サウンドノベル4「ハッピーエンド」真実の章

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618辻っ子のお豆さん
市井紗耶香は知らなかった。その娘の力を・・
福田明日香は知らなかった。その娘の可能性を・・
安倍なつみは知らなかった。その娘の起こす奇跡を・・
その時点までその場には、明らかに魔族側圧勝のムードが流れていた。このような絶望的状況を希望へと変える存在を、もし人々が勇者と呼ぶのなら、その娘はまぎれもなくそれに値するであろう。

激しい爆音が去り、吉澤は自分がまだ生きていることを悟った。プッチの直撃を受けて助かる見込みはないのにどうしてだろうと思い顔をあげると、目の前には一人の少女の背中が見えた。この背中は以前にも見た覚えがある。吉澤が誰より信頼を寄せる人物の背中。
「のの…」
辻希美は生きていた。安倍の放った真夏の光線は全て辻の腹によって無効化されていた。そればかりではなく辻は吉澤を救う為に市井のプッチすらも反射してみせたのだ。

「馬鹿な・・どうして奴は生きているのだ!?」
魔族側に初めて動揺がみられた。安倍市井ともに己の奥義には絶対な自信を持っていただけに、たかが人間ごときに無効かされたその衝撃はあまりに大きい。福田にしても辻にその様な能力があることに驚きを隠せなかった。
『我らの計画には何の障害にもなりません。ただの雑魚でした。』
そして完全にノーマーク扱いしていた自分を悔いた。
619あぼーん星人:02/01/25 21:55 ID:sSq1eEgw
 「矢口ソロデビュー」の電p@発見!!
http://school.2ch.net/test/read.cgi/doctor/1008318966/l50
>>258
620辻っ子のお豆さん:02/01/25 21:56 ID:6ZuJmZAj
「後藤さん!イマれす!」
辻の声で福田はハッと我に返る。しまった、あいつに気を取られていて完全に自分の相手を見失っていた。そう思った時にはもう遅かった。
福田がギンナンを持ち直す前に、後藤真希のハマミエが福田明日香を一閃した。何物もを弾く魔族の肉体を聖剣の光が消し去っていく。

一瞬の出来事に、安倍と市井は驚嘆の声をあげた。
「明日香!」
あぁ、なっち様と紗耶香の声が聞こえる。薄れ行く意識の中で明日香はなっちとの出会いを思い出していた。魔族として生まれ迫害された自分を救ってくれたのはなっち様だった。
そのときからずっと、理想境を創るというなっち様の夢に、自分の身を捧げる事を誓った。だけどどうやらそれもここまでらしい。
「死ぬな!明日香!」
もうなっち様が何を言っているのかも聞こえない。しゃべる力すら残されていないみたいだ。でも最後にこれだけは伝えておきたい。
(なっちありがとう・・)
福田明日香の最後の意識が言葉になることはなかった。闇の魔剣ギンナンを残し、福田は完全に消滅した。
621辻っ子のお豆さん:02/01/25 21:57 ID:6ZuJmZAj
「どうしてだべ明日香、もうすぐ、もうすぐだったのに・・」
松浦の時とは異なり、福田の死は明らかに安倍を動揺させていた。だがその悲壮な気持ちはすぐに怒りと形を変えて安倍に力を与えていた。福田の忘れ形見となった魔剣ギンナンを拾い矛先を福田の仇、後藤真希へと向ける。
「真希、やはりお前をあの時生かしておいたのは失敗だった。絶対に許さない!」
「それは私のセリフだよ。」

吉澤ひとみは再び立ち上がった。
「のの、私はもう大丈夫だからごっちんを助けてあげて。」
「よっすぃー・・れも。」
「お願い、あの人とは一対一でケリをつけたいんだ。」
吉澤の顔を下から見上げながら、辻はコクンと頷いて後藤の方へ駆け寄っていった。
またののに一つ教えられた。どんなに絶望的な状況でもあきらめちゃいけないってこと。こんな弱い気持ちで師匠を越えられるはずななかった。
「私は勇者ののの相棒だから、この戦い絶対に負ける訳にはいかない!」
(それを教えてくれたのは師匠、あなたです。)
「いい顔だ、それでいい。」
決意を秘めた吉澤の表情に、市井もまた応える。
「ちょこっとラブ!」
「恋にノックアウト!」
622辻っ子のお豆さん:02/01/25 21:58 ID:6ZuJmZAj
立場も境遇も異なる二人ではあるが、共通する意志が存在する。自分の命を賭けても良いほどに純粋で真っ直ぐな意志を持った唯一無二の相棒がいること。その為に自分は絶対に負ける訳にはいかないこと。
「なつみと目指した夢の為に!私は勝ち続けるんだぁー!!」
市井さんの想いがプッチ越しに伝わってくる。果てしない怒りと悲しみに包まれた想い。
だけど私だって負ける訳にはいかないんだ。梨華ちゃんを助けるんだから、その為にたくさんの人が私に力を貸してくれたんだから。全部の想いをこの一撃に乗せて!
「うわああああああああああああぁぁぁぁぁ!!!!!!」
吉澤のプッチが市井のプッチを越える。それは奇跡でもまぐれでもない。単純に市井の意志を吉澤の意志が越えたということ。
「師匠・・」
壁にもたれ倒れ込む師とそれを見下ろす弟子。市井はなぜか笑っている様にもみえた。
「とどめをさせ。」
何の感情もない言葉、これが師からの最後の言葉。

1、 市井紗耶香を殺す
2、 できない