小説『OLやぐたん 其の弐?』

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168L.O.D
東京の街中を抜けて
車の流れもスイスイとすり抜けてく。
車内は軽快な音楽に満たされてた。
安倍は後部座席に座って
窓の外を眺めてた。
矢口は助手席で
運転手の人に
「シートベルト、ちゃんとしとかなかったら
 真里、ちっちゃいから飛んでいって
 死んじゃうんだぞー」
とか、からかわれてた。
肩を叩かれたので
振り向くと
隣に座ってた人が話したそうに笑ってた。
「なっちは19だっけ?」
「はい」
「じゃぁー、二つ下だ。
 なにやってんの?」
「大学生です」
「あ、そうなんだぁー。
 俺、実は医大生。」
「へっ!?」
「ぷっ」
矢口もこっちの会話を聞いてて
吹き出してた。
どこからどう見ても
医大生には見えない人。
すっごい遊び人っぽい。
「あはははは、見えねぇよな」
運転手の人もつっこむくらい見えない。
「んだよぉ。地元は?」
「北海道です」
「へぇー、いいなぁ、北海道。
 スキーしたいな、冬なんか」
「コケて、足の骨折るんだよ」
「あ、真里、そういう事言うか
 俺はガキの頃は冬ともなれば
 毎日スキーに行くような子供だったんだぞ」
騒がしい雰囲気。
安倍も一緒になって笑う。
楽しかった。
どうも東京に来てから
ふさぎ込みがちだった。
それを自分の中で正当化して
1人は自由なんて思い込んでるだけだったのかもしれない。
169L.O.D:02/01/08 00:39 ID:llT+ofDO
生まれ育った室蘭の海と同じ
匂いと音がしてた。
心が素直になっていく。
寂しい心は隠せない。
車は浜に乗り込んで
止まった。
4人は車から降りて
真っ暗な浜辺を歩いていく。
やっぱり寒くはない。
「真里、放り込んでやるか」
「えーやだよぉ、後が寒いもん」
「まだ時期としては早いわな」
男の子達が目で合図するのを安倍は見てる。
医大生の人が安倍にうなづいてみせて
安倍もそーっと近付いてく。
「いっせーのぉー」
「えっ!!?うわっぁ!マ・・・・・・
 キャァアアアアアアアアア!!」
「でぇええ!!」
波飛沫が高く上がって
白い雫が飛び散って
投げ込まれた矢口を隠す。
「アハハハハハハハハッ!!!」
「油断してやんのーー!」
「まりっぺ、ビチャビチャだよーーー」
「うはぁー、海水飲んじゃったよーー」
「大丈夫か?化粧ハゲてるぞ」
「マジ!?嘘!」
「お前、化粧濃いんだよっ!」
「ヒドッ!ちょーなっちも言ってやってよー」
「まりっぺのは濃いね」
「あーもー、こいつらぁ!後で復讐してやるー!!」
170L.O.D:02/01/08 00:40 ID:llT+ofDO
悔しそうにドタドタと走っていって
化粧道具を取り出していた。
運転手の人が車の後ろからタオルを取り出して
真里にかけてやる。
冷えた体を暖めるため、車のエンジンをかけて
ヒーターを入れてあげてた。
隣に立ってる彼と2人っきりになってる事に気付く。
沈黙が怖くて、話し掛けた。
「海、好きですか?」
「まぁね、サーフィンやってるし」
「出身、海の近くなんです」
「懐かしい?」
「ちょっと」
はにかむように笑ってみせる。
「座らない?」
「あ、はい」
お尻の下の砂の感触が懐かしい。
「彼氏は?」
「いないですよ」
「そうなんだ」
風が少し強く感じた。
こないだ矢口と一緒に行った美容室で
切ってもらった髪の毛がなびく。
「今年、、、こっち来たんだよね?」
「はい」
「緊張してる?」
「え?」
「はははははっ」
「・・・・・・」
「もっとリラックスしていいんだって」
肩を抱く手。
頬に触れる手。
唇と唇が重なった。
視線の奥に映る車。
少しだけ揺れてたのは
自分の心が揺れてたから?
171L.O.D:02/01/08 00:43 ID:llT+ofDO
『更新終了』

ヒントってのもなんだけど、Night of Tokyo Cityの歌詞も
イメージには近いかな?
なんか空虚な都会感っていうか、そんな・・・・・・
172旧♪:02/01/08 02:48 ID:NvG3zG22
電源を切って都合のいい孤独(一茶)

……なんちゃって(w
松浦のアルバムにも一曲あったかな、そういえば
173トロピカ〜ル名無して〜る:02/01/08 05:37 ID:NCBexK/P
主人公が置かれている環境(というか心境)が
共通してるような気はしますな>この小説とTMR
「都会の生活にむなしさを感じていてその現状を打破したい」
…みたいな感じなのかな?

