サウンドノベル4「ハッピーエンド」真実の章

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278辻っ子のお豆さん
次の瞬間、飯田は自分の目と耳を疑った。
「さすがカオリ、殺すのが惜しくなってきたべさ。」
安倍なつみがさっきまでと一寸変わらぬ姿で、目の前に立っていたのだ。
「嘘でしょ!どうして?なつみ・・」
飯田は混乱した。確かになっちは自分の魔法によって焼け死んだはず。
だが、そこに居るのはまぎれもなく安倍なつみ本人。
「教えてあげようか、カオリ。」
困惑する飯田を見かねて、離れて見ていた市井が口を開いた。
「なつみは時を駆ける。」
飯田の炎によって消滅しかけたなっちは、時を越え再び元の姿に戻ったのだ。
「この力こそ、なつみが唯一無二の魔王として君臨しうる最大の理由。」
それを聞いても未だ混乱し続ける飯田に、安倍は容赦なく剣を振り下ろす。
「今度はこっちの番だべ。」
なっちの剣が飯田の体を肩口から斜めに切裂く。赤き鮮血を飛ばし飯田は崩れ落ちた。
止めの一撃を与えるべくなっちは剣を下向きに持ち直した。
「バイバイ、カオリ。」
だが、その一撃は空を斬ることになる。
瀕死の飯田は最後の力を振り絞って、その場からワープしたのだ。
「しぶといね、一体どこへ?」
「あの体ではそう遠くへは飛べないはず、おそらくあそこだべ。」
279辻っ子のお豆さん:02/01/17 22:12 ID:BNYsyZrj
ハロプロ王国の王女石川梨華は自室で一人、考え事をしていた。
これからの事、なっちの事、結婚の事、王国の事、よっすぃーの事。
そこへ突然、傷ついた飯田が現れた。
「カ、カオリ!どうしたの?その怪我!」
「り、梨華様、早く、逃げて・・」
「逃げてって?誰にやられたの!?」
「なつみ・・なっちは、敵です。早く!」
「なっち様!?なっち様がやったの?嘘でしょ!カオリ!」
だが、飯田から返事が返って来ることはなかった。
飛んできた剣が飯田の背中に突き刺さり、飯田は息絶えた。
「カオリ?カオリーン!」
幼い頃から自分の面倒を見てくれていた者の死に、梨華は悲鳴をあげた。
部屋の入り口からなっちはその姿を見下ろしていた。
「残念だよ、梨華。」
「なっち様・・これは一体どういうことですか?どうして・・?」
「君だけには知られなくなかったけど、仕方ないね。やって明日香・・」
「え・・?」
梨華の背後に潜んでいた福田明日香の手が、そっと梨華の後頭部に触れる。
「Never Forget」
280辻っ子のお豆さん:02/01/17 22:13 ID:BNYsyZrj
梨華の記憶の中から大事な思い出が一つまた一つと消えて行く。
お城での生活・・
初めての冒険・・
初めての友達・・
大事な約束・・
福田明日香の魔法によって梨華は全ての記憶を失い、心の抜け落ちた人形と化した。
「終りました、なつみ様。後の処理はどうします。」
「ありがとう明日香、あとはそこの死体の片付けをお願い。」
「はい。」
福田は飯田の死体を担ぐと、また闇の中へと消えて行った。
残った安倍はまるで人形のように動かなくなった梨華を見詰める。
「せめてあと二日、心を持った君と結ばれたかった・・」
抜け殻となった梨華をベットに寝かせ、なっちは部屋を後にした。
この事件が公に出る事はなかった。
ただ飯田がいなくなった。その事実だけが伝えられた。
兵士達の中にも少しおかしいと思う者がいたが、それ以上の事は何もできなかった。
目撃者もいない、何の証拠もないからだ。
梨華となっちの結婚式まで、あと一日。
281辻っ子のお豆さん:02/01/17 22:14 ID:BNYsyZrj
遠く離れた地でたった一人、その現場を目撃していた娘がいた。
「梨華ちゃん・・」
吉澤ひとみは体を震わせて上半身を起こした。
(見た)(梨華ちゃん)(悲鳴)(殺された)(飯田さん)(福田)(なっち)
単語の切れ端が頭の中を渦巻いて止まない。
見てしまった。私はとんでもないシーンを見てしまった。
大事な友達に危機が訪れている。
私はどうすればいいの?
ううん、どうすればいいのかなんて本当はわかってる。

1. 私は梨華ちゃんの所へ行く!
2. あとはごっちんに任せて、村で無事を祈っていよう。
3. 本当はわかっていない。