たくさんあるんれすけど」
 言いながら前面を見せるののちゃんの手には、大小様々な赤いボタンと、
意味不明な文字だけで構成された箱がありました。

 苦笑いするいいらさんに、ののちゃんは無言で箱を手渡しました。
 箱を裏返し、簡単な操作をするいいらさん。と、どうでしょう、
箱は二つに開き、携帯電話のような形になりました。
 見たところ赤いボタンも一つだし、ののちゃんが知っている数字も並んでいました。

「これで、ね」
 見上げたいいらさんの顔は真っ赤で、少しはにかんでいます。
 ののちゃんはふと考えました。
 こんな顔をする人とならば、きっといいお友達になれそうれすと。そしてそれは、
とても幸せな考えでした。

「カオリ出かける用意してくるからね」
「へいっ」
 なお慌てた様子のいいらさんに、笑顔で答えるののちゃんでありました。
106名無し娘。:02/03/18 09:36 ID:7zyS+qC5
第四話『遭遇 part2』

 電話も済ませ、準備をするいいらさんを待つののちゃん。
 心配だったお母さんのお叱りも、それほどでもなくて安心しました。

「オッケー。戸締りもしたし、火周り水周りも確認した。車のキーも持ったし、
サイフもハンカチも大丈夫。定期は要らないっと。さ、行こうか」
「定期まで持ってるんれすねえ」
「そだよ。この船で移動すると目立つからね」
 そう言って、廊下の壁をパンパンと叩きながら歩くいいらさん。

「ホントにいいらさんは宇宙人なんれすか?」
「信じられない?」
「まだちょっと」
 足を止めたいいらさんは、腕組みしつつちょっと首を傾げます。
 何かあるのだろうかとののちゃんは期待しましたが、結局また歩き始めるいいらさんでした。

「んー、まぁおいおいわかると思うよ。たぶんね」
「そんなものれすかねえ」
「うん。そんなもんだよ」
 あくまでマイペースないいらさんに、ののちゃんは期待することをやめました。

 狭い狭いと言いつつ、わりかし覚えづらい廊下を歩いて行くと、
頑丈そうな扉が見えてきました。
「あそこが玄関れすね」
「イエース。バット、今は使えないんだよね」
 何故か得意げな様子のいいらさん。きっと英単語を使った所為でしょうが、
あえてそこには触れずに質問をするののちゃん。

「どうして開かないんれすか?」
 無言で戸に手をかけるいいらさんに、怒ったのかな? と心配になりましたが、
そう言う訳でもありませんでした。

「ほらね」
 即される形で、開け広げられた扉を見ます。しかし、
そこには洞窟の壁みたいな空間しかありません。
107名無し娘。:02/03/18 09:36 ID:7zyS+qC5
「これは?」
「へへ。知りたい?」
「教えて欲しいれすよ」
「あのね。この船で地球に着た時にね、ちょっとだけ失敗して土手に、ボーンッ。
突っ込んじゃったんだよねえ。ホントにちょっとした失敗、まぁよくある事故だよハハ」
 いいらさんは単に、照れ笑いをしていただけでした。
 そんな事より、はたしてこの人の運転する車に乗っても平気なのだろうかと、
ののちゃんは不安いっぱいになりました。

 ののちゃんの気持ちを他所に、扉手前の角に向ういいらさん。
 そこにも戸がありました。
「到着!」
 急に大声になったいいらさんは、嬉しそうにドアの紹介をしました。
「ジャジャーン! どこへでも行けるドアー!」

 それはまるで、ののちゃんが子供の頃に見ていたアニメの台詞の様でした。
「これってもしかして!?」
 懐かしい響きに、思わずののちゃんも興奮してきました。
「どこへでも行けるのれすか!」
 目を輝かせ、扉といいらさんを交互に仰ぎ見るののちゃん。いいらさんの言った「おいおいわかる」が、
早くもやって来たと感じました。

「どこへでも行けるさぁ。さ、行こうか」
 脇の壁にあるスイッチに手を乗せるいいらさん、すると、
眼前の扉が重々しくスライドしていきます。
 期待に胸の膨らむののちゃん。こんな経験、普通に生きていたら絶対に出来ないと思いました。

 わずかな隙間から漏れ出す外の景色。それは次第に膨らんでいき、
今や扉は全て開ききりました。
「いざ行かん、ののちゃん邸へ!」
 歩みを始めるいいらさんの後を追いかける様に、ののちゃんも外へ飛び出ました。
108名無し娘。:02/03/18 09:50 ID:7zyS+qC5
ところどころに見える土の地面と芝生の地面。
 低い柵に囲われた木々達。
 遠方には滑り台やブランコの遊具。
 ののちゃんは懐かしさを感じました。まだ幼稚園に通っている頃によく遊んだ公園と、
まるで同じ。
 同じ。

「え?」
 思考を停止し、自分の出てきた扉を振り返るののちゃん。
 そこには、確か最近出来た公園管理の詰め所ドアが。
 自分が遊んでいた土手脇の公園と、土手に寄り添うように立つ小さな詰め所。
 
 始動した脳で、いくつかのキーワードを繋ぎ合わせ、
ののちゃんは結論を導き出そうとします。
「コレって……、なんれすか?」
「この土手は船が突っ込んだ忌々しい土手、その建物は出入り口を隠すカモフラージュ。
ここは公園で、あの通りを行くと商店街。そしてコレは、カオリんちの仮の玄関。以上」

 再びの思考停止と、再びの始動。
「どこへでも行けるドア?」
「そう。この玄関からカオリはどこへだって行ける。長くて美しい足と、そこの車を使って、
パン屋にも駅にも、なんなら飛行場へでもね。カオリを止められる者は存在しねーぜ!」

 ののちゃんは、愚かな自分を呪いました。
 ついさっき、期待しないと決めたばかりなのに。

「お嬢さん、オレの車に乗りな! レッツゴー!」
109名無し娘。:02/03/18 09:54 ID:7zyS+qC5
ほぜむ感謝です。
これからは、マターリとですがきちんと更新していきます。

乳小説ってわけじゃないので、もし期待してたらすいません。
あでも乳の話題してても構いませんです。>乳の話しな方
110 :02/03/18 23:51 ID:ySq+Fr/F
( ´D`)<更新ありがとうれす
111名無し娘。:02/03/19 10:07 ID:VzGypUXN
スポンッ、スポキンッ。スポンッ、スポキンッ。

 ところどころ街灯のともる住宅街を、奇妙な音を立てた軽自動車が走る。
 庭の番犬はしきりに吼え、家路を急ぐ学生は足を止め、遅い買い物に出た主婦達は、
眉をひそめ。
「のどかな町の様子が、そこにはありました」
「のどかじゃないれすよ。みんな変な目線で見てるのれす。恥ずかしくて帰れないれすよ」

 ゴツゴツとしたシートに身を深く埋め、周りから見えない努力をするののちゃん。
 他方いいらさんと言えば、ラジオをから流れる洋楽を適当に口ずさみます。
「カオリ収入がないからね。大変なんだよ。これでも車検通すのにいくら払ったか」
「仕送りとかは」
「一応貯金と、あと研究費として少しは貰えたよ。でもねぇ。一揃い買い物したら半分以上消えちゃったし」
「宇宙人と言えど苦労が絶えないのれすね」
「そうだよお。カオリは苦労人なのさ」
 ハンドルに食いつかんばかりの勢いで、背を丸めたいいらさんはしみじみと答えました。

「ここ曲って真っ直ぐで、ののちゃんちの前だよね」
「そうれす。あれ、のののおウチを知ってるのれすか?」
「とーぜん」
「何でれすか? そう言えばどうしてみんながののって呼ぶ事も?」
「見たから」
「見た?」
「見た」
 事も無げに「見た」と繰り返すいいらさん。ののちゃんはカバンでも見られたのかと思いました。
(助かったあ。今回のテストは点数が良かったのれす)

「でも勝手に見るなんてひどいれすよ」
「ごめんね、でもほら、急に倒れたからさ。何か病気でもって思って」
 それなら仕方ないと納得するののちゃんでしたが、どこか引っ掛かります。
 カバンを見て病気とは、一体何の事でしょうか。
112名無し娘。:02/03/19 10:07 ID:VzGypUXN
「あの……。いいらさんは何を見たんれすか?」
「だからのうだよ」
「ノー?」
「違うよ。脳だよ。脳味噌を見たの」
「……」
 ののちゃんは、茫然としました。まさか脳だなんて。

「ジョークれすよね?」
「大丈夫だって。電気信号で記憶をちょちょっとね。
 両親とお姉さんと、あと犬と一緒に暮らしていて、本名は辻希美ちゃん。
 学校での成績はイマイチだけど、好奇心が旺盛で明るく元気な人気者。運動も結構得意で、
片想いの子が隣のクラスに居る。
 『ののちゃん』の由来は、昔自分の事を『のぞみ』じゃなくて『ののみ』と言ってしまったから。
 ちなみに今でも舌足らずな喋り方は直らない。
 趣味はマンガ本とお菓子を食べる事。最近の悩みは、ちょっと体重が増えた事と、
お姉さんがあんまり遊んでくれなくなった事。
 特定の支持政党やなくて、思想の偏向も特に無し。世の中が平和で、
いつもアイスが食べれればいいな程度。
 地球外生命については、興味はあるが確証もないしと思っている。
 そんなどこにでも居る、普通の中学2年生」
「ヘヘ。ちょちょっと、れすか」
「そっ」

 さあ大変です。一刻も早く逃げなければ。友達だなんて冗談じゃない、こうして一緒に居たら、
いいらさんに何をされるかわかりません。
 ののちゃんは、首筋に生温い汗が流れるのを感じました。
113名無し娘。:02/03/19 10:08 ID:VzGypUXN
「も、もう平気れすよ。ののは一人で帰れるのれす」
「まぁまぁ、遠慮しなくていいって。飛行場は冗談だけど、ののちゃんち行くくらいは、
このオンボロ車でも全然平気だよ」
 底無しの明るさで笑ういいらさん。
「れ、れも」
 車の事などどうでもいいくらいに、ののちゃんは焦りました。
 第一、家に着いても、この状況をどう説明すればいいのか。電話では、
委員会の活動で遅れたと言ってしまったのです。

 一人冷や汗をかくののちゃんを他所に、とうとうののちゃんのウチは目の前に。
「あ、これだね。青い屋根のウチだよね?」
「へい……」
 もうお仕舞いです。
「よしと。さ、出よ。きっと夕飯だよ」
「へい……」

 道路脇に車を止め、さっさと歩いて行くいいらさん。
 ののちゃんは、もうどうにでもなれ、そんな気持ちで後に続きました。
114名無し娘。:02/03/19 10:09 ID:VzGypUXN
>110
( ゜皿 ゜)<ホゼンンンン、アリガトトトト
ございます。
115名無し娘。:02/03/20 11:42 ID:5eF6jIAt
遠方より聞こえてくる、犬の遠吠えに怯えるというお約束をかましつつ、
いいらさんは玄関灯の前に立ちました。
 じっとする事、数秒。神妙な顔つきに変わるいいらさん。
「……ピンポーン」
「あの、インターホンはここなのれす」
「あらシツレイ。ホホホ」

ピンポーン。

【……。はーい、どちら様ですか?】
「あ、お母さんれす」
「ゴホン、えー。おい、お前のむすめは預かっ」
ドスッ、ヴォェッ、ゴッ。タッタッタッタッ。

 いい感じに一発入れ、いいらさんを担ぎ上げたののちゃんは、
急いで門柱脇に隠れました。自分でも信じられない力でした。
「いいらさん!! 何言ってるんれすか!!」
 一瞬苦しそうな表情をするいいらさんでしたが、ののちゃんの鬼気迫る顔の前に、
シュンとしました。
「いやあ、ゲホッ。ぶっちゃけ、テンパっちゃって」
「もぉー、どうしてこの人は。もういいのれす。のののクラスに新しく来た、
教育実習の先生という事にするのれす。いいれすね? 文句ないれすね?」
 言葉を発する代わりに、両手を挙げ賛同の意を示すいいらさん。

【どうしたんですか? ののちゃんなの? ののちゃん帰ったの?】
「はい、今帰ったのれす。新しい先生に送ってもらったれす」
 どうやらお母さんには、この騒動を聞かれなかった様です。

ガチャ。
「お帰りなさい、先生って?」
 ドアを開けたののちゃんのお母さん。そして、ののちゃんの隣にいいらさんを見つけると、
深々と頭を下げ一通りの礼をしました。
「どうも申し訳ありません、送っていただいてしまって」
「あ、い、いえ、こちらこそ」
 気を動転させたいいらさんは言葉に詰まりましたが、咄嗟にののちゃんは、
助け舟を出しました。
116名無し娘。:02/03/20 11:43 ID:5eF6jIAt
「先生は臨時の講師で今日から来たのれすよ」
「臨時? 中澤先生に何かあったの?」
 くびを振るののちゃん。

