サウンドノベル4「ハッピーエンド」真実の章

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254辻っ子のお豆さん
一つの布団で一緒に寝た。
「どうして入ってくるの、狭いじゃない。」
口では文句を言っているが、ごっちんもそれほど嫌そうじゃない。
「明日でお別れだからさ、今日だけいいでしょ。」
そう言って私はごっちんとぴったりくっついた。
ごっちんの柔らかい体の感触が私の皮膚に直に伝わってくる。
頭の中ほとんどごっちん♪
「ZZzzzz〜」
二人は疲れが溜まっていたので、そのまますぐに眠りについた。
しばらくすると、枕元に置いた吉澤のペンダントが光を発し出した。
当然、熟睡する二人にはそんな事知る由もない。
そのペンダントは、対を成すペンダントの主に危機が迫っていることを、
自分の主に知らせるべく、その能力を自ら解放した。
吉澤ひとみに夢を見せる。これまで幾度となく見せてきたあの夢を…
「梨華ちゃん・・?」
気が付くと例の王宮の寝室、目の前に梨華ちゃんの姿があった。
その足元には傷ついた飯田さんが倒れている。
これは一体どういうこと?今お城で何が起こっているの?
255辻っ子のお豆さん:02/01/17 00:11 ID:/Ycft4li
話は数時間前に戻る。
飯田は王宮のバルコニーから城下町を眺めていた。
二日後に迫ったなっちと梨華の結婚式準備の為、夜だというのに街は騒がしい。
しかし誰もが幸せに満ち溢れている。新しい王の誕生を心から祝っている。
この幸せを本当の物にする為に、飯田には確かめねばならない事があった。
「ごめんごめん、待たせたねカオリ。」
一人の娘がホールから現れ、飯田の横に立った。
「で、用事って何?」
屈託のない笑顔で話すその娘の名は、市井紗耶香。
勇者なっちの相棒で、飯田にとっても数年来の付き合いの友人である。
「紗耶香、お前に、一つ、確認して、おきたい、事がある。」
異を決した飯田は、いつも通りの片言で切り出した。
「どしたの、あらたまって、何?」
市井に変化はない、さっきまでと同じ笑顔のままである。
「つんく王を、殺したのは・・」
飯田はゆっくりと市井の目を見詰めた。
「お前だな。」
市井紗耶香の顔から笑みが消えた。
256辻っ子のお豆さん:02/01/17 00:12 ID:/Ycft4li
「あの日の、あの時間、あの場所、あの条件、全てから、導き出した、答えだ。」
普段は無口でマイペースの飯田が、早口でまくしたてる。
「王の暗殺は、お前にしか、できない。」
飯田が市井を指し示す。真っ直ぐに見詰めるその瞳に迷いはない。
「ア〜ア、どうやら言い逃れはできそうにないみたいね。」
市井は開き直ったかの様に、また笑顔に戻った。
「御名答、つんくは私が殺した。ばれない様に気を付けたんだけど、流石カオタン。」
「ふざけるな!どうして、どうしてお前が!」
「なっちが頼んだんだべさ。」
何時の間にか、バルコニーの入り口に安倍なつみが立っていた。
「なつみ・・」
「なっちが王になるには邪魔だったんだべさ。だから始末してって頼んだの。」
「貴様…!」
飯田は怒りを露わにして安倍を睨み付けた。全身から台風のような魔力がほとばしる。
もう仲間だった、あの頃のなつみと紗耶香ではない。
そこにいるのは自分の君主を殺害した敵だ。飯田はそう認識した。
「残念だべカオリ、人間にしては見所があると思っていたのに・・」
安倍はバルコニーから後方のダンスホールへと飛び、剣を抜いた。
257辻っ子のお豆さん:02/01/17 00:12 ID:/Ycft4li
「紗耶香は手を出さないで、カオリとは二人きりで決着を着けたいの。」
安倍の申し出を市井は素直に聞き入れ、二人から少し離れた。
ダンスホールにて、安倍と飯田が向かい合う。
「最初から、お前達は、私を、騙して、いたのか?」
「そだよ、実を言うと暗黒竜もなっちのペットなんだべ。」
「マリは?あいつも、お前達の?」
「あの子は違う。貴方と同じ、使えそうだから利用しただけだよ。」
ずっと騙されていた。ずっと仲間だと信じていた。飯田は4人での旅を思い出した。
飯田の右手に巨大な魔力が集約する。
「なつみ、お前は私が倒す!」
大陸一の大魔導師と称される飯田圭織がついに本気になった。
魔術では飯田の方に分がある。一瞬で接近戦に持ち込む。
そう考えた安倍は即座に間合いを縮めてきた。
勝負は一瞬。わずかに飯田の魔法が安倍のスピードの上をいった。
「ねえ、燃えて」
安倍の全身が炎に包まれる。
魔族でも死を避けることができない程の圧倒的な魔力。
なっちは骨すら残る事なく焼き尽くされ、消滅した。