小説『OLやぐたん 其の弐?』

このエントリーをはてなブックマークに追加
147L.O.D
『Night of Tokyo City 』

其の一、田舎者と女子高生

授業がここまで恐ろしくつまらなく感じるのも
もう慣れてきてしまった。
2流と言ってしまえば、それまでのような大学の
文学部に入学して、早五ヶ月。
今となっては、このレポートを出せば卒業出来るような
授業を適当にサボって、どっかに行くような
ズルがしこさも手に入れた。
安倍なつみ、19歳。
北海道から抜け出したいがために
この大学にやってきた。
とりあえず卒業出来ればよかった。
卒業したところでなにがしたいわけでもない。
ただ昔から、大人になりたかった。
そうすれば、なにか自由になれる気がしたのだが
年を重ねるにつれ
何かが激変するわけでもなく
ただ虚無感を感じながらも
若きゆえに感じる拘束感に喘いでいた。
溜息を一つつく。
それが何かを変えるわけでもないが
そんな煮え切らない生活に
アンチテーゼとして行動しておいたのだ。
くだらない毎日。
148L.O.D:02/01/05 02:20 ID:oSXpXr94
「なっち、学食行く?」
「あー、今日はいいや」
当たり障りのない友達。
初めて座った席が近くて
しゃべってただけの事。
「授業終わりなの?」
「うん」
「そっか、じゃねー」
安倍は自分の性格を知っていた。
なにかの拍子に無意識に言葉で人を傷つけてしまう。
それで、何度も喧嘩したし、
いじめられた。
そういうのが嫌で
塞ぎがちになった。
当たり障りのない付き合い
互いを詮索しない、そんな付き合いをしていれば
自然と壁が出来て、安心できた。
誰かを傷つけなくてすむ。
それだけが、安倍を救っていた。
今日も1人で街をぶらつく。
1人は嫌いじゃない。
自由だから。
どんなわがままだって
1人なら大丈夫。
あっちのお店、こっちのお店と
色々見てまわる。
お気に入りの服屋を何件か回ってみて
その角のこないだ見つけたカフェに入る。
サンドイッチがおいしい。
ライ麦のパンに新鮮な野菜やハムが挟まってる。
それを食べながら、フと自分の二の腕を見た。
(やせなきゃなぁ)
さっきの服屋でかわいいキャミソールを見つけたのだが
この二の腕で着るのは勇気がいる。
思っていても、なかなか実行はできない。
昼食を終え、本屋でも覗こうかと歩き出した時、
カフェ前の交差点の向こう側にゲームセンターを見つける。
高校の時、何人かでやってきて
遊んだ記憶がある。
楽しげなその雰囲気に連れられて入ってみた。
入り口には懐かしいUFOキャッチャーやら、プリクラ。
真中のフロアには挌闘系のゲームが並んで
その周りは、俗に言う音ゲーがズラリと囲んでいた。
149L.O.D:02/01/05 02:20 ID:oSXpXr94
店内は少し暗めで、音の洪水みたいになっている。
昼間だから人は少ないが
それでも、常連らしき人が何人もいた。
安倍はダンスダンスレボリューションの前で立ち止まる。
簡単な曲なら前やった事がある。
ちょうどやってる人もいないし
挑戦する事に決定。
ロングスカートの裾をひらりと舞わせ
台の上に乗り、金を入れたところで気付いた。
厚底サンダルは踊りづらい気がする。
「ま、いっか」
靴をポポイッとそこら辺に投げて
プレイを始めたが、これが惨敗。
でも、間違えることも楽しくなってきて
1人、キャァキャァ言いながら遊ぶ。
汗をかいて、後ろにあるベンチで休憩。
自販機で買ったジュースを飲むと
すごくおいしく感じた。
火照った体にはすごくいい。
結局、その後、1000円近く使って踊ってしまった。

安倍はこのゲームセンター『Wings』に通う事となる。

数日後
本日もまた、授業をサボって
お昼ご飯は適当に済まして
やってきた。
自動ドアが開いて
店内に入ろうとすると
いつもより一層うるさい気がした。
「なんだろ、、、、」
思わずその音の方を見てしまった。
ちっちゃい女子高生が
くまのプーさんのUFOキャッチャーで苦戦してる。
「クソォーーーー!」
かわいらしい声だが
高くてキンキン響く。
「もういっちょ、勝負だっ!!」
女の子は勢い良くコインを投入。
150L.O.D:02/01/05 02:21 ID:oSXpXr94
安倍はその子がとれるのか気になって
DDRの方には行かず
後ろでUFOキャッチャーをしながら
チラチラと見ていた。
キャアキャア言いながら
2000円くらいやっただろうか。
諦めたらしくしょぼくれながら
店内の中に消えていく。
安倍は試しにその台をやってみようと
100円入れた。
ボタン1は横移動。
スーっと動いて。
ボタン2は縦移動。
さっき何度も取り損ねてたぬいぐるみの真上に。
アームががっしりと抱え込む。

  ヒョイ。

あっけない幕切れ。
取ってしまった。
安倍は取り出し口に落ちてきたプーさんを拾う。
「・・・・・・」
店の中を見た。
彼女は小さな体をいっぱい動かして
DDRで狂ったごとく踊っていた。
最上級に難しいレベルでやってる。
「すっごぉー」
いつものベンチのところに座って
彼女のプレイを見てる。
まるで流れるような動き。
安倍のモタモタした動きではとてもじゃないが
かなわない。
151L.O.D:02/01/05 02:22 ID:oSXpXr94
踊り終えた女子高生が鞄からお茶を出しながら
やってきて、隣に座った。
安倍が勇気を出して、声をかけようとした瞬間
その子はヅラを脱いでいた。
(ヅラ!!?)
中から出てきたのは、綺麗な金髪。
よく見ると、目も青い。
(なに、この子、外人さんなんだべか!?
 さっき叫んでたのは日本語だったけど。
 もしかして、日本語は出来る外人さん!!?)
「はぁーーー、疲れたぁーーーーー」
周りを気にせず、でっかい声で叫ぶ女子高生。
「あ、、、あの、、、、」
少し怯えた様な安倍が声をかける。
「ん?」
「これ、、さっき欲しそうだったから」
「おわぁ!プーさんだっ!!
 なに!取ったの!?」
「うん」
「何回やっても出来なかったんだよぉーーー!
 矢口、プーさん、超好きなんだっ!!
 あんがとっ!!」
「いやいや、、、DDR、すごいうまいね?」
「まぁねー、学校サボっては遊びに来てるからねーー」
なんか得意そうにしゃべる。
でも、ちょっとかわいくて
安倍は微笑んでた。
「なっち、最近始めたばっかで全然ヘタなんだ」
「だいじょーぶ、この矢口真里様が教えてしんぜよーー」
「ははぁー」
会ったばかりなのに、しゃべってるとなんか楽しい。
2人ともそう感じて、盛り上がっていた。
安倍はかばんを置いて、DDRをやりに行く。
矢口が横に立って、口で次はどう体を向けたらいいか
教えてくれたりする。
この子とは気が合いそうだ。
思わず顔を見合わせて、笑ってしまった。
152L.O.D:02/01/05 02:22 ID:oSXpXr94
夜。
1人の部屋で、テレビを見てる。
若手のお笑い芸人が素人の女の子の部屋を襲撃してる。
部屋の中を漂うバニラの匂い。
最近、ちょっと凝っていて
今日も帰りがけに何個か買ってみた。
湯上がりの部屋にはイイ感じかもしれない。
携帯を手に取った。
女子高生と仲良くなるとは思わなかった。
2人でゲーセンで遊んだ後
カフェに行って、軽い食事をしながら
しゃべってた。
彼女の名前は矢口真里。
18歳、高校三年生。
一つ年下という事になる。
横浜出身で学校はこっちの商業系高校に通っているのだそうだ。
授業をサボっては、渋谷などで遊びまくるらしい。
Wingsにはよく来ていて、何人かの常連とも顔なじみ。
「メールしてみよっ」
なんとなく彼女なら24時間いつ送っても
メールが返ってきそうな気がする。
それぐらい、ちっちゃな体にパワーがあって
元気いっぱいな感じがする。
『まだ起きてるー?』
すぐに返事は返ってきた。
(まだバリバリだよー!今、カラオケだもんね)
『まだ帰ってなかったのかい、この子はー』
(あはははー、なっち、おばさんみたい)
『おばさんって失礼だねー』
(いもだしね)
『もーこの子は。なっちはそろそろ寝るかな』
(年寄りは寝るの早いねー)
『なっちはおばあちゃんじゃないって』
(ま、いいや。おやすみー、チュ)
『おやすみねー』
かわいらしい。
ひさしぶりに会話が楽しかった。
自然と心が浮き足立っていた。
友達が出来る事がこんなに嬉しい事だって忘れてた。
部屋の電気を消して
ベッドに潜り込む。
今日はいい夢が見れる気がする。
153L.O.D:02/01/05 02:30 ID:oSXpXr94
投稿寸前に表題を変えました。
セカンドモーニングの1曲目のあの歌詞の雰囲気が
すごくこの小説に合ってる気がして。。
154ねぇ、名乗って:02/01/05 23:46 ID:yciiMXCf
最高です。
155アルマーニ濱口 ◆2ggkL5EU :02/01/06 00:44 ID:4W0oUTUH
おお、もう新作が・・・
LODガンバ!!
156トロピカ〜ル名無して〜る:02/01/06 02:03 ID:GDn3KTM5
素敵なプロローグです…おいらにとって最強の組み合わせ「なちまり」だし…