「副担任の制度の、試験的などうにゅうとか言ってたれす」
「ふーん。あ、そんな所に立たせてしまってすいません。どうぞ中へ入ってください」
 瞬間、ののちゃんは嫌な予感がしました。
「そうですか? それではお言葉に甘えさせてもらって」
 敵中。
 このまますぐに帰れば良かったのに。いいらさんの厚かましさに辟易するののちゃん。

「どうぞこちらへ」
 用意されたスリッパを履き、招待された客間へいいらさんは悠々と入っていきます。
「いやぁご立派なウチですなぁ。カ、私のウチは四畳一間の仮住まいですよ」
 何故かおじさん口調のいいらさん。このままでは絶対に足を出すと察したののちゃんは、
またも機転を利かせました。

「ねーお母さん、先生にののの部屋に来てもらっていいれすよね?」
「え、でも……」
 ののちゃんのお母さんは、いいらさんの方を向きます。同じように、
いいらさんの方を向くののちゃん。その目は、不器用なウィンクで合図を送っていました。
 なんとかして気づいて。精一杯パチクリさせるののちゃん。
「カオリは構わないですよ。家庭訪問気分ですから」
117名無し娘。:02/03/20 11:44 ID:5eF6jIAt
どうにか体裁を繕い、自分の部屋へ誘導させる事に成功したののちゃん。
「紅茶で構いませんか? それともコーヒー?」
「あ紅茶で結構ですよ」
 ベッド脇に居住まいを正したいいらさんは、何気に楽しそうな様子です。
「じゃあとで持ってきますので。ののちゃん、先生に迷惑かけちゃダメよ」
「へい」

 いいらさんとお母さんと離し、ようやくののちゃんは一息つきました。人間、
死ぬ気になれば何でも出来る、そんな言葉が頭に浮びました。
 あとに残る様々な説明も今は、まった考えられません。
 本当に疲れたののちゃんでした。
118名無し娘。:02/03/21 10:42 ID:6N6R7tZt
ほぜむ
119名無し募集中。。。:02/03/27 00:02 ID:Tzp6wKXc
生きてるんだね保全
120 :02/04/01 22:26 ID:LReTPdx6
121名無し募集中。。。:02/04/06 00:59 ID:GiXy5CwX
保全ーム
122 :02/04/13 00:15 ID:CC0Ij52r
123名無し募集中。。。:02/04/13 23:18 ID:BmHQeOPn
第五話『お友達 part2』

 数々の人形や、小物、写真。ののちゃんの部屋はそんな、物がたくさんある部屋でした。
 あとで聞けば、いつもお母さんが掃除してくれるというその場所は、雑然とはしながらも、
生理整頓された生活感の溢れる部屋でした。

「これさ、お友達でしょ?」
 壁の一部にある写真スペースを指差すいいらさん。そこには、ののちゃんともう一人、
同じような髪型をした女の子が写った写真が、たくさん貼ってありました。
「そうれすよ、あいちゃんって言うのれす」
「ふーん。なんか双子みたいだね」
「よく言われます。れも、性格は結構違うんれすよ。ののは自分では大人しいと思ってるんれすけど、
あいぼんは行動的れす」
「あいぼん?」
「あだ名なんれす。あいちゃんとかあいぼんとか」
「面白いねー。あいぼんか。なんかマンガのキャラクターみたいだね」
 すっかりくつろいだ風のいいらさんは、手帳の様なものに何か書いていました。
「へへ、頭ん中はもう覗かないよ」
124名無し募集中。。。:02/04/13 23:18 ID:BmHQeOPn
しばらく学校の話題をしていると、ののちゃんのお母さんがドアをノックしました。
「急でしたのでこんなものしかお出し出来なくて」
 済まなそうに頭を下げるお母さんでしたが、いいらさんはいたって平気な顔です。
「丁寧にすいません、いやぁののちゃんは本当に良い子ですね。
今も学校の話しを聞かせてもらってた所です。なにぶん今日から来たもので、
クラスの様子など聞けて助かりました」
「あらそうですか? この子はちょっとトロいところがあるんですけど、
気持ちだけはいつもひとに優しくと言っているんです」
「そうですか。じゃあご家庭の教育が良いんでしょうね」
「いやだわ先生、そんな冗談を言われて」
「冗談じゃないですよ。ホントにののちゃんはいい子ですよ」
 どこか台本じみた台詞ですが、淀みなく喋るいいらさんを見て、ののちゃんはホッとしました。

「それではごゆっくり。あ、お夕飯は済ませました? 良かったらウチで食べて行ってください」
「あ、いえ。今日は送ってきただけですし、もう少ししたらおいとまします」
「そうですか。それは残念ですわ」
「こんどまた日をあらためてお邪魔させてもらいますよ。その時には奥さんの手料理を」
「じゃあお帰りになられる時に一声かけてください。居間の方におりますので」
「はい」

 ん?
 妙に物分りの良い母の会話が、ののちゃんは少し気になりました。こんな喋り方だったかな?
 それによく聞けば、いいらさんの口調もどうも変です。というか、
どうも会話がおかしな方向を向いている気がしました。
125名無し募集中。。。:02/04/13 23:19 ID:BmHQeOPn
会話を終えた二人に視線をこらすののちゃん。
 後を振り返り部屋を出ていくお母さんの後頭部から、白い線が出ています。
 その線は、さっきいいらさんが持っていた手帳に繋がっていました。

「!」
 まただ! ののちゃんは一瞬で悟りました。またいいらさんが変な事を。
 ののちゃんのお母さんの後姿に手を振り、ドアを閉めたいいらさんに食ってかかるののちゃん。
「いいらさん! また何かやったんれすね! あの線はなんなのれすか!?」
「はは、バレちゃ仕方ないね。だーれーでーもー言いなりー!」
 またも某アニメを彷彿とさせる口調のいいらさん。しかも物騒な。

「これはね、簡易記憶行動操作装置だよ。
 ま要するに、こっちの都合の良い様に相手の記憶と行動を作っちゃって、
あらゆる困難な状況をも乗り越えられるっていう機械。
 大根役者も台本どおりに喋れるってんで、今映像の業界でも大活躍してるの」
「そんな……」
「心配そうな顔をするなって。脳ってのは意外としっかりしてて、
外部からのあまりに理不尽な要求には、ちゃんと拒否反応するの。
 だから、負担のかからない範囲で、ちょっとだけ物分りをよくしただけ。
ダイジョブだって、明日にでもなればそんな事もあったな程度しか覚えてないよ。
 それにさ、この状況をどうにか治めるにはあれしかなかったじゃん」
126名無し募集中。。。:02/04/13 23:23 ID:BmHQeOPn
あんまりと言えばあんまりな言動。それしかないからって、
軽々しく脳をいじるなんて。
 ののちゃんは酷い倦怠感を覚えました。しかし、ここまで数時間いいらさんと一緒に居て、
何を言ったって聞いてくれる人でもないというのもわかっていました。

「それにしても。それにしてもあの会話は何のれすか」
「あーあれ? あれはこないだ見た昼メロの一シーン。カオリ超ドキドキしたからさ、
思わず保存してたんだよね。思わぬところで役に立った。
 人生何があるかわからないねー」
 いいらさんこそ、一寸先に何をしでかすかわからないのれす、とののちゃんは呟きました。

「よし、そんじゃカオリもそろそろ帰るかな。お腹空いてきたし」
 呟きを聞いてか聞かずか、一息で紅茶を飲み干したいいらさんは、
腰を上げながら言いました。
「帰るんれすか?」
 てっきりまだまだ居続けると思っていたののちゃん。急な申し出に少し驚きつつ、
それでも残念そうな声をあげました。
127名無し募集中。。。:02/04/13 23:23 ID:BmHQeOPn
「うん。ののちゃんだって早くご飯食べたいでしょ?」
「へい」
「今日はさ、ほんと楽しかったよ」
 トーンを一段落し、少し寂しそうな表情をするいいらさん。

「この星に来てこんな楽しかったの初めて。きっとののちゃんに出会えたからだね。
 あでもののちゃんにはいっぱい迷惑かけたね」
 ごめんねと、より一層悲しそうな顔をするいいらさんを見て、
ののちゃんも何だか悲しくなりました。
「別に迷惑じゃないれすよ。ののも楽しかったれす」
「そう? そう言ってもらえるとカオリも嬉しい」

 何だかんだ言っても、実際楽しかったのは事実です。
 こんなにも緊張したり安堵したり落胆したり期待した一日は、生まれて初めてでした。

「また会えますよね?」
「ん、うん。会えると思う」

 一瞬の躊躇が、たまらなく寂しく感じるののちゃん。
 出会ってわずか数時間とは言え、随分とたくさんの時間を過ごした気がします。
128名無し募集中。。。:02/04/13 23:24 ID:BmHQeOPn
「絶対会えますよ。だって友達じゃないれすか」
「友達?」
「そうれす、ののといいらさんはもう友達なんれす」

 どんなキッカケであろうと、どれほどの時間であろうと、神様が出合わしてくれた人なんだ、
だからまた絶対会えるんだ、ののちゃんは強く思います。

「そっか、友達か。なんかカオリ的には妹が出来た感じだったよ。
いや、ほんとに妹は居るんだけどね。もう結構会ってないし、
ののちゃんを見てたらそんな懐かしい気持ちになった」
「妹れすか?」
「でも家族じゃ話せないこともあるしね、友達の方がもっといいかもね。
うん、それじゃカオリとののちゃんは友達ね」
「何でも話せる親友れす」
 随分と年の離れた二人でしたし、どうにも強引ないいらさんだけど、
姉妹を越えた友達同士というのが、きっとピッタリな表現だと思うののちゃん。
129名無し募集中。。。:02/04/13 23:25 ID:BmHQeOPn
「親友かー」
「親友れすよー」
「じゃ会えるね絶対!」
「絶対会えますよ!」

 少し前までの寂しい気持ちはなくなり、今はただ幸福な気持ちで笑いあう二人。
 ほどなく帰ったいいらさんは、これもまた変に気を回して窓から出ていきましたが、
案の定、屋根から滑り落ちるというお約束をして、帰路につきました。

 音を立て消え行くその車を見ながら、ののちゃんはいつまでも、
いつまでも手を振りつづけました。
130名無し募集中。。。:02/04/13 23:27 ID:BmHQeOPn
>>118-122
保全どうもです。

消えてしまうスレがある中、こんなに延命してもらって申し訳なさでいっぱいです。
それに応えるには更新しかないですよね。
131名無し募集中。。。:02/04/13 23:44 ID:iN7onbyw
ほのぼのいい話
132ねぇ、名乗って:02/04/14 05:24 ID:bknLa20K
更新サンクス。
133 :02/04/15 19:09 ID:bqrsjrbK
134名無し娘。:02/04/17 09:49 ID:bHN1st12
第六話『新しい人々』

「行ってきまーす!」
「はい行ってらっしゃい、忘れもなーい?」
「ないよー。じゃ行ってくるれすよー」

 キラキラと眩しい朝日の中、一人の少女がドアから駆け出します。
 このお話しの主人公、辻希美ちゃん。今年度から新中学3年生になります。
 相変わらずおっちゃこちょいなののちゃんですが、
それでもこの春から塾に通っています。親友のあいちゃんから誘われたのでした。

 他の子と比べると、少々遅過ぎる受験対策でしたが、今年たくさん頑張るから良いのれす、
そんな気持ちでいるののちゃん。
 ののちゃんが通い始めた塾には、同じ学校に通う顔見知りの生徒も多くいました。
 その所為もあってか、勉強をしに行くとはいえ、ののちゃんは楽しさ半分といった感じです。

 午前中が主の、春季講習。
 朝からみっちり行なわれる授業にも、数日通って少しずつなれまし、
自転車で20分の道のりも、慣れてしまえば清々しい気分が勝ります。

 もうそろそろ塾が見えてくる、そんな時でしょうか。ののちゃんの後から声が聞こえました。
「ののー! おはよー!」
 見返すとそこには、同じように髪を結った少女が自転車に乗って、
猛スピードで走ってきました。
「あー、あいぼーん。おはよーれす」
 速度を落したののちゃんに追いついた少女、加護亜依ちゃんは、ののちゃんと並走し始めました。
「くそー、また今日も負けてしもたかぁ」

 あいちゃんは、2年生の初めに、親の仕事の都合で転校して来た子供でした。
 初日こそ大人しくして居りましたが、生来の明るさもあってか、
翌日にはクラスの輪の中に解け込んでいました。
 中でも席が前後になったののちゃんとは、ずっと前からの友達の様に親しくなったのです。

「ののは早起きれすからね、あいぼんには負けないのれす」
「うわ! 授業中よく寝てるくせによく言うわあ」
「早起きと授業は別腹れすよ」
「別腹て。何言ってんねーん!」
「プッ」
「ハハ」
「「アハハハハッ」」
 箸が転がっても笑いが止まらない年頃の二人でした。
135名無し娘。:02/04/17 09:50 ID:bHN1st12
ごめんなさいごめんなさいごめんなさい。
もう2度と上げません上げません上げません。
超鬱だ。
136名無し娘。:02/04/17 09:53 ID:bHN1st12
うわ。間違えてるし。
>>134の2行は「忘れ物なーい?」です。
あと、>>123で恥ずかしい漢字間違えしてます。
最初に変換されたのがあれなんて……。氏にたい。
137名無し募集中。。。:02/04/17 10:58 ID:5s11LOGd
小説を尻目に乳雑談を続ける人の道に反する同志はおらんか?

