サウンドノベル4「ハッピーエンド」真実の章

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954辻っ子のお豆さん
一つの旅の終り、圭織はハロプロ王国へ、真里は中澤帝国へと、それぞれの場所に戻る。
でもなつみ達の旅はまだ始まったばかりだった。
モンスターを召喚しては街や村を襲わせ、自らの手でそれらを退治する。
その繰り返しによって勇者なっちの名は世界中へ広まった。
新しい世界を導く英雄となるだけの条件は整いつつあった。
王としての地盤を得る為に王国の姫石川梨華と運命の出会いを果たす。
さらにもう一人の協力者と出遭う。名を松浦亜弥。
人間とは思えない程のその実力者が、なつみ達の仲間になりたいと申し出てきたのだ。
何か企でいるような怪しさを秘めてはいたが、なつみはその申し出を受け入れた。
より確実に夢へと近づくには強大な力が必要だったから。
そして残すは最後の仕上げ、なつみが王となるのに妨げとなる古き王を始末すること。
明日香と紗耶香の見事のお芝居によって、まずつんくがいなくなった。
そして帝国の皇帝中澤も問題なく片付けることができた。
全て思い通りに事が運んでいた。もうすぐ理想郷に手が届く所まで来ていた。
どこで歯車が狂い始めたのだろう?
なつみは古き友、飯田圭織をその手で殺める事になる。
仕方のない事、頭ではそう理解していても心まではそうはいかない。
気が付けばなつみの手は、拭い切れない血で汚れてしまっていた。
955辻っ子のお豆さん:02/02/06 00:36 ID:EhanLCa1
「ねえ紗耶香、なっちは間違ってるのかな?」
なつみが戸惑い浮かべた時、相棒はいつも優しく背中を押してくれた。
「なつみは間違ってないよ、自分の夢を信じなさい。」
その言葉がどんなに心強かったか、そうだよね、今更夢を捨てることはできないよね。
もう後戻りはできない所まで来てしまったんだ。なつみの迷いは消えた。
そして夢が現実の物となる日が訪れた。
みんなが笑って暮らせる理想郷、なっちがその王となる日。
しかしここに来て、なつみの夢の前に立ち塞がる者達が現れた。
吉澤ひとみ、辻希美、そして成長した後藤真希。
もう一人名前も知らない奴がいたが、そいつはすぐに松浦を巻き込んで自爆した。
「グスッ、エッ・・お前は仲間が死んでもなんとも思わないのれすか!」
「あいつも所詮は人間、なっちの仲間は紗耶香と明日香だけだべ。」
「お前は最低なのれす!」
辻がなつみに突進してきた。互いに持つ剣と剣が交差してぶつかり合う。
「お前には心というものはないんれすか!人でなし!悪魔れす!」
「悪魔・・そうだよ、なっちは悪魔だべさ。」
なつみの表情が一変する。幼き日の思い出が脳裏をかすめる。
『そいつは悪魔だ!悪魔の子だ!殺せ殺せ殺せ!』
「お前にはわからないだろうな・・何不自由なく幸せな人生を歩くお前には・・」
闇が、なつみを覆い尽くしていた。
956辻っ子のお豆さん:02/02/06 00:36 ID:EhanLCa1
明日香が、そして紗耶香が、真希の手によって殺される。
今思えば紗耶香はずっと責任を感じていたのだと思う。
なつみに人殺しをさせていたのは自分だと思い込んで…
そして命を絶つことでしか許されないと思っていたのかもしれない。
ずっと自分を殺してくれる相手を探していた様なふしもあった。
もっとも、もう真相を確かめる事はできないのだけれども。

なつみは全てを失った。共に歩んできた仲間も、掴みかけた夢も・・

あの頃のように、またひとりに戻ってしまったなつみには、もう何も残っていない。
こんな世界はいらない、なつみは魔界の門を召喚し世界を消そうとした。
なつみを止めたのは小さな勇者達だった。
その少女達は笑っていた。その笑顔はずっとなつみが追い求めてきたモノ。
(あななたちなら・・なっちの夢を叶えられるかも・・)
そこでなつみの意識は途切れた。

なつみは時を駆けた。
957アルマーニ濱口 ◆2ggkL5EU :02/02/06 00:37 ID:o5uNVhSZ
新スレ立てないのか?
958辻っ子のお豆さん:02/02/06 00:37 ID:EhanLCa1
「あー!気が付いたみたいだよー。いちーちゃん!」
目を覚ますと、少女は暖かいベットの中にいた。
脇から騒がしい声が聞こえる。見ると小さな女の子が二人喚き合っていた。
「私はさやか、それでこの子は・・」
「まきー!」
「あなたのお名前は、なんていうの?」
さやかと名乗ったショートカットの方の女の子が、少女の顔を覗き込んで話し掛けた。
少女の眼から涙が零れ落ちた。
「わ、わ、わ、どーして泣くの?」
「アハハハ、きっといちーちゃんの顔が怖いんだよぉ。」
「なんだとぉ、コラァまきー!」
二人ははしゃぎながら部屋を飛び出して行った。
神様、私にもう一度チャンスをくれるのですか?
私にもまだハッピーエンドを手にする資格が残されているのですか?
少女は涙を拭いてベットから飛び起きた。
その無垢な手にはまだ少しの汚れもついていない。

番外編「もうひとつのハッピーエンド」完