初対面の人と話してるのに自分のことを「なっち」って言っちゃうなっち萌え(w
157旧♪:02/01/06 10:44 ID:3vXk59t+
>作者
スタンダードメニュー「なちまり」に対して
どんなスパイスを効かせてくれるのか……
他のメンバーの役どころも気になるね……

「なちまり」っぽいけどこの先どうなるか
わからないな、とも思ってみたり。
158ねぇ、名乗って:02/01/06 21:23 ID:fAXDWig0
おぉこんどは なちまり ですか!やたっ!
ぜひハッピーエンドでお願いしたいです。一押しコンビなんで。
期待してます。がんばってください。
159L.O.D:02/01/06 22:35 ID:78h+pd9O
その後も安倍がWingsにいれば
矢口が来るという感じで
2人はよく遊んだ。
あまり他の街に行ったことのなかった
安倍を矢口が連れ回して
東京案内した事もある。
その日も遊んでたら夜6時を過ぎて
矢口がご飯を食べていこうというので
安倍は付き合って、ファミレスに入った。
メニューの向うに見える矢口の顔。
パッと上がったかと思うと
安倍の鼻を突ついた。
「なっち、彼氏とかは?」
「か、彼氏?」
「いないの?いないよなー、毎日
 ゲーセン通ってる子がなぁーーー」
「うるさいなぁ。矢口だって毎日遊んでるじゃん、うちと」
「あぁ、矢口、彼氏あんま欲しくない」
「へ?」
「だってさぁー、うざくない?
 付き合ったら、他の男の子と遊べなくなるんだよ。」
「あぁ、、、」
「そんなんだったら、友達いっぱいほしい。」
そう言って、メニューに目を戻す矢口の顔は
すごく大人びてるように見えて
安倍は黙って、水を流し込んだ。
160L.O.D:02/01/06 22:36 ID:78h+pd9O
今まで何度か付き合った事あったけど
そんな事考えた事もなかった。
東京の人ってみんなそういう事まで考えて
付き合ってるのかなって思った。
店員さんが来て、矢口が頼んでる。
「なっちは?」
「へ、あ、えーっとね、これで」
しばしの沈黙。
「ボーッとしてどうしたのさ?」
「んー、や、さっき矢口が言った事考えてたんだ」
「さっき?」
「うん、彼氏いたら、他の男の子と遊べない、とか。
 なっち、そんな事考えたことなかったから」
「っていうか、普通そうじゃない?」
「なのかなぁ」
手持ち無沙汰にナプキンを折り直してみる。
「彼氏、欲しい?」
「まぁ、そりゃぁ、、、」
「矢口、男友達だけはさ準備出来るから遊んでみる?」
「えー、、、」
ギャル男っぽいのしか目に映らない。
「みんな、いい人だからさぁ」
矢口と仲良くなった事で
毎日の生活が明るくなった。
誰かと知り合う事を拒む理由はない。
「じゃぁ、イケメンよろしくね」
「イケメンね、OK、OK!
 たぶんみんな呼べば、来るけど
 この後、遊びに行っちゃおうか?」
「この後!?」
「どーせ、いつ会っても同じだって!」
なんて言いながら、携帯電話であっちこっちに電話をし始める。
安倍はそんな矢口を見ながら
ちょうどやってきた料理を食べるのであった。
161ぼの ◆BONOl.Ok :02/01/06 23:29 ID:eG2wSJog
前作が甘々だったから、今回はDARKなENDを
期待しちゃう(w
162トロピカ〜ル名無して〜る:02/01/07 01:33 ID:DQ0SoJ6/
>新作はTMRのアルバム曲『DREAM DRUNKER』をモチーフに
>切なめのコメディになる予定です、はい。

この曲を知らないから展開が読めないな
コメディということだからあまりダークにはならんと思うけど…
163ぼの ◆BONOl.Ok :02/01/07 01:40 ID:Mrjcft0J
>>162
そこ見逃してた。スマソ。
恥晒しsage
164L.O.D:02/01/07 01:43 ID:R5E+ebKr
『今日の更新はないけれど』
えーっと、THE FORTHに収録されてるアルバム曲なんですけど
T.M.Rの歌詞は基本的に井上秋緒という方が書いてるんですが
くだらないお遊びからめちゃめちゃ綺麗な歌詞まで書けるんですねぇ。

今回の小説はDREAM DRUNKERの歌詞の世界にマッチしてるので
興味のある方はチェックしてみてください。
ただ、ある意味、俺が何をやりたいのかまでバレるかも(w)
165トロピカ〜ル名無して〜る:02/01/07 03:26 ID:DQ0SoJ6/
>>164
歌詞チェックしてみたけど正直この小説にどう反映されてるか
よくわかりませんでした…おいらセンスないんだろうか(w
166ねぇ、名乗って:02/01/07 23:05 ID:4j1D1G0i
>>165
奥が深いんだよ・・・多分ね・・・。
167ぼの ◆BONOl.Ok :02/01/08 00:06 ID:Iqqc9f5O
ワイも歌詞見てみた・・・が、やはりわからん(w

