小説『OLやぐたん 其の弐?』

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3L.O.D
席はいつもの奥座席。
近頃、矢口がらみの娘。の会合は
ここで行われる事が多く
とりあえずは牛タンが出てくる。
「牛ターン、牛タァアアーーン」
えー、、、矢口さん、はしゃいでます。
「矢口さん、顔が怖いですよー」
「カルビクッパ頼んでもいいれすか?」
なんだかんだで楽しそうな雰囲気。
矢口は焼き上がった牛タンにレモンをかけながら
辻を見た。
熱々のカルビクッパに舌鼓を打っている。
「のの、一口ちょーだい?」
「あーん」
「あーん」
近頃、あんだけ頼り無かった石川が
周りを思い遣るだけの余裕が出てきた。
やっぱり後輩が出来るというのは
その姿を自分の過去に重ねて
成長を自覚できる一つの要素として
大事な事なんだと思った。
そう言った意味で
市井にとっての後藤と
後藤にとっての市井の関係は
少しずつずれてしまっていて
後藤がかわいそうだった。
4L.O.D:01/12/26 12:44 ID:8ffKt2p+
「こげちゃいますよ。」
辻が一番大きなのをヒョイと口に入れてしまう。
「あー!」
「怒らないで、矢口さーん。
 まだお肉来ますからーー」
「まったく、、、それより、辻」
「あい?」
口元に御飯粒が一粒ついてる。
まったく真面目な話を切り出そうとしてるのに
この人と来たら
いい具合にはずしてくる。
「あんた、悩みごととかない?」
「・・・・・・」
しばらく、ポーっと考えてる。
いつもの事だ。
加護だと速射砲のごとく
ポンポンポンと話が進むのだが
辻は本来のんびりなのである。
矢口と石川も茶でも飲みながら
待っている。
「あのぉ」
「うん」
「辻、タンポポに入りたいなぁーって」
「はぁっ!?」
目の前にいるのはタンポポの2人ではあるが。
「ミニモニ。は!?」
「ミニモニ。も楽しいんですけどぉ、、、」
長い髪を降ろした辻。
それが彼女にとっても
最も一番、ナチュラルな状態。
不安定な思春期が
キャラとのギャップの差に悲鳴を上げる。
5L.O.D:01/12/26 12:44 ID:8ffKt2p+
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
全員が黙ってしまう。
矢口にも、石川にも身に覚えがある。
普通の人が通る思春期と同じように
悩みは尽きぬもの。
ただし、娘。は変わらないもののようでいて
1ヶ月、いや、へたすれば半日で
求められるものが変わってきてしまう。
この年頃の女の子がその変動についていこうとすれば
無理が生じてしまうのはある種、当たり前で
今、辻はその真只中にいた。
少なからず長い事仕事してる矢口は
そんな時どうすればいいのか分かってる。
やっぱり恋愛が一番、、、といいたいところだが。
「ミニモニ。はさ、、加護と一緒だから出来るんでしょ?」
「矢口さん・・・・・・」
うなづく辻。
「ちょっと働き過ぎだよねー」
「あのですねぇ、、、」
「ん」
「辻もゆっくりしたかっこいい歌、歌ってみたいんです、、、」
辻の肩がしゃくりあげて
また涙が零れだした。
「のの、、、」
石川はそっと肩を抱く。
辻の今の精神状況に足りないのは
絶対的な支え。
そして、そう成り得るのは自分達じゃなくて
あの人。
フと思い出した。
入ったばかりの時
電話で長い時間、先輩メンバーの悪口を言っていた。
感極まって泣いてしまうと
必ず「おーよしよし」とあやすように
声をかけてくれたあの人。
「ちょっとトイレ、、、」
「行ってらっしゃい、、」
6L.O.D:01/12/26 12:54 ID:8ffKt2p+
トイレの個室の中
矢口は携帯を取り出す。
コールすれば、すぐに出てくれた。
「矢口だけど」
『ひさしぶり』
市井の声
「紗耶香、今、空いてるの?」
『まぁ、空いてるといえば』
「じゃーさ、いつもの焼肉屋さん分かるでしょ?」
『あそこかい?』
「今、御飯食べてるからさ」
『来いってか!?』
「っていうか、来て、、、、」
『おろ、どうしたんだ?』
「来てほしいの!」
矢口の剣幕に押されて
了承してしまう市井。
『分かった、、急いで行くから』
電話が切れた携帯を握りしめる。
ミニモニ。リーダーなんて言っておいて
辻の不安を取り除けない自分が少し嫌になる。
(裕ちゃん・・・・・・)
矢口は胸の奥でそっとつぶやいた。