「まぁ、こんなところで話すのも何だからあなたの家行こっか」
(――はぁ?)
ますます分からない。この人が何を考えてるのか・・・・。
「わかりました・・・・」
とりあえず、ここにいたらさっきみたいな奴らがまだいるかもしれない
のでしぶしぶ彼女に従う事にした。
しかし出会ってからの矢口の、悲しそうな顔、公園での泣き顔、そして
さっきの奴らに怯えて泣いていた顔、どれもうそだったなんて思えない
・・・思いたくない。
矢口は泣きやんで、うつむいていてしっかりと市井の服を握っている。
家の玄関の入り口まで行くと、俺はちょっと憂鬱になった。
さっき慌てて飛び出したおかげで、ドアは開けっ放しで、靴が散乱
している。
まるで、空き巣にでも入られたかのようになっていた。
(あぁ・・・ここ引っ越そう。)
散乱している靴を拾い綺麗に並べて市井たちを家の中に入れた。