小説『OLやぐたん 其の弐?』

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277L.O.D
其の六 冴えない大人、冴えない高校生、元気一発中学生。

「いらっしゃいませー!」
繰り返される言葉。
絶えず浮かべる笑顔。
装いの姿。
バイトだから仕方ない。

ロッカールームが唯一の救い。
石川梨華は帰る支度をしていた。
午後10時。
ドアが開いて、もう1人のバイトが入ってくる。
「ごくろうさーん」
「御苦労様です、保田さん」
保田圭は帽子をはずす。
「石川、これからどっか行くの?」
「帰りますよー」
「そっか、送ってく?」
「お願いします」
別に用事もないのでゆったりと着替える。
終えると、店の近くの駐車場に止めてある
保田の車に乗った。
「なんか聴く?」
「私、MDあるからそれかけていいですか?」
「どうぞ」
278L.O.D:02/01/29 16:16 ID:LU3qED2H
石川は自分のウォークマンからMDを取り出して
挿入口に差し込んだ。
この頃、よく街中でも耳にするメロディ。
「モーニング娘。?」
「大好きなんですよぉー」
「どこがいいのよ、、、」
「や、なんか、頑張ってダンスしてるとことか」
そう言う石川の横顔はなんかりりしくて
保田は少し吹き出してしまう。
「なんですかぁー」
「あんなもの、お遊びじゃない」
「保田さんは歌手になりたいんでしたっけ?」
「歌手っていうか、人前で歌えればいいんだけどね」
「なるほど」
オレンジ色の街灯を横目に
2人の間に静かな時が流れる。
信号は赤になって、止まると
しゃべりだしたのは保田の方からだった。
「石川はなんかあるの?」
「なにがですか?」
「夢、、とか?」
「夢ですかぁ」
改めて考えてるような様子。
「職業とか」
「お嫁さん」
「プッ」
「えー、ダメですか?」
「あんた料理ヘタじゃん」
「保田さんには負けませんよ!」
「そうよ、私はほとんど料理しないわよ!」
叫び返したところで2人は笑ってしまった。
なんて低レベルな戦いだったのだろうか。
「このままドライブ行っちゃおうか?」
「いいですねっ」
「あんた、家、大丈夫なの?」
「バイト遅くなったって言えばOKですよ」
「じゃー、海でも見に行くかー」
保田はアクセルを吹かす。
あっという間に加速して
車は走っていった。