矢口Dカップ疑惑はどうなった?
138名無し募集中。。。:02/04/17 20:26 ID:GfZ1Sn1v
小説はあげる。スレはageない。
両方やらなくっちゃあならないってのが作者の辛いところだな。
139 :02/04/19 15:27 ID:ZZyYkyM9
140 :02/04/21 02:10 ID:vOCPSt41
141名無し募集中。。。:02/04/24 06:48 ID:zoZbugMC
保全
142 :02/04/28 02:19 ID:15PWRCfr
143名無し募集中。。。:02/04/28 07:42 ID:W/I+VH98
ヤグタンあげ
144 :02/05/04 08:48 ID:oEPuJZXo
保全
145 :02/05/04 12:46 ID:kI5NVB/X
146名無し娘。:02/05/04 20:29 ID:BWk+JKbv
「そういや今日は保田先生の授業からやんな?」
「あいぼんは保田先生が苦手なんれすよね」

 ののちゃんとあいちゃんの通う塾は、それほど規模の大きいものではなく、
すぐ隣には塾長家族の住む家が併設されていました。
 保田先生こと保田圭は、その家庭と親戚関係にあるのです。
 中学教師を目指し大学に通っている保田は、下宿させてもらう代わりに、
こうして休みの日には臨時の講師をしているのです。

 先生を目指す保田にとっても、たくさんの講師を雇う財政的な余裕のない塾にとっても、
それはお徳な方法でした。ただ、生徒の中にはあまり嬉しくない人もいる様です。

「そやねん。あのおばちゃんキッツイ事言うやろ、うちの繊細な心はめっちゃ傷付くねん」
「おばちゃんとか言ってるかられすよ」
「何言うてるん。うちの『おばちゃん』は愛情表現やで。
もっと仲良うなりたいから言うてんねん。そこんとこ解ってもらえへんのは不幸なことや」
「ののは保田先生と仲いいのれす」
「ののが羨ましいわ。ののだって『おばちゃん』言う時あるのに、
怒られるのはウチばっかりや。やっぱ嫌われてるんやな。くそーおばちゃんめー」
 毒づくあいちゃんでしたが、ののちゃんは知っていました。本当は、
保田先生とあいちゃんがすごく仲がいい事を。
147名無し娘。:02/05/04 20:30 ID:BWk+JKbv
そうこうしているうちに、塾へ着く二人。噂をすればなんとやらで、
ちょうど保田先生が玄関を掃除しているところでした。
「おはよー、おチビさん」
「保田せんせーおはようございます」
「おばちゃんおはよう。今日もスッピンが似合っとるで。あ、化粧してるやん。気付きへんかった」
「おはよう辻ちゃん。そんで憎まれ口叩いてるのはこっちかぁ?」
「あうっ。ごめんなひゃーい」
 保田先生の十八番、お口広げの刑を決められるあいちゃんと、隣で笑うののちゃん。

「もうすぐ新学期始まるんでしょ?」
「ひゃい」
 あいちゃんはまだ刑の執行中です。
「来週から3年生れすよ」
「そうだよね。じゃあ今日からは新学期に向けた授業の総集編といきますか」
「ひょうひゅうひぇん?」
「イエス。どれくらいみんなが覚えてるか、テストするよ」
 テストという言葉にぞっとして、二人はとたんに顔を曇らせました。
 ののちゃんもあいちゃんも、テストが大嫌いなのです。
「キリキリ行くからね、早くテキスト読み返しておきなさい!」
「「あ゛ーい」」

 それからの数日は、毎日がテスト漬けの日々でした。
 相変わらず平平凡凡な成績に終わりましたが、でも、この春休みの特訓のおかげで、
少しだけ勉強がわかった気持ちになったののちゃんでした。
148名無し娘。:02/05/04 20:30 ID:BWk+JKbv
第七話『新しい人々 part2』

 新3年生を目の前にした土曜日の今日は、春季講習の終了する日。
お昼を少し過ぎた時間に授業は終わりました。
 新学期の用意を全然していないというあいちゃんは、塾のあとすぐに帰宅してしまったので、
今日は一人でのお帰りとなったののちゃん。

 少しお話しをと思っていたののちゃんは、ちょっと寂しかったけど、
よく頑張ったお駄賃としてお母さんからお小遣いを貰えていたので、帳消しです。
 これからの時間と明日の日曜日、久々の長いお休みに心躍らせるののちゃん。

「今日は家でゆっくりするのれす。そうだ、おやつも買えるのれすよ。
ぶれいこうだからダイエットは考えないのれす」
 お年頃に片足を突っ込むののちゃんは、この頃体重を気にし始め、
以前よりおやつの量を減らしていました。
 でも今日くらいは。ののちゃんはまず、行きつけのパン屋へと自転車を走らせました。

 ののちゃんのおウチと、通っている中学のちょうど中間辺りに、目指す商店街があります。
 その商店街にあるパン屋さん、『ベーカーあべ』は、前に雑誌でも取り上げられたほど、
美味しいと評判のお店でした。
 親に連れられていた小さい頃からの、常連さんであるののちゃん。
 店長であるおじさんと奥さん、その子供達、と言ってもののちゃんより年上ですが、
みんな顔見知りです。
149名無し娘。:02/05/04 20:31 ID:BWk+JKbv

「ごめんくらさーい」
「いらっしゃいませー。あ、辻ちゃん」
 店にいたのはその店の長女で、看板娘と呼ばれるくらい可愛いなつみお姉さんでした。
 大学生の今でも、暇さえあれば店に出てお手伝いをする、心の優しい人です。
 ののちゃんはこの年の離れたお姉さんを、本当の姉の様に慕っていました。

「あべさんが今日はお店番なんれすね」
「んー、なっちだけじゃなくてお父さんもお母さんも安倍なんだけどね」
 毎度のことに苦笑するなつみお姉さん。

 何故かはわからないけど、店長は『おじちゃん』、奥さんは『おばちゃん』、
そしてなつみお姉さんを、『あべさん』と呼んでしまうののちゃん。
 自分の事を『なっち』と呼ぶなつみお姉さんに対し、なっち=なつみお姉さん=あべさんと、
小さいながら繋げて覚えていた名残なんだと、ののちゃんは自己分析していました。
150名無し娘。:02/05/04 20:35 ID:BWk+JKbv
>>137
矢口は大胸筋が発達してそうだから大きそうですけど、
アンダーとの差があまり無さそうだから、
せいぜいBカップじゃないですかね?

>>138-145
保全ありがとうございます。いつも遅くてすいません。

毎度変なとこで区切っててすんません。
章に付けてるタイトルとかも、あくまで目安なので、
そんなにきっちりやってないです…。
151名無し保全。。。:02/05/06 01:00 ID:b2HZpHm0
紺野も結構胸あるような気がする
152名無し娘。:02/05/08 21:57 ID:lWHlNLvn
「そういえば辻ちゃん、ダイエットしてるんだって?」
 ボーっとしているののちゃんに声をかける安倍さん。
「え、なんれ知ってるんれすか?」
「ずっと前にね、辻ちゃんのお母さんが来た時にそんな話しをしていったの。
最近学校帰りに辻ちゃんが来ないから、どうしたんですか?って聞いたら」
 恥ずかしいから、他人(ひと)には絶対秘密にしてねとお願いしたのに、
あっさりと言ってしまったお母さん。
 乙女の純情を土足で踏み荒らされたと、ののちゃんは怒り心頭です。

 ののちゃんの悔しそうな顔を見たのか、慌てて安倍さんは言葉を繋げました。
「あれ、これ言っちゃダメだったのかな」
「いや、その。他の人には言わないでくらさいね!」
 何としてでもここで食い止めねばと、ののちゃんは必死に懇願しました。

 ののちゃんの知っている安倍さんは、結構お喋りな娘さんです。
 きちっと釘を刺しておかないと、来る客来る客に話してしまう可能性も低くありません。
「大丈夫っしょ。なっちは口が固い事で有名だべ」
 こうやって、笑顔を浮かべ方言丸出しの時が一番危ないのです。
153名無し娘。:02/05/08 21:58 ID:lWHlNLvn
「で、今日はどうしたの? お買い物頼まれたの?」
 しめたと、ののちゃんは思いました。
 ダイエットの話しがバレてる今、ぶれいこうだから買いに来たとは、
口が裂けても言えないののちゃん。
 結局失敗すると思われるのだけは、ののちゃんの小さなプライドが許しません。
「そうなんれす。忙しいからどうしてもののに行ってきて欲しいって、
お母さんに頼まれたんです。ののが買おうってわけではないのれす」
 一瞬安倍さんがニヤリとした様に思えましたが、きっと勘違いに決まってる、
ののちゃんは平静を装います。

「お使いかぁ、ののちゃん偉いねぇ」
「へへへ」
 腹の探り合いにも似た、微妙な空気が流れる店内。
「よし、じゃあなっちからのご褒美って事で、どれでも一個パンをプレゼントしちゃおっかな。
もちろんお母さんには内緒でね」
「ホ、ホントれ」
「あーでもののちゃんが減量中だっけ?」
「そう、れすよ」
 申し訳なさそうな笑顔をする安倍さんと、笑顔の中で瞳だけは笑っていないののちゃん。
154名無し娘。:02/05/08 21:58 ID:lWHlNLvn
「ごめん、なっち変な誘惑しちゃった。ののちゃんも困っちゃうよね」
「ののの意思は堅いれす」
「そっか残念だなぁ。作り立てのとっておきのがあったんだけど。
でもののちゃんの邪魔しちゃまずいよね」
 ゴクリ。安倍さんの言葉が、ののちゃんの頭の中を廻ります。

「とっておきれすか?」
「そう。なっちが考えた新作パンだよ。まだお客さんに出してはいないんだけど、
妹に試食させたら、もう目が飛び出るくらい美味しいって言ってたっしょ」
「目が、飛び、出る、くらい、れすか」
「残念だなあ」

 もはや憎らしいとまで思えてくる、天使の笑顔を浮かべる安倍さん。
 しかしこの勝負、どうやら最初から結果は見えていたようです。
「ふう。降参れす。またダイエットに失敗れす、お使いなんかじゃないれす」
 ののちゃんは、自分の意思の弱さにガッカリしました。にやけ顔の裏側で傷付いていた自分に、
また戻ってしまうのかと。
 友達から言われる何気ない、悪意のない一言が嫌で、今度こそ痩せようと思ったのに。

 そんな様子を見た安倍さんは、少し声のトーンを変えて言いました。
「辻ちゃん、なっちの話しを少し聞いて?」
 ののちゃんが視線を向けた事を確認すると、その目を見ながら安倍さんは話し始めました。
「あのね。なっちも昔は減量とか繰り返したの。
 ちょっと太っては、痩せなきゃ痩せなきゃって思って。でもね、
ある時その所為ですごく体調崩してね、病院にも通ったの」
 突然の告白に、ビックリするののちゃん。
155名無し娘。:02/05/08 21:59 ID:lWHlNLvn
不思議な空気が流れ始めたこの『ベーカーあべ』は、
商店街の一角に小さな店を構えていました。
 土曜の午後という事でいつもよりは人通りが多い、店先にある大通り。
 しかしその喧騒も、大きな窓に遮られた店内までは入ってきません。
 わずかな間、商店街にポッカリと開いたこの空間に居るのは、安倍さんとののちゃんだけ。

 カウンター越しにののちゃんへ話しかける安倍さんに、
下がりゆく午後の陽射しが、大きな窓を通して映り込みます。

「その時先生が教えてくれたのはね、あの頃のなっちや、今のののちゃんくらいの年齢は、
たくさんの栄養を必要としてるんだって。だから食べたくなっちゃうの。
 それは全然悪いことじゃないし、恥ずかしいことじゃないんだよ。
 もちろんお菓子ばっかり食べるのは良くないけど、体重ばかりをあまり気にしちゃダメだって」
 穏やかな口調で語る安倍さん。しかしその響きにののちゃんは、
わずかな寂しさを感じ取りました。

