94 :
寒い冬ね:
「おー、寒い寒い。」
ガチャガチャ、ガチャン。
やっぱり冬真っ只中。外はやたら寒い。
「ふうぅ。あったけー。」
部屋に入るとすぐにコタツにもぐりこむ。
…あれ、つけっぱなしにしちゃってたんだ。
コタツの電源は入ってるし、暖房もポカポカの
温風を吐き出している。
「…楽しかったよなぁ。」
遊園地へ行ってから、もう数日経つ。
あれ以来、娘。の誰とも会ってない。
当たり前だよなぁ…。みんな忙しいハズだ。
ていうか、あんなに話せただけでも軌跡なんだよな。
思い出してる僕の顔は、
きっとだらしないくらいニヤケてただろう。
…ん。何だ?
僕は押入れの辺りに何かあるのに気づいた。
よぉく目を凝らす。
押入れの隙間から、…細い筒?がのぞいている。
カッ!
「のわぁああ。」
細い矢がコタツに刺さって揺れる。
「うぅん、やっぱり吹き矢って難しいな…。
もうちょっと練習しないと。」
よいしょ、と縮こまった体を伸ばしながら
押入れから出てきたのは、やっぱり『彼女』だった。
「よっ、と。ちゃーおー。」
「り、梨華ちゃん!どうして!?」
「え?どうしてって、体も治ったし
少しでも早く命を狙わなきゃなぁって。」
「ははは…。」
僕は力なく笑ったが、内心すごく喜んでいた。
梨華ちゃん、もう来ないかと思っていた。
「それにしても、ずっと押入れにいたの?」
「えへへ…、狭かった。」
そう言って梨華ちゃんは笑顔で近づいてくる。そして
フッ!
「おわっ!」
「うーん、こんなに近くても当たらないなんて。
吹き矢って、使えないかも。」
いつもながら、再会を喜んでばかりもいられないみたいだ。
96 :
得意料理:02/01/31 17:34 ID:Zyj5POKi
梨華ちゃんは吹き矢を横に片付けると、
コタツに入ってきた。
「どう?ずっと元気だった?」
「うん。ありがと。僕は元気。」
「そう…。ざーんねん。不治の病とかない?」
…まったく。
「梨華ちゃんのほうはどうだったの?」
「もう。保田さん本気で殴るんだもん。
2、3日はろくに動けなかったよぅ。」
梨華ちゃんは苦笑いした。
「あ、そうそう。ご飯まだだよねぇ。
作ったの。今、温めるね。」
梨華ちゃんは立ち上がると、いそいそと台所へ向かった。
まさか、また焼きソバ?それとも包丁?
…とりあえず、心構えは必要だよな。
おいで、ピヨ助。
「静かにしておくんだぞ。」
僕はピヨ助を上着のポケットに入れた。
台所からは梨華ちゃんの鼻歌が聞こえる。
「ふふふーん。こぶしあーげてゴーゴーゴーゴー…」
97 :
書くよ:02/01/31 17:37 ID:Zyj5POKi
100が長文なのも寂しいので、だれか100getして下さい。
今日の夜にでも見て、100いってたら続き上げます。
あと、漏れのIDちょっとポッキーだ(w
100
100
100!!
101 :
:02/01/31 18:04 ID:5PmMxtSB
やっぱそこのパートは石川ですか
102 :
書くよ:02/01/31 18:16 ID:Zyj5POKi
103 :
できた:02/01/31 18:18 ID:Zyj5POKi
台所から、歌と一緒に何か甘い匂いが漂ってきた。
「ふふん。ラブ。勇気があるなーらー…よしっ、と。
できたよー。」
梨華ちゃんはおわんを二つ持ってきた。
一つを僕に差し出す。
「これって…。」
「そう。白玉ぜんざい。」
おいしそうに、梨華ちゃんが食べ始めた。
「大丈夫よぉ。ホラ、毒なんて入ってないし。」
僕は、勇気を出して口をつけた。
「どう?おいしい?」
「うん。おいしい。」
おいしいけど…これって、夕飯なの?
