シアター

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173ごっつぁむ@作者
「……」
あたしは躊躇していた。
あたしの、一つの間違いが全員の命に関わることになる…。
無理だよ、そんなの…。
それに、何故?どうして紺野がこんなことしているの?
…誰が犯人なの?
何かの冗談だと、紺野が今すぐにでも「ドッキリですよ」と言ってくれるのを待っている。
でも…。
冗談で済まされることではないことくらい、とっくの昔に気づいていたはずだ。
あたしは賭けることにした。
…いや、もうその気分でここまで来たはずだよ。
あたしは…ただ、ただ冷静になることだけを考えていた。
「……後藤さん」
ハッと振り返ると、紺野が冷たい微笑みを浮かべている。
その微笑みが、蝋燭の火に照らされてなんとも不気味に見えた。
「何をしてるんですか?早くゲームを始めて下さい」
……逃げることはできない。
「わかってるわよ」
あたしは…あくまでも冷静に、凛として強気な気持ちで紺野に立ち向かった。
「…あんたたちの悪事は、あたしが裁く!紺野、覚悟してろ」
あたしは紺野にそう言い捨て、並べられた椅子の方へと歩んだ。
そこであたしは振り返り、またもや紺野に質問をする。
「ねえ、紺野」
「はい」
紺野はさっきの場所から一歩も動かず、あたしの問いかけに応えた。
「…なんで、こんな唐突に自分が犯人であることを明かしたのよ?」
かなりギリギリの質問だったが、紺野は特に気にする様子もなく答えた。
「…秘密、です」
…はぁ。
あたしはため息を、気づかれないように吐き、もう一度みんなのところへ歩んだ。
誰もが、あたしに救いを求めるような目をしてあたしを見ている。
だが、この中に一人だけ…。
あたしは、すでに目星のついている犯人を想像しながらも
もう一度…、推理を初めから考え直した。