「さっき言ったパンはね、そんな頃に考えついたの。栄養があって、
多めに食べても大丈夫で、何よりとびっきり美味しいパンを作りたいなって
 だってほら、なっちのウチはパン屋じゃない? あと継いでパン屋さんになるのも良いかもなって」
 そういえば、前に呼んでもらった安倍さんの部屋で、
テニスウェアを着た安倍さんの写真を見たののちゃん。強くて有名だった様な気もしました。
156名無し娘。:02/05/08 22:00 ID:lWHlNLvn
「みんなが健康でいられる様な美味しいパンを作って、みんな幸せで元気に過ごせたら、
きっとなっちも幸せだからね」

 昔に想いを馳せるようにまぶたを閉じていた安倍さんが、ふと立ち上がって店の奥へ行きます。
歩きながらも話しつづける安倍さん。
「だからね、辻ちゃん。今は変なこと考えちゃダメだよ。
きちんと運動して、きちんと食べて、クヨクヨしないで元気に生きるのが、一番いいんだよ」
 奥から戻ってきた安倍さんの手には、見るからに美味しそうなパンの乗った大皿がありました。

 カウンターに置かれたパンを指差し、ののちゃんは確認する様な目で安倍さんを見ます。
「そうこれ。なっち特製元気が湧いてくるスペシャルブレッド。
 辻ちゃんのお母さんからダイエットの話しを聞いた時ね、
絶対辻ちゃんにこれを食べて欲しいと思ったんだよ」

 シンプルな姿をしたそのパンは、例えようのない香ばしさを漂わせていました。
「美味しそうれすねえ」
「『そう』じゃなくて、すごく美味しいの。なっちが言うんだから間違いないべ」
 少し深刻めいた先ほどの口調は既に消え、また訛りが飛び出す安倍さん。
 訛りが出た事に対してなのか、先ほどの告白に対してなのか、それはわかりませんが、
照れくさそうな様子の安倍さんは、慌てながら、綺麗に並んだそのパンを四つも取り、
袋に詰めました。
157名無し娘。:02/05/08 22:01 ID:lWHlNLvn
「はい、まいどあり。お代は要らないよ。なっちの話しを聞いてくれたお礼と、
新作パンを食べてもらうお礼。
 四つ入れといたけど全部食べてもいいし、出来ればお母さんにもあげて欲しいな」
「お父さんとお姉ちゃんにもあげるのれす!」
「でも辻ちゃんは一個でいいの?」
「へい。これはオヤツだから充分なのれす。その代わりちゃんと夕飯を食べるのれす」
「そっか、思ったとおり辻ちゃんはいい子だね」
 そう言うと安倍さんは、ののちゃんの頭を撫でました。

「てへへ」
 いつもなら、そんな子供っぽい事やめてよと反発するののちゃんですが、
今回ばかりは素直に甘えたい気持ちになりました。

「また前みたいにたくさん遊びきてね。お父さんもお母さんも辻ちゃんに会うの楽しみにしてるし。
それになっち特製ブレッドの新作も考えておくから」
「あ。そうれす、今度は友達と一緒に来てもいいれすか?」
「うんいいよ。そっか、もう学校が始まるもんね」
「始まるのれす」
「新3年生だよね。新しい友達も出来るといいねえ」
「へい!」
158名無し娘。:02/05/08 22:01 ID:lWHlNLvn
すっかり陽が傾き、夕暮れの訪れを迎えようとする街並み。
 その中、家に向かって一心に自転車を走らす少女。

 痩せて綺麗になった自分にまだ少し未練もありましたが、
それは高校に行ったらまた考えようと思うののちゃん。
 今はまず健康で、元気な自分だけあればいい、それが最大の魅力だよ。
 帰りがけにそう言ってくれた安倍さんの言葉は、
ののちゃんにまた一つ勇気をくれました。
159名無し娘。:02/05/08 22:03 ID:lWHlNLvn
>>151
保全ありがとございます。
5期だと高橋がってのはずっと言われるけど、
紺野も結構ありそうですね。
それより何より毎度気になるのは(ロリじゃないですよ)、加護の胸。
あの年頃の子にあそこまで詰め物させる必要もないだろうと考えると、
やっぱり胸が大きいんでしょうかね。単にハト胸なのかな。
160名無し募集中...:02/05/11 19:00 ID:TAeUCs4B
ホゼム
161名無し募集中。。。:02/05/14 22:27 ID:tKAX36NZ
ホゼム
162名無し:02/05/18 01:00 ID:RomuzEPM
保全しとこう。
163名無し募集中。。。:02/05/18 01:29 ID:YLCxIZ2F
>>162
ROMウゼエ午後
164名無し募集中。。。 :02/05/19 06:55 ID:Dxei3YWw
保全

タンポポ・プッチでFUN出たとき後藤の谷間丸見えでしたね。
165名無し募集中。。。:02/05/19 10:39 ID:1HDBYOlm
現在最も沈んでいるスレを保全
166名無し:02/05/19 15:13 ID:v530UGLm
tes
167test ◆zRPIZZAM :02/05/19 19:00 ID:Iz1sM4h5
tes
168  :02/05/19 20:35 ID:+WPrGpoL
てすと
169名無し娘。:02/05/19 21:19 ID:yOBQhQAK
第八話『ご挨拶』

「おはよ、春休みどうしてた?」
 そんな会話があちこちで湧き上がる朝。ののちゃんの学校は、今日が始業式の日でした。
 短くもあり、それでいて一番心の変化を求められる春休みを終えた生徒たち。
 今まで一年生だった子供は、新一年生を迎えるお姉さんとお兄さんになり、
二年生だった子供達は、最上級生へと変ります。
 ののちゃんも今年は三年生。中学校生活最後の1年が始まるのです。

「あ、のの!」
 昨日新調した真新しい靴を履き、期待と緊張に包まれながら登校してきたののちゃんに、
自分を呼ぶ声が聞こえました。
 声のする方、ちょうど生徒玄関の正面辺りに目を凝らすののちゃん。
 するとそこには、春休み中にも塾の春季講習で一緒だった、友達のあいちゃんがいました。
「あいぼーん! おはよー!」

 背も同じくらいならば、髪型も似たようにしている事が多い二人。
 後姿だけなら、どちらがどちらか担任も間違えるありさまです。
 前方にいるあいちゃんは今日もまた、自分と同じような髪の結い方をしていて、
それが何だか、嬉しいののちゃんでした。
170名無し娘。:02/05/19 21:19 ID:yOBQhQAK
 ニコニコ顔で近寄るののちゃんに向かって、少し引きつった顔で話しかけるあいちゃん。
「今来たんか?」
「そうれすよ。あいぼんも?」
 そう言ったののちゃんを見ながら、あいちゃんは大袈裟に肩を落としてみせました。
「違うねん、もう5分も前に来てん」
 なら何で教室に行かないの? そうののちゃんは一瞬考えましたが、
もしかしたら、自分を待っていたのかも知れないと思い、感謝の言葉を口にしました。
「ののを待っててくれたんれすね、ありがとうなのれす」

 あいちゃんは、ハッとした様にののちゃんを見つめました。
「ん? あ、ああ、ののも待ってるつもりもあんねん」
 返事に含みを残した言い方をみると、どうやらののちゃんの考えとは違っているようです。
「どうしたんれすか?」
 いつも元気なあいちゃんのその様子に、ののちゃんは心配になってきました。
「あんな、さっきから何度も、そこにあるクラス割りの表を見ようとしてん。
でもなんか妙に緊張して、ちっとも見れへんねん」
 照れた様にモジモジするあいちゃんを見て、ののちゃんは拍子抜けしました。
 まさかそんな事だったなんて。
171名無し娘。:02/05/19 21:19 ID:yOBQhQAK
「あいぼんも案外いくじがないのれすね」
 からかうつもりで、そう声をかけるののちゃん。
 あからさまにバカにした様な顔をした所為でしょうか、あいちゃんは必死に否定しました。
「違うでのの、別にビビってる訳やないよ。ただちょっとその、な?」
「ふーん」
 元気だけが取り柄で、臆病なそぶりを見せた事がないあいちゃんにも、
こんな弱点があったのかと、ののちゃんはおかしくなってきました。

「じゃあののが見てきますよ。あいぼんのも」
「へ!? も、もう行くんか? もう少しトークを弾ませようよ」
「早くしないと、もうすぐ朝の学級会の時間れすよ?」
「でもぉ」
「ココにいつまで居ても、何がどうなる訳でもないのれす。さ、ののが見てきますからね」
「ああぁぁ…」
172名無し娘。:02/05/19 21:20 ID:yOBQhQAK
 情けない声を上げるあいちゃんを尻目に、玄関前に立つ掲示板へ向かうののちゃん。
 ざわつく人混みを器用に抜けて、掲示板に貼ってある表に視線を移します。
 まずののちゃんは、自分の名前を確認しました。昨年度のクラス表にある「辻希望」の文字を横に辿ると、
そこには今年度のクラスが書いてありました。
 それを確認したのちに、今度は今年度のクラス表の、自分の教室を見ます。
 まず驚いたのは、「中澤裕子」と書かれた担任の欄でした。
「また中澤先生れすか」
 実はののちゃん、これで3年連続して中澤先生の教室という事になるのです。

 ハデ目のパンツスーツに、太陽光を照り返すド金髪。年のわりに可愛い顔をして、
それでいて関西特有の荒っぽい口調のこの人は、どこからどう見ても教師に見えませんでした。
 ところがそんな中澤先生ですが、表裏がなくさっぱりとした性格が功を奏してか、
意外と生徒にもその親御さんにも、評判が良かったのでした。
 ののちゃんも、中澤先生が好きでした。
173名無し娘。:02/05/19 21:26 ID:yOBQhQAK
>>160-168
ホゼームどうもありがとうございます。
今現在、612スレッド中610位でした。すごい沈んでますね。
こんなにも綺麗に荒らされないのは、
見る人が少ないからなのか、分割直後の羊の空気が戻ってるのか。
玉石混合だった分割前が恋しいです。
>>164
ごま乳時代は終わってしまったんですかね。
後にも先にもごま乳こそが乳の中の乳だった気がします。
僕は尻党党員だけど。
174名無し募集中。。。:02/05/19 21:32 ID:5g1C9j2F
>>172
>昨年度のクラス表にある「辻希望」の文字を横に辿ると、
                  ~~~~~~~
175名無し娘。:02/05/19 22:17 ID:yOBQhQAK
>>174
ご指摘どうもです。
辞書変えたらこんな事に…。当然ですが「辻希美」です。
辻ファンの方ごめんなさい。
176名無し募集中。。。:02/05/21 12:52 ID:PLtQFZ6M
保全
177 ◆HOzenvy2 :02/05/21 12:54 ID:ZmMhIc7d
 
178名無し募集中。。。:02/05/21 16:04 ID:IZe2KbQG
なかなか楽しいではないですか。
179名無し募集中。。。 :02/05/21 18:17 ID:D0F37aIZ
保全
180名無し募集中。。。:02/05/24 13:27 ID:7IU/BLMD
hozen
181名無し募集中。。。:02/05/25 20:53 ID:7DcgFh6I
ほぜn
182名無し募集中。。。:02/06/01 10:54 ID:kdch3OGY
hozen
183いちご:02/06/02 12:46 ID:aGrvojUu
今日のハロプロニュースの矢口は胸でかかった。ちょっとふとちゃったね。
184たかはし:02/06/02 13:10 ID:vwUkajOF
あいちち
185名無し募集中。。。:02/06/05 07:00 ID:gVMEJnGa
保全
186名無し募集中。。。:02/06/07 21:33 ID:2/RwuJ8A
保全
187名無し募集中。。。:02/06/09 21:50 ID:4RpjwoXn
保全
188名無し募集中。。。:02/06/10 21:21 ID:wJ85LeCK
hozen
189名無し募集中。。。:02/06/13 06:42 ID:dLPDNx9I
ほぜn
190名無し募集中。。。:02/06/14 14:39 ID:d+AC4u5t
hozen
191 ◆HOzENDAE :02/06/15 21:32 ID:v/qBRanj
 
192名無し募集中。。。:02/06/18 19:51 ID:DaZpmyja
ほぜん
193名無し募集中。。。:02/06/20 21:10 ID:F5FLRDHa
h
194名無し募集中。。。:02/06/22 06:40 ID:RFm9yeaE
hozenn
195名増し:02/06/23 06:24 ID:Aw9cvrRr
 作者の人頑張って!前から読ませてもらってるよ。
これからも楽しみにしてるから。
196名無し娘。:02/06/24 10:00 ID:rF1Fd3Sx
「イヤな先生じゃなくてホントに良かったのれす」
 中澤裕子の文字に、ホッとするののちゃん。
 続いてののちゃんは、自分のクラスの生徒表に目を移しました。
 出来るなら、同じクラスだった友達がいればいいな。そんな気持ちで目線を下げていくと、
そこにはなんと「加護亜依」の文字があるではありませんか。

