【小説】 ★★ 『ハロプロ』バトルロワイヤル★★

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619デッドオアアライブ
【 BATTLE AFTER 】第七話

お風呂から上がってボンヤリとテレビを見ていた矢口が
突然、飲んでいた矢口ジュースを吹きだした。
「ななな、なんだ!?」

司会者に紹介されて現れたのは、新人としてデビューしたユニット
『モーニングペアー』という2人組みだった。

「なっち、なっち!大変だよ!早く来て!」
お風呂から上がったばかりの安倍がタオルで頭を拭きながら居間に入ってきた。
「なんなの?うるさいな〜」
「大変だよ、石川と松浦がテレビに出てるよ!デビューだって!」
「え〜!!!どういう事?」
画面の中の石川と松浦はリカッチとアヤヤと名乗っていた。

「なんか、2人とも雰囲気変わったね〜、大人っぽくなってる・・・」
変に感心する安倍に矢口が突っ込む。
「何言ってんの!松浦はアタシの前で一回死んでんだよ!」
「・・・じゃあ・・・?」
「多分、改造人間だよ」

画面の『モーニングペアー』はデビュー曲の『駆け巡る青春1,2,3』を歌う。
♪モーニンモーニング〜モーニングペアー♪モーニンモーニング〜モーニングペアー♪
ボックスを踏んで歌うミニスカートの石川と松浦は凄く楽しそうだ。

「だ、ださっ!なにコノ歌!ボックス踏んでるし!」
「でも・・・なんか楽しそうだね・・・・」
安倍は頬杖をついて少し微笑んでいる。
「あ、ああ・・・だね・・・」

矢口も多分改造人間で有ろう2人が少し羨ましく、応援もしたくなる。
何時の間にか古臭いメロディのこの歌を二人で口ずさんでいた。


620デッドオアアライブ :02/05/23 23:59 ID:qz/uAGzF
【 BATTLE AFTER 】第七話

深夜の高層ビルを見上げる2人組み。
黒い皮の全身タイツに身を包んだ大柄の男とスレンダーな美女・・・
お揃いの猫のマスクを着ける真矢と妻の石黒彩だ。

「このビルの5階ね・・・」
「ああ、一人で大丈夫か?」
「ふふ、任せといて」
真矢は腰を落として両手の指を交差させて彩の踏み台を作る。
彩は真矢の交差させた手の平に両足を乗せた。

「行くぞ!」
「OK!」
真矢の腕に太い血管が浮き上がると同時に渾身の力で
彩を上空に放り投げる。
ちょうど5階の窓にとどくあたりで彩は両指を広げる。
「はっ!」
5階の窓にピタリと指先だけで張り付いた彩はマジックミラーで出来た
窓の内側を目を凝らして見た。
「ふむ、誰も居ないね・・・・それにしても凄い数の赤外線だな・・・
ま、アタシには関係無いけどね」
彩は窓に張り付いている右を離す、キンと音がした。
指先がキラリと光る、彩は鋭い爪を有していた。
その爪を窓に突き刺し全身の体重を支えていたのだ。

右手人差し指が大きく弧を描くとその通りに窓は切り取られる。
窓は音も無く外れ、そのガラスを真矢に放り投げた。
真矢はその窓ガラスを人差し指で受け止める、
「ふん!」指に念を込めるとガラスは砂のようにサラサラと崩れた。
それを見届け彩は室内に入り、無造作に歩を進める。

赤外線の防犯装置は何故か彩を感知できなかった。
周りの宝石類には目もくれず進む、彩の目指す先には
ガラスケースの中に鎮座する時価数十億円とも言われる
ダイヤモンドが煌めいていた。
このビルで有名な宝石店の展示ショーが開催されていたのだ。
その中でも目玉の『王妃の涙』と言われるこのダイヤを狙う盗賊。