「いまいち波に乗りきれてない人間なら、
勢いだけで行っちまえ!」見たいに見える・・・

俺、所詮低能よのう・・・
168L.O.D:02/01/08 00:38 ID:llT+ofDO
東京の街中を抜けて
車の流れもスイスイとすり抜けてく。
車内は軽快な音楽に満たされてた。
安倍は後部座席に座って
窓の外を眺めてた。
矢口は助手席で
運転手の人に
「シートベルト、ちゃんとしとかなかったら
 真里、ちっちゃいから飛んでいって
 死んじゃうんだぞー」
とか、からかわれてた。
肩を叩かれたので
振り向くと
隣に座ってた人が話したそうに笑ってた。
「なっちは19だっけ?」
「はい」
「じゃぁー、二つ下だ。
 なにやってんの?」
「大学生です」
「あ、そうなんだぁー。
 俺、実は医大生。」
「へっ!?」
「ぷっ」
矢口もこっちの会話を聞いてて
吹き出してた。
どこからどう見ても
医大生には見えない人。
すっごい遊び人っぽい。
「あはははは、見えねぇよな」
運転手の人もつっこむくらい見えない。
「んだよぉ。地元は?」
「北海道です」
「へぇー、いいなぁ、北海道。
 スキーしたいな、冬なんか」
「コケて、足の骨折るんだよ」
「あ、真里、そういう事言うか
 俺はガキの頃は冬ともなれば
 毎日スキーに行くような子供だったんだぞ」
騒がしい雰囲気。
安倍も一緒になって笑う。
楽しかった。
どうも東京に来てから
ふさぎ込みがちだった。
それを自分の中で正当化して
1人は自由なんて思い込んでるだけだったのかもしれない。
169L.O.D:02/01/08 00:39 ID:llT+ofDO
生まれ育った室蘭の海と同じ
匂いと音がしてた。
心が素直になっていく。
寂しい心は隠せない。
車は浜に乗り込んで
止まった。
4人は車から降りて
真っ暗な浜辺を歩いていく。
やっぱり寒くはない。
「真里、放り込んでやるか」
「えーやだよぉ、後が寒いもん」
「まだ時期としては早いわな」
男の子達が目で合図するのを安倍は見てる。
医大生の人が安倍にうなづいてみせて
安倍もそーっと近付いてく。
「いっせーのぉー」
「えっ!!?うわっぁ!マ・・・・・・
 キャァアアアアアアアアア!!」
「でぇええ!!」
波飛沫が高く上がって
白い雫が飛び散って
投げ込まれた矢口を隠す。
「アハハハハハハハハッ!!!」
「油断してやんのーー!」
「まりっぺ、ビチャビチャだよーーー」
「うはぁー、海水飲んじゃったよーー」
「大丈夫か?化粧ハゲてるぞ」
「マジ!?嘘!」
「お前、化粧濃いんだよっ!」
「ヒドッ!ちょーなっちも言ってやってよー」
「まりっぺのは濃いね」
「あーもー、こいつらぁ!後で復讐してやるー!!」
170L.O.D:02/01/08 00:40 ID:llT+ofDO
悔しそうにドタドタと走っていって
化粧道具を取り出していた。
運転手の人が車の後ろからタオルを取り出して
真里にかけてやる。
冷えた体を暖めるため、車のエンジンをかけて
ヒーターを入れてあげてた。
隣に立ってる彼と2人っきりになってる事に気付く。
沈黙が怖くて、話し掛けた。
「海、好きですか?」
「まぁね、サーフィンやってるし」
「出身、海の近くなんです」
「懐かしい?」
「ちょっと」
はにかむように笑ってみせる。
「座らない?」
「あ、はい」
お尻の下の砂の感触が懐かしい。
「彼氏は?」
「いないですよ」
「そうなんだ」
風が少し強く感じた。
こないだ矢口と一緒に行った美容室で
切ってもらった髪の毛がなびく。
「今年、、、こっち来たんだよね?」
「はい」
「緊張してる?」
「え?」
「はははははっ」
「・・・・・・」
「もっとリラックスしていいんだって」
肩を抱く手。
頬に触れる手。
唇と唇が重なった。
視線の奥に映る車。
少しだけ揺れてたのは
自分の心が揺れてたから?
171L.O.D:02/01/08 00:43 ID:llT+ofDO
『更新終了』

ヒントってのもなんだけど、Night of Tokyo Cityの歌詞も
イメージには近いかな?
なんか空虚な都会感っていうか、そんな・・・・・・
172旧♪:02/01/08 02:48 ID:NvG3zG22
電源を切って都合のいい孤独(一茶)

……なんちゃって(w
松浦のアルバムにも一曲あったかな、そういえば
173トロピカ〜ル名無して〜る:02/01/08 05:37 ID:NCBexK/P
主人公が置かれている環境(というか心境)が
共通してるような気はしますな>この小説とTMR
「都会の生活にむなしさを感じていてその現状を打破したい」
…みたいな感じなのかな?

>>172
それは「私のすごい方法」のことですかな?
174旧♪:02/01/08 10:10 ID:NvG3zG22
「都会とアタシ」の中に「対人関係」も包括されてるっぽいから
「都会とアタシ」のほうが適切かも、という気がしてきた。

>>173
「♪ほんのちょっとサミシイ関係」っていう歌詞だったと思います。
175L.O.D:02/01/08 12:51 ID:X5M0ZV8c
今日も授業を抜け出した。
紫式部の研究しかしてない古文学の教授の授業なんて
受けてられない。
昼飯もそこそこにWingsに行くと
UFOキャッチャーの新作のプーさんのところに
あの時の運転手の人とイチャつく矢口がいた。
「あ、なにさー。2人でー」
「おぅ、なっち」
「サボり?サボっちゃった?」
「不良女子高生に言われたくないですー」
「ははははは」
などと談笑しながら、矢口の手を引っ張って
奥に連れ込む安倍。
「ちょっと!付き合ってるの?」
「うん」
「まりっぺ、彼氏いらないとか言ってたじゃん!」
「あー、やっぱねぇ、彼氏だよ。
 うん、薔薇色の日々って感じぃ?」
「てめぇ、、、、」
「なんだよぅ、なっち、怒るなよぅー」
ふざけあう2人。
彼はその様子を爆笑しながら見てる。
手には取ったらしきプーさんがぶら下がっていて
それを見つけた矢口がとととっと走っていき
嬉しそうに抱きついてた。
でも、なんかそんな矢口が憎めなくて
安倍は思わず苦笑してしまった。
そして、一言、つぶやく
「あぁーあ、彼氏出来ないかなぁー」

其の一、終了。
176L.O.D:02/01/08 13:50 ID:X5M0ZV8c
其の二 OLとアニヲタ

「みっちゃぁーーーーん、プリクラ撮りにいかへーん?」
「あぁ、もう、裕ちゃん、ちょっと酔い過ぎやって!」
「あっ!あんなところにゲーセンが!!」
意外としっかりした足取りで走っていくのは
中澤裕子、職業OL。
それを追うのは同僚の平家みちよ。
仕事帰りに一杯飲んで
気持ち良くなった中澤は時に暴走する。
Wingsに入っていってしまった中澤は
プリクラの機械の前で
財布の中を覗いてた。
「ほんまに撮るん?」
「ええやん、記念、記念」
300円投入。
仲良さげに頬を寄せあう2人。
『これでいいかなぁ〜?』
「あははははははは!!!!!!」
「あかんて、なんでごっつ睨んでる!?」
「もっかいやろ!もっかい!!」
やり直しのボタンを押して
もう一回ポーズ。
今度、画面に映ったのは
なかなかマシな感じである。
化粧も良さげに白く飛んでるし
綺麗に見える。
「ええんちゃう?」
「まぁ、これはええわな」
「んじゃ、OK!」
なにやら、鼻毛とかいたずら書きして、消して
マジメに文字や装飾を入れなおして、完成。
機械の外で出てくるのを待ってる。
「いやぁー、睨んでるのおもろかったなー」
「あれは人に見せられへんな」
出てきたプリクラをそこにあったハサミで二つに分けて
フラリと店内を見て回る。
懐かしのテトリスを見つけ
座る中澤。
「みっちゃん、見ててやー。」
177L.O.D:02/01/08 13:51 ID:X5M0ZV8c
軽快に始まったテトリス。
最初の内は連鎖なんかも狙っちゃって
その昔取った杵柄なんてものを見せちゃったりしてたのだが
次第に戦況はヤバくなるばかり。
うまく切り抜けると
新たな問題発生。
どうにかして、20分近く粘っていたが
上まで到達してしまった。
「うまいなぁ」
「ほら、みっちゃんやってみ」
「うち、こういうのヘタ!だめだからー!」
「そう言わんとー」
平家を座らせて、自分は立ち上がった中澤の目に
ショートカットっぽい髪型をした華奢な少年が映る。
(好みっ!)
中澤の目の色が変わる。
平家の慌てっぷりを見ながら
彼の様子も見てた。
挌闘ゲームで連戦35勝。
今も乱入してきた奴を瞬く間に
ブチのめしてしまったのだが
至って涼しい顔をしていた。
ほっそりとした顎
芯の強そうな目。
まったく持って好みである。
平家にバレないように
そーっと離れて
彼の後ろに立つ。
気付かないのか
黙々とプレイする彼。
「強いんやなー、君」
「・・・・・・」
(反応、薄っ!)
隣の椅子に座って
足を組んでみせる。
ミニスカートから覗く太股。
気付けば、何人かの
野獣どもがその中を覗こうと集まっていた。
彼は興味なさげにゲームを続ける。
178L.O.D:02/01/08 13:52 ID:X5M0ZV8c
「いっつもここにいるん?」
「・・・・・・」
もう完璧に逆ナンパである。

