【小説】 ★★ 『ハロプロ』バトルロワイヤル★★

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728デッドオアアライブ
【 BATTLE AFTER 】第十七話 

 紺野と高橋が手を取り合って草原を走る。
追いかけるが、近付けばサッと身を翻して離れる。
きゃっきゃと笑い合う2人は鬼ごっこを楽しむかのようだ。
捉まえた・・・・紺野の右手にはナイフが握られていた。
腹に鈍い痛みが走る。
紺野は笑っていた・・・涙を流しながら・・・
その顔が揺らめきながら変化していく。
市井紗耶香の顔に・・・

長い悪夢から覚めた飯田はボンヤリと辺りを見回した。
みんな知ってる顔ばかりだ。
「・・・ここは・・・?」
意識を取り戻した飯田に辻と加護が抱きついて喜ぶ。
矢口と安倍は涙ぐみながら抱き合った。
渋川と吉澤、後藤の顔も見えた。
(そうか・・・助かったのか・・・)
飯田は病院のベットのから天井を眺める。
白い壁に市井の顔が浮かぶ・・・
抱きつく辻の頭を撫でながら飯田は心の中で誓う。
紺野と高橋を取り戻す・・・喩え、市井の命を奪ってでも・・・

市井の念の篭ったナイフは飯田の生命を絶つ筈だった。
その飯田の命を繋いだのが辻と加護の念だった。
渋川に習った僅かばかりの小さな念の基礎が飯田の命を救ったのだ。


729デッドオアアライブ :02/06/24 02:32 ID:e0WOcLVG
【 BATTLE AFTER 】第十七話 

夕日が差し込む病室。
辻がお粥をスプーンですくって、ふーふーと冷ます。
「はい、あ〜んするのです」
「いいよ、自分で食べるから」
「駄目なのです、ののが食べさせるのです」
病室には辻と加護、渋川と吉澤、後藤が残っていた。

「はい、あ〜んするんやでぇ」
「なっ、なんで私が!」
加護が吉澤にお粥を食べさせようとする。
「ええから、はい、あ〜ん」
唖然とするが、仕方なくお粥を口に入れさせてもらう吉澤。
少し、空気が和んだような気がした。

飯田が意識を取り戻してからも、ずうと椅子にもたれ、うなだれ
落ち込んでいる後藤を気にして、何とかしようとする加護の努力だった。

可笑しな夕食が終わる頃、渋川が飯田に一本のナイフを渡した。
「これは・・・?」
「おぬしを刺した紺野のナイフじゃ・・・」
手に取る飯田は市井の念を感じた。
「その刃の部分には相当の念が込められておる・・・
余程の月日、それを持ち歩いておったんじゃろう、
普通の人間ならとっくに死んでおる・・・おぬしが負った傷は浅かった・・・
念がおぬしを死の淵まで追い込んだんじゃ」
何を思うか、無表情の飯田は暫らくナイフを見ていた。
730デッドオアアライブ :02/06/24 02:33 ID:e0WOcLVG
【 BATTLE AFTER 】第十七話 

 不意に後藤が言う。
「そのナイフ・・・知ってるよ・・・」
皆が後藤に振り向く。
初めて口を開いた後藤の声は震えていた。
「それは・・・私を刺したナイフだよ・・・」
後藤は立ち上がり、飯田からナイフをそっと取り上げると病室を後にした。
追いかけようと立ち上がる吉澤の肩に手を置き渋川は首を振った。
「暫らく、そっとしておくんじゃ・・・」
沈黙が病室を包んだ・・・・


病院の屋上で手摺りに持たれて夜景を見ている後藤に吉澤が声を掛けた。
「ここに居たの・・・探したよ」
横に並んで同じ様に夜景を眺める吉澤。

「ねえ、よっすぃ・・・」
「なに・・・?」
「市井ちゃんは私が殺すよ・・・」
吉澤は静かに笑う。
「・・・飯田さんも・・・自分で殺ろうと思ってる筈だよ・・・」
「・・・知ってる・・・でも、譲れない・・・」
静かだが、後藤の言葉には決意が込められていた・・・・