糞娘マジウザイ!氏ね!!!!!!!

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953−3 保田 圭

「石川っ、待ってって!!」
保田の伸ばした腕は、彼女の細い手首を掴んだ。
2人とも息が荒い。
あまり足を踏み入れたことのない妙に薄暗い場所まで来ていた。
「・・・石川、その・・・あのさ」
石川は、泣いているのか顔を下に向け保田を見ようともしない。
「ホントは、もっとちゃんと言いに行こうと思ってて
・・・それなのに、こんな形になっちゃって・・・」

--なにを言ってるんだ、自分は。
--こんなんじゃ、全然ダメだ。

保田は、自分の口べたさがはがゆくてたまらない。

「保田さんは---それでいいんですか?」
「・・え?」
思ったよりも、はるかに石川の声は力強い。
でも、顔を上げた彼女はやはりムリをして微笑んでいるようにも見える。
「ごっちんとのこと・・・もう、いいんですか?」
石川は、自分と後藤の間にあったことを知っている、唯一の人物。
---そして、彼女は私のことを好きなんだ・・・・・・
「・・・石川、ゴメン」
保田は、深く頭を下げる。
自分にはこうして謝ることしかできない。
「私、ずっと気づかなかった・・・ううん、気づいててそれをムシしてたんだ
 私は、後藤のこと好きなんだって---でも、今は自信もって言える。
 石川には、いろいろ迷惑かけて・・・ホントに私がバカで・・・」
「分かりました」
石川が、保田の言葉をさえぎる。
「え?」
よく聞き取れずに聞き返す。
「保田さんの気持ち、分かりました」
石川は、そうはっきり口にした。
思わず、保田は顔を上げる。石川は、微笑んでいた。

「その中に、私のはいるすき間はありませんよね?」
口だけに作られた笑顔。
保田を見つめる目は真剣だった。
「それは・・・・・・」
保田は、一瞬、躊躇する。
彼女の瞳が少しだけ揺れたのが分かったからだ。
でも----はっきりと言わなければ余計に彼女を傷つけてしまうだろう。
保田は言いかけた言葉を続ける。
「ない・・・と思う」
「・・・そう、ですか」
そこではじめて石川の笑顔に翳りが宿る。
「残念だな・・・・・・」
宙に視線を向けポツリと呟く。
「私も、ごっちんみたいに積極的に行けばよかったのかな・・・」
それは、保田にではなくただ思ったことを口に出している---そんな感のする喋り方だ。
96−−:02/01/26 00:35 ID:vYBSsnOH

「・・・ねぇ、保田さん」
不意に石川が視線を戻しながら言う。
「私、ごっちんのこと怒ってませんよ」
「怒って・・・ない?」
保田は、石川の意外な言葉につい同じことを繰り返す。
「ええ、少しも---」
石川は、ゆっくりとうなづく。
「・・・なんで?」
目の前にいる石川はすごく落ち着いた瞳をしている。
「だって、私とごっちんって似てる気がするから---」
石川が答える。
(石川と、後藤が似てる・・・)
どういう意味だろう。
保田は、その眉をややしかめる。

「私も、もしかした暴走しちゃうかもしれませんよ」
石川が、怪しげに保田を見つめる。

---ゾクリッ

それは、きっと冗談の筈なのに、なぜか、背筋が凍りつくような感覚。
保田は、驚いて石川を凝視する。
そんな保田を少し眺めるように見て、石川は言った。
「−冗談です」
「・・・・・・冗談?」
保田は、ポカンと口を開ける。

一体、どこからが冗談だったんだろう・・・
そして、どれが真実なんだろう・・・・・・

97−−:02/01/26 00:36 ID:vYBSsnOH

「そうそう、1つだけお願いがあるんですけど--聞いてくれます?」
そんな保田を気にもせずに、石川は、口に手を当てて上目遣いで保田を見る。
その仕草は、他の誰かがすればものすごくわざとらしく見えるようなものだったが、
彼女にはぴったりくるものだった。
「お願い・・・って?」
「私と一緒にご飯を食べてください」
「・・・ご飯?」
「はいっ。私、憧れてたんです。
 すごく好きな人に、手料理を食べさせてあげること」
よく見ると石川の手が、少し震えている。
きっとすごく勇気をふりしぼって言っているんだろう--