  ガタンッ!

足下にあった鞄を拾い
席を立つ彼。
ゲームの画面にはエンディングロール。
「チェッ」
「なにしてるん、姉さん!」
「もう終わったん?」
平家が耳元で囁く。
(なんやの、この人達?)
周りは男の群れ
「きしょいゲームヲタやろ」
「さっさと退散しときましょ」
平家に腕を掴まれて、逃げ出すようにその場を離れる。
さっきのプリクラを撮ったところを抜け
UFOキャッチャーが並ぶ入り口付近で
運悪くコケた。
しかも、そのまま両手いっぱいにぬいぐるみを抱えた
ちっちゃい女子高生にぶつかってしまった。
「おわぁあー!!」
「まりっぺ!?」
「大丈夫か、裕ちゃん?」
「痛っ、、、、」
「うぅー」
「大丈夫かい?」
なんかちょっと訛ってる女子高生の子の友達の手を借りて
起き上がってから、ヒールが折れてる事に気付く。
179L.O.D:02/01/08 13:52 ID:X5M0ZV8c
「あちゃー」
平家がこれはいけないというような表情だが
中澤はそれよりもすまなそうな顔で
女子高生を見た。
「ごめんなー、、、ちょっと急いでて」
「矢口は大丈夫だけど、お姉さんこそ大丈夫?」
「いや、、、あんま大丈夫でも無さそうやな、、、、」
ちらっとヒールを見る。
「瞬間接着剤で付くべか?」
訛ってる子が鞄から取り出したのは、アロ○アルファ。
「応急処置やな」
「ほんまごめんな、、、、」
店先の段差に座って、瞬間接着剤が乾くのを待つ。
「お姉さん達、OL?」
女子高生がおっきなプーさんのぬいぐるみを抱えながら
聞いてきた。
「そうやで」
「店じゃあんま見ない顔だなーって思った」
「2人とも、常連さんなん?」
「まぁねー」
「ヒマな時はいっつも来てるよね」
中澤は、これ幸いとばかりに
さっきの彼の事を聞いてみる。
「な、挌闘ゲームめっちゃ強い
 ショートカットの子、常連さん?」
「誰だべ?」
「camiじゃない?」
「神?」
「camiってのはあの人のハンドルネーム。
 ゲームクリアした時とかに名前入れれるっしょ?」
「なるほどなぁー」
「camiがどうかしたの?」
「いやぁ、さっき見てて、うまいな思うて」
なんて言ってる間にヒールがくっついたみたいだ。
「大丈夫みたいやし、帰るかな。
 ほんま、ごめんなぁ。
 なんか怪我とかあったら大変やから
 名刺渡しておくわ。」
女子高生に一枚渡す。
彼女はブ厚い手帳にそれを差し込んだ。
「じゃねーー」
いたって元気そうに手を振る彼女。
中澤も手を振り替えした。
人なつっこい子だ。
180トロピカ〜ル名無して〜る:02/01/09 00:21 ID:Xv7oPjly
さすがL.O.D、ただのなちまりで終わるとは思わなかったけどこう来ましたか
ゲームセンター「Wings」を中心に互いにリンクするオムニバスなんですな?

>>174
それは「オシャレ!」という曲ですな。ポップで明るいメロディの中に
確かに「都会の薄っぺらな人間関係に対する虚しさ」が表現されてるね…
「あだ名しか知らない関係」を「ほんのちょっと寂しい関係」と主人公が感じている

おいらが挙げた「私のすごい方法」はそこからもっと前向きに考え始めた
主人公って感じの曲かな…
181L.O.D:02/01/09 00:31 ID:zsHRzh5N
『古いエアモニ聞きながら』

えぇ、そんな感じで、現代社会の希薄な関係性とかなんだとか
書いていければいいかなーとボーっと思う次第であります(w
182旧♪:02/01/09 01:11 ID:FDmeDbGR
>>180
なるほど。当方まだ曲とタイトルが一致しておらず(w

>>181
エアモニか……ってヲソロは?
183L.O.D:02/01/09 22:49 ID:R+y3snLr
ちょいと本日は休養日・・・・・・

ヲソロ、テキスト化してるサイトないべか、、、
今さら落として全部聴くのも面倒だ(w
184アルマーニ濱口 ◆2ggkL5EU :02/01/09 23:58 ID:y3R/BNfH
>>183
普段怒涛の更新だから
ユクーリ休んでください
185L.O.D:02/01/10 16:11 ID:vnWnPief
翌日、中澤は仕事を抜け出して
Wingsへとやってきた。
camiに謝りたかった。
普段の中澤なら酔った勢いやしなどと
ごまかすのだが
彼にもう一度会ってみたかった。
言葉を交わしたわけでもない。
視線を交えたわけでもない。
彼は見向きもしなかったのに
彼に会ってみたかった。
自動ドアが開いて
喧騒の音が聞こえてくる。
真夏の温度に比べ
室内はガンガンに効いたクーラー。
グルリと見回すと
自動販売機の横の幾つかあるテーブルで
彼はノートに何かを書いてた。
中澤は知らぬ顔でコーヒーを買って
向いに座った。
「cami君?」
なにやらイラストを書いてた彼の指が止まる。
ゆっくりと持ち上げられる顔。
「なんすか?」
男の子にしては高めのアルトボイス。
「・・・・・・もしかして、女の子」
「昨日も君って呼んでたっすよね?」
「ごめん、てっきり男だと思ってた」
「ま、いいっすけど」
186L.O.D:02/01/10 16:12 ID:vnWnPief
camiは視線をノートに落とす。
一度だけテレビのチャンネルをザッピングしてる時に見た
深夜アニメのキャラクター。
流れるような流線形で描かれる筋肉は
美しかった。
「昨日はごめんね、酔っぱらってて」
「・・・・・・」
「なんかお詫びしたいんだけど?」
「仕事、途中じゃないんすか?」
「そう、、だけど、、、、」
「いいっすねー、この時代に抜け出して
 ゲーセンでナンパ?」
「な・・・・・・」

