ここでやれ

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92000年秋
通りを歩いていた僕は、ふと足を止めた。
電気屋のテレビから賑やかしい音楽が流れている。
「…乙女…パスタに感動…?」
テレビの中で4人の女の子が踊っている。
「かわいいなぁ…」
そのときだった。不意に、黒い影が僕の横を通過した。
スッ…。ガッシャーン!!!
「な、何だ?」
すぐ足元を見ると、電気屋のライトが粉々に砕け散っていた。
「…アブねー。もう少しで死んでたな。」

これが、僕が初めてタンポポそしてモーニング娘。に興味を持った瞬間であり、
のちのち彼女と出会うこととなる原因であった。
102002年早春:02/01/08 15:21 ID:DtO8LZSz
「あーあ、年末年始なんの計画も無く終わったな。
 いい加減、一人も慣れたかもな。」
暇を持て余してる僕は、ビデオに手を伸ばした。
「デヴィの自転車にするかな…。」
ピンポーン。
と、チャイムが鳴った。
「はーい。…NHKの集金かな。」
どうせ紅白とPJしか見ないんだ払わなくても構わないでしょ。
ピポピポピポーン。
けたたましくチャイムが鳴る。
「はいはい、今行きますよー。」
ガチャッ
僕はすぐには目の前の光景を受け入れられなかった。

「どーもー。チャーミー石川の、孤独なあなたとどっきんこでーす。」
そこに立っていたのはホームビデオを構える
あの石川梨華だったのだ!
11ねぇ、名乗って:02/01/08 15:21 ID:j5G8yXcJ
12番組?:02/01/08 15:21 ID:DtO8LZSz
石川さんはたったか家の中に入っていくと、コタツの前にちょこんと座った。
「あー。いけませんねー。コンビニ弁当ですか。栄養が偏りますよー。」
「あ、あのー。」
石川さんは僕の事など気にもとめず、ビデオで撮影する。
「あ、あのちょっと。何なんですか、コレ!」
すると石川さんは僕にハガキを渡した。
そこには僕の字でハッキリと番組に応募する旨が書いてあった。
おかしい。書いた覚えなんて、まったく無いのに。
「はい。そこで、ジャジャーン!野菜たっぷり焼きソバー。」
「はい、アーンしてください。」
そういうと石川さんは、焼きソバを僕の目の前に突き出した。
その瞬間、僕の頭からすべての疑問は吹き飛んでいた。
そりゃそうだ。石川さんにアーンしてもらえるなら死んでもいい。
大きく口を開けると、石川さんは皿の上の焼きソバを全部口に押し込んだ。
「それでは、ちゃーおー。」
そう言うと、石川さんは小走りに僕の家を出て行ってしまった。
「むぐぐ…。せめて、サインでも…。」

もったいなかったけど、石川さんが帰ったあと
僕は焼きソバを全部、吐いてしまった。
トイレの匂い…と言えば分かってもらえるだろう。
13早い再会:02/01/08 15:22 ID:DtO8LZSz
ガチャガチャ…ガチャン
翌朝、僕はドアの開く音で目が覚めた。
目を開けると彼女が僕の方を見下ろしていた。
「い、石川さんっ?」
僕は驚いた。
が、それ以上に驚いていたのは石川さんの方だった。
「し、死んでない!?薬はかなり入れたはずよ。」
その顔はまさにホイ泥棒されたときと同じだった。

僕はまだ起きてない頭をフル回転させた。
「え、あの、どうしてここに…。」
「あ、いや。…ホラ、焼きソバの皿を忘れちゃって。」
「いや、どうやって入ってきたんですか?」
「えへっ、鍵、開いてましたよ。」
そう言って、ぶりっこポーズをとった瞬間、石川さんの袖口から
ポトリと鍵が落ちた。
「合い鍵ぃー!?」
合い鍵はいつも、ドアの前のサボテンの鉢の中に
埋めてあって、僕以外に知る人はいないはずなのに。
「えっとー、そのー。…いい理由が思い浮かばない。」
そう言うと、石川さんは台所へ行ってしまった。
「へ?」
台所から戻ってきた石川さんの手には、
ヌラリと光る包丁がしっかりと握られていた。
「こうなったら、実力行使!私のために死んでください。」
そう言うといきなり僕のほうに突進してきた。
14タカハタさん。:02/01/08 15:23 ID:rnwE1lri
#########かごあい
15アゲアラシ:02/01/08 15:23 ID:Qe73obV/
なつかし画像あげ
16刺客!?:02/01/08 15:29 ID:DtO8LZSz
「ちょ、ちょっとタンマ!」
「やー。とー。たー!」
相手は女の子とはいえ刃物を持っている。
僕はじりじりと窓際に追い込まれた。
「ちょっと、何のいわれがあってこんなことをするんですか?」
「あなたがいると私が困るんですっ!!」
石川さんは両手を振りかざした。
ヤバイ!とっさに僕は腕で体をかばった。
……しかし、いつまでたっても次の一太刀は振り下ろされなかった。
僕は恐る恐る薄目を開けた。
石川さんはこわばったまま動かない。
「ピヨピヨピヨ。」
「ピヨ助!」
石川さんの視線の先にはピヨ助がいる。ベランダで飼っているひよこだ。

あっという間に形勢は逆転した。僕はピヨ助を両手で掴むと石川さんに突きつけた。
「ちょ、いや、やめてください。」
石川さんは包丁を放り投げて逃げようとしたが、
今度は僕が石川さんを部屋の隅に追い込んだ。
「あのー、何で僕が狙われなきゃならないんですか?」
「言います。言いますから。近づけないで、お願い。」
石川さんはもうメロメロになってしまっていた。
17コタツ:02/01/08 15:30 ID:DtO8LZSz
「あのですね…」
石川さんと僕は向き合ってコタツに入っている。
無論、僕の手の中ではピヨ助がモゾモゾ動いている。
「驚かないでくださいよ。私の前世はあなたなんです。」
「え?」
「だからぁ、あなたが死んで、私になったんです。」
「いや。僕はまだ生きてるんですけど。」
「そうなんですよねぇ。」
はあっ。とため息をついて石川さんは続けた。
「あなたは去年死ぬはずだったんです。電気屋さんのライトが
 頭にぶつかって。そして私が生まれるはずだったんです。」
「え、でも、僕がいる時代に、僕の来世がいて…?」
僕は、何だか頭が混乱しそうだった。
18説明口調:02/01/08 15:31 ID:DtO8LZSz
「輪廻は時代を選ばないんです。ただ、とっても近い輪廻だったんで
 あなたの記憶は丸っきり残ってたんです。」
「それで、鍵の場所やハガキの文字も…。
 でもなんで、それで僕が死ななきゃ…?」
「あなたがあの時死ななかったから、あなたの魂はそろそろ
 別の輪廻対象を探してるんです。で、私の体にも変調が出てきてるんです!」
―うーん、なんだかなぁ。
「で、その変調って?」
「例えば、あなただった頃の記憶が薄れたり…。
 だからお願い死んで下さい!!!」
石川さんがふところからスタンガンを出すより先に
僕のピヨ助が石川さんの顔に向かって飛んだ。

「きゃああ!」
「もう、何で死んでくれないんですかー。
 あなたが死なないから、私、私…。声まで変になったきたんですよー!!!」
「そんな、ムチャクチャなー!」

それから、僕の命を狙う石川さんとのおかしな生活が始まったんです。
モーニング娘。の他のメンバーまで巻き込むこととなるなんて
この時、誰も思いもつかなかった。           つづかない