小説『OLやぐたん 其の弐?』

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307L.O.D

  パタン

手帳を閉じた。
鞄の中に仕舞って
どこに行く宛もないのに
立ち上がった。
(・・・・・・どこで遊ぼ)
後藤は周りを見回す。
同じような格好をした子達。
もっとヤバい格好の子達。
学校にも行ってなさそな子・・・・・・
遊ぶ事しか頭にない子・・・・・・
女をひっかける事しか脳のない子・・・・・・
男といちゃつく事しか考えない子・・・・・・
後藤はプイッと違う方向を見ると歩き出す。
ここには居場所なんてものはない。
そう、ここは誰のものでもない。
誰のものにもならない。
誰1人として、個人ではない。
同じ空間にいても赤の他人。
同じ格好でも、他の人。
交わることなんてない。
会話しても、それはすれ違っただけ。
目を見て話してるフリをして
向こうにいる何かを見てる。
誰1人として向き合おうとなんてしない。
後藤は、一度、立ち止まった。
308L.O.D:02/02/04 00:04 ID:gp6/xCix
しばらく吉澤に会ってない。
あんなに一緒に遊んだのに。
探しても、この街にいなかった。
どっか他のとこへ行ってしまったのだろうか。
自分が嫌いになったのだろうか。
いつもの後藤なら、そんなの気にならなかったのに
なぜだろう。
すごく不安だった。
なのに、携帯電話のアドレス帳を呼び出す事ができない。
一歩だけ踏み締めた瞬間
後藤はあの子を見つけた。
吉澤が来なくなった原因になったかもしれない子。
「待ってよ!」
その場にいた人は皆、何事かと後藤を見た。
厚底でガッポガッポと走ってくる後藤を
ボーッと見てるのは、辻希美。
「なんですかぁ?」
「あんた、よっすぃどうしたの!?」
「・・・・・・別に、どうもしないですけど」
「っていうか、パフェおごってあげるから
 そこで休ませてよ」
「はいぃ、、、」
いつものカフェ。
吉澤ともよく来た。
ここか、マクドナルド。
辻はおいしそうに苺パフェを食べていた。
309L.O.D:02/02/04 00:06 ID:gp6/xCix
「一口ちょうだい」
「はーい」
「んむ」
辻としてはいきなりガン黒ギャルが襲いかかってきたので
何事かと思ったのだが、よく考えれば
姉で慣れてるわけだし
そんなに怖くはなかった。
しかも、一口ちょうだいとか言ってくるし
どうやら怒られることはなさそうだ。
「でー、よっすぃはどうしたの?」
「ののは知らないですよ、、、」
「はぁ?こないだよっすぃに抱きついたのあんたじゃん」
そこで気がついたが、この人、こないだよっすぃと一緒にいた人だ。
「あんた、名前なんて言うの?」
「辻希美です」
「で、辻ちゃんはよっすぃとどういう関係なの?」
「部活の後輩です」
「ふーん」
「?」
「で、よっすぃは?」
「うちの中学校の卒業生でヒマな時は来てくれて
 練習に参加してくれてたんですけどぉ
 突然来なくなっちゃって
 学校とかに聞いたら・・・・・・」
伏し目がちの辻。
手遊びするスプーンがやけにはっきりと見えた気がした。

310L.O.D:02/02/04 00:07 ID:gp6/xCix
後ろ手に渡されるお金。
アイは鏡を取り出して、前髪を整える。
男の姿はもうない。
(・・・精液臭っ)
最後、なにバカな事を考えたのか
顔射された。
金払ってるからって無茶する奴も多い。
そういう時は文句言って
1枚増やさせたりする。
そんな事、別にどうって事なかった。
暗い道を抜けて、メインストリートに出てくる。
「あ」
ホテルに入る前に目があった不思議な女の人はまだいた。
地面に拡げた1枚の紙に書かれる原色の世界。
「あなたは、何歳?」
「14やけど、、、」
見つめられる。
大きくて、綺麗な目。
「なんでそういう事するの?」
アイは引き込まれるように
その絵の前に座った。
「別に」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
311L.O.D:02/02/04 00:08 ID:gp6/xCix
逃げようと思えば、すぐにでも
この場を離れる事なんてたやすい事なのに
なぜか立ち上がる事すら出来なかった。
女の人はゆっくりとなにかの歌を口ずさみ始めた。
よく知らない歌だったけど
心地よくて、もっと聞きたくなる。
絵は少しずつ出来上がっていった。
「あなたにあげる」
「うちに?」
「うん」
彼女は手を伸ばして、絵を受け取った。
けして、うまいわけじゃないけど
学校のプリントみたいに
そこら辺に捨てたりなんてしちゃいけない気がする。
「あ、お名前聞いていいかな?」
「加護、、、亜依」
女の人は、1本筆を取り出して
その絵に名前を加えてくれた。
「私は飯田圭織。よろしくね」
「・・・・・・」
手際良く片付けられる道具。
その様子を眺めていると
「じゃぁね、亜依ちゃん。」
と声をかけられ、ハッとする。
空白の時間。
そこにいたのに、時間の感覚がなかった。
去っていく圭織の顔は大人びた笑みを浮かべていて
加護にはまるで蜃気楼の中へ消えていくように見えた。