  コトッ

camiはペンをテーブルに置いた。
書き殴られたような文字で入れられた『cami』の文字。
「あんた、ここに何しに来てんだよ」
ノートをテーブルの脇に添えられた本棚のケースに納め
カバンを手にすると、行ってしまった。
置いてかれた中澤はコーヒーが冷めても
なかなかテーブルから離れる事は出来なかった。
仕事に戻らなきゃと気付いて
席を立った瞬間
聴き覚えのある声が入り口の辺りから聞こえた。
「お姉さぁーーーん」
「あ、昨日の子・・・・・・」
ちっちゃい女子高生が、身体いっぱい手を振ってる。
精一杯笑ってみせても
元気がないのが分かってしまったらしい。
「どうしたの?」
187L.O.D:02/01/10 16:12 ID:vnWnPief
「cami、、さん、、、怒らせちゃった」
「なにしたのさ?」
「いや、昨日のお詫びをしたくて、、、」
「ふーん」
女子高生は中澤の手を握ると
Wingsを出て、向いのマクドナルドに突入。
中澤はあっけに取られて、何も言えない。
奥の席に座って
女子高生は手帳を開く。
「ハンドルネームcami。
 本名 市井紗耶香。
 16才。高校中退。
 入ったんだけど、イジメにあって、
 本人も行く気を失って、やめた。
 趣味はゲームとアニメ。」
「なんでそんな詳しいん?」
「まぁね」
「そいや、あんた名前は?」
「矢口真里。お姉さんは、中澤ー、、裕子だよね?」
「そう」
「ごめんね、あの子、ちょっと変わってるっていうか
 人見知りするんだよね。」
「そうなんか・・・・」
会話が止まる。
矢口が手帳を鞄に戻す音。
わずかな吐息まで聞こえる。
しゃべりだしたのは、中澤
「あの子に、ここに何しに来てんだ言われたわ」
「うーん・・・・・・」
「ただ謝りたかっただけやねんけどなぁ・・・・・・」
「人には色々と都合があるってもんだよ
 それよりさ、矢口にお昼ご飯おごってー」
その言葉の中の一瞬で、
全てを見通せるガラスのような冷たい目から
少し身を乗り出して、愛玩を待つ
まるで子犬のような顔に変わってしまった。
188L.O.D:02/01/10 16:13 ID:vnWnPief
それが、市井の言葉や境遇にかぶさった。
何しに来てるの。
そこは、ゲームセンター。
ゲームをするところ
そして、閉息した空間。
学校にも行かず、何もせず、バイトもせず
ゲームに明け暮れる人達。
こんな時代にとあの子は言った。
感じてる息苦しさ。
彼女はそれをゲームで晴らしてたんだ。
彼女の中でここは大事な場所。
日々、生きていて
嫌な事はここで晴らす
極個人的な行為をする場所。
中澤はそんな場所に踏み込んでしまったのだ。
「お姉さん?」
「ん?」
「泣いてるよ、、、、?」
矢口が純白のハンカチを差し出してくれた。
気付かなかった。
いつの間にか泣いていた。
心が揺さぶられる。
そして、突き刺さる。
あの子の言葉はそんなに重かったのだ。
気付かされた。
自分が引かれたのは、市井自身じゃない。
Wingsというあの場所なんだ。
会社と家を往復する生活。
上司のセクハラ。
お酒でごまかして、吐いて、
吐き出してた鬱憤。
彼氏の一つもいれば、違っただろうに
うまい事行かなくて
すさんだ心が引き付けられてた。
「矢口はなんでいっつもあそこにおるん?」
「なんでだろうね?」
矢口の携帯が鳴る。
「もしもし?あー、なっち?
 うん、近くにいるよー、マック
 あ、見えた見えた。」
こないだも一緒にいた子が走ってくるのが見える。
中澤はバッグを開いて、財布を取り出し、
テーブルに千円置く。
「これでなんか食べ」
「あれ?お姉さんは?」
「仕事戻らなあかんわ」
入れ違いに訛ってる子も来た。
会釈して、店を出ると
タバコに火をつけた。
いつにも増して
うまくないタバコだった。
189L.O.D:02/01/10 16:48 ID:vnWnPief

平家の誘いを断って
またWingsに足を伸ばすと
訛ってる子が踊ってた。
たどたどしくも踊れてはいた。
ゲームが終わったらしく
タオルで汗を拭きながら
降りてきて
中澤を見つけた。
「こんばんはー」
「こんばんは」
「やりません?」
「これを?」
やった事がなかった。
いっつもいっぱい人がいて
それになんか4とか書いてるし
騒がしいし
やっぱ1から練習しないと
そんな人前で踊るなんてなどと考えてたが
訛ってる子は、いーからいーからとか言いながら
背中を押す。
勝手にお金を入れられ
曲の選択も勝手にされた。
「こ、これ踏めばええん?」
「そうそう。画面がスクロールしてくから
 矢印がピッタリ合うように踏めばいいのっ」
どこかで聴いた事があるディスコサウンド。
見よう見まね。
タイミングを合わせて
踏んでみる。
ゲームの中の歓声は少しずつ大きくなってる気がした。
必死だった。
踏む事だけに頭が行っていた。
190L.O.D:02/01/10 16:48 ID:vnWnPief
「わぁーっ!」
訛ってる子が声をあげる。
Bランク。
悪くはないって事か。
「うまいうまい。
 お姉さん、初めてなんでしょ?」
「おぅ」
「これはスジがいいっしょやぁー」
「あー邪魔やっ!持ってて!」
ヒールを預けて、次の曲に挑戦。
これはなかなかハマるかもしれない。
夢中になって、何曲か挑戦したところで
ゲームオーバーになってしまい
中澤はベンチに倒れ込んだ。
「ご苦労様ー」
彼女が買ってきてくれたスポーツ飲料がおいしかった。
「おもろいな、あのゲーム」
「でしょー、なっちもね、最初ヘタだったんだけど
 矢口がね、教えてくれたんだぁー」
「自分、なっちって言うん?」
「うん、安倍なつみ。」
「うちは中澤裕子」
「裕ちゃんて呼んでいい?」
暖かい笑みを浮かべる女の子だ。
暗くてうるさいこの世界に不似合いなぐらい暖かい。
「ええよ」
ゲームのエディット音が聞こえて
中澤は機体を見た。
水色のパーカーにスリムのパンツルック。
華奢な身体がすごく目立った。
「camiさん、、、、」
つぶやいた声が聞こえたのか
彼女は振り向いた。
一瞬、中澤は怖かった。
侮蔑の視線を向けられるのではないかと
怯えてしまった。
安倍が自然と手を握ってくれた。
191L.O.D:02/01/10 16:49 ID:vnWnPief
「なっちの知り合いなの?」
騒音の中でもよく聞こえる声。
「友達、、かな?」
安倍はそう言って、中澤を見る。
「ふーん」
市井は興味なさげにゲームへと戻ってく。
なんともリアクションがしづらかったが
そんな状況をブチ壊したのは矢口だった。
ドタドタと走り込んできて
市井の隣のDDRの機体に飛び乗った。
「一緒にやろっ」
「O.K」
トランス系の打ち込みサウンド。
B.P.M200の世界。
ちゃんとそこにノッて
完璧に踊ってみせる。
まるでプロのダンサーのように息がピッタリあってて
中澤は息を飲んだ。
1曲終わったところで
思わず拍手してた。
「おっ、ありがとぉう」
手を上げて、それに答えてる矢口に対し
市井は少し笑ってた。
2人のプレイは時に機械のごとく
正確に刻まれ、最高得点を叩き出していた。
「いやぁー、すごいねぇ」
やっぱり安倍は訛っていて
抱きついてきた矢口を迎える。
汗を処理して、次のゲームに向かおうとしてた市井に
声をかけようかためらってると
矢口が大きな声でこう言った。
「紗耶香!裕ちゃんがご飯おごるってさ!!」
「はぁ?」
うるさい中でも声が通じたらしく、
市井はしばらく考える様子だったが
手で丸を作る。
やってきた紗耶香の鞄を
矢口が取り上げ
先に歩いてく。
苦笑すると、市井と目があった。
市井も笑ってた。
「そだ、ゴチになります」
「ええねんええねん」
中澤はそう答え、歩き出す。
気持ちがスッキリした。
4人は一緒にWingsを出た。