石黒彩は少し考えたが、躊躇せず右手を振り上げた。
パカリと割れるガラスケース、同時に非常サイレンが鳴った。
「やっぱり・・・・」
彩は無造作にダイヤを胸の谷間に押し込むと同時にカードを取り出す。
そのカードには『CAT'S-EYE』と書かれていた。
入ってきた窓から飛び降りる彩はキャッツカードを投げ込む。
ダイヤが在った場所には投げ込まれたキャッツカードが突き刺さり煌めいていた。
621デッドオアアライブ :02/05/24 00:00 ID:1aH9dfm2
【 BATTLE AFTER 】第九話

 インターネット上で猫を虐待する様をリアルタイムで報告する男が居た。

深夜、マンションから出てきた男は紙袋を持って裏に流れる川に向かった。

「ヒャハハハ・・・・」
その男は川原に来ると堪えきれない歪んだ笑いを漏らす。
ボンと紙袋を蹴飛ばすと中から虐殺した猫が飛び出る。
「ハハハ・・・」
そのまま帰ろうと振り向くと人影が立っていた。
「ひっ・・・」
真っ暗な川原に佇む人影を、雲が切れて現れた月光が照らす。
男は取り合えず安心した。
月光が照らした人影は女だったのだ。

「な、なんだよオマエ・・・?」
「アンタ、もうそこから動けないよ・・・」
「はぁ?なに言って・・・・」
女の言葉は嘘では無かった。
何故か体が動かない。

「アンタ、その猫を殺したの?」
「何を馬鹿な・・・・あ、ぁぁ・・・そ、その通りだ・・・」
男は愕然とした、嘘が付けなくなっていた。

「猫の思念がアンタの周りに漂ってるよ・・・」
男の全身から冷や汗がドッと噴出す。
(あの目だ、女のあの目が光ったのを見たからだ・・・・)
「その猫ちゃんの苦しみを味わいながら死にな・・・・」
女がきびすを返すと同時に男の耳が千切れた。
「ぎゃぁあああ!!!」
ボクンと音がして腕の骨が折れる。
何故かひとりでに虐待した猫と同じ現象に合い、のた打ち回る男・・・

市井沙耶香の瞳を見る者は、その邪眼『パンサーアイ』によって
自由を奪われる木偶となる・・・・

市井の影が消える頃、虐待者の命も苦しみの中に消えた・・・・



622デッドオアアライブ :02/05/24 00:03 ID:1aH9dfm2
【 BATTLE AFTER 】第十話

 眠らない街、新宿歌舞伎町、その中にひっそりと建つ4階建てのビルが有る。
『中沢ビル』・・・・オーナーは中沢裕子だった。

元のビルの持ち主は自分の資産の全てを中沢に差し出した。
差し出した理由は本人が頑として口を開かない。
開けば自分の命が無い事を充分過ぎるほど解かっている。
元のビルの持ち主はそのままひっそりとヤクザを引退した。

ビルの中には中沢の住まいと中沢が設立した芸能事務所、
テナントとして飲食店が何軒か入っていた。
そして地下一階のフロアを全て使って中沢がママ、平家みちよがチィママの
バー『パンサークロー』が在った。

「兄貴、ここですぜ・・・」
「ほう、ここか・・・そのショバ代を払わねえ女が経営してる店ってのは・・・」
パンチパーマの2人組みだが、この後男達は地獄を見る事になる、
正確には死ぬ事になる。

『パンサークロー』の店内には一般人の客が数人いたが
男達の成りを見て、またか・・・といった顔をした平家が
奥にあるビップルームに2人組みを通した。

豪華だが頑丈な造りの扉の奥に通された2人は入ったとたんに外から鍵を掛けられた。
「なんだこの部屋は・・・?」
「出せやゴルァ!!!」
扉を蹴るがビクともしない。
それよりも驚いたのは何も無い灰色の十畳程の室内に立ち込める死臭と
淀んだ目で2人を睨めつける、不気味な男が立ちすくんでいた事だ。
「なんだオメエは・・・?」
口元に血が付いている男は無言で2人に近付いた。