>>172
それは「私のすごい方法」のことですかな?
174旧♪:02/01/08 10:10 ID:NvG3zG22
「都会とアタシ」の中に「対人関係」も包括されてるっぽいから
「都会とアタシ」のほうが適切かも、という気がしてきた。

>>173
「♪ほんのちょっとサミシイ関係」っていう歌詞だったと思います。
175L.O.D:02/01/08 12:51 ID:X5M0ZV8c
今日も授業を抜け出した。
紫式部の研究しかしてない古文学の教授の授業なんて
受けてられない。
昼飯もそこそこにWingsに行くと
UFOキャッチャーの新作のプーさんのところに
あの時の運転手の人とイチャつく矢口がいた。
「あ、なにさー。2人でー」
「おぅ、なっち」
「サボり?サボっちゃった?」
「不良女子高生に言われたくないですー」
「ははははは」
などと談笑しながら、矢口の手を引っ張って
奥に連れ込む安倍。
「ちょっと!付き合ってるの?」
「うん」
「まりっぺ、彼氏いらないとか言ってたじゃん!」
「あー、やっぱねぇ、彼氏だよ。
 うん、薔薇色の日々って感じぃ?」
「てめぇ、、、、」
「なんだよぅ、なっち、怒るなよぅー」
ふざけあう2人。
彼はその様子を爆笑しながら見てる。
手には取ったらしきプーさんがぶら下がっていて
それを見つけた矢口がとととっと走っていき
嬉しそうに抱きついてた。
でも、なんかそんな矢口が憎めなくて
安倍は思わず苦笑してしまった。
そして、一言、つぶやく
「あぁーあ、彼氏出来ないかなぁー」

其の一、終了。
176L.O.D:02/01/08 13:50 ID:X5M0ZV8c
其の二 OLとアニヲタ

「みっちゃぁーーーーん、プリクラ撮りにいかへーん?」
「あぁ、もう、裕ちゃん、ちょっと酔い過ぎやって!」
「あっ!あんなところにゲーセンが!!」
意外としっかりした足取りで走っていくのは
中澤裕子、職業OL。
それを追うのは同僚の平家みちよ。
仕事帰りに一杯飲んで
気持ち良くなった中澤は時に暴走する。
Wingsに入っていってしまった中澤は
プリクラの機械の前で
財布の中を覗いてた。
「ほんまに撮るん?」
「ええやん、記念、記念」
300円投入。
仲良さげに頬を寄せあう2人。
『これでいいかなぁ〜?』
「あははははははは!!!!!!」
「あかんて、なんでごっつ睨んでる!?」
「もっかいやろ!もっかい!!」
やり直しのボタンを押して
もう一回ポーズ。
今度、画面に映ったのは
なかなかマシな感じである。
化粧も良さげに白く飛んでるし
綺麗に見える。
「ええんちゃう?」
「まぁ、これはええわな」
「んじゃ、OK!」
なにやら、鼻毛とかいたずら書きして、消して
マジメに文字や装飾を入れなおして、完成。
機械の外で出てくるのを待ってる。
「いやぁー、睨んでるのおもろかったなー」
「あれは人に見せられへんな」
出てきたプリクラをそこにあったハサミで二つに分けて
フラリと店内を見て回る。
懐かしのテトリスを見つけ
座る中澤。
「みっちゃん、見ててやー。」
177L.O.D:02/01/08 13:51 ID:X5M0ZV8c
軽快に始まったテトリス。
最初の内は連鎖なんかも狙っちゃって
その昔取った杵柄なんてものを見せちゃったりしてたのだが
次第に戦況はヤバくなるばかり。
うまく切り抜けると
新たな問題発生。
どうにかして、20分近く粘っていたが
上まで到達してしまった。
「うまいなぁ」
「ほら、みっちゃんやってみ」
「うち、こういうのヘタ!だめだからー!」
「そう言わんとー」
平家を座らせて、自分は立ち上がった中澤の目に
ショートカットっぽい髪型をした華奢な少年が映る。
(好みっ!)
中澤の目の色が変わる。
平家の慌てっぷりを見ながら
彼の様子も見てた。
挌闘ゲームで連戦35勝。
今も乱入してきた奴を瞬く間に
ブチのめしてしまったのだが
至って涼しい顔をしていた。
ほっそりとした顎
芯の強そうな目。
まったく持って好みである。
平家にバレないように
そーっと離れて
彼の後ろに立つ。
気付かないのか
黙々とプレイする彼。
「強いんやなー、君」
「・・・・・・」
(反応、薄っ!)
隣の椅子に座って
足を組んでみせる。
ミニスカートから覗く太股。
気付けば、何人かの
野獣どもがその中を覗こうと集まっていた。
彼は興味なさげにゲームを続ける。
178L.O.D:02/01/08 13:52 ID:X5M0ZV8c
「いっつもここにいるん?」
「・・・・・・」
もう完璧に逆ナンパである。