其の二 終了
192トロピカ〜ル名無して〜る:02/01/11 02:22 ID:oWtnJtIi
天才ゲーマーいちーちゃんカッケー(w

其の三は誰が主人公かな…
193L.O.D:02/01/12 05:06 ID:Qo8Y58hp
今日1日1行も書けないまま、こんな時間やわ、、、
194アルマーニ濱口 ◆2ggkL5EU :02/01/12 05:59 ID:f/9RKM6/
>>193
HPかわってたね〜

創作はたいへんだから、ごゆっくり〜
俺の書いた小説は、速攻DAT逝きしちゃったよ(泣)
195旧♪:02/01/13 04:08 ID:OJveggIW
>作者
大丈夫?病気でなければよいが……
それともスランプかな?
スランプがあるのは一流の証拠らしいから(w

たまには自分のために時間を使ってちょうだい。
保全はしとくから(w
196L.O.D:02/01/13 10:47 ID:1hb18Ur3
左目がものもらいになって、焦点合わないから
長時間パソコンに向かうのが辛いのれす・・・・・・
197名無し娘。:02/01/13 16:22 ID:QnzVskX+
>>L.O.D

姐ちゃむ( ● ´ ー ` ● )ありがとう。
198トロピカ〜ル名無して〜る:02/01/13 22:46 ID:WWUzUZt1
>>196
無理せんとしっかり療養しましょう…読者はいつまでも待ってるからさっ
199ぼの ◆BONOl.Ok :02/01/13 23:13 ID:vzDiyjAb
>>198

もちろん俺もその一人ですから(w
200L.O.D:02/01/14 01:02 ID:HT8S5YiL
ちょっと隙間仕事の宣伝で申し訳ないが
出入りさせてもらってるこれが5期新メンです。の副管理人と
共同作業というか、俺はHTMLの書き出ししかしてないんですが
ヲタへの質問状という事で、作ってみました。
もしよろしければ、答えてやってください。

http://www.geocities.co.jp/Hollywood-Screen/3853/
201アルマーニ濱口 ◆2ggkL5EU :02/01/14 02:07 ID:nhm4788q
>>200
答えました、、、が、、、
質問多すぎですw
202アルマーニ濱口 ◆2ggkL5EU :02/01/15 01:10 ID:wVvwOppL
保全
回答コナンは間違えw
回答ルパンだねw
203L.O.D:02/01/15 23:13 ID:P2h19N6M
其の三 ロック少女2人。

「おぅ、明日香ちゃん」
「ちぃーっす」
煉瓦調の階段を降りていくと、長髪の男がチケットを切ってる。
ニコやかな笑顔を常連のその少女に向けた。
木製の扉を開けるともう人がごった返してて
前には行けない状態。
ライブ開始10分前。
明日香はカウンターに行って
PAを兼任してるマスターに声をかけた。
「こんばんは」
「おぅ。コーラ?」
「あとでいいです」
「楽しんでいってな」
「はい」
ステージ上の照明が落ちて
真っ暗になった。
横幅10メートルもないであろう小さなステージ。
だけど、その上に立つ奴はみんな真剣。
演奏してる人達の緊張感が大好きだった。
そして、それを乗り越えた時の
爆発と爽快感はもっと好きだった。
昔から音楽は大好きだったが
正直、こんなライブハウスに出入りするほどまで
ハマると思わなかった。
今は強く思う。
私もあのステージの上に立ちたい。
204L.O.D:02/01/15 23:14 ID:P2h19N6M
高校の昼休み時間。
校庭の一角の木陰のベンチで
昼食も終え
ヘッドフォンをかけて
眠っていた。
日射しの中は熱くてたまらないが
ここは風が気持ち良いくらいで
昼寝にはちょうどよい。
コロコロとボールが転がってくる音が聞こえて
明日香は顔を上げた。
同じクラスの男子が制服のまま
サッカーをやっていた。
「ごめん、寝てた?」
「いや、、、」
ヘッドフォンをはずしながら、座り直す。
「いっつもかけてるけど、、、、
 なに、聞いてるの?」
「エレカシ」
「、、、、エレファント、、、」
「そう」
「モーニング娘。とか聞かないの?」
「全然」
「ふーん」
彼は物珍しそうな顔をしてる。
明日香は逆に顔色一つ変えない。
「今度、MD貸して?」
「いいよ」
「サンキュ」
なにげないやり取り。
明日香はまたヘッドフォンをかけて横になる。
少しだけ漏れ出す柔らかく暖かいボーカル。
時に激しく、時に切なく吠える。
明日香にとって、その声は
たまらなく心地よかった。
感情的で、歌を歌うなら、こういうボーカルになりたいと思う。
あのステージに立つためには
何をすればいいのだろう。
学ぶ事は嫌いじゃない。
ただ授業中、お菓子を食べたり
携帯電話をいじってる今の授業風景には
かなり飽き飽きしていたが。
205L.O.D:02/01/15 23:15 ID:P2h19N6M
そんなある日
ライブハウスに行くと
時間を間違えたらしく
まだバンドのメンバーぐらいしか
入っていなかった。
マスタ−が明日香を見つけ
豪快に笑いながら近付いてくる。
「今日は一番乗りだったなぁー」
「はい」
「まだ音合わせしてるバンドもあるから
 見てくかい?」
サッと椅子を差し出され
おじぎして、座らせてもらう。
1フレーズだけ弾いて
アンプとギターの調子を見る
ギタリストや、ベーシスト。
なにやら談笑してるドラムとボーカル。
このライブハウスの一番の注目株のバンド。
明日香はチラリとステージの脇を見た。
女の人が1人。
耳や鼻にピアスをつけた金髪の怖そうな人。
確かドラムの人の彼女だ。
バンドが演奏を始めると
客席の方に降りてきて
ジッと見ていた。
一通りの曲をやったところで
その人に話し掛けらて
明日香はビックリしてしまう。
「どう?」
「へ?」
「うちのバンド」
「かっこいいっすよね」
「いっつもいるよね?」
「はい」
「私、彩」
「福田です」
「下の名前は?」
「明日香ですけど、、、」
「うっし、明日香ね。覚えた。」
会話の端々で彼女が浮かべる笑顔は
怖そうな外見とは反対に
なんとも愛らしい女の笑顔だった。
206L.O.D:02/01/15 23:15 ID:P2h19N6M
「衣装をね、私が作ってるんだ」
「へぇーっ」
強い照明の中で光り輝くレザーのジャケット。
「バンド好き?」
「バンドっていうか、音楽が好きで」
「なに、聞くの?」
「エレカシ」
「渋いね」
「そうですかね」
「いい声してるよね」
「はいっ」
耐えない音楽の話題。
あともう少しでこの空間は
たくさんの人で埋め尽され
声を上げ、飛び跳ね
うねりを生む。
その前に穏やかな時間と
優しい歌。
それに楽しい会話。
先生の抑揚のない声と
黒板にチョークが走る音しかしない
あの場所とは違う充実感・・・・・・
40分後、熱気と汗の匂いでクラクラしそうになるぐらい
ライブは盛り上がっていて
明日香は前線から離脱して
カウンターでジュースを飲みながら
ハンドタオルで汗を拭っていると
近付いてくる影。
「明日香ちゃんっ」
「あ、彩さん」
「うちら、抜け出して打ち上げするから、おいで」
「え」
なにか言おうとする前に手首を掴まれて
たったか外に出てきてしまう。
そこで待ってたのは、バンドのメンバー達。
「うーっし!ご飯食いに行くぞーーー!!」
「っていうか、飲む!」
「お、常連さん」
「よろしこ、明日香ちゃん」
「あ、ども、、、、」
「じゃ、行くよー」
夜の街に繰り出してく。
ライブを終えたばかりで
すっごいテンションの高いメンバーに囲まれ
公衆の面前でイチャつく彩とドラマーを見て
明日香はなぜだか可笑しくて、笑っていた。
207L.O.D:02/01/15 23:19 ID:P2h19N6M
ヒサブリ更新。
えぇっと、ドラマーは豚ですか?などのつっこみは禁止です(w)
208レク:02/01/16 00:12 ID:2oTFBDgk
申し訳ないけどダメだし
206の耐えない→絶えない
ではないでしょうか?
209L.O.D:02/01/16 00:15 ID:hMeR3JN8
げふん・・・・・・
210名無し募集中。。。:02/01/16 02:30 ID:d1DIKDzW
これエロないの?
211トロピカ〜ル名無して〜る:02/01/16 02:44 ID:bNpyF6OF
明日香とあやっぺね、其の三は。
「Wings」にたむろす連中とどうからんでいくのか楽しみだぁね…

