シアター

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58ごっつぁむ@作者
第2章【SIDE-N.T】

雪山の中を、辻と飯田さんは二人きりで歩いていました。
もう足は重いし、お腹は減ったしとても疲れます。
スキーをしたままの格好なので、上手く歩けなくてとっても大変です。
時々、飯田さんが「辻、ダイエットできるね」って冗談を言うけど今の辻には悲しくて仕方ないのです。
なんでこんなことになったのかと言うと…。

辻たちは旅行に来ていました。オフの日ができたから、と矢口さんは言っていました。
どこの県に来ているのかは忘れてしまったんですが、雪がいっぱい降っててあいぼんと二人でバスの中から
いっぱいはしゃいでいました。
旅館に着いた時、辻の部屋は飯田さんと新垣ちゃんと一緒でした。
この部屋は飯田さんが決めたんです。
それで、飯田さんが「スキーに行こう」と言ったので辻はお気に入りのスキー板を持って(ちゃんと持ってきたんですよ)
みんなとスキーに行ったのです。

辻はスキーをするのはコレが2回目だったので、あいぼんと安倍さんと3人で飯田さんにスキーを教わっていたのです。
でも、辻はおっちょこちょいだから、お気に入りのニット帽を風で飛ばしてしまったのです。
あいぼんは「一緒に行こうか?」と聞いてくれたのですが、辻は「一人で行けるよ」と行って帽子を追いかけて行ったのです。
帽子は高く空に昇っていって、辻の手には届かないところまで上がって飛んで行きます。
辻は「待て〜」とスキーの板をかかえたまま帽子を追いかけました。
やっと帽子に追いついた時、さっきまで止んでいたハズの雪が降り始めたところでした。
空も真っ黒になって、風もびゅーびゅー吹き始めました。
辻は少し怖くなって、飯田さんたちの所に早く戻ろうとしたのです。
そのうち、雪が段々強くなってきて、風も強くて上手く前に進めなくなってしまいました。
辻はもう疲れてしまって、地面にお尻をついて座り込んで、ワンワン泣いてしまいました。
そうしたら、飯田さんの声が聞こえてきて、辻は大きな声で「ここれす〜〜!!いいらさん、ここにいるのれす〜!!」と叫んだのです。
飯田さんはすぐに辻を見つけてくれました。そして辻の左手をつかんで一緒に歩き出しました。
でも、雪のせいで道がわからなくなってしまって道に迷ってしまいました。
飯田さんの来た方向に歩いて行って、何十分か歩いて行ったのですがスキー場には辿りつきません。
辻はその時、あいぼんのことを思い出し飯田さんに聞きました。
「いいらさん、あいぼんたちはどうしたのれすか?」と辻が聞くと、飯田さんは
「加護となっちは二人で山を降りたよ」と教えてくれました。
辻はあいぼんんたちがすごく心配だったのですが、それよりも自分のことが心配でした。
ご飯が食べられないなんて嫌だ!と思いながら、一生懸命足を引きずって歩きました。
・・・。
もう何時間歩いたかわかりません。
辻も飯田さんも、コンサートでダンスするよりもずっとずっと疲れてしまいもう歩けないと思った頃でした。
「辻!あそこ、家がある!!」
飯田さんが突然、前の方を指さしましたが、辻には雪でそれが見えませんでした。
でも、近づく度にその家が段々見えてくるようになりました。
こういうお家をなんていうのかずーっと考えながら歩いていたのですが、答えが「ログハウス」だとわかった頃には
そのお家の前に着いていたのです。ログハウスのとっても大きいお家です。
飯田さんが辻の手を離し、ドアをノックしました。
何回も何回も、大きな声を上げてノックします。
「誰か、誰かいますか〜!!!」
10回くらい叩いたころに、ドアが開き一人のお婆さんが出てきました。
「おやま!!あんたたち、遭難者かい?さ、さ。寒かったろう〜…早よお入り…」
と、辻と飯田さんを手招きし家の中に入れてくれました。
辻はすっかり安心していたのですが、まだ戻れるかどうかは心配なのでした。