吉澤
「さ、入って」
私は玄関のドアを開け、彼女を通した。
「ただいま〜」なんて(何故?)言いながら入るごっちんの後に続き、鍵をしめる。
「なんか飲み物持ってくから、部屋で待ってて」
「あ〜いよ〜」
紅茶でいいかな?
Tパックを2つ取りだし、自分のと、来客用のカップを取り出しそれをそれぞれに入れる。
……何してんだろ?
ごっちんを、自分の部屋で1人にしてしまったことに気がついた。
――変なことしてなきゃ良いけど…
私は変な想像を振り払い、カップとお菓子を盆にのせ、部屋に向かった。
「お待たせ――何してんの?」
「んぁ〜?」
彼女は、こともあろう私のタンスを引っかき回していやがった(!)
「いや〜さ〜。ごとーとお揃いのいくつあるかな〜って。これでしょ…これも…このオーバーオールと…」
「お願いだから引っかき回さないで!――紅茶ここ置くよ」
「ありがとー。あ!これ格好いい!」
と、私のお気に入りの黒のパーカーなどを引っぱり出している。
「やーめーなさいって!」
ごっちんの手からそれを取り返す。
「紅茶飲もっと」
「砂糖とかいる?」
「いる」
「じゃ持ってくる」
「いいよ。台所でしょ?ごとーが持ってくるよ」
ごっちんが行ってしまうとの入れ替わりに、私のケータイが鳴った。
ディスプレイをみると、小川からの電話だと分かった。
「もしもし〜」
「吉澤さん?あの、すいません、いきなり」
「ん?どした〜?」
「あの…愛のことなんですけど」
「なに〜小川も、もう恋する年か〜?誰よ?クラスの男子とか?」
「…あの愛…高橋愛のことです…」
「え?ああ…あ。そりゃそうか、それで?」
「あっちで…仙台でどんな感じでした?」
「え?どんなって?」
やばい…キスしたことばれたかな?まいいけど。
「あの…さっきまで一緒だったんですけど、様子が変なんです」
「様子?――そう…」
「なんかご存知ですか?」
どうしよう…。愛ちゃんがごっちんに恋心抱いてるのは知ってる。でもそれを言うべきか…。
悩んだ末、私は言った。
「ちょっと、わかんないけど…。女として見て、恋してるように見えなくはないよ。小川、相談にのってあげな!」
「…はい、どうも」
「うん。頑張って」
何を頑張るんだか、と思いながら。ごっちんが階段を上がってくる音がしたので、電話を切った。
「誰から?」
部屋に入ってきて開口一番そう言った。
「小川。ちょっと聞きたいことって」
嘘はついてない。
「ふーん。はいよっすぃーの分」
「あ、私いいや」
「せっかく持ってきたのに〜」
といいながら、ごっちんは自分のカップにドボドボと入れている。
――あれ
「んぁ?どしたの、よっすぃ?」
「んん…疲れが出たのかな。ちょっと眠いかも」
「寝て良いよ」
どうしたんだろう…やっぱ疲れが出やすい体なのかな?
「ごめん…ちょっと横になるね」
と言いながらベットに寝そべると、急激に睡魔がおそってきた。
「よっすぃーが寝てる間、お部屋荒らしてるね」
ええ?と思ったとき、私はすでに深い眠りに吸い込まれていた。
三十分後…。
ドシン、体に乗ってくる感触で一気に目が覚めた。
それは、勢いをつけて、私の腹部に乗り上がってきた。
「ぐへ!」
「いつまで寝てんのさ〜」
私は商店の定まらない目で時計を見やると、
「まだ三〇分じゃない」
ごっちんは、私に馬乗りになっている。しかもよく見ると、奥から引っぱり出したのだ
ろう、私の中学時代の制服を着ている。
「ちょっと!なんて格好してるの?」
「へへ〜よっすぃーのセーラー服」
そう言いながら、私から降り、ベットに腰を掛ける。
「よっすぃてさ、ずっと女子中で、やっぱレズとかいたんでしょ?」
「ちょ…何言ってんの」
「よっすぃーて可愛いし、格好いいからね〜もてただろうな〜」
「そんなことないよ〜」
「うそだよ〜こんな風にセーターの下に手入れて、もみもみっとか〜」
ごっちんは、私の手を取り、セーターとセーラー服の間に導く。
「でさ〜スカートめくちゃってエッチーとか〜」
と、今度は、もう一方の手を、自らの、足に…極端に短くしたスカートからスラリとの
びる足に…ルーズソックスが似合いすぎているその可愛い足に…
やばい!何考えてんだ私。ごっちんの誘いにのっちゃいそう…。
私はブンブンと頭を振った。
でも…私は制服を着たごっちんを改めて凝視してしまった。
――可愛い…。