>>210
なんでもかんでもエロを求めるもんじゃありません(w
212旧♪:02/01/16 06:14 ID:WaQsLvnL
お、復活おめ>作者。無理せんとマイペースでどうぞ。
設定の妙にヤラレタ感あり、お見事。

……そういや、エロ、ないね(w
213L.O.D:02/01/16 11:30 ID:ag1/eO6G
みんなでご飯を食べて
カラオケに行って・・・・・・
明日香は普段こうしてたくさんの人と遊ぶ事を好まない。
気の合う友達と部屋の中でのんびりしてる方が好きだ。
買い物に行く時は大概、1人。
ライブを見て興奮してたせいか
ちょっとした事がおもしろくて
とにかく笑ってた気がする。
どっか遊ぶところはないかと
ゾロゾロと歩いてると
メンバーがゲームセンターを見つけて
はしゃぎだす。
向かったのは、ギターとかドラムのゲーム。
よ〜し、お兄ちゃんが本物の技を見せちゃうぞーとか言ってる。
(あぁあ、マイスティックとか出しちゃったよ、、、、)
ギタリストと一度視線を合わせ
プレイを始めると、それは見事なプレイぶり
スティックは回すわ
めちゃめちゃ腰を落として、まったく見ないで弾き出すわ
酔っぱらってるにも関わらず
パーフェクトの連発。
どんだけやり込んでるのか分かりはしない。
戻ってきたドラマーさんに彩が怒ってる。
「あんた、なんでそんなうまいの!?」
「まぁなー」
「ったく、しょうもないことに金使ってー」
「彩もやってみれよ」
「私ー?」
とかなんだとか言いながら
サイフを開いて
ドラムの前に座る彩。
スティックは貸してくれなかったらしく
置いてあるやつを使う。
まぁ、それなりに叩けていて次々とクリアしてく。
明日香はフと隣を見た。
214L.O.D:02/01/16 11:31 ID:ag1/eO6G
この機体を囲むギャラリーの中に
意外な人物を見つける。
入学式の時からなんか変わってたあの子。
夏休みが終わってもそのまま来なくて
学校を辞めてしまったって聞いた。
2人とも人見知りする性格からか
あまり周りに馴染まなかったが
何度か話した事があった。
メンバーの後ろを通り
人波をかき分け、辿り着いた。
「市井さんだよね?」
「はぁ」
「私、同じ高校だった福田」
「・・・・・・」
「覚えて、、ないか?」
「同じクラスだっけ、、?」
「うん」
「そっかぁ、、、」
「元気だった?」
「まぁ、そこそこに」
「そか、よかった。じゃ、また」
「んじゃ」
ちょっと悲しい。
覚えてもらってなかった。
ちょっとやせたっぽい。
首をグルグルっと回して
ギター型のコントローラーを構える後ろ姿。
「どした?」
彩に声をかけられる。
「高校一緒の子に会ったんだ」
「ふーん」
それ以上は何も言わないし、聞いてこない。
見えない壁。
入ってはいけない領域。
だれしもそういう物を持っているし
そういう物の存在を知らない者は
嫌わらていく。
息苦しい世界。
明日香はWingsを後にする。
215L.O.D:02/01/16 11:43 ID:ag1/eO6G
河川敷。
日射しが強い。
ヘッドフォンかけっぱなしで
草むらで横になってる。
幼い頃からなにかあるとここにいた。
なぜだろう、落ち着かない。
別にあんな怒られるの
いつもの事だし
なにげない事。
なのに、今日は酷く辛い。
口に出して歌ってみる。
こんな時に限って悲しい歌。
溜息を一つつく。
こんな時はどうすればいいんだろう。
ゴロンと寝返りを打ってみる。
いい考えは浮かばない。

なにげなくあのゲームセンターにも寄ってみた。
慣れない挌闘ゲームをやったり
1人レースゲームをやる。
DDRを見ると
同じように学校をサボったらしき
女子高生がジャージ姿で踊ってた。
テーブルと椅子を見つけ
そこでヘッドフォンをかけたまま
顔を俯せた。
誰も干渉してこない空間。
216L.O.D:02/01/16 11:44 ID:ag1/eO6G
横にあった棚から何かを取り出す音。
チラっと顔を上げてみると
市井だった。
「あ」
「ごめん、、起こした?」
「いや、寝てなかったし」
別なテーブルに座ろうとした市井を呼び止める声。
「こっち、座らない?」
「・・・・・・」
黙って、ノートを開く。
ここにやってきたゲーム好きの人や
常連さんがラクガキして遊んだり
交流するためのノートらしい。
vol.15と書かれていた。
「今日さぁ、数学の菅井がキレてさ
 私まで標的にされたよ」
「あいつ、うるさいもんね」
「みんな寝てて、私当てられてさ
 問題解けたんだよ。
 だから、怒られてても知らないフリして
 窓の外見てたら、怒られた」
「へぇ」
彼女は興味なさげに絵を書き出す。
「ムカついたからサボっちゃった」
「・・・・・・」
ザクザクッと頭や腕のラインを生み出していく。
明日香は立ち上がり、自販機でオレンジジュースを買う。
席に戻ってくると、市井の方から口を開いた。
「いいんじゃない」
「?」
「人生なんて誰のためのもんでもないんだし」
自分の鞄から何色ものペンを取り出して
描いた絵に色をつけてく。
「自分が楽しければいいじゃん」
ラフな絵。
だけど、まるで今にも動きだしそうな絵。
思い出した。
最初に市井に声をかけたのは
彼女がノートに描いた絵を見た時だ。
『うまいね』って言ったら
少しだけ笑ってくれたんだ。
「夜、またおいで」
「夜、、、?」
「もっと楽しいよ」
そう言う市井の顔は笑顔。
あまり遅くまで出歩いた事なんてない。
市井はそんな事も知ってる。
彼女なりの優しさ?
「ね、、、ねぇ、、、」
「ん?」
「夜まで一緒にいちゃダメかな?」
1人で時間をつぶせるほど
明日香は遊びを知らない。
きっと今この目の前にいる市井なら
人生は自分が楽しめればいいと言い切り
学校もやめてしまって
本当に自由の中にいそうな彼女なら
このくだらない憂鬱を吹っ飛ばす方法を
知ってるような気がした。
「いいよ」
市井は手を伸ばす。
明日香はそれを握り返す。
217L.O.D:02/01/16 11:50 ID:ag1/eO6G
それは、お昼休み前の一番ダルい時間の事だった
みんな寝てた。
明日香はノートを取るフリをして
詩を書いていた。
数学の時間。
興味のない公式と
先生が勝手に解いていく問題達が
黒板の上に踊る。
誰もノートに書き写してないのに
「もういいかー」とか言ってる。
さすがに我慢も限界だったのか
先生は問題を3問書いて
まず明日香に当てた。
「これ、答えろ」
「・・・・・・」
イライラしてるのか高圧的な口調。
明日香は抑えて前に出ると
解いてみせる。
「よし、次、後ろ」
男子は立ち上がって
「分かりませーん」
と、大きな声で答える。
「なにが分からないだっ!お前寝てただろ!
 寝てるから分かんねぇんだよ!!
 大体、なんだ、みんなして寝やがって!」
口汚くののしられる。
明日香は窓の外を見てた。
自分は解けたんだから関係ない。
「おい、福田!こっち見ろ!!」
「・・・・・・」
なんだっていうんだ。
「お前も解けたからっていい気になるなよ!
 さっきからこそこそなにやってんだ、あぁ!?」
(いい気になってるのは自分じゃん)
生徒より格上だと思って
上から物を言う先生。
そんな先生を適当にあしらう皆。
くだらない毎日の循環。
「はぁ、、、すいません」
小声でつぶやく。
お腹が痛い。
授業が終わったら、保健室に行って
さっさと帰ろう。
まんまと帰宅許可が降りて
河川敷へと向かう足。
学校に行く意味を考えてみる。
やっぱり意味なんてない。
「なにやってんだろ・・・・・・」
218L.O.D:02/01/16 11:52 ID:ag1/eO6G
エロは、、、、あるかなぁ、、、、
219旧♪:02/01/16 17:23 ID:WaQsLvnL
>作者
エロ、ひつような、ばあいだけで、いいよ……

