【小説】 ★★ 『ハロプロ』バトルロワイヤル★★

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545デッドオアアライブ
【 BATTLE AFTER 】 第一話


 加護は学校からの帰り道で忘れ物をした事に気付いた。
「あっ、ノノ、先に帰っててや・・・」
来た道を走り出す加護にポカンとする辻が
「どうしたの〜?」と後姿に声を掛けた。
「忘れ物や〜!」
加護の声が返ってきた。

自分の机から忘れ物を取り出し教室を出ると担任が廊下にいた。
「おお、加護どうした?」
「いえ、忘れ物を・・・」
「そうか、丁度良かった、ちょっと頼まれてくれないか?」
「なんですか?」
加護の顔は「え〜」と不満そうだった。

「なんでウチが届けなあかんねん・・・」
夕暮れが迫る街中を加護はブツクサ文句を言いながら歩く。
今日、学校を休んだ『名無し君』こと名梨野太郎の家にプリントを
渡す事を担任に頼まれたのだ。

「あ、有ったココや・・・」
地図を頼りに探すとすぐに見つかった。
名無しの家は小さな鉄工所を経営していた。
「はあ、結構裕福やねんなぁ・・・」
家の前に如何にも高そうなベンツが2台止まっていたのだ。
加護は玄関に入ろうとして止まった。
家から怒鳴り声が響いてきたからだ。
「何時なったら金返すんじゃ!ボケェ!!」
加護は玄関の陰に隠れてソッと中を窺った。
「すみません〜、来週にはきっと・・・」
「あのなぁ、期日はとっくにすぎてんだよ!」
どうやら借金取りが来ているようだ。
オロオロと泣き声の母親を庇うように名無しの声が聞こえた。
「やめろよ〜!返すって言ってんだろ!」
「なんだと!このガキャ!!」
バシンと叩かれる音とガラガラと何かが崩れる音がした。
加護はその音に心臓の鼓動が激しくなりブルブルと体が震えた。
(大変や・・・どないなっとんねん?)
母親が泣き出して一先ず騒ぎは収まった。
「けっ、今日の所は勘弁してやる!次来るまで用意しとけよ!」
玄関からズカズカと出てくる柄の悪い男達は隠れている加護を見付け
「なに見てんのじゃ!この家のガキか?」と凄んでみせる。
加護が首を左右に振る。
「覗きみたいな真似するなボケ!」
ゴツンと加護の頭にゲンコツを食らわせた。



546デッドオアアライブ :02/05/01 21:51 ID:tsbty7o8
【 BATTLE AFTER 】 第一話


 ベンツが消えるのを舌をベーと出して見送り、
玄関を覗くと玄関の窓が割られ啜り泣きながら片付ける名無しが居た。
「あっ」不意に顔を上げた名無しと加護の目が合った。
加護はトテトテと近付き黙ってガラスの破片を拾い片付ける。
名無しはゴシゴシと服の袖で涙を拭い一緒に片付け始めた。
「こ、これ・・・」
加護は頼まれたプリントを差し出す。
「先生に頼まれてん・・・」
黙って受け取った名無しは「そうか・・・」とだけ呟いた。
母親が出てきて、夕飯を食べていってと言ったが
プリントを渡しに来ただけだからと断った。

「送っていくよ・・・」
「大丈夫・・・?」
「あ、ああ、コレか・・・」
そう言って名無しは目の上のデカイ絆創膏を擦って見せた。
殴られた名無しは目の上に大きな青痣が出来ていた。
「ハハ・・・大丈夫だよ」
黄昏た街を無言で歩く2人。
「なあ、見てたのか・・・」
名無しが不意に聞いた。
「・・・うん・・・」
「そっか・・・」
名無しは立ち止まりうつむく。
「どうしたの・・・」
加護が振り向くと名無しはポロポロと涙を流していた。
「・・・騙されたんだよ・・・・あいつ等に・・・」
加護はそっとハンカチを差し出した。

それから暫らく歩いた。
「もう、ここでいいよ、ありがと」
加護は明るく言ってみせた。
「お、おう、・・・あのさ・・・」
「なに?」
「この事は、みんなには・・・・」
「大丈夫!誰にも喋らへんよ」
加護は手を振りながら走った。
遠くに消える加護は「明日は学校来るんやでぇ!」
とピョンピョン跳ねてみせた。
547デッドオアアライブ :02/05/01 21:52 ID:tsbty7o8
【 BATTLE AFTER 】 第一話