「やったっ。あいぼんと同じなのれす」
 昨年の途中からこの学校に転入したあいちゃんと、また同じクラスになれた。
 中学最後の1年も楽しくなりそうだと、ののちゃんは嬉しくなります。
 早くこのことを伝えたいののちゃんですが、一応表を最後まで見ていくと、
昨年度も同じクラスだった友達が数人いました。
 
 でも、表の一番下に、去年までとは違う項目が一つ、加わっている事に気付きました。
 名前の欄が空欄になっているその部分には、「副担任」の文字が書いてあります。
 少しだけ嫌な予感がするののちゃん。
197名無し娘。:02/06/24 10:00 ID:rF1Fd3Sx
「ののー、どうやった? 見れたかー?」
 不思議な気持ちで空欄を見るののちゃんに、遠くから自分を呼ぶあいちゃんの声が聞こえます。
「あ、そうだ」
 後ろ髪の引かれる想いで掲示板から離れ、また人垣を掻き分けながら、
ののちゃんはあいちゃんの元へと走りました。

「な、どうやった? ウチどこのクラスなん?」
 もはや青白いとも思える顔色をしたあいちゃんに、笑顔で答えるののちゃん
「ののと同じクラスれしたよ」
「ホンマか!? ホンマにののと一緒なんか?」
「へい。担任も中澤先生で、去年と一緒れした」
「うわぁ、それキッツイなぁ」
 悪態をつくあいちゃんですが、その顔はやはり嬉しそうです。

 ホッとするあいちゃんを促して、ののちゃんは下駄箱へ向かいました。
 新調した靴を丁寧に脱ぎ、昨年まで自分が使った場所へ納めます。三年用の下駄箱に変えるのは、
このあとの全校集会が終わってからでした。
 一度二年時のクラスへ行って、挨拶を済ませ、体育館で全校集会をし、そのあとに三年生として、
新しい教室へ移るのです。午後には新一年生を迎える入学式がありました。
198名無し娘。:02/06/24 10:00 ID:rF1Fd3Sx
 教室へ向かう二人の前に、去年まで一緒だった友達が通ります。その都度、
クラスは違うけど仲良くしようねと言い続けるののちゃん。
 たとえクラスは違っても、一度仲良くなったら一生の友とするのが、
ののちゃんの信条です。
 そんなののちゃんの気持ちを知ってか、皆も一様に同意の言葉を返します。

「寂しくなるよ」
 教室に入ってからもやたら声をかけまくるののちゃんに、またも答える声。
 小学校の頃から何度か同じクラスになり、あいちゃんとはまた違った意味で、
ののちゃんと対照的な性格の人、福田明日香ちゃん。
 真面目で大人の様な考え方をする明日香ちゃんは、クラスでも一目置かれる、
でもまた、近寄り難い空気も併せ持つ、そういう存在です。
 しかしどういうわけか、のんびりしてマイペースで、
子供っぽいと言えば子供っぽいののちゃんとは、妙に馬が合うのでした。

「ののもれす。とても残念なのれす」
「そうか、明日香さんとは違うクラスなんかあ」
 思慮深い言動が目立つ明日香ちゃんは、同級生からさん付けされる事も多々ありました。
 ののちゃんと合わせて、3人で遊ぶ事もあったあいちゃんでも、
やはりさん付けをしていたのです。
「ののも頑張りますから、明日香ちゃんも頑張ってくらさいね」
 そんな中で、ののちゃんだけは昔と同じようにちゃん付けでした。
 もしかしたら、ののちゃんのそういった垣根を取り払う魅力が、
明日香ちゃんにとって心地が良かったのかもしれません。
199名無し娘。:02/06/24 10:01 ID:rF1Fd3Sx
 さて、教室の各所で起こる一通りの挨拶行事も済んだ頃、チャイムが鳴り朝礼の時刻になりました。
 先ほどまでのざわつきが消えた室内に、扉が広く音と共に元気の良い声が響きます。
「おはよーさん! 朝礼始めるでー、学級委員」
「きりーつ、ちゅうもく、れい」
「「おはよーございまーす」」
「ちゃくせきっ」

 教壇に肘をつきながら、バタバタと名簿を開く金髪さん。
 たまにお酒の匂いがして、とても疲れた表情で朝をむかえる中澤先生ですが、
さすがにこんな日は、やる気出していく様子です。
「出席確認するで。今日が裕ちゃんと最後になる人もいるしな、元気よくいこ」
「中澤先生、何か珍しくいいことでもあったん? 彼氏が出来たんか?」
 一人称が可愛いときは、機嫌の良い時。クラスに笑いがおこりました。

「加護ぉ、アンタ先生に喧嘩売っとんの?
せめて最後だけは明るく楽しくいこうっちゅうこの切ない親心な、理解しようや。
それにな、先生はエブリタイムモテモテや。みんな知ってるやんか」
「ひゃい、先生はモテモテれひゅ」
 頬をつままれながら笑顔で答えるあいちゃん。どこかで見たような光景でした。
200名無し娘。:02/06/24 10:20 ID:rF1Fd3Sx
 一人一人に一言添えて出席確認を終えたあと、本日の流れを説明などしつつ、
このクラスでの最後の朝礼が終わりました。
 やる事の多い日ですから、生徒達はすぐに新しいクラスへと移ります。
 一階が新しい教室になるあったののちゃんとあいちゃんも、
机の中身や荷物を持って急いで移動しました。

 新しい景色。自分の席から見える室内の景色と、窓から見える外の景色。
 どれもこれも新鮮な色に映ります。
 
 ののちゃんの席は、教室の真中の列、横で見れば後から二列目になりました。
 先生によって違いますが、少なくとも一学期くらいはこの席でしょう。
 先輩達が残した小さな傷跡のある、机と椅子。
 これから1年間お世話になる大切なものに対し、ののちゃんは小さな声で、挨拶をしました。
「よろしくなのれす」
201あ200か。:02/06/24 10:25 ID:rF1Fd3Sx
げとオメー。ありがd。
>>176-195
いつもいつも、どうも感謝であります。
こんなのんびりし過ぎな更新で、心苦しく思ってはおります。
今後ともどうぞ……。
年齢で微妙なのが突然出てますけど、
単に実年齢の福田を想像しづらいってだけですので、
ご容赦いただきたく。あと今後登場するかもあやしいです。
出来れば今週中にもっかい更新。
202名無し娘。:02/06/24 22:53 ID:xIAAot1w
時系列に誤まりがありました。
次回更新時に訂正したものを載せますが、
二年時のクラス→三年の新クラス→全校集会
って流れだと思ってください。
203名増し:02/06/26 04:44 ID:QVum8JP8
 おぉ!久振りの更新だ!作者さん乙!
こないだ応援書き込みしたばっかだったから、なんか嬉しいね。
204 :02/06/27 11:59 ID:eJKwJXmS
205名無し募集中。。。:02/06/29 00:27 ID:JcRKsV07
保全
206名無し募集中。。。:02/07/01 06:13 ID:7zbOLjmp
207 :02/07/01 17:19 ID:q12LKhir
hozenage
208名無し娘。:02/07/01 23:12 ID:3vAQ5uHX
第九話『ご挨拶 part2』

 ののちゃんの席から見て、あいちゃんは二つ右の側、男子を挟んで同じ列でした。
 これなら話しもしやすいと、安心するののちゃん。机の中身を入れたりしながら、
あいちゃんもチラチラとこちらを見て、笑顔を浮かべています。

 あらためて室内を見まわすと、そこここに知った顔があります。
 それも当然で、この学校に通う生徒の大半は、ののちゃんが卒業した小学校から、
そのまま上がっているのです。
 ですから、あいちゃんの様に途中で転入でもしない限り、
友達作りにはそれほど心配する事もないのでした。

 教壇のすぐ前、ののちゃんの丁度前方に見えるのは、一年の時に同じクラスだった、
紺野あさ美ちゃんです。
 勉強家で、学年でも一、二を争う成績の持ち主でした。変な知識も多く持っていて、
それが披露されるたびに、ののちゃんから尊敬される才女です。
 でも実は、ののちゃんに輪をかけたような、おっとり天然娘でもありました。
209名無し娘。:02/07/01 23:13 ID:3vAQ5uHX
 廊下側すぐの、最後列にいるのは小川麻琴、通称まこちゃん
 まこちゃんの愛称で呼ばれる彼女も、小学生の時に幾度か、そして中一の時も同じクラスでした。
 負けん気が強く、男子と喧嘩することもあるまこちゃんは、女生徒の中心的存在です。
しかしながら本当は、心根の優しい女の子だという事を、ののちゃんは知っています。

 数多くいる友達の中でも、特に仲の良かったあいちゃん、あさ美ちゃん、そしてまこちゃんと、
三年生として同じクラスになれた事に、ののちゃんは心から喜びました。

 余った時間で、生徒たちが一言二言会話をしていると、移動の為に設けられていた時間の、
その終わりを告げる始業ベルが鳴りました。
 鐘が鳴り終わるか終わらないかというタイミングで、教室前方の扉が勢いよく開かれます。
「おはよーさん!」
 ののちゃんたち新三年C組の担任、中澤裕子さんの登場です。
210名無し娘。:02/07/01 23:13 ID:3vAQ5uHX
 男子の小さな冷かし声を受けつつ教壇に立ち、生徒達を見回す中澤先生。
「辻、辻はどこにおるん?」
 少し近眼の気がある先生は、眉間に皺を寄せながら教室内をやぶ睨みすると、
後方にちょこんと座っているののちゃんを発見しました。
「とりあえず辻、日直代わりな」
 急に指されて驚くののちゃんは、慌て気味に挨拶をうながしました。

「んー、去年も担任やった子もいるみたいやな。でもま自己紹介しとこか」
 そう言うと、小さなチョーク入れの中から、真新しい一本を取り出す中澤先生。
 生徒と撮ったプリクラが、これでもかと貼りつけられたその小箱は、
今年もまた、多くの写真が貼られるのでしょう。無理強いされた生徒との写真が。

 黒板一杯に『中 澤 裕 子』と書き終えると、自分がいかに生徒を愛しているか、
教師という職業に誇りを持っているか、そしてモテモテであるかを、
10分にも渡り、中澤先生は語りました。
 一度でも担任になられた生徒なら、既に経験済みで耐久性もついた儀式でしたが、
今年から中澤裕子と出会う生徒達の多くは、今年1年が一筋縄でいかない事を、
痛いほどに感じたことでしょう。
211名無し娘。:02/07/01 23:15 ID:3vAQ5uHX
 自分の紹介を終えた中澤先生は、続いて生徒の自己紹介を提案しました。
 もちろんですが、ただ単に名前を言えば良いとはいかずに、一人きっちり3分もの時間を、
割いてくれました。
 とはいえ、お喋りの上手な中澤先生です。言葉に詰まった子供には、
上手にフォローとツッコミを入れて、間を持たせました。
 大人しめのあさ美ちゃんなどは、それで助けられた口であり、逆に、詰まることもなかったのに、
先生と言葉の応酬になったのは、あいちゃんでした。

 たっぷり時間をかけた紹介が済み、些末な連絡事項が終わると、次は全校集会の時間です。
 廊下に一度並んだののちゃん達は、教室順に体育館へと向かいました。

 ひんやりとした体育館の床に、直に座る生徒達。
 壇上を見上げると、いくつかのイスが用意されています。
 新しくこの学校に来た先生が座る為の席でした。
212名無し娘。:02/07/01 23:15 ID:3vAQ5uHX
「どうせなら生徒もイスに座らせてほしいれすよね」
 二列横隊に並んだことで、たまたま近くなったあさ美ちゃんに、ののちゃんは話しかけました。
「うん、お尻が冷たいよねえ」
 何が嬉しいのか、やたら朗らかな笑顔のあさ美ちゃん。
 一見すると、いつも謎の笑みを浮かべているあさ美ちゃんですが、
それだけでは感情が計れないのは、周知の事実です。
 状況と、この口調から察して、たぶんあさ美ちゃんは怒ってる。ののちゃんは、
微笑みの奥を読むのでした。

 普段から大人しく、滅多に怒りなどしないあさ美ちゃんでしたが、
その真面目さゆえか、少しだけ人と違った方向に、怒りを感じることがあるのでした。
 お尻に感じる冷たさ、生徒を直に座らせたこと、少し間延びしてる予定時間、
これらが、あさ美ちゃんのツボに入ってるのかもしれません。
 怒った時の彼女は、周りが完全に見えなくなるほどに、キレてしまうのです。笑顔で。
213名無し娘。:02/07/01 23:16 ID:3vAQ5uHX
 自分の不用意な発言を悔やんだののちゃんは、慌てて言葉を繋ぎます。
「うーん、あ、でも誰かがイス並べないといけないから、それを考えると面倒だし、
直に座るのも悪くないかも知れないれすよ」
「……。あーっ、そうか、そうだよねえ」
 笑顔のまま答えるあさ美ちゃん。今度の笑顔は、幸せに満ちたものに見えて、
ののちゃんはホッとしました。

