ここでやれ

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75Bプロ
「え?あれ?」
僕が困惑している内に、最初の一太刀が来る。
ヒュウッ。思いっきり空を切る音。
振り下ろされたかと思った刀は喉もとで止まり、
さらに突きが放たれる。
「おわっ。」
とっさに飛び退く僕。すんでのところで刃は引いた。

間合いを取りつつ、梨華ちゃんを見る。
中段の構えが崩れていない。…しかも隙がない。
「真剣って、竹刀より短いんだったねぇ。
 練習しとけばよかった。」
ま、まさか…。
確かに僕は少し剣道をたしなんだことがある。
でも、これは明らかに高段者の構えだ。
「えへへへ。生まれ変わってからもずっと
 練習してたの。」
「でも、プロフィールにはそんなこと…。」
「Bプロって言うんですか。
 今度、フジリコにでも出てみよっかな。」
そう言うと、右足を引いて両手を掲げた。
え、上段の構えも取れるの!?まずい。
まったく間合いが分からなくなってしまった。
76真剣勝負:02/01/26 03:23 ID:SL/uT+hX
梨華ちゃんは上段のままじりじりと迫ってくる。
以前、包丁で襲われたことがあったけど
あの時は包丁の取っ手が短くて分からなかった。
真剣の柄を握るその手は明らかに熟達したものだ。
気づくと僕のすぐ後ろに柵が来ていた。
…どうする。ピヨ助もいないぞ。
「えへ。大丈夫。死んでも、すぐ私になるんだもん。」

梨華ちゃんの刀がユラリと動いた。
来る!
しょうがない。いちかばちか白刃取りだ。
僕は構えた。
ビュン。刀は一直線に頭に落ちてくる。
…今だ!

パッチーン!!!
思いっきり空を叩く僕の両手。
全然タイミング違うし…。
僕はその場に倒れこんだ…。
77救世主:02/01/26 03:24 ID:SL/uT+hX
死んだんだ…。
そう思った僕の耳に、梨華ちゃんの声が飛び込んできた。
「や、保田さん。」
保田さん?…そう。僕と梨華ちゃんの間には
あの保田圭が立っていた。
「痴話げんかにしちゃあ、
 穏やかじゃないないわね。石川ぁ。」
刀は僕の横の柵を切り落としていた。

「な、何で…。」
驚く僕に保田さんは答えた。
「最近、石川が妙だからつけてみたのよ。
 案の定、男とデートかと思ったら、何か様子が変じゃない。
 だから、そのまま尾行したってわけ。」
「じゃあもしかして、さっきの声も…。」
「そう。本物のオバケじゃなくてオバ…ちゃんってね。」
保田さんはフッと笑う。
「メンバーが罪を犯すところ、
 見たくないんだけどな…。な、石川。」
「止めないでください、保田さん!
 これは一種の自殺なんです!!」
まあ、間違ってはないかもしれないけど…。
…それじゃあ何も伝わらないと思う。