「じゃあ、喜んで」
保田は、そんな石川を気遣い了解する。
「・・・よかった。じゃぁ、今日の夜に」
石川は、嬉しそうに笑う。保田は、うなづく。
その時、メールを知らせる着信音が鳴り響いた。

『もうすぐ、撮りはじまるよ〜、戻ってきてねっ!』

(----そういえば、プッチのPV撮りがあったんだ)
保田は、ディスプレイから石川に視線を移す。
「ゴメン、そろそろ撮りだから、あとで連絡するわ」
「--分かりました」
石川はうなづく。
「それじゃ」
保田は、その場を急いで後にしようとした。

「保田さんっ」

そんな保田に石川が声をかける。
「・・・っ!!」
保田は、反射的に振り返り、息を呑む。

石川は、微笑んでいた。
あの聖母のような笑顔に変わりはないはずなのに
----その奥にはとても冷たいなにかがあるような気がして
保田は、その場に立ちすくむ。
そんな保田に「がんばってください」と、石川は笑顔を深めた。
保田は、ぎこちなくうなづいてその場から逃げ出すように走り出した。

983−4 保田 圭:02/01/26 11:47 ID:8nE2DVYR

「はいっ、おつかれー」
「おつかれさまでしたーっ!」
ようやくPV撮りが終わった。
3人は、いったん楽屋へと戻る。

「ねぇ、けーちゃん、梨華ちゃんの様子どうだった?」
後藤が、さっそく保田に詰め寄る。
吉澤は、矢口からのメールチェック&返信で2人の深刻な様子には気づかない。
保田は、なんと答えようか少し考えてから口を開く。
「・・・私たちのことは、ちゃんと話したわよ」
「-----で?」
後藤は、真剣にというよりは不安そうに保田の次の言葉を待つ。
「それで、今日、一緒にご飯食べることになった」
「・・・ハァっ!?」
話しにつながりがない。
後藤は、怪訝そうに保田を窺う。
「まぁ、そんな感じだから」
保田は、ワザと多くを語ることを避けているようだった。

「ほらっ、吉澤もさっさと帰る支度しなさいよ」
不意に話を振られ吉澤は納得のいかない顔をで2人を見るが、
すぐに気を取り直し帰り支度をはじめる。
今日は、後藤意外、ここで仕事は終了だった。
99−−:02/01/26 11:48 ID:8nE2DVYR

「・・・けーちゃん、なんか隠してる?」
後藤が険しい目をしていった。
「そんなことないわよ」
保田は、かぶりをふる。
「あんた、これから雑誌のインタビューでしょ。そんなふくれっ面してたらダメよ」
保田は、笑いながら後藤の両頬をいーっと引っ張る。
「それじゃ、先に失礼しま〜す。お疲れさまです」
そんな2人をにやにやと見ながら吉澤が楽屋を出ていく。
「さてっと、私も帰るわ」
保田も荷物を持って立ち上がる。
「えーっ!!」
後藤が不満の声を上げる。
「これから、ちゃんと石川と話して、あんたも謝りやすいようにしてあげるから、ね」
よしよしと子供の頭を撫でるようにしながら、保田は言う。
「・・・・・・分かった。気を付けてね」
「なにに気を付けるのよ」
保田は、苦笑する。
「---なんとなく」

全く、かわいいんだから・・・
心配しなくても石川と何かするワケないわよ、全く・・・

「帰ったら電話するわ。じゃーね」
保田は、ヒラヒラと後藤に手を振って楽屋を後にした。
100作者:02/01/26 11:50 ID:8nE2DVYR
間違えてageてしまった。
スマソ
101cyori:02/01/26 20:19 ID:NZ4GyFIv
       〇   〇

                           〇


     〇          o
                       。


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               。o    o              o                o
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 o      。     o
      o
   o
              o    o  。        o
         〇   。
            。             o
    〇       ああ・・・ そうだったんだ・・     
     。   。o             〇   o〇
          o
1023−5 保田 圭:02/01/26 21:36 ID:eofQmcE3

後藤には、ああ言ったけど内心すごく不安だ。
さっきの石川の笑顔---そこに隠されたなにか・・・
(・・・いや、気のせいだ)
石川にかぎってそんなことはないと思う。