  ガタンッ!

足下にあった鞄を拾い
席を立つ彼。
ゲームの画面にはエンディングロール。
「チェッ」
「なにしてるん、姉さん!」
「もう終わったん?」
平家が耳元で囁く。
(なんやの、この人達?)
周りは男の群れ
「きしょいゲームヲタやろ」
「さっさと退散しときましょ」
平家に腕を掴まれて、逃げ出すようにその場を離れる。
さっきのプリクラを撮ったところを抜け
UFOキャッチャーが並ぶ入り口付近で
運悪くコケた。
しかも、そのまま両手いっぱいにぬいぐるみを抱えた
ちっちゃい女子高生にぶつかってしまった。
「おわぁあー!!」
「まりっぺ!?」
「大丈夫か、裕ちゃん?」
「痛っ、、、、」
「うぅー」
「大丈夫かい?」
なんかちょっと訛ってる女子高生の子の友達の手を借りて
起き上がってから、ヒールが折れてる事に気付く。
179L.O.D:02/01/08 13:52 ID:X5M0ZV8c
「あちゃー」
平家がこれはいけないというような表情だが
中澤はそれよりもすまなそうな顔で
女子高生を見た。
「ごめんなー、、、ちょっと急いでて」
「矢口は大丈夫だけど、お姉さんこそ大丈夫?」
「いや、、、あんま大丈夫でも無さそうやな、、、、」
ちらっとヒールを見る。
「瞬間接着剤で付くべか?」
訛ってる子が鞄から取り出したのは、アロ○アルファ。
「応急処置やな」
「ほんまごめんな、、、、」
店先の段差に座って、瞬間接着剤が乾くのを待つ。
「お姉さん達、OL?」
女子高生がおっきなプーさんのぬいぐるみを抱えながら
聞いてきた。
「そうやで」
「店じゃあんま見ない顔だなーって思った」
「2人とも、常連さんなん?」
「まぁねー」
「ヒマな時はいっつも来てるよね」
中澤は、これ幸いとばかりに
さっきの彼の事を聞いてみる。
「な、挌闘ゲームめっちゃ強い
 ショートカットの子、常連さん?」
「誰だべ?」
「camiじゃない?」
「神?」
「camiってのはあの人のハンドルネーム。
 ゲームクリアした時とかに名前入れれるっしょ?」
「なるほどなぁー」
「camiがどうかしたの?」
「いやぁ、さっき見てて、うまいな思うて」
なんて言ってる間にヒールがくっついたみたいだ。
「大丈夫みたいやし、帰るかな。
 ほんま、ごめんなぁ。
 なんか怪我とかあったら大変やから
 名刺渡しておくわ。」
女子高生に一枚渡す。
彼女はブ厚い手帳にそれを差し込んだ。
「じゃねーー」
いたって元気そうに手を振る彼女。
中澤も手を振り替えした。
人なつっこい子だ。