それは蠱毒だった。
蠱毒・・・・虫や蛇をひとつの壷に入れて、共食いをさせて最後に
生き残った一匹を呪う相手に放ち、その人物の所有する
全ての物を奪う術・・・・
『パンサークロー』のビップルーム・・・
それは入れた人間を殺し合わせる蠱毒の壷だった。
ただし、呪う人物などいない。
生き残った人間、それは中沢裕子の餌だった。


623デッドオアアライブ :02/05/24 00:04 ID:1aH9dfm2
【 BATTLE AFTER 】第十話

 最後の客が帰り、看板を閉める。
「そろそろ、こっちも終わったかね?」
「とっくに終わってると思うよ」
そう言うと平家はビップルームの鍵を開けた。
ムンと死臭の漂う室内に生き残っていたのは兄貴と呼ばれたパンチパーマの男だった。
その男は弟分の腕の肉を咀嚼していた。
「裕ちゃん・・・・」
平家は顎をしゃくって促がす。
「へいへい・・・」
中沢は深呼吸をしながら近付き、男に向かって息を吹きかけると
男はあっと言う間に絶命した。
中沢の意識を集中する息はどす黒い瘴気を含んでいた。
無言のまま中沢は死体の心臓辺りに手を当てると意識を集中する。
手を戻すと、黒く煙みたいな靄のかかる物体を握っていた。
さらに集中すると、その物体は中沢の手の平に吸い込めれるように消えた。
蠱毒の瘴気を体内に吸い取る中沢は魔人そのものだった。

カウンターに座り
頬杖をついて気だるそうにブランデーのグラスを傾ける中沢の前に
平家が一枚の新聞記事のコピーを差し出した。
それは3ヵ月後に世界の宝石、絵画が一同にかいする、某民放が主催する
国内最大級の展示会の開催記事だった。

中沢の目が輝きだす。
「これこれ、こういうのを待ってたんよ、みっちゃん偉いわ」
「どうする?」
「決まってるやん、やっと、うち等の活動に見合う仕事が出来るやん」
「じゃあ?」
「秘密結社『パンサークロー』のメンバー全員集結や!
みっちゃんメール皆に送っといて!」

中沢が長を務める犯罪組織『パンサークロー』・・・・・
中沢は犯罪組織は造ったものの活動内容はまだ未定だった。
やるなら目立つデカイ仕事をしたかったのだ。
624デッドオアアライブ :02/05/24 00:06 ID:1aH9dfm2
【 BATTLE AFTER 】第十一話

 「みんな〜♪ハッピー!!!」
着実に営業の仕事をこなすモーニングペアー。
マネージャーの新垣にメールが届いた。
《パンサークロー全員集合・・・時間は・・・・》
新垣が報告すると石川と松浦はふて腐れた。
「なんで〜?せっかく波にのってきたのに〜!」
「私とリカちゃんは社長(中沢)に殺されたんだよ!まあ、拾ってくれて
デビューさせてくれたのはありがたいど・・・・」
新垣が困り果てた顔をすると、ちょっと反省したのか
「もう、分かったわよ、その代わり、ちゃんと時間作ってね」
新垣の頭を撫でる石川。
「ハハハ、ヤバそうになったら裏切っちゃえばいいのよ!」
あっけらかんと笑う松浦、そして石川。
その笑いは中沢に対する忠誠心など微塵も無かった。
怖いのは2人がかりでも勝てるかどうか分からない中沢の強さだった。
そんな2人の胸中を知る新垣も中沢に忠誠心は無かった。
理由は知らないが自分をデビューさせなかった中沢を怨んでいた。
しかし、中沢の呪縛からは逃げられない。
新垣は当初、メンバーの中で唯一何の能力も持っていなかった。
その新垣を強くしたのは中沢の蠱毒だった。
新垣は中沢に命を握られたのだ・・・・・・