小説『OLやぐたん 其の弐?』

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213L.O.D
みんなでご飯を食べて
カラオケに行って・・・・・・
明日香は普段こうしてたくさんの人と遊ぶ事を好まない。
気の合う友達と部屋の中でのんびりしてる方が好きだ。
買い物に行く時は大概、1人。
ライブを見て興奮してたせいか
ちょっとした事がおもしろくて
とにかく笑ってた気がする。
どっか遊ぶところはないかと
ゾロゾロと歩いてると
メンバーがゲームセンターを見つけて
はしゃぎだす。
向かったのは、ギターとかドラムのゲーム。
よ〜し、お兄ちゃんが本物の技を見せちゃうぞーとか言ってる。
(あぁあ、マイスティックとか出しちゃったよ、、、、)
ギタリストと一度視線を合わせ
プレイを始めると、それは見事なプレイぶり
スティックは回すわ
めちゃめちゃ腰を落として、まったく見ないで弾き出すわ
酔っぱらってるにも関わらず
パーフェクトの連発。
どんだけやり込んでるのか分かりはしない。
戻ってきたドラマーさんに彩が怒ってる。
「あんた、なんでそんなうまいの!?」
「まぁなー」
「ったく、しょうもないことに金使ってー」
「彩もやってみれよ」
「私ー?」
とかなんだとか言いながら
サイフを開いて
ドラムの前に座る彩。
スティックは貸してくれなかったらしく
置いてあるやつを使う。
まぁ、それなりに叩けていて次々とクリアしてく。
明日香はフと隣を見た。
214L.O.D:02/01/16 11:31 ID:ag1/eO6G
この機体を囲むギャラリーの中に
意外な人物を見つける。
入学式の時からなんか変わってたあの子。
夏休みが終わってもそのまま来なくて
学校を辞めてしまったって聞いた。
2人とも人見知りする性格からか
あまり周りに馴染まなかったが
何度か話した事があった。
メンバーの後ろを通り
人波をかき分け、辿り着いた。
「市井さんだよね?」
「はぁ」
「私、同じ高校だった福田」
「・・・・・・」
「覚えて、、ないか?」
「同じクラスだっけ、、?」
「うん」
「そっかぁ、、、」
「元気だった?」
「まぁ、そこそこに」
「そか、よかった。じゃ、また」
「んじゃ」
ちょっと悲しい。
覚えてもらってなかった。
ちょっとやせたっぽい。
首をグルグルっと回して
ギター型のコントローラーを構える後ろ姿。
「どした?」
彩に声をかけられる。
「高校一緒の子に会ったんだ」
「ふーん」
それ以上は何も言わないし、聞いてこない。
見えない壁。
入ってはいけない領域。
だれしもそういう物を持っているし
そういう物の存在を知らない者は
嫌わらていく。
息苦しい世界。
明日香はWingsを後にする。
215L.O.D:02/01/16 11:43 ID:ag1/eO6G
河川敷。
日射しが強い。
ヘッドフォンかけっぱなしで
草むらで横になってる。
幼い頃からなにかあるとここにいた。
なぜだろう、落ち着かない。
別にあんな怒られるの
いつもの事だし
なにげない事。
なのに、今日は酷く辛い。
口に出して歌ってみる。
こんな時に限って悲しい歌。
溜息を一つつく。
こんな時はどうすればいいんだろう。
ゴロンと寝返りを打ってみる。
いい考えは浮かばない。

なにげなくあのゲームセンターにも寄ってみた。
慣れない挌闘ゲームをやったり
1人レースゲームをやる。
DDRを見ると
同じように学校をサボったらしき
女子高生がジャージ姿で踊ってた。
テーブルと椅子を見つけ
そこでヘッドフォンをかけたまま
顔を俯せた。
誰も干渉してこない空間。