 ののちゃんが嫌な汗を流していた頃、壇上では校長以下、新卒の教師らが並び始めました。
「きりーっつ」
 青白く痩せた教頭の一声に、ざわめきながら始まる始業式。
 校長の挨拶などが過ぎゆく中、ののちゃんは、自分の腹の具合を気にしていました。
 12時にはまだ時間があったのですが、春休み中の前倒し気味なお食事タイムの所為で、
既にお腹が空いていたのです。

 そんなわけですから、当然進行も頭に入っていません。
 式は流れ、新任の教師紹介へと進んでいました。
 その時です。忘れようとしても忘れられず、でも結局忘れ去っていた、あの声を聞いたのは。
214名無し娘。:02/07/01 23:18 ID:3vAQ5uHX
「三年C組に副担任として就かれる飯田先生です。今年から実験的に取り入れた制度なので、
とりあえずはC組だけに副担任がつきます。では飯田先生、どうぞ」
「はい。今年度から、この旭乃中学校で教鞭を取らせていただきます、飯田圭織です」
 懐かしい匂いがする言葉に、ハッとするののちゃん。

「まだまだ未熟で、皆さんのお世話になることも多々あるとは思いますが、
どうか叱咤激励するつもりで、変な垣根なく接していただければと思います。
生徒の皆さん、そして三年C組の皆さん、どうぞよろしくお願いします」
 お辞儀の途中で流れ落ちる髪を、しなやかな動作でかき上げるそのひと。
 カッチリとした濃紺のパンツスーツに浮きあがる、女性的な身体の線。
 拍手を受けて、薄紅色に染まる白い細面。

 間違いありません。
 かつて自らを宇宙人だと言った、ィーダ・カオリだと名乗った、あのカオリ星人が、
ののちゃんの前に再び、現れたのです。

「いいらさん……」
215名無し娘。:02/07/01 23:23 ID:3vAQ5uHX
>>203-207
保全感謝です。先週中にもっかい更新出来ずにごめんなさい。
↓は、>>197を訂正したものです。直したのはちょっとだけなんですけど一応。
---
「ののー、どうやった? 見れたかー?」
 不思議な気持ちで空欄を見るののちゃんに、遠くから自分を呼ぶあいちゃんの声が聞こえます。
「あ、そうだ」
 後ろ髪の引かれる想いで掲示板から離れ、また人垣を掻き分けながら、
ののちゃんはあいちゃんの元へと走りました。

「な、どうやった? ウチどこのクラスなん?」
 もはや青白いとも思える顔色をしたあいちゃんに、笑顔で答えるののちゃん
「ののと同じクラスれしたよ」
「ホンマか!? ホンマにののと一緒なんか?」
「へい。担任も中澤先生で、去年と一緒れした」
「うわぁ、それキッツイなぁ」
 悪態をつくあいちゃんですが、その顔はやはり嬉しそうです。

 ホッとするあいちゃんを促して、ののちゃんは下駄箱へ向かいました。
 新調した靴を丁寧に脱ぎ、昨年まで自分が使った場所へ納めます。三年用の下駄箱に変えるのは、
このあとの全校集会が終わってからでした。
 いったん二年時のクラスへ行き挨拶を済ませ、その後に三年のクラスへ移動したあとに、
体育館で全校集会をするのです。
 午後には、新一年生を迎えた入学式がありました。
216名無し娘。 :02/07/02 07:34 ID:IW7wxcQv
age
217名無し娘。 :02/07/02 22:41 ID:reR1OQS4
age
218名無し娘。:02/07/03 22:46 ID:gaIvR7x9
第十話『出会い』

 寒気すら感じていた春の朝陽も、日が高くなるにつれ温かみを増し、天頂までもう少し。
 ここ、旭乃中学校の体育館に、慈愛に満ちた光を届けます。

 入学式の予行練習が終わり、新二年生はみな教室に帰り、あとに残されたのは、
イスを並べる新三年生達。
 最上級生としての最初の仕事に燃える人、は少ないようで、口々に悪態をついています。

 ののちゃんの友人である、あいちゃんやまこちゃんもそちら側の人間らしく、
先生の隙を盗んでは、並べたばかりにイスに陣取り、世間話と洒落こんでいます。
「ねえ、ちゃんとやろうよお」
 傍近くに居るのあさ美ちゃんは、畳んだイスを4つも抱え、二人に注意を促します。

 ありがちのこんな光景にも、一つだけ欠けたパートが存在していました。
「そうだ。あさ美ちゃん、ののちゃんてどこ行ったのー?」
「え?」
「そや、ののはどこ行ったんや。サボってんのとちゃうか」
 いつもならば、二人と一人の間で右往左往していそうなののちゃん。
 でも今は、どこにも姿が見当たりません。
219名無し娘。:02/07/03 22:46 ID:gaIvR7x9
「どこかなあ」
 心配に思ったあさ美ちゃんが、どこにいるのかと館内隅々に目を馳せます。すると居ました。
壇上裏に通じる扉の影。どこか一方向を、じっと見守るののちゃんの姿。

「ののー」
 ちょっぴり不機嫌そうに、あいちゃんは声を張ります。
 小言の一つも言ってやろうと意気込んでいるあいちゃんですが、彼女自身もサボり中であるのは、
この際どこかに置いておくご様子です。
「聞こえてないみたいだよ」
 まこちゃんが言うように、ののちゃんは微動だにせず、なおも一点を見続けています。

 では、肝心のののちゃんが見ている場所は。
 それは体育館の一角、三年の担任らが集まっている場所でした。
 中でもののちゃんは、中澤先生の隣に立つ人に、特に注意を払っています。そうです、
先ほど新任の挨拶をした先生、飯田圭織先生でした。
「あれはいいらさんれす。絶対間違いないのれす。でもどうして?」
220名無し娘。:02/07/03 22:47 ID:gaIvR7x9
 通常であればもうすぐ、給食の時間になろうという頃に、入学式用のイス並べが終了しました。
 教師から号令を受けた生徒達は、思い思いに体育館から出ていきます。
 扉に隠れていたののちゃんも、ボーっとするままに友人に連れられて、教室へと戻りました。

 指示されていた下駄箱の変更を済ませると、昼食の時間です。通常であれば給食なのですが、
今日だけは各自持参のお昼ご飯。
 友達と共に食べようと、席を移動させる者、机ごと移動させる者、
はたまた一人で食事を始める者、様々です。
「なー、席替わってくれる?」
 手にお弁当箱を持ったあいちゃんが、ののちゃんの隣に居た生徒に声をかけました。
 丁度良かったとばかりに、快く了承する男子。ニコニコ顔であいちゃんの席に移ると、
近くに居た友人にちょっかいを出しています。

 同じように、ののちゃんの元へと集まった、あさ美ちゃんとまこちゃん。
 それぞれ可愛らしいお弁当箱を取り出して、ランチタイムを始めます。
「ねえののちゃん、さっきどうしたの。何か気になってたみたいだけど」
「うん、私も知りたーい。誰かを見てたの?」
「のののことや、サボってたんやろ? 自分だけズルイわ」
 次々に話しかけられる声にも、ののちゃんはあまり反応しません。
221名無し娘。:02/07/03 22:47 ID:gaIvR7x9
 他の3人より少しだけ、ほんの少しだけ大きなお弁当箱に向かい、心ここにあらずといった様子で、
もくもくと箸を進めるののちゃん。
「何か悩みでもあるの? 私で良ければ相談にのるよ?」
「……ん」
 あさ美ちゃんは、ののちゃんの顔を覗き込むようにします。しかしその視線の先には、
不思議な表情を浮かべるばかりの、ののちゃんが居ます。

「わけわからん奴やなぁ。ハッキリ言わんと何も出来ひんで」
「えーっ、あいちゃんが何か出来るとも思えないけどな〜」
「ふふん、ウチはいざとなったら頼れる女やねんで。
 まぁ、まこちゃんも困った時には言うてみな、頭下げてお願いしたら、聞いてやらんこともないで」
「ほう、大きく出たねー」
「フフフ」
「ホーホホホ」
 意味不明の牽制を繰り返す二人。

「ホントに大丈夫?」
「うん」
 一方で、心配性のあさ美ちゃんは、しきりにののちゃんを気にしました。
222名無し娘。:02/07/03 22:49 ID:gaIvR7x9
>>216-217
感謝です。
が、何が悲しいって、晒しageくらって煽られもしない事。
呼吸しにたまには上がらなきゃってのは思うけど、
こういう結果もまた怖い。むつかしいですね。
223名無し募集中。。。:02/07/03 22:54 ID:DpUQdMsM
>>222
考えられるのは、
@読者が少なすぎて誰も荒らす人がいなかった。
A小説が素晴らしすぎて荒らす気にならなかった。
Bあまりの糞小説なので荒らす気も起きなかった。
Cただ単に運が良かっただけ。
こんな所でしょうか。
気にせず頑張ってください。
224名無しさん:02/07/05 02:00 ID:17IXwE4K
 帆
225 ◆HOzENDAE :02/07/06 01:33 ID:K2cb2FvE
 
226名無し募集中。。。:02/07/08 07:08 ID:bz146FoU
 
227名無し募集中。。。:02/07/10 06:43 ID:gk0jSVbp
ホゼン
228名無し募集中。。。:02/07/12 20:20 ID:q3QzuzsX
 保 全
229名無し娘。:02/07/14 14:00 ID:450R0ebS
 ところかわってここは職員室。午後に行なう入学式にそなえ、
忙しなく準備を進めている先生や、受け持ちクラスへ配布する為の、
プリント作成などをする先生も見えます。
 ほとんどの教師が、昼食を抜かして働いているのです。

 ののちゃん達の担任である中澤先生も、お昼ご飯を回避した一人でした。
 朝食を取らぬまま学校へ来てしまう、そんな事の多い中澤先生にとって、
遅めのブランチは、必要不可欠な栄養補給のはずですが、今日ばかりは、
そうも言っていられませんでした。

 校舎の2階に位置する職員室。そのベランダは、喫煙組の先生達にとっての、
憩いの場となっています。
 職員室内にも応接セットがあり、そこに灰皿は置かれているのですが、
見晴らしが良く、また、嫌煙組の教師に文句を言われる事のないこのベランダが、
最も好まれる喫煙所となっているのです。
230名無し娘。:02/07/14 14:01 ID:450R0ebS
 愛する生徒達のはしゃぐ姿を見て、愛する煙草を一服する。
 自らも喫煙をたしなむ中澤先生は、ここからの眺めが、学校内で一番好きでした。
 そして今も、中澤先生はベランダにおります。

「どうやった? C組の印象は」
「んーそうだなぁ」

 誰が持ってきたのか、いつからかそこに置いてある折り畳みイスに腰を下ろす、
中澤先生と、ィーダカオリ改め、飯田圭織先生。
 この二人の教師が初めて出会ったのは、今日から二日ばかり前のことでした。
231名無し娘。:02/07/14 14:01 ID:450R0ebS
 生徒達にとっての新学期よりだいぶ前から、教職員達の新学期はスタートしています。
 小さな事柄から大きな事柄まで、一つ一つが大切な準備なのです。
 そんなある日、いつもの様に職員室へ入る中澤先生に、校長からお呼びがかかりました。
「げっ、なんやろ」
 動きの止まる中澤先生を、今年度から教師になった平家がからかいます。
 彼女はかつて、教師一年目時代の中澤に、生徒として師事を受けた経験があるのです。

 破天荒な教師に、何を間違ったか感銘を受け、同じ道を選んでしまったこの教え子は、
中澤にとって数少ない本音を話せる仲であり、恥ずかしい過去を知っている相手でもあるのです。
「中澤先生、また何か失敗したんとちゃいます?」
「そんなんあるかい……。いや、またやってしもたんかなぁ……」
 酒豪で知られた中澤先生ですが、一度や二度、三度や四度、お酒の席で、
はめを外し過ぎた経験がありました。
232名無し娘。:02/07/14 14:01 ID:450R0ebS
「昨日あった親睦会、中澤先生けっこう飲んでましたよね」
「そうかあ? 別に記憶なくなるほどは、……飲んでへんと思うねんけど」
「ホンマですの? 中澤、セ、ン、セ、イ」
「ってお前なあ、もう同じ立場なんやから、裕ちゃんって呼べ言うたやろ」
 お肌の曲がり角をかなり以前に迎えた中澤先生は、その頃から、
身近な人に対し自分のことを、愛称で呼べと強要しているのです。