 『レストランプチモーニング』に帰ると加護は急いで夕食を取り、
そのまま『飯田二輪店』に消えた。
「あさ美ちゃん!アレ出してや!」
キョトンとする紺野に「アレや、スーツ、スーツ」と肩を揺する。
紺野は何か有った時の為に防弾機能のピンク色の皮のライダースーツを作っていた。
「ちょ、ちょっと待って、どうするんです?」
「い、いや・・・何でもあらへん・・・」
「言えないなら貸せません」
「じゃあ、飯田さんのスーツ貸してや!」
「ますます、貸せません」
「じゃあ、飯田さんと同じ物造ってや!」
「何言ってるんです、アレは造るのに十数億もお金が掛かってるんですよ」
「えっ!!!」
それを聞いてガックリ肩を落す加護に
「いったいどうしたんです?誰にも話しませんから
私には話してくれませんか」と諭す。
「・・・う〜、ほんまに・・・?」
「ほんまです!」
加護は今日の出来事を紺野に話した。
「ふ〜む、それで其のサラ金屋さんを潰すつもりなんですか・・・」
紺野は呆れ顔だが加護は本気だ。
「虎太郎さんを連れて行ってもすぐ犯人は貴女だとばれますよ」
「じゃあ、どないすんねん!」
加護は頭を抱える。
「・・・分かりました・・・極東興産って名前のサラ金ですね」
紺野はパソコンに向かって何かを打ち込む。
「私のパソコンは七曲署のパソコンと繋がってるんですよ」
モニターを見る紺野の顔が少し険しくなる。
「これは・・・酷い会社ですね・・・警察でもマークしてますよ・・・・
この会社がらみで自殺してる人も何人かいますね・・・・」
それを聞いた加護は気がそぞろでは無い。
「ヤバイやん!あさ美ちゃん何とかしてや・・・名無し君のオトンが死んじゃう!」
加護に肩を揺らされ、考え込む紺野は何か閃いたようだ。
「分かりました、でも明日の夜にしましょう、私、作戦考えました」
そう言ってまたパソコンに向かい合う。
「ほんま?大丈夫なん?」
紺野は加護に右手の指を広げて見せた。
「私、日本で5本の指に入るそうです」
加護は何の事を言ってるのか分からなかった。
548デッドオアアライブ :02/05/01 21:53 ID:tsbty7o8
【 BATTLE AFTER 】 第一話


 翌朝登校する辻と加護に「ウオッス!」と名無しが自転車で通り抜ける。
「あれ?名無し君、目ぇどうしたんですか?」
片目を包帯で巻いた名無しに辻が聞いた。
名無しは「ヘヘヘ〜」と笑いスピードを上げて駆ける。
「きっと階段で転んだんやろ・・・」
自転車の名無しが遠くなるのを見ながら加護はちょっと嬉しそうだった。

加護は知らず知らずに名無しを目で追っていた。
いつも通りに友達とふざけ合う名無しを見る加護は頬杖をついて微笑む。
ふと、目が合った。
ちょっと顔が赤くなった名無しは更に友達とふざけ合う。
何故か加護も顔が赤くなった。

下校の時間になり帰り支度をする加護は教室の窓の外に映る
自転車に乗り、帰宅する名無しを見つけた。
またアイツ等が来るのかと思うと胸が切なくなった。
「頑張りや・・・太郎君・・・」
加護は初めて名無しの名前を口にした。
 
