サウンドノベル4「ハッピーエンド」真実の章

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694辻っ子のお豆さん
人形のように固まっている梨華ちゃんの元へ駆け寄った。
「梨華ちゃん!大丈夫!」
私は彼女の両肩を掴んで力任せに揺さぶって呼んだ。
「やめて、痛い。」
梨華ちゃんは私の腕を振りほどくと、脅えた眼で私の事を睨んだ。
それはずっと見てきた彼女の眼ではない、眩しく輝いていたあの笑顔もない。
「私だよ・・よっすぃー、吉澤ひとみだよ。」
「誰?」
「助けにきたの。」
「なんで?」
なんでってそんなの決まってるだろ、私は梨華ちゃんのことが…
「本当に全部忘れてしまったの?私の事も、一緒に旅したことも。」
だって約束しただろ、一緒に…
「あの約束も、全部…」
「キャー来ないで!」
私がさらに近寄ると梨華ちゃんは悲鳴をあげて後ずさりした。
まるで暴漢魔を見るような蔑んだ眼で私の事を見ている。
「嘘でしょ。冗談やめてよ。ねえ、梨華ちゃん。」
彼女からの返事はなかった。私はその場に崩れ落ちた。
695辻っ子のお豆さん:02/01/27 03:18 ID:Cai4nnmA
「伸びろ!ピョーンソード!」
上空に浮かび上がったなっちに向けて剣は伸びていったが、なぜか直前で阻まれた。
「おかしいのれす、こうげきらとろかないのれす。」
「ハマミエ!」
後藤も光の聖剣を振ったが、やはりなっちの手前で消滅した。
強大過ぎる闇の力がなっちを包み込んで、あらゆる攻撃を防いでいた。
「くそっ、このままじゃ・・」
「後藤さん、ろうなるんれすか?」
「魔界と地上が繋ったら世界の終わりよ。」
「せかいのおわり、そんなのいやれす!」
しかし、辻と後藤をもってしても、もはやなっちを止める術はなかった。

矢口真里は焦っていた。
今すぐなっちの所へ向かわなければならない気がしているのに、それができない。
城門にはまだ数多くの騎士と騎士団長の石黒が立ち塞がっていたからだ。
「お前等どけー!もう争ってる場合じゃないだろー!」
「うるさい!我らハロプロ騎士はいかなる事態でも王宮を守り抜くのだ!」
天変地異と言ってもよい現象が起きているというのに、まだこんなことを言ってる。
696辻っ子のお豆さん:02/01/27 03:18 ID:Cai4nnmA
「矢口さん。あそこから直接行って下さい。」
見かねた紺野が矢口に提案した。ななめ前方のバルコニーを指していた。
「無理よ、あんな所まで届かないって。」
「投げます。」
すると紺野は小さな矢口を持ち上げて構えた。
「ちょ!ちょと待って!わ、わ、うわー!!」
紺野自慢の遠投により、真里は毬の様にバルコニーまで飛んでいった。
どーん、ぐしゃ!
矢口はバルコニーの柱に思いっきり激突して、潰れ落ちた。
「あいつ、後でコロす・・」

起き上がった矢口はバルコニーからダンスホールへと入っていった。
上空に浮かぶなっち、それに身構える辻と後藤、脅える石川、崩れ落ちる吉澤。
あーあ、面倒臭そうな状況だなぁ、ヤダナー。入るなり矢口は嫌な顔した。
「やぐっつぁん!」
意外な所からの味方の参上に、後藤達は驚きの声をあげる。
矢口は二人に軽く手を振って合図し、変わり果てた古き仲間を見上げた。
「ひさぶりだね、なつみ。」
697辻っ子のお豆さん:02/01/27 03:19 ID:Cai4nnmA
「マリ・・」
なつみは小さく呟いた。
「紗耶香とカオリは?」
「もういない。」
ある程度予想していたので、矢口に驚きはそれほどなかった。
「しっかり者の二人がいなくなって、バカやってた二人が生き残っちゃったか。」
「…」
なつみの上に広がる魔界の門はさらに拡大を続けていた。
「もうやめなよ、意味ないじゃん。」
「…」
しかしなつみは矢口の言葉にも耳を貸そうとはしなかった。
矢口の胸に過去の思い出が蘇ってくる。

1. なつみと初めて出会った日のこと
2. なつみと夢を語り合った日のこと
3. 旅が終わり別れを告げた日のこと