サウンドノベル4「ハッピーエンド」真実の章

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886辻っ子のお豆さん
「何何?この騒ぎは?」
「泥棒が侵入した様です。王、王妃、危険ですのでここにいて下さい。」
報告に来た石黒さんに部屋に閉じ込められた。せっかくおもしろそうだと思ったのに…
私は扉の前でがっかりして、梨華ちゃんと顔を見合わせた。
「でも泥棒って、前にもこんな事あった様な。」
「もしかしてあの人…いや、そんなはずはないか。あの人はもう…」
「ピンポーン、泥棒は圭ちゃんだよ〜。」
いるはずのない人物の声がした。私と梨華ちゃんは驚いて振り返った。
窓際にもたれ掛かって、死んだはずのあの娘がいた。
「あやや!」
「お久しぶりお姉様。こうしてまた生きて会えるとは思ってなかったわ。」
「亜弥…」
「お前こそ、なんで生きているんだよ!?確かにあの時!」
「ひとみちゃん、いや今は国王様かしら。私は不死身なの、フフフ残念でした〜。」
口に手を当てて笑う松浦の表情には、どこまでも無邪気な残酷さが浮かび上がっていた。
恐怖に耐え切れなくなった梨華が私の腕に体を絡み付ける。
緊張が体を包み込む。だけど逃げる訳にはいかない、隣には梨華がいるんだ。
「そ、それで一体、何の用だ!?」
「トロピカ〜ル♪あなた達二人にお礼をしにきたの。」
887辻っ子のお豆さん:02/02/02 23:47 ID:Vtx6QdQr
お礼?プレゼントでも持ってきたの。そんな訳ないか。
ふいにあややが右手をあげると、ベットのシーツが私達に覆い被さってきた。
「きゃー!」
「なんだよ、邪魔だ!」
私が強引にシーツをはがすと、一瞬にして全身が凍り付いた。
あややの右手が私の喉元にあったのだ。隣の梨華の喉元にも同様にあややの左手が。
「ッ…」
言葉が出なかった。シーツで視界を隠された数秒の間にこんな事に。
あややがほんの少し腕に力を込めれば、簡単に命を奪える状況になっていた。
まるで片思いの相手に贈るかのごとく、あややはとびきりの笑顔をみせた。
「殺しちゃってよいのかな〜♪」
ブチン!
松浦の両手は、主の命令を確実に遂行した。
目的を追えた松浦は、回れ右をして再び窓に手をかけた。
その手には、青き結晶のペンダントが二つ、握られていた。
「本当はあの後、なっちさんを相手にして楽しむ予定だったんですよ。だけどお姉様達が
 それを見事阻止してしまった。だから責任もって代わりにあややを楽しませてね。」
それだけ言うと松浦は窓から外へと飛び出した。
888辻っ子のお豆さん:02/02/02 23:48 ID:Vtx6QdQr
部屋に残された二人は、訳がわからずしばらく呆然としていた。
「あれ、生きてるよ。」
「違う!ペンダントを奪っていったんだ、あいつ!」
二人の首に掛けていた大事なペンダントが、紐ごと引き千切られていた。
「初めからこれが目的だったのかな。」
「大変だ!追いかけよう!取り戻さなきゃ!」
「そうだよね、国宝だもんね。」
「それに、二人の思い出の品だろ。」
梨華は頬を赤らめて、目の前に立つ愛しい人を見上げた。
ひとみは窓に手を乗せ、もう片方の手を梨華の方へ伸ばして声を掛けた。
「行こう!」
彼女が差し出すその手をとった時、この平凡な毎日が終わりを告げるのだろう。
「うん。」
梨華の手がひとみの手に重なる時、再び壮大な冒険の扉が開く。

「ひとみ王!梨華様!ご無事で?」
石黒達が部屋に戻った時には、そこにはもう二人の姿はなかった。
「あーあ、やっぱり行っちゃいましたか。」
「そうなると思ったよ。さ、隊長、我々は二人の留守を守りましょうか。」
「やかましい!りんね!あさみ!王を探せ!逃がすなよー!」
889辻っ子のお豆さん:02/02/02 23:49 ID:Vtx6QdQr
ハロプロ城そばの丘で、松浦は保田と合流した。
「流石大泥棒。保田さんが騎士団の目を引いてくれたおかげで、うまいこといったよ。」
「あんたねー、わたしゃ死ぬかと思ったよ。どうして今更こんなこと?」
「あの二人へのお礼ですよ。クスッ、きゃたおも〜い♪」
「何だそりゃ?」
「さーて、それじゃ行きましょうか、まだ見ぬ外の世界へ!」
松浦亜弥は二つのペンダントを振り回して走り出した。

ひとみと梨華は手をつないだまま城下町を走り抜けた。
「ねえ、亜弥がどこへ行ったか、わかってるの?」
「わかんない、適当。」
「やっぱり、もう・・」
梨華はすねた顔をしたが、心の中ではよっすぃーらしいと微笑んだ。
「僕にはわかる。」
「その声は、綾小路…じゃない、ごっちん!」
城下町の入り口の影に待ち伏せていたのは後藤真希だった。
「君達二人では危なっかしくて見てらんないからな。つきあうよ。それともお邪魔かな?」
「ううん、そんなことない。また逢えて嬉しいよ、ねっ梨華ちゃん。」
「うん、これで名トリオだね。」
「そう?」
890辻っ子のお豆さん:02/02/02 23:50 ID:Vtx6QdQr
「名トリオだよ〜もう〜。」
後藤はわざと梨華に冷たく当って、反応をおもしろがっていた。
「よーしそれじゃまず、ピース村へ向かって、のの達も誘おう!
 それでまた皆で冒険の始まりだ!目指すは松浦、ペンダントを取り返す!」
「はーい、ポジポジ。」
「やれやれ、また騒がしくなるのか。」
そうは言いながらも真希は、こういうのも悪くないと感じていた。
一方、ひとみの胸も新たな旅の期待と興奮に高鳴っていた。
『トロピカ〜ル♪あなた達二人にお礼をしにきたの。』
もしかしてあの時のお礼とはこういう事だったのかもしれない。
私をつまらない生活から解き放つ為に…
「まあ、直接会って確かめればいいことか。」
「え、何が?」
「へへー、何でもないよ。ほら、行こう!」
吉澤、石川、後藤は新たな旅立ちの一歩を踏みしめた。
世界は広い。まだまだ私達の知らない光景が広がっていることだろう。
みんなで行こう。
きっといつかどこかでみつかるはずのハッピーエンドを手にする為に…

【ハッピーエンド 完】