「ふぅ。お腹いっぱいだ。」
何だかんだで、4杯も食べてしまった。
「おいしかったでしょ。」「うん。」
僕はお腹をポンと叩いた。
おもむろに梨華ちゃんが立ち上がる。
「あ。いいよ。食器は僕が後で洗っとくから。」
しかし、梨華ちゃんは台所でなく
僕の後ろに歩いてきた。そして…両膝で立つと、
後ろから僕に体をピッタリくっつけた。
「り、梨華ちゃん?」
背中にたちまちに広がる梨華ちゃんの温もり。
以前、腕を組んだときの比ではなかった。
柔らかな感触を全身に感じる。
梨華ちゃんは、さらに僕の首に腕を廻す。
「ちょ、ちょっと、梨華ちゃん…」
梨華ちゃんの優しい香りに、僕は言葉を遮られた。
梨華ちゃん…一体何考えてるんだろう。
夢のような感触に、頭がポーっとする。
頭がポーっと、頭がポーっと、……意識がボーっと
て、首締められてるじゃん!
「やったぁ。今回こそはイッた!」
梨華ちゃんはハシャギ声を上げた。
うぐう。僕は必死でポケットを探った。
あれ。いない。…目を動かすと、
ピヨ助はいつの間にか部屋の隅で餌をついばんでいた。
…怨むぞ、ピヨ助ぇ。
すうっと意識が遠のきかけた、その時だった。
ピンポーン。ガチャ。
「こんにちはー。梨華ちゃんいますかー。」
天の助けだった。
105 :
再び:02/01/31 18:20 ID:Zyj5POKi
アパートでそんなに広くもない部屋。
台所と部屋を仕切るドアは開けっぴろげ。
つまり、玄関にいる彼女と僕達は一発で目が合うわけで。
「よっすぃー。」
「梨華ちゃん…。」
「ゲホッ、ゲホッ。」
梨華ちゃんの腕から解放された僕の頭に
ようやく血が通い、肺には酸素が満たされた。
よっすぃーは、ゆっくりと歩み寄って来た。
「梨華ちゃん…。二人ってそんな関係だったの?」
「ちょ、ちょっとぉ。やだなぁ、よっすぃー。
また、誤解してるみたいだよぉ。」
「でも、二人でムギューッて抱き合って…。」
「だから誤解だってばぁ。」
梨華ちゃんはツンツンと僕の足をつついた。
フォローしろってコトぉ?
そんな簡単に思いつくわけないじゃん。
僕は梨華ちゃんをツンツンとつつき返した。
応答がない。……はぁ、仕方ないな。
「ちょっと首寝違えちゃって、直してもらってたんだ。」
「ガオレンジャーごっこしてたの。」
げ。二人は同時に弁解してしまった。
「はぁ!?」
よっすぃーの反応はもっともな物だった。
「え、どういうこと?」
「だからぁ、ねぇ…。」
梨華ちゃんは僕と目を合わせる。
二人とも顔が引きつっている。
「寝違えちゃった…」
「…ガオレッドの首を治すガオピンク。」
梨華ちゃんは自分の顔を指差す。
二人は恐る恐るよっすぃーの顔を見た。
「か…、かっけー!敵は寝違えオルグなんだぁ。
でも梨華ちゃん、ピンクはいないよ!」
お、なんか食いつきがいい?
「そ、そう。ガオごっこしてたの。うわー。やられた。」
「ちょっと待って。最初からやろうよ。
私、ガオシルバーがいい!」
よっすぃーは嬉々として話に乗ってきた。
た、助かったぁ。
僕達は胸をなでおろした。
ただ、それから小一時間ガオごっこするなんて
僕達には想像もつかなかったんだけど…。