549デッドオアアライブ :02/05/01 21:54 ID:tsbty7o8
【 BATTLE AFTER 】 第一話

 夜の10時になると加護が紺野の部屋にやってきた。
「待ってましたよ、コレに着替えて下さい」
渡されたピンクの防弾スーツに着替える。
お揃いのスーツの紺野の目の下には隈が出来ていた。
「どないしたん?その隈?」
「ハハ・・・昨日から寝てませんよ、クラッキングとマネーロンダリングの
プログラム作るのに今まで掛かりました」
その紺野の顔を見て加護は感謝した。
「さあ、このEnterボタンを押して下さい」
意味が分からないが言われるままにボタンを押した。
モニターがせわしなく動くがどうなっているのか分からない。
「簡単に言うと、極東興産の会社と社長の資産を全て別の銀行に移します、
銀行から銀行・・・資産の全てが世界中の銀行に飛んで資産が何処に消えたか
分からなくします、最後に他の国に有る私の口座に振り込まれるようになってます、
同時に極東興産のパソコンをクラッキングソフトで破壊します」
目を丸くする加護はワ〜!と紺野に抱きつく。
「いくら資産があるの?」
ニコリとする紺野は指を4本立てた。
「40億です・・・・」
「よ、40億〜!!!」
ペタンと腰を落す加護に親指を立てる紺野は
「悪い奴は許せません」とウインクをして見せた。


「あさ美ちゃんて運転も出来るんやね・・・・」
レンタカーを運転する紺野は
「当たり前です、それより作戦は憶えましたか?」
と加護に念を押した。
「大丈夫だよね〜、虎太郎?」
後部座席に隠れている虎太郎の頭を撫でて防毒マスクを被せる。
加護は麻袋をギュッと握り締めた。
極東興産の事務所に乗り込んで紺野特製の眠りスプレーで社員を眠らせて
其の間にあらゆる書類を麻袋に詰め込み、パソコンのHDを全て抜き取る。
同じ事を社長のマンションでも行う。
これで全ての証拠は無くなり極東興産は壊滅する。
それを朝までに行う。
加護は武者震いをした。
「あさ美ちゃん、ちょっと止めてや」
「どうしました?」
「・・・オシッコしたなってきた・・・」
加護の武者震いはオシッコを我慢してたからだった。
550デッドオアアライブ :02/05/01 21:56 ID:tsbty7o8
【 BATTLE AFTER 】 第一話


 紺野は自分の布団の中でイビキをかいて眠る。
「よっぽど疲れたんやね・・・ほんまありがと・・・」
加護は紺野の額を撫でた。
『ツョッカー』に比べれば赤子の手を捻るより簡単だった。
余りの呆気なさに午前3時には事が片付いた。
(は〜、今日は学校で寝てなあかん・・・)
加護も眠気に勝てなくなった。
そのまま紺野の布団に潜り込んで眠り込む。
学校に行くつもりだったが起きたのは夕方近くだった。
テレビでは悪徳金融波状のニュースが小さい扱いで出ていた。
夕食時、紺野と顔を見合わせてニコリとする。
紺野はどうやって被害者に金を返すか考えている。

加護はというと・・・・
明日、どのように名梨野太郎に話しかけるか悩んでいた。
結局いつもと変わらない挨拶になることは分かっているのに・・・・・
 
551デッドオアアライブ :02/05/01 21:57 ID:tsbty7o8
【 BATTLE AFTER 】 第二話


 飯田は『レストランプチモーニング』のカウンターに座り
グダグダしている。
「あ〜暇な店だね〜・・・・」
午後2時の一番暇な時間は眠気を誘う時間でもある。
「暇ってね〜、アンタの店が一番暇なんじゃない」
矢口がコップを拭きながら邪魔な客の飯田に文句を言う。
「なんだよ、お客様に向かって〜!」
「ハァ?客ってのはね、お金を払う人のことを言うの!」
「だってお金無いんだもん・・・」
カウンターに突っ伏した飯田はべそをかく。
「ビルなんて売っちゃえば?」
「そうだね〜、売れば楽に・・・・・って住む所無くなるじゃん!」
飯田の乗り突っ込みにハハハハと笑う矢口は
カウンターにドンとジュースを置いた。
「今日の『矢口ジュース』だよ、お ご っ て あ げ る ♪」
「おお!ありがとう!矢口ぃ!」
ストローに口を伸ばした飯田はゴクゴクと2口程飲んで固まった。
口を押さえ「みず〜!みず〜!」と騒ぐ飯田を見て
キャハハハハと腹を押さえて笑う矢口。
飯田が飲んだ『矢口ジュース』にはワサビがたっぷり入っていたのだ。
「もう、うるさい!また喧嘩してんの?」
安倍が厨房から顔を出して注意する。

『レストランプチモーニング』の午後は笑いに包まれているのだ・・・・