「裕ちゃんって年齢でもないでしょうに」
「ウッサイ、これもそれも全部、愛情表現の一つや。文句は言わさん」
「ひー裕ちゃん先生が怒ったー。早く校長室行っちゃえー」
「あ、忘れてた」

 小声の寸劇を興じ終えた中澤先生。足取り重く校長室へ向かい、その扉をノックします。
 コツ、コツ。
「中澤です、失礼しますっ」
 返事もまたず室内へ入るとそこに、見慣れた禿頭の校長と、長髪の女性が立っておりました。
「ああ中澤先生が来ましたよ。中澤先生、こちらに来て下さい」
「は、い」
233名無し娘。:02/07/14 14:04 ID:450R0ebS
 小言の一つも言われるかと心配していた中澤先生ですが、校長の表情を見ると、
そういう事ではなさそうです。
 要領の得ぬまま、促されてソファへと近づく中澤先生に、隣合う形となった、
その長髪の女性が頭を下げます。
 
「中澤先生は今年、C組の担任でしたよね?」
「そうですけど、こちらの方は?」
 女性の横顔に目をやりながら、自分よりだいぶ若そうだけど、
まさか転校生でもあるまいし、と思う中澤先生。
「こちらは飯田先生です」
「え、教師なんですか?」
 失礼を承知で、中澤先生は女性の顔をまじまじと見ました。
 これでも30年近く生きてきた中澤先生です、顔や仕草で年齢を察するくらいは、
それほど遠からず当てる自信はありました。
234名無し娘。:02/07/14 14:04 ID:450R0ebS
 たまご型の顔にあって、印象的なほどに大きな瞳の所為か、
小皺の多い目の周辺――隈がちょい目立つなぁ――でしたが、肌の張りやきめの細かさ、
立ち居振る舞いから想像するに、まだまだ二十歳程度、下手すれば大学生と言っても、
何ら疑問は湧かない、そのくらいに見えます。

「教師と言ってもまだ学生さんなんですよね?」
 自分の驚きを察してか、説明を求める校長。そして、その意図を読み取り自己紹介する、
飯田と呼ばれた女性。
「はい、旭乃教育大に通っています、今年三回生の飯田圭織です」
 やっぱりと、中澤先生は自分の勘は当っていたことに納得しました。

「県の教育委員会で、モデル校を選んでいるという話しは先日話しましたよね?」
「はあ」
 校長のその言葉を受けて、中澤先生には一つの解答が思い浮かびました。
235名無し娘。:02/07/14 14:04 ID:450R0ebS
 新しい教育の形や教師の形を模索する為、教師を目指す大学生の在学期間に、
副担任として小学校、もしくは中学に派遣し、丸々1年の教鞭を取らせ実習をさせる。
 そんな制度の立ち上げを目指した、実施モデル校を選定しているという話しは、
確かに聞いたことがありました。

 ということは、と中澤先生は思います。
 大学での講義ではなく、派遣先の学校での業務如何で、単位の取得を決めるわけですから、
それなりに大学側からも、また預かる学校側からも、充分な信頼が必要で、
極めて優秀な学生が選ばれ、派遣されたことになるのでした。

「大変難しい審査を合格して、この旭乃中学に来られたのが、飯田先生なのです。
 もちろ我が校にとっても、モデル校に選ばれたことは名誉なことなんですよ?」
 尊大な口調の校長に、それとこの飯田と呼ばれる学生教師を前に、
優秀とは言い難いと自己分析する中澤先生は、少し冷めた気持ちになりました。
236名無し娘。:02/07/14 14:06 ID:450R0ebS
「飯田先生には3年C組の副担任を勤めてもらいます。
 本来なら受験を控える大事な学年ではなくて、もっと低学年をと思っていたんですけど、
飯田先生たっての願いを、教育委員会も承諾した、ということで」
 説明しながら、苦々しい顔をする校長。

 その訳は、中澤先生にもよくわかりました。
 派遣された学生の、指導と採点を任されるのは、正担任なのです。
 金髪ハデハデ姉ちゃんである自分に、そんな大切な仕事をさせるのは、
さぞ不安やろなぁと思う、中澤裕子もうすぐ30歳、未婚。
237名無し娘。:02/07/14 14:10 ID:450R0ebS
>>223-228
いつも感謝です。ホントに嬉しいです。
>>223
1と3と4のちゃんぽんで。

全然ほのぼのしてんくてスマンです。一日もやたら長いし。
話しの中ではまだ4月初めなのに、現実は既に夏だし。
エピソード削らなきゃ……。
238名無し募集中。。。:02/07/14 21:36 ID:pCSNrtRj
いや、好きに書くのが一番ですよ。
239名無し募集中。。。:02/07/16 12:09 ID:L9GAuiFL
保全
240名無しさん:02/07/17 06:48 ID:k+1o0yhr
作者さん、更新ありがとうございます。
話をまとめるのって難しいですよね。
だらだらになっちゃあいけないけど、説明不足になっても駄目ですしね。
今の感じは丁度良いと思いますよ。
読んでる方は話が沢山ある方が嬉しいし、俺は季節感は別に良いので
出来るだけエピソード削らんようにしてくらさい。
平家さんのキャラの設定良いですね!
241名無し娘。:02/07/17 22:18 ID:PPl+ha+p
「それじゃこれから宜しくお願いしますね」
 トレードマークである禿頭に、真新しい太陽の光を反射させ、
校長が締めの言葉を告げました。
 眩しさに苛立ちをおぼえながら、半ば上の空で返事を返す中澤先生。

「この書類に、指導要項から何から書いてありますから、きちんと読んでおいてくださいね。
飯田先生はあと少し居てください、色々説明が残っておりますから」
「はい」
 これを合図にするように、中澤先生は再度頭を下げて、退室しました。
 嬉しそうに話しを続ける校長に、心の中で、ちょっとだけ毒づいて。

「ふぅー」
 いかにも重いといった感じで、書類の束を自分の机に放った中澤先生を見て、
恐る恐る、平家先生が近づいてきます。
「それなんですの?」
「……知らん」

 乱暴にイスを引いて、どかりと腰を下ろした中澤先生は、見るのも嫌だという感じで、
腕を大きく動かしてそれを机の端へ追いやりました。
「……怒ってます?」
「……怒ってへん」
 イラついた空気を感じ、ビクビクする平家先生。
 アニメだったらきっと、真っ黒なモヤモヤが包んでるわ、この人。
 マンガやアニメが大好きな平家先生でした。
242名無し娘。:02/07/17 22:21 ID:49t9nXNw

「みっちゃんッ」
 裕ちゃん先生は、自分を愛称で呼ばせる以外にも、相手のことさえ、
生徒時代とは変えていたのです。まるで同じくらいの年齢だと、言わんばかりに。
「ど、どうしましてん」
「今日、暇やろ」
 ゆっくりと振り返る、黒いオーラの中澤先生。
「いやでも、私はまだ新任ですし。やる事もぎょうさん……」
「ヒマ、だよな?」
 棒のようにつっ立っている平家先生の両手首を、中澤先生が掴みます。
「ヒ、マ、だ、よ、な? なあ?」
 コクン。
 平家先生には、うなずく事しか出来ませんでした。

 翌朝、共に職員室へ来た二人が、目の下に大きなクマを作り、
抜けきれない酒臭さを放っていたことは、言うまでもありません。
 生徒に夢を与えたいと、この道に足を踏み入れ、希望に満ちていた、
ピチピチ新任教師平家さんの、他の教師達からの評価が、この日、
決まりました。
243名無し娘。:02/07/17 22:21 ID:49t9nXNw
 同じ日に、もう一つの香りを職員室に吹き込んだのが、飯田先生です。
 きもち茶色に染めた長髪に、快いリンスの匂いを乗せながら、
新人らしく丁寧に挨拶をする飯田先生。
 かつてののちゃんが見た、ドジで間抜けでオヤジっぽいいいらさんは、
そこにはいませんでした。

「飯田先生の席はそこですよ」
 一人一人に挨拶を終えた飯田先生に、室内なのにサングラスをした男が声をかけます。
 三年の教師をまとめる主任の寺田先生です。
 この人は、中澤先生に輪をかけたように、変った先生でしたが、
人当たりの良さは中澤先生と違い、穏やかな雰囲気を持っていました。彼が教える教科は音楽。

「隣が丁度よく空いてたんで、そこにしときました」
 寺田先生が指差すのは、青白い顔色をした、二日酔い教師中澤の隣。
「中澤先生な、ちょっとキツイ性格やけど、根は優しい人やから。頑張りや」
 小声でそう言い残すと、グラサンの寺田先生は、自分の机へと戻りました。
244名無し娘。:02/07/17 22:23 ID:49t9nXNw
 真後ろで行なわれた、寺田先生と飯田先生の会話を、聞いていたかは謎ですが、
昨日あれほど気分を慨していた中澤先生は今日は、朝から上機嫌でした。
「ほら、新人せんせ、ボォっとしてんと座り」
 振り返りもせず声を出す中澤先生に、素直に従う飯田先生。
「昨日お会いました、飯田です。改めて宜しくお願いします」
 
 聞かされていたほどの怖さを、今の中澤先生からあまり感じなかった飯田先生は、
ほっとした気持ちで席に着きました。
 実を言えばこの時、中澤先生はまだ脳内酒宴の最中だったのです。運が良かった飯田先生。

「いい匂いやな、裕ちゃん興奮してきそうや」
 ずいぶんとおかしな誉め方ではありましたが、中澤先生なりに、気を使っている様子です。
「飯田先生やったっけ」
「?」
「んー」
 虚ろな視線を机の上に向けると、中澤先生は書類をめくりました。
245名無し娘。:02/07/17 22:24 ID:49t9nXNw
「飯田圭織さんか、珍しい当て字やんな。知り合いにこの、けいの字一つの子がおるで」
 何故かにやけて言葉を繋ぐ中澤先生が、おもむろに顔をあげます。
「そやな、カオリでええか」
「ハイ?」
 意味が分からずに、飯田先生の表情に途惑いの色が出ます。
「ハイやあらへんよ、あだ名やんか、あだ名。じぶん、友達とかになんて呼ばれてたん?」
「あ、はい、カオリです」
「よし、じゃあ今日から裕ちゃんもカオリって呼ぶからな。カオリも、
私のこと中澤先生言うたらあかんで、裕ちゃんって呼ぶんや。あと基本的にタメ口OK。
 もし中澤先生って言ったら、そん時はペナルティとして1回チューするから」

 ホップもステップも無し、いきなりジャンプするかの様な中澤先生の発言。
 ニヤニヤしながら唇を突き出す仕草を見ると、確かに恐ろしい感じがしましたが、
それよりはむしろ、嬉しさの方が大きいかもと、新人の飯田先生は思いました。

「お、今いい顔した。そやねんで、女の子は心からの笑顔が一番や。
さっきまでの固い笑い方より、そっちの方がずっとええよ」
「そうで、あ。あ、そうかな?」
「ん〜? いま敬語使わんかったかあ? まあ最初だから許したる。そや、
今日仕事終わったら飲みいこ。今日のつまみはその笑顔や。みっちゃんと一緒に3人で行こ」
「えっ、でも明日は入学し」
「はいはい、決定な。裕ちゃん気分がええから奢ったる。太っ腹やんな。なにぃ? 太ってるやと?
どこが太ってねん。これでもスタイルにはめっちゃ気ぃ使ぉてんねん。
 まだまだ全然イケてるっちゅうの」
 嬉しさよりも、恐ろしさの方が、勝りそうな、飯田先生でした。
246名無し娘。:02/07/17 22:26 ID:49t9nXNw
>>238-240
保全や応援感謝です。がんがって更新します。
247名無し募集中。。。:02/07/18 02:37 ID:A63SEr4g
がんがれ
248ageddgd:02/07/18 11:55 ID:C+L5wbq5
(●´ー`●)
(◕ฺ ´ー` ◕ฺ)
(ฺ✪ฺ´ー`ฺ✪ฺ)
249joikho:02/07/18 11:59 ID:C+L5wbq5
.       〃~~ヽヽヽヽ
.      /( ◕ฺ ´ ー ` ◕ฺ ) ̄/\  <おらの便所が無えべ!!
    /| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|\/
     │拾ってください │
      |_______|/

