ここでやれ

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82ダンスするのだ
「なんかややこしい事情がありそうね。
 そこのあんた、終わったら聞かせなさいよ。」
ちらりと僕を見たあと、保田さんは梨華ちゃんの方を向いた。
「やるしかなさそうね。」
梨華ちゃんも剣先を保田さんに移す。
「ちょ、危ないですよ。保田さん!彼女は…」
「分かってるわよ。それより圭ちゃんって呼んで。
 『さん』付けだと、年齢感じちゃうから。」
…二人はじりじりと間を詰める。

それは一瞬の出来事だった。
刀が圭ちゃんの頭を捕らえる直前、
圭ちゃんは後ろに跳ね退いた。僕のとき同様
すぐさま放たれた突きを左手でいなし、右拳を握る。
拳にすばやく反応した梨華ちゃんは身を引く。
そのまま引き面を狙う梨華ちゃん。
圭ちゃんはさらに上体をひねり、斬撃をかわした。
まさに、一瞬。
まるでダンスでも踊るかのようだった。
83秘密:02/01/27 01:46 ID:sqa8/EV+
「…さすが、サイボーグだけあるわ。保田さん。」
え、圭ちゃんがサイボーグ!?
「石川ぁ。あんたデタラメ言うんじゃないわよ。
 私は人間ですぅ。サイボーグは柴田だけで十分よ。」
で、でも圭ちゃんのさっきの動き、尋常じゃない。

いつの間にか梨華ちゃんは、刀をわきに構えていた。
そして、一歩踏み込むと刀は横一文字に軌道を描いた。
圭ちゃんは、体を後ろにそらしてよける。
やっぱり普通じゃない。
「圭ちゃん。何か…習ってるの?」
「フフフ…。夏先生のおかげね。」
それを受けて梨華ちゃんがつぶやく。
「やっぱり…。保田圭サイボーグ化計画に夏先生が
 一枚かんでたっていう噂は…」
「え、本当!?」
「だからやめぃてば、石川。そこのあんたもイチイチ反応しないの。
 夏先生の過酷なダンスレッスンのお陰で、目と動きが良くなった。
 ってだけの話よ。」
やっぱり、僕を助けたのは圭ちゃんだったんだ。
それにしても梨華ちゃん、何でヘンな嘘を…。
梨華ちゃんは僕を見ると笑った。
「保田さんがサイボーグだって聞いたまま
 あなたが死んじゃって、で、生まれ変わって、
 モーニングに入るまで信じてたら
 ちょっと笑えるかなって思いついたんだけどな。」
す、すごいコト考えてるな。梨華ちゃん…。
84決着:02/01/27 01:47 ID:sqa8/EV+
「ホント、わけ分かんない会話ね。
 どういうことよ。そこのあんた…
 って、もう逃げた!?」
「え?」
梨華ちゃんがこちらを振り向いた瞬間、
圭ちゃんのパンチが梨華ちゃんの腹部にめり込んだ。
…カラーン。
真剣が梨華ちゃんの手から離れる。
どうやら気絶したようだった。

保田さんは梨華ちゃんを背負うと、言った。
「とりあえず、出ましょうか。」
出口までの道のり、保田さんは何度か
オバケに驚いていた。

「さぁ、事情を説明してもらいましょうか。」
保田さんは僕の目を覗き込んだ。
最近また少し伸びてきた髪にくりくりっと
パーマをあてている保田さん。
改めて日の光の下で見ると綺麗だ。
それに、吸い込まれそうな大きな目をみていると
どんな嘘も見抜かれてしまいそうだった。