保田は、いつのまにか石川の部屋の前まで来ていた。
深く息を吸い込み、思い切り吐きだす。
そして、インターフォンを鳴らした。
中からパタパタという足音が聞こえてドアが開く。
「保田さんっよかったー、来てくれたんですね」

(やっぱり気のせいよね)

石川のあまりの喜びようをみて、さっきまでの不安が薄れる。
「シチューつくったんですよ」
石川は、そう言いながら保田を室内へと案内する。
通された部屋には、二組の食器が用意されたテーブル。
石川は、いそいそとコンロにかかった鍋をかき回す。
「なんか手伝おっか?」
手持ちぶさたな保田は、石川に声をかける。
「お客さんは、座っててください」
石川は、少し保田の方を振り返りウインクする。
保田は、仕方なく椅子に腰掛けた。

(・・・ホントに、ピンクが好きなのね〜)
保田は、ぼんやりと部屋を見回す。
部屋は全体的にピンクで統一されている。
「お待たせしましたーっ」
いかにもアツアツといったお皿をもって石川が席に着く。
「あっ、じゃぁ、いただきます」
「どうぞ、めしあがれー」

不思議な気分の夕食だった。
石川は、普段よりも饒舌に喋り続け、そんな雰囲気の中で
食事も終わりかける頃には、保田の感じていた罪悪感や不安も消えていた。

1033−6 保田 圭:02/01/26 21:37 ID:eofQmcE3

「じゃぁ、最後はこのワインどうですか?」
石川が、高そうなボトルのワインをグラスに注ぐ。
「お酒はダメよ、アンタは」
つい、いつもの調子でそれを咎める。
「もちろん、保田さんの分だけですよ--ハイッ」
石川は、笑いながら保田にグラスを渡す。
血のような赤ワイン。
(食事中に飲みたかったとこね)
そう思いながらも、グラスを口に運ぶ。
口に広がる微かな甘み。なかなかいいワインだ。
「----今日は、来てくれてありがとうございました」
石川が言う。
「・・・そんな、私の方こそごちそうになっちゃったし・・・それにごと--」
「保田さんっ!「」
保田の言葉を止めるかのような鋭い声。
保田は、はっとして石川を見る。
その黒目がちな瞳には涙がたまっていた。

「私、やっぱり保田さんが好きなんです」
「・・・いし・・かわ?」
「ずっと・・・ずっと、保田さんのこと見てきたんです---ずっと、ずっと・・・」
石川は、壊れたスピーカのようにずっとずっとと繰り返す。

「でも---」

それを不意に止める。
「保田さんは、ごっちんを選ぶんですね」
抑揚なくそう言った彼女の瞳から一筋の雫がこぼれる。
石川の細い肩が震えている。
緊張の糸が切れたように・・・彼女は泣いていた。
104−−:02/01/26 21:39 ID:eofQmcE3

「---石川、ごめ・・・」

「・・・だから」

保田の言葉にまたしても石川の言葉がかぶせられる。
まるで意図的に保田の言葉を避けているみたいだ。

「だから、仕方ないんです・・・」

(・・・アレ?)

なんだか随分、石川の声が遠くに聞こえる。
石川が席を立つのが見えた。
「私、本当に保田さんのためならなんでも出来るんです」
石川が近づいてきているのに、その姿が少しずつぼやけて見える。
「保田さんもきっとそう思ってくれてるって信じてたのに-----」

---なにを・・・彼女はなんて言っているんだろう?
言葉が頭の中でエコーしてキレイに聞き取れない・・・

不意に視界が揺れた-----------

ア・・・レ・・・・・

驚いて声を出そうとしたはずなのに、その思いは声にならない。

「大丈夫ですか?」
石川が力を失って椅子から倒れた保田の体を抱き起こす。

----なん・・で??
起きあがろうとしているのに力が入らない。

「私、言いましたよね」
石川の口が動く。

・・・なに、を?

「暴走しちゃうかもしれないって・・・」

ボウ・・・ソウ?
・・・・・・イ、シカワ・・・ドウシテ・・・・・・

石川が再び笑った。
もうすでに気の遠くなりかけた保田にはなにがなんだか分からなかった。
ただその聖母のような美しい笑顔に心の底からぞっとしていた。

「・・・ずっと一緒にいてくださいね」

・・・ズット・・・ズット・・・・・・

そんな声が頭上で聞こえた気がした。