        〃~~ヽヽヽヽ
      /( ● ´ ー ` ● )\  <おらの便所が無えべ!!
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     │拾ってください │
      |_______|/
250名無し募集中。。。:02/07/19 13:47 ID:Qq5EJ+W6
251名無し募集中。。。:02/07/21 11:39 ID:I10vZPbN
保全
252名無し募集中。。。:02/07/23 12:47 ID:gz7ChpK+
保全
253名無し募集中。。。:02/07/25 20:17 ID:UndKFca3
ほぜむ
254名無し募集中。。。:02/07/26 21:53 ID:25YfNi+0
ほぜん
255 :02/07/28 03:36 ID:ZHtEmSkU
256名無し募集中。。。:02/07/29 20:29 ID:+0t2Vibj
ほぜぬ
257半自動保全エージェント ◆HOzENDAE :02/07/31 01:40 ID:NB4q0ETV
保全書き込みを行います. 1028047194
258名無し娘。:02/08/01 11:21 ID:wWziQUJd
く……。ごまちゃん出さないうちにかよ。
タイムリミットは一ヵ月ちょい。がんがる。保全ありがとう。
259 :02/08/02 19:04 ID:GiTAB/KI
260 :02/08/05 21:28 ID:Tfh2+zXp
保全
261名無し娘。:02/08/06 09:41 ID:AeOAmOwN
最悪、2週くらい書き込めません。
ホントにごめんなさい。
262名無しさん:02/08/07 06:07 ID:vAIOvlcW
>>261
!!!マジで?何か問題でも?
263名無し募集中。。。:02/08/07 22:52 ID:hEQLkHa6
0
264 :02/08/09 00:02 ID:FIQ9jWNF
265名無し募集中。。。:02/08/10 07:39 ID:VVSVPU3h
 
266名無し募集中。。。:02/08/11 07:46 ID:s/YeLxBn
hozen
267名無し募集中?:02/08/13 07:16 ID:+q2RBcfe
帆善
268名無し募集中。。。:02/08/14 18:29 ID:r/VuVtvT
保全
269名無し募集中。。。:02/08/15 20:56 ID:/UKTMEx8
保全
270名無し募集中。。。:02/08/17 00:04 ID:Xg6Hjf7/
ほぜむ
271名無し募集中。。。:02/08/18 07:49 ID:g+PhLUxY
hoz
272名無し募集中。。。:02/08/19 07:41 ID:wXiBeTEc
h
273名無しさん:02/08/20 03:31 ID:PFgllJco
274名無しさん:02/08/22 05:50 ID:D9sDHLt2
帆ぉーっ!!!
275名無しさん:02/08/23 01:18 ID:gZH6oOjt
歩。
276名無し募集中。。。:02/08/24 09:15 ID:e2Fz4NZO
277名無し募集中。。。 :02/08/26 02:56 ID:W5Gr6eop
278名無し募集中。。。 :02/08/26 03:07 ID:K5ZywpRZ
279名無し募集中。。。:02/08/27 23:28 ID:3Bv8lgKB
280名無し募集中。。。:02/08/29 22:29 ID:WoJ5hO4p
281名無し募集中。。。:02/08/31 07:40 ID:28cvghq9
282名無し募集中。。。:02/09/01 23:42 ID:3Du1uIlW
283名無し募集中。。。:02/09/03 13:24 ID:HIAIzHJ+
284名無し募集中。。。:02/09/05 00:17 ID:MG1ez+Ee
285名無し募集中。。。:02/09/06 19:59 ID:RaPEE01p
286名無し募集中。。。:02/09/08 00:03 ID:24sq8LF5
287短いですごめんなさい:02/09/08 13:07 ID:kOTh+PDU
第十話『出会い part2』

「なあ……ってカオリ? あかん、この子目ぇ開けて寝とるわ。ほぉら、起きや!」
「ふうわぁぁあっ。……き、急に話しかけないでよ」
「……。
 大丈夫か? 全然急やないで? わかるか?
 ずっと話してたのに、そっちが急に無言になったんやで?」
 大きい瞳をいっそう大きく見開いた飯田先生に、呆れ顔をした中澤先生が話しかけます。

「あれ、そうだっけ?」
「アンタちょっとおかしいで。電波でも受信してたんやないの」
「電波って。宇宙人じゃないんだしやめてよ。昨晩のことを、ちょっと思い出してただけだよ」
 そう言ってハハハと笑い、中澤先生の肩をバシバシ叩く飯田先生。
 実にあっけらかんとした表情をしています。
「じぶんまだ酒が抜けてないんちゃうか」
288短いですごめんなさい:02/09/08 13:08 ID:kOTh+PDU
 飯田先生と中澤先生の、何とも噛み合わない会話が続くなか、
背後にある窓から少々焦り顔の平家先生が、ひょっこりと顔を出しました。
「裕ーちゃん、こんなとこにおったんかぁ」
「なんやみっちゃんやん。どうしてん」
 それを聞いた平家先生は、少し怒った顔をします。
「どうしたもこうしたも。もう給食の時間終わってんで? クラス行かんでええの?」
「げ、マジでかっ」
 慌てて腕時計に目をやる中澤先生。
 時計の針は確かに、クラスを受け持つ教師が、
その教室へと向わなければならない時間をさしておりました。

「ヤバッ」
 さすがの中澤先生も、ことの重大さに気付いたのでしょうか、
飯田先生の手をとり職員室へ戻ります。
「さっきC組の子も来てたで」
「もぉー、そういうのは早く言ってくれへん!?」
 急かす平家先生は、何故だか逆ギレされる始末。
「ウチはこんな先輩もういやですわ」
「そうだよみっちゃん、早く言ってよね」
 不機嫌そうな顔をした飯田先生にも、怒られちゃいました。

「ウチこんな後輩もいやや……」
289短いですごめんなさい:02/09/08 13:08 ID:kOTh+PDU
 半分以上の先生が消えた職員室で、一騒動おこしたのちに、
嵐のように過ぎ去った中澤先生と飯田先生の、次の目標は三年C組です。
「ええか、こういうのは最初が肝心やねんで。ここでなめられたら、
1年間なめられっぱなしや。中学生言うてもビシィッと挨拶したらんと」
 我が身はさておいて、教師の心得を伝える中澤先生。
 道すがら貼ってある『廊下は歩きましょう』の標語など、目にも入らないご様子。
「ましてやカオリはちょっと天然やからなぁ」
「カオリ天然じゃないよ」

 脱兎のごとく走る二人はようやく、C組の前に立ちました。
 気配を感じたのでしょう、ざわついた雰囲気も今はなく、
あとは先生を待つばかりといった感じです。
「タッパはあるんやから。毅然とした態度でな」
 最後にそう言って、元気よく中澤先生は扉を開けました。

 と、途端に溢れる出る生徒の不満声。
「おそーい」
「センセー何やってんの?」
「初日からこれじゃーなあ」
 しかし、そんな声は聞こえてないよといった表情で、すまして教壇に向う中澤先生。
 躊躇しつつ、飯田先生も続いて入室します。

「あ、新しい先生だ」
「美人じゃね?」
「うん美人だ。中澤先生の百倍は美人」
「そこっ! 立て! もっぺん言ってみい! 百倍は大袈裟や! せめて1割増しくらいにしとき!」
 相変わらずの中澤先生でしたが、遅れた申し訳なさもあるのでしょう、
あまり絡む事なく、始業式当日から宿題を与える約束だけして、着席させました。
「はーいはーい騒がない騒がない。それじゃ辻、号令」
290短いですごめんなさい:02/09/08 13:08 ID:kOTh+PDU
 無言になる室内。
「辻ぃ、どうしたん」
 クラスの視線がののちゃんへと集まります。中澤先生と飯田先生も、そちらに目を向けました。
 またののちゃん自身も、これもまた一点に、視線を集中させております。
 そうです、ののちゃんが凝視する先にいるのは、飯田先生です。

 おかしな様子に気付いた前の席の子が、机の上に置かれた手を揺り動かし、
小声で呼びかけました。
「ののちゃん、号令だよ」
 ハッと我に返ったののちゃんは、それでも飯田先生と目を合わせたまま、号令をかけました。

 挨拶が済み、皆が着席したあともなお顔を伏せがちにしつつ、
ののちゃんは飯田先生を見ます。
 体育館において、遠目で見ていた時には確信が持てなかったけど、
こうして間近で見た今、ののちゃんははっきりと思いました。
 彼女は間違いなく、かつてののちゃんを、宇宙船と称する不思議な建造物に連れこみ、
それだけでなく、ののちゃんの自宅にまでやってきた、あの自称宇宙人です。
291短いですごめんなさい:02/09/08 13:10 ID:kOTh+PDU
 でも、なんで? ……ののちゃんの頭には疑問符が浮びました。
 地球の環境をどうこう言っていた覚えはありますが、それが教師とどう結びつくのか。
 それに、先ほど自分を見つめていた目は、既知の人間を見つめる目ではありません。
初めて見る人に対してのそれです。
 
 一回きりの間柄とは言え、親友と呼び合ったのに、号令の際に目を向けただけで、
今はもうののちゃんの方を見ない飯田先生。
 絶対また会えるって、約束したのに。
「ほなそろそろ入学式やな、静かに廊下に並んで体育館行くで」

 ののちゃんの不信を他所に、式は淡々と進み、真新しい制服を着こんだ新一年生は、
緊張と期待をその顔に映し、着飾った衣装で居並ぶ父母達は、我が子を晴れがましい表情で見つめ、
窓から射し込む日の光が、午後の麗かな雰囲気を盛り立て、体育館脇を走る県道から、
ときたま車の走る音が聞こえ、やはり床へ直座りだったことに腹を立てるあさ美ちゃんが居て、
まこちゃんの可愛いボブが遠くで揺れ、何だか楽しそうなあいちゃんが時たまこちらを向き、
ニッコリと笑いかけた。

 それでも、壁際に整列する飯田先生は、こちらを見るそぶりも、見せず。
292短いですごめんなさい:02/09/08 13:13 ID:kOTh+PDU
>>247-286
いつもいつも^たくさん、保全していただき、
感謝だけしか僕には出来ません(っつ書けよ!)
ホントにホントにありがとうございます。
>>262
私用です、ごめんなさい。これからまた更新してきます。はい。絶対。
293名無し募集中。。。:02/09/09 00:15 ID:CS+0YwzD
更新お疲れ様です。
作者さんのペースで更新していただければけっこうなのでこれからも
がんばってください。
294名無しさん:02/09/10 06:56 ID:wXA8lyJC
作者さんキテタ━━( ● ´ ー ` ) ゜皿 ゜) `.∀´) ^◇^) ´ Д `) ^▽^)0^〜^) ‘д‘) ´D`)!!!
楽しみに待ってましたよ!これからも頑張って下さい!!
因みに262書いたの俺です。1ヶ月越しのレス、どーも。(笑)
295プリンス羊:02/09/12 20:18 ID:PSn4A7Xb
296名無し募集中。。。:02/09/14 21:40 ID:H7oz57RP
保全
297自動保全エージェント ◆HOzENDAE :02/09/17 23:31 ID:LB362i2O
( ^▽^)ホゼ美 1032273058
298名無し募集中。。。:02/09/19 16:01 ID:bzWvHXfF
hozen
299名無し募集中。。。:02/09/21 07:57 ID:519FKk9h
ho
300名無し募集中。。。:02/09/22 05:56 ID:ra5YSnrZ
明日は祭りだ保全
301名無し募集中。。。:02/09/24 19:57 ID:051N+NKI
あのバーナーいつまで続けるの?保全
302名無し募集中。。。:02/09/26 23:00 ID:XMdXoHSt
保全
303名無し募集中。。。:02/09/28 23:02 ID:TG7cj201
そろそろ「( ^▽^)ホゼ美」登場か?
304名無し募集中。。。:02/09/29 14:02 ID:eIU3DXkw
305名無し募集中。。。:02/10/01 04:47 ID:wap6vTnB
そろそろ月に一度の交信が来る…、カモ?
306名無しさん:02/10/03 06:01 ID:srJpruDI
♪保っき〜がーるず!
307名無し募集中。。。:02/10/03 18:00 ID:CJnpu+nS
hozen
308自動保全エージェント:02/10/06 15:33 ID:cS3cDEvU
( ^▽^)ホゼ美 1033885991
309名無し募集中。。。:02/10/08 16:12 ID:dELFr/A8
保全
310名無しさん:02/10/09 05:53 ID:zJbTwQG1
保Zこう。
311名無しさん:02/10/11 12:17 ID:L2JRjnl2
保。
312名無しさん:02/10/14 15:53 ID:JRC8t+Ip
保っ!保っ!保っ!保っ!
313:02/10/14 16:14 ID:gAnfK5Y6
『無問題』乳貧・乳巨、穴有。
子産可能。
314 :02/10/14 16:56 ID:g5JtFkhA
巨穴はいやだな。
315名無しさん:02/10/16 04:19 ID:KV0wiAZj
全開間違えてageてしまったので、ちょっと変な事なっちゃいましたね。
ごめんなさい。
316名無し募集中。。。:02/10/19 15:43 ID:KMsz+bKT
ho
317名無し募集中。。。:02/10/21 10:45 ID:l5VsFGlE
h
318名無しさん
補選。