石吉後小説

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15桜系作者。
きゅぅ、っと指が締め付けられる感触がして。
吉澤はハッと顔を上げて、後藤の表情を確認しようとした。

「…ぅ、…ふぅっ…」
「ごっちん…」
「ぁ、んはぁっ……ゃ、ぁ…っ」
もう後少し、指の動きを早めれば。
目の前の後藤は、直ぐにでも果ててしまいそうな勢いだった。
けれど。
何となく、変な意識が芽生えて。
そこでそのまま、指の動きを止めてみる。

「や、ぁっ…ん…」

途端に、今まで目を閉じていた後藤はうっすらと目を開けて
吉澤を確認しようとしている様子だった。
頬を紅潮させて、荒い息を吐いているその姿は余りに色っぽい。
「止め、ちゃ…ヤ……」
微かに呟き、吉澤の腕の肘のあたりを掴んで
そっとそのまま導かせようとする。

そして自らも、もっと感じようと腰を動かす。
「ね…ぇっ…」
「うん」
「…お願、い……」
16桜系作者。:02/01/10 21:29 ID:rMltPkue
「よっすぃ…」
「……うん」

仕方なく、もう一度指を動かそうと。
その、瞬間だった。

ーーーカチャッ、キィ…


”やばいーーー”
咄嗟にそう判断できたのは、冷静な吉澤の方。
後藤の方は、吉澤の様子でそれに気付いたのか首を傾げる。
目だけをキョロキョロと動かして。
挙動不審、とは正にこんな状態を言うのではないだろうかと。
場違いな事を考えたり、していた。

普通に考えて、ここはトイレなのだから。
誰が入ってきてもおかしくない場所で、状況である。
しかも楽屋は隣なのであって。

問題は、誰が入って来たか。
17桜系作者。:02/01/10 21:38 ID:rMltPkue
「って言うかさぁ、あたしも絶対そうだと思ったんだよねぇ」
「だよね、それっぽい雰囲気だったもんね…」
「愛ちゃんはショックだったんじゃないの〜?聞いて」
「……ううん、別に」
「ふぅん?」

高橋と、小川の声。
自分の耳が正しければ、多分この二人だ。
後藤もさすがにまずい、とでも感じたのかじっとしたままで。
動かないまま。
そしてすがるような目で、ただ吉澤を見つめて。

恐らく、果てる寸前で止められたものだから
欲求が満たされていない状態なわけである。当然、心地悪い。

「だけど、ホンットびっくりしたよね!まさか吉澤さんが石川さんと
 恋人同士なんて。女でもそんなことあるんだ、みたいな」

「しっ!まこっちゃん、誰か聞いてたらどうすんの」


……な、に…?
恋人?
あたしと、梨華ちゃんが―――?
不可解だ。
そんなこと、あるわけがない。
おかしい。

そんな思いばかりが、吉澤の心に波風を立てようと。
渦巻いて。同時に、後藤の感情にも。
18桜系作者。:02/01/10 21:48 ID:rMltPkue
何かと言えば、石川はそうだった。

冗談めかして
「私達、付き合ってるんです」
と楽屋で言いふらしてみたり。
気がついたら腕を絡ませていたり、見つめていたり。

吉澤の方も、満更ではない様子を見せたり
そうやってふざけあうことは楽しいことは楽しかったし。
別に石川の事は嫌いなんかでは決してなかった。
大切な存在。
同期で、同じ痛みを分かっている人間。
素直に信頼しているとは、まだ言い難いけれど。
それでも、仲間としての絆は他のメンバーと比べても強い方だった。

ただ、最近は少し度が過ぎているような気がする。
少しずつ、後藤との関係も気づき始めているような気配も見せるのだ。
石川は後藤のことをあまり好んでいなかった。
後藤の方は気にもしていない、という様子なのだが。

そんな矢先での、しかもこの二人の会話。