ごまよし高橋小川小説

このエントリーをはてなブックマークに追加
2月9日早朝。吉澤。
 窓から差し込んでくる朝日の眩しさと、遠くに聞こえる鶏の鳴き声で、私は目を覚ま
した。まだ焦点の定まらない目をこすると、隣で同じ様に目をこすってる亜弥ちゃんと
目があった。
「お早う御座います。吉澤さん」
「おはよう」
亜弥ちゃんは、半身を起こすと、不思議そうに周りをキョロキョロ見回した。
「あれ――?」
「どしたの?」
「皆さんが寝てる位置が――」
 ああ。なるほど。私の所にはごっちん。ごっちんの所には愛ちゃん、愛ちゃんの所に
は私。そして、何があったのか、矢口さんと安倍さんは、逆の布団になっている。つま
り、ものの見事に亜弥ちゃん以外が入れ替わっているのだ。
亜弥ちゃんにとっては、さぞかし、世にも奇妙な物語で学校の怪談だろう。
「ん。まあね、いろいろあって」
私は、顔を洗おうと思い、洗面台に向かった。トコトコと付いてくる亜弥ちゃんに、
「他の人寝てるから起こさないようにね」
と、声を掛ける。
「吉澤さんって朝早いんですね」
先に顔を洗っている私に、亜弥ちゃんは言った。
「うんまあね。癖かな――――はい。いいよ」
私たちは場所を変わった。
「亜弥ちゃんも早いねー」
「はい。ぐっすり眠れて――――早く目が覚めたんです」
ぐっすりか…。じゃあ昨夜のことには気が付いていないだろう。
「まだ早いし、ちょっと散歩でもいってくんね――一緒に行く?」
「はい。行きまーす」
私たちは、寒くないよう簡単に着替えると、すっぴんのまま部屋を出た。