ここでやれ

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116書くよ
「ところでよっすぃー、今日は何しに来たの?」
僕はやっとのことで切り出すことができた。
「あ、思い出した。ねぇ、梨華ちゃん。
 アノ計画忘れてない?ごっつぁんが
 明日の予定のこと電話してって。」
「え…、計画?…って、『そうだ!We're タキュウ部
 恐怖の卓球温泉地獄(ハ・ヒ・ホ)』のこと?」
「もう、やっぱりぃ。それは延期になったでしょぉ。」

卓球?地獄?どんな計画だ…。ソレ。
「あ!AKBDのことかぁ。ゴメン、忘れてたぁ。」
「ほらぁ、まだ何も買ってないでしょ。」
AKBD?…そういうことか。
それにしても、おかしなネーミングばっかりだな。
前のは「孤独なあなたとどっきんこ」だったっけ。
「…よかったら、一緒に来てくれませんか?」
よっすぃーは僕に尋ねてきた。
「喜んで!」
こんな一大イベント逃すわけにはいかない。
「じゃあ、明日、駅前にコレかぶって来てね。
 目印になるように。」
そう言って梨華ちゃんが渡してくれたのは
いつぞやのアフロのカツラだった…。
117その翌日:02/02/04 23:38 ID:xj3qIHQ0
まだ朝は早いが、駅は人で溢れ返ってる。
「よっと。一番乗りぃ。…当たり前かぁ。
 僕が目印だもんな。」
とは言え、こんな所でアフロはかぶれないよなぁ。
はぁあああああ。どうしよっかなぁ。

「あのー。すみません、待ち合わせですよね。」
顔を上げるとロングへアの恐ろしく可愛い女の子が
僕をのぞいてた。
「ごっちん!……あ、ゴメン。」
ごっちんは人差し指を唇にあてシーのポーズをとっている。
よかった。誰にもばれてないみたいだ。
「あ、ども。初めまして。
 …でも、なんで僕って分かったの?」
「梨華ちゃんがアフロかぶった人だって言ってた。
 でも、そんなのかぶれる人いないなと思って。
 したら、ほら、バッグからアフロが。…プフ。」
そう、僕の鞄からはモジャモジャの毛がハミ出ている。 
「ふふふふ。そっちのほうがヘンだよぉ。」
思いっきり笑いをこらえるごっちん。
「でも、目印がなきゃ、みんな分かんないし…。
 ところで、他のみんなは?」
「ふふ。…んー、もう来てはいると思うんだけどなぁ。」
言いながら、辺りを見渡すごっちん。
髪の毛が揺れて、ムチャクチャ可愛い。
118その翌日:02/02/04 23:39 ID:xj3qIHQ0
「やっぱアフロかぶります?」
「え?」
驚く僕を見て、ごっちんはカラカラと笑った。
「うそうそ。んー、どうやって探そかなぁ。
 あ、そだ。私の歌、なんか歌えますぅ?」
ごっちんは黒いキャップを深くかぶると
サングラスをかけた。
「まあ、少しは…。」
「じゃ、歌って下さい。」
「え!?今、ココでぇ?」
ごっちんはコクリとうなずき、ジーッと僕を見る。

そんなに見つめられると。…しょうがない。
「えー。んんっ。ゴホッ。…愛なんて本気で言ーてるの。」
は、恥ずかしい。声なんて出るわけないよ。
なんで歌わせるの。チラッとごっちんを見る。
えっ!?ごっちん、…踊ってる。
僕の歌に合わせて、軽快にステップを踏むごっちん。
か、かっこいい。
四肢をイッパイに広げたかと思うと、グッっと一気に身を縮める。
なんて言うか、すごく、シャープだ。
119その翌日:02/02/04 23:40 ID:xj3qIHQ0
「キースしたってダァコしたぁって
 なんか足んない、なんかたぁんない!」
いつの間にか、僕は声を張り上げていた。
…は。やばっ、目立ってる。
気が付くと僕らの周りには人だかりができていた。
僕は歌を止めた。ごっちんのダンスも止まる。
ごっちんは人ごみを見回し何かを確認すると、こちらを向いた。
「えへへ。気合入りすぎて忘れてた。じゃ、行こっか。」
「え?行くってどこへ?」
僕の言葉も聞かずに、ごっちんはズンズン人ごみを
かきわけて進んでいってしまった。

「ちょっと、今の何だったの?
 後藤真希だって、バレちゃわなかったかな。」
人ごみを抜けてしばらくして、僕は聞いた。
「んあ。大丈夫だよ。歌は君の声だったし
 ゴトーがあんなとこで踊ってるなんて誰も思わないよ。
 それより、君の歌。…すごくよかったよ。
 女の子に生まれてたらモーニング娘。だったかもね。」
その言葉に、僕は一瞬ドキッとした。
「ね。みんなもそう思うよね。」
「え?」
僕はさらに驚いた。
振り返ると、みんながそこに立っていたんだ。