216L.O.D:02/01/16 11:44 ID:ag1/eO6G
横にあった棚から何かを取り出す音。
チラっと顔を上げてみると
市井だった。
「あ」
「ごめん、、起こした?」
「いや、寝てなかったし」
別なテーブルに座ろうとした市井を呼び止める声。
「こっち、座らない?」
「・・・・・・」
黙って、ノートを開く。
ここにやってきたゲーム好きの人や
常連さんがラクガキして遊んだり
交流するためのノートらしい。
vol.15と書かれていた。
「今日さぁ、数学の菅井がキレてさ
 私まで標的にされたよ」
「あいつ、うるさいもんね」
「みんな寝てて、私当てられてさ
 問題解けたんだよ。
 だから、怒られてても知らないフリして
 窓の外見てたら、怒られた」
「へぇ」
彼女は興味なさげに絵を書き出す。
「ムカついたからサボっちゃった」
「・・・・・・」
ザクザクッと頭や腕のラインを生み出していく。
明日香は立ち上がり、自販機でオレンジジュースを買う。
席に戻ってくると、市井の方から口を開いた。
「いいんじゃない」
「?」
「人生なんて誰のためのもんでもないんだし」
自分の鞄から何色ものペンを取り出して
描いた絵に色をつけてく。
「自分が楽しければいいじゃん」
ラフな絵。
だけど、まるで今にも動きだしそうな絵。
思い出した。
最初に市井に声をかけたのは
彼女がノートに描いた絵を見た時だ。
『うまいね』って言ったら
少しだけ笑ってくれたんだ。
「夜、またおいで」
「夜、、、?」
「もっと楽しいよ」
そう言う市井の顔は笑顔。
あまり遅くまで出歩いた事なんてない。
市井はそんな事も知ってる。
彼女なりの優しさ?
「ね、、、ねぇ、、、」
「ん?」
「夜まで一緒にいちゃダメかな?」
1人で時間をつぶせるほど
明日香は遊びを知らない。
きっと今この目の前にいる市井なら
人生は自分が楽しめればいいと言い切り
学校もやめてしまって
本当に自由の中にいそうな彼女なら
このくだらない憂鬱を吹っ飛ばす方法を
知ってるような気がした。
「いいよ」
市井は手を伸ばす。
明日香はそれを握り返す。
217L.O.D:02/01/16 11:50 ID:ag1/eO6G
それは、お昼休み前の一番ダルい時間の事だった
みんな寝てた。
明日香はノートを取るフリをして
詩を書いていた。
数学の時間。
興味のない公式と
先生が勝手に解いていく問題達が
黒板の上に踊る。
誰もノートに書き写してないのに
「もういいかー」とか言ってる。
さすがに我慢も限界だったのか
先生は問題を3問書いて
まず明日香に当てた。
「これ、答えろ」
「・・・・・・」
イライラしてるのか高圧的な口調。
明日香は抑えて前に出ると
解いてみせる。
「よし、次、後ろ」
男子は立ち上がって
「分かりませーん」
と、大きな声で答える。
「なにが分からないだっ!お前寝てただろ!
 寝てるから分かんねぇんだよ!!
 大体、なんだ、みんなして寝やがって!」
口汚くののしられる。
明日香は窓の外を見てた。
自分は解けたんだから関係ない。
「おい、福田!こっち見ろ!!」
「・・・・・・」
なんだっていうんだ。
「お前も解けたからっていい気になるなよ!
 さっきからこそこそなにやってんだ、あぁ!?」
(いい気になってるのは自分じゃん)
生徒より格上だと思って
上から物を言う先生。
そんな先生を適当にあしらう皆。
くだらない毎日の循環。
「はぁ、、、すいません」
小声でつぶやく。
お腹が痛い。
授業が終わったら、保健室に行って
さっさと帰ろう。
まんまと帰宅許可が降りて
河川敷へと向かう足。
学校に行く意味を考えてみる。
やっぱり意味なんてない。
「なにやってんだろ・・・・・・」