【小説】 ★★ 『ハロプロ』バトルロワイヤル★★

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568デッドオアアライブ
【 BATTLE AFTER 】第三話

 「ここか・・・やっと、一匹見つけたよ・・・」
後藤は携帯レーダーの反応を確かめると厳重な外壁を見上げた。
この豪邸の中に『ツョッカー』の残党がいるのだ。
「ヤクザか・・・」
吉澤は相手が相手だけに死人が出る事を覚悟した。
様子見に豪邸の周りを探ってみると立派な玄関には
『極北一家』との表札があったのだ。
「動いたよ・・・」
レーダー反応に後藤が吉澤の顔を見る。
玄関口にリムジンが止まると中から親分らしき人物と
ボディガードが数人出てきた。
「あれっ?!」
後藤が素っ頓狂な声を上げた。
ボディガードの中に黒尽くめの長身の漢、松田優作がいたのだ。
後藤の声に反応するヤクザ達が一斉に後藤達を見た。
「ハハハ・・・・」
後藤と吉澤は手を小さく振って松田にぎこちなく挨拶する。
「すいません、昔の知り合いでして・・・」
松田は天を仰ぎながら首を振り親分に頭を下げた。
569デッドオアアライブ :02/05/09 00:28 ID:3WssQWjC
【 BATTLE AFTER 】第三話

 「アイツはどうしてる・・・?」
「高橋かい?彼女は今、幸せに暮らしてるよ・・・」
「そうか・・・良かった・・・」
3人は寒風が吹きすさむ荒波が激しい砂浜にいた。
「あんたがこんな所に居るとは思わなかったよ、しかもヤクザのボディガードで・・・」
吉澤が小石を海に投げながら話しを向ける。
ここは青森県の港町だ、寒風が後藤を身震いさせる。
「俺も生きる為に日銭が必要なんでな・・・」
松田はジッポを取り出しタバコに火を点ける。
「で?まだ女を食らってるのかい?」
吉澤は石段に腰をかけチラリと松田を見る。
松田は高橋と同じく女の精を取り込まないと老化してしまうのだ。
「いや、克服した・・・」
「どうやって・・・?」
松田は薄く笑ってみせた。
「やってみれば分かる・・・試してみるか・・・?」
砂浜に歩き出す松田に吉澤は『太陽の剣』を握り跡に続く。
「あんた日本刀はどうした?」
手ぶらで向き合う松田に吉澤は少しムッとする。
馬鹿にされたと思ったのだ。
「あるぜ・・・」
「・・・なっ・・・」吉澤は愕然とした。
松田が右手を伸ばすと鈍く光る長剣が握られていたのだ。
「ど、何処に隠してた?」
「隠してなんか無い、おまえ達が見えないだけだ・・・」
松田は言いながら上段に構える。
「いいか、これからコレを振り下ろす、撥ね退けてみろ・・・」
吉澤は自分の目を疑った、陽炎の様に剣が揺らめいて見えたのだ。
 
570デッドオアアライブ :02/05/09 00:29 ID:3WssQWjC
【 BATTLE AFTER 】第三話

 言った通りに振り下ろされる松田の長剣を太陽の剣が受け止める。
キーンと刀がぶつかり合う音がして・・・・それで終わりだった。
松田の剣を受け止めた瞬間、吉澤の手が痺れ、ガクンと腰が抜けた。
崩れ落ちるときには体の感覚が無くなっていた。
「よっすぃ!!」
後藤が駆け寄り吉澤を抱き起こす。
吉澤の顔は蒼ざめ、貧血を起こしていた。
「これが念法だ・・・」
「念法・・・?」
「おまえ達、あの島から帰ってきてツョッカーの残党と出くわしたか?」
無言で首を振る後藤。
確かに、残党狩りはしていない・・・・
いや、しているのだが残党と出会った事が無い、レーダー反応が無かったからだ。
「やはりな・・・出くわしていたらおまえ達は死んでいる・・・
俺達があの島で殺した連中は出来損ないの改造人間だ、
真に強い連中はこっちで好き勝手に遊んで暮らしてるぜ・・・
ツョッカーの壊滅によって心臓に埋め込まれた爆弾の恐怖から開放されたからな・・・」
松田が日本刀を背中に回すとカシンと鞘に入れる音がして長剣は消えた。
571デッドオアアライブ :02/05/09 00:30 ID:3WssQWjC
【 BATTLE AFTER 】第三話

 「その技はいったい・・・?」
「お前も試してみるか?」
松田はポケットに手を入れて一枚の百円玉を手に取った。
「これに念を込める・・・」
十秒程握り締めた百円玉を手の平で転がす松田は
「受け止めてみろ・・・」
と百円玉をピンと親指で弾いた。
額に向かって飛んでくる小銭を後藤は左手で受け止めた。
手の平が痺れた。
見ると、百円玉は手の平に半分程埋まっていた。
いや、ゆっくりとだが沈む小銭は手の平を突き抜けて手の甲からポトリと落ちた。
瞬間、左手の感覚が無くなり激しい脱力感に襲われる。
「心配するな、今日中に治る・・・そっちは一週間程寝込む事になるがな・・・」
松田は動けない吉澤に顎をしゃくってみせた。
「俺の念の殆んどは自分の日本刀に込めている、だが今の百円玉ぐらいの
芸当は簡単にできるぞ・・・」
「だからどういう事なんだ!」
後藤は血の滴る左手を押さえながら聞いた。
「いいだろう、少し教えてやる・・・」
松田はまたタバコに火を点け紫煙を深く吸い込み旨そうに吐き出し
自分の頭頂から七つのツボを指差した。
「チャクラという思念を開放するツボが人間の体に七つ有る・・・
俺は三つまでしか開けられないがな・・・それを開放して攻撃し、身を守るんだ・・・
いくら体を鍛え、技を磨いても奴等には通用しない・・・
思念とは何かと聞かれても俺にもよく解からんがな・・・」
松田は上着を脱いで上半身裸になった。
「それは・・・?」後藤が唾を飲み込む。
松田の胸から腹にかけて酷いケロイド状の傷があった。
「俺は残党の一人と戦った事がある・・・結果、命からがら逃げ出してこのザマよ・・・
北海道の大雪山に行け・・・そこに俺の師匠が居る・・・・」
松田は踵を返し、ふと空を見上げた、雪が降ってきた。
「寒いか・・・?・・・俺は寒くないぞ・・・・」
フッと静かに笑い松田は消えた。


572デッドオアアライブ :02/05/09 00:31 ID:3WssQWjC
【 BATTLE AFTER 】第三話


 寒さからなのか、それとも念攻撃のせいか、後藤はガクガクと震えていた。
筋肉が弛緩して動けない吉澤を肩に担ぎ後藤は今までの戦いを思った。
・・・・無駄だったのか?・・・・
そうは思いたくなかったが、念法とやらを憶える前の
松田が吉澤と同じぐらいの技量を持つ剣の達人なのも事実だった。
「大雪山か・・・寒そうな名前の山だな・・・」
ハァと溜め息をつく後藤は寒いのが苦手だった・・・・・