ごまよし高橋小川小説

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「行為」を終えた後、私は裸のまま仰向けに寝ていた。電気の明かりは小さくしてあるものの、
窓から入った月明かりにより、部屋の中ははっきり顔が見えるくらいの明るさが保たれている。
ごっちんのダブルベットは大きいので、彼女は私の左隣に同じようにして、寝ていた。
私は、1つ心を決めて言った。
「ごっちん」
「んー?」
「最近…思ったんだけどさ」
「うん」
ごっちんが促す。
私は何度も考え、慎重に言葉を選びながら言った。
「あのさ…こういう……なんていうか…エッチってさ、普通男と女がやるものだよね?」
ごっちんは何も言わなかった。私は続けた。
「だからさ、女同士でこういうのって…やっぱおかしいと思うんだよね」
「――ごとーのこと嫌いになった?」
「違う!そういうんじゃなくて!ごっちんは好きだよ!でもそれは、親友として。『ラブ』じゃな
くて『ライク』なんだよ」
「……………」
「やっぱりおかしいでしょ?女同士で――」
「よっすぃーの言ってることよく分かんない」
「…ごっちん」
「いいじゃない!女同士だって!お互いが好きなら関係ないじゃない!」
ごっちんのいつにない激しい口調に少しとまどったが、
「だけど…へんな話だけどさ…2人とも同じ物っていうか……その……穴…しかなじゃない…
やっぱりさ、男の人とするようになってるていうか…」
私は赤面しながらも続けようとしたが、
「そんなの関係ないよ!好きな2人が、肌を寄せ合って、気持ちよくなれればそれで良いじゃない」
「気持ちよく?」
「そーだよ!よっすぃーだって、ごとーが耳舐めてあげると感じてるじゃない。わたしだって、
よしこにだったらドコ触られたって感じちゃうんだよ!」
「だったら!私が思いっきり乱暴にしても?!それでも気持ちいいって言えるの?!」
私はつい強い口調になっている自分に気が付いた。
「うん!よっすぃーにだったら――」
私は最後まで聞かずごっちんに襲いかかっていた。
ごっちんの胸を荒々しく揉み、口を付け噛んだ。歯で、強く、何度も、痕が出来るくらい。
空いた手は、彼女の体のあちこちを強く揉み、つねった。
前儀もせずに、指を3本、一気に膣に押し込んだ。
「ん!!」
我を忘れて殆ど聴力が無くなっていた私の耳にもその声ははっきり聞こえた。
――15分後。
私は肩で息をしながら、ベットの上に座り込んでいた。
さっきからごっちんは声を出していない。
失神してるかも、と思い、やっと我に返った。
なんとしてしまったのか!どうかしていた!
慌ててごっちんの顔をのぞき込む、顔に掛かっていた彼女の長い髪をそっと掻き上げてやると、
「はぁはぁはぁ…………よかったよ、よっすぃー」
少し涙目になったごっちんはそう言った。
「何で?」
「……はぁはぁ……何が?」
「何で………乱暴にしたのに……何で」
「だからね……はぁはぁ……ごとーはね?…はぁはぁ……よっすぃーにだったら、何されても
気持ちいいの」
「ごっちん…」
私はいたたまれなくなって、寝たままのごっちんを抱きしめた。
「よっすぃー?」
「ごめんね…私…どうかしてた」
「……もうヤダからね」
乱暴したことかと思ったが、すぐに違うと判った。
「あんなこと言っちゃヤダからね……よっすぃはー、わたしのものなんだから…」
「ごっちん……なんで?」
「だ・か・ら、何度も言ってるじゃない。ごとーは、よっすぃーが好きだから。大好きだから」
「ごっちん…」
私は流れようとする涙を見られまいと、ごっちんの肩に顔を埋め、抱きしめた。
「誰にも渡さないからね」
「何が?」
「梨華ちゃんにも、やぐっつぁんにも…渡さないから」
「なんでその2人なの?」
「だって、2人ともよっすぃーの事好きじゃない。よっすぃーはわたしのものなの。絶対渡さないから」
「…ごっちん」
「今度は――」
ごっちんはやおら起きあがると、体制をかえ、私を下にした。
私がとまどっていると、
「今度はごとーのばん。いっっっっっっっっっぱい、耳クチュクチュしてあげるからね」
そういうと1回キスをしたあと、私の耳に下をはわせた。その空いた手は、私の胸を優しく揉んでいた。
「ごっちん」
私は、体の力を抜き、彼女にまかせた。
――「ごっちん?」
はたと、その動きをやめた彼女に私は聞いた。
――泣いていた。
耳を攻めていた途中なので、当然耳元でその言葉ははっきり聞こえた。
「……ぐすっ……あは、…っくぅ…えっく…よっすぃ、のバカ…バカ…もうあんな事言っちゃヤダだよ…
んっ…く、だって…、だって…ごとーは、よっすぃのコト大事なんだもん……大好きなんだもん……」
そういうと、私の胸に顔を埋め、泣いた。
私は罪悪感に襲われた。ごっちんの気持ちも考えず。あんな事をしてしまった。
しかも、彼女が泣いているのはその事でではない。私の言葉に泣いているんだ……。
たった今自分がした事が信じられなかった。まさか本当に襲いたい衝動にかられた訳ではない。ただ、
あんまりの彼女の感情に押し流されそうになり、怖くなったのだ。
でも――
(ごめんね、ごっちん。私が馬鹿だった)
「ごっちん?」
口に出して言おうとしたが、彼女は私の胸に顔を埋め、スヤスヤと赤ん坊のように眠っていた。私は起こ
さないように、優しくそっと、頭をなでてあげた。