音ゲーからませてくるとは……「ドラム」「ギター」とくれば「キー(略」
この板自体、音ゲーに関する香りをほとんど感じなかったんでね個人的に。
描写も「にわか」じゃないしね、とか断定できる自分もアレだが(w
220 ◆KOSINeo. :02/01/16 17:49 ID:e6o2YIdf
>作者さん
小説総合スレッドで紹介&更新情報掲載しても良いですか?
http://tv.2ch.net/test/read.cgi/ainotane/1000493808/
一応、再確認させていただきます。
221L.O.D:02/01/16 20:37 ID:3Gi3pIxI
>>219
今のゲーセンで音ゲーがない所の方がめずらしいじゃないすか(w
実はあんまりゲームセンターとおぼしき場所には出入りしないんですけどね。

>>220
どんどん紹介したってくださいませ。
222トロピカ〜ル名無して〜る:02/01/17 02:45 ID:iV2CqfOw
>>L.O.D
>>217>>215の前に入るはずだったのでは。それとも意図した構成なのかな?

それはともかく学校のエピソードはいかにも明日香っぽくて良いですな…
223L.O.D:02/01/17 22:55 ID:dgnSJn6n
夜は昼と姿を変える。
それでいて、人は逆に溢れ
怪しい雰囲気を醸し出す。
ネオンが光る。
そんな街角。
Wingsに戻ってきた2人。
明日香は足を止める。
「明日香?」
4時間以上しゃべってて
やっと明日香って呼んでもらうのに成功したわけだが
市井が振り返る。
明日香の目に映るのは
ドラムマニアの前で一心不乱になってる
彩の姿。
「彩さん、なにしてるの・・・・・・?」
ちょうどステージの合間で
こっちを見た彩の額からは汗が流れ
心地よさそうな顔をしてた。
「ハマっちゃってさぁ、結構おもしろいんだよねぇ」
彩の隣に立ってる女の人は市井と知り合いらしく
馴れ馴れしく、頭を撫でてきた。
「彩の知り合いなん?」
「福田です」
市井がつけくわえるように説明する。
明日香はその横顔を見てた。
人見知りの激しい彼女が浮かべた表情は柔らかい。
「明日香。高校の時の友達なんだ」
「そか、よろしゅーな。うち、裕子。
 彩とはここで会って、仲良くなったんや」
おそらく勤めてる風の彼女は
またわしゃわしゃと頭を撫でると
手を振った。
224L.O.D:02/01/17 22:56 ID:dgnSJn6n
市井が店の奥へ行くのについていく。
「あの人、どういう人?」
「OLさんで、彼氏募集中。
 三度の飯よりお酒が大好き。
 で、なんか私、好かれた。」
「紗耶香が?」
「最初、男と間違われててさー」
「ははははっ、胸ないもんね」
「るせーやい」
椅子に座って、しゃべりながら
市井の描く絵を見てる。
すごく楽しい、というわけでもないし
あのライブハウスの興奮もない。
けど、このゆったりとした感じは悪くない。
「さーーーーーやかーーーーーーーー」
「来た来た」
ノートを閉じて、視線を向けた先には
金髪のちっこい女子高生に
ロングスカートの田舎くさい女の子。
「ギュー」
「はいはい、今日はなにで勝負する?」
「やぐたんねぇー」
「なんでそんなお子様っぽいんだよ」
「きゃはははははは」
「・・・・・・」
手をつないで、先に行ってしまうちっこいのと、市井。
明日香は田舎っぽい女の子と見つめ合う。
というか、見つめ合いたくはないのだが
めちゃめちゃ熱い視線が送られてるのは気のせいですか?
「なん、、、、ですか?」
「何歳かなーって?」
「貴方は?」
「なっち?なっちは、19」
(19になって、なっちってどうなんだよ)
「私、16っす」
「高校1年生?」
「はい」
「ふーん」
ニマニマァと笑う。
(なんなんだ、この女)
明日香の顔は引きつっていた・・・・・・

其の三 終わり
225名無し娘。:02/01/18 20:45 ID:OUCbDHYA
保全
226旧♪:02/01/19 22:58 ID:bSaMOiwU
いちーちゃんの口数、増えてきたなぁ
溶けてきたってことか……
227L.O.D:02/01/20 03:17 ID:o5TZlDA7
現在、密かに企画進行中。
・・・・・・小説、1行も書けてませんが(死)
228トロピカ〜ル名無して〜る:02/01/20 14:45 ID:7Q1DvtGE
いちやぐ、あすなち、イイですな…

>>L.O.D
極秘企画も楽しみですが小説も書いてね(w
229名無しさん:02/01/21 08:17 ID:4hEzLwkU
保全
230L.O.D:02/01/22 00:47 ID:kyeY2+LB
途中まで書いてたものを其の五にしたくて
新たに書き直し中、もうちょっと待ってくらさい(泣)
231アルマーニ濱口 ◆HAMAscXY :02/01/22 02:38 ID:3iL3Bqbf
ホゼ
232レク:02/01/22 23:48 ID:1vRriIQp
保全sage
233L.O.D:02/01/23 00:07 ID:TSinCnsn
其の四 光ない場所

体育の時間
膝上でカットしたジャージ。
矢口真里はなにやら怒鳴ってる教師の話など
まったく聞いてなかった。
「やぐっちゃん、次!」
「へ?」
「ほらっ」
どうやら、跳び箱の順番が来てたらしい。
(だるぅ)
やる気なーく走って飛んで
跳び箱の上に着地。
「お前なぁ」
教師の開口一番。
矢口は反対に言ってやる。
「やる気ないっすから」
「・・・・・・」
呆気にとられて何も言えない。
よくこんな6時間目の体育まで
学校にいたな、と自分で誉めたいぐらいなのだが
時計を見ると、あと一回飛べば
授業は終わる感じだ。
(帰り、マックでも寄ってこうかな・・・・・・)
234L.O.D:02/01/23 00:07 ID:TSinCnsn
くだらない会話を横目にさっさと着替え
担任は体育の後という事もあり
連絡事項だけ述べて
さっさといなくなった。
仲のいい人間は皆、バイトだとかで
付き合いが悪い。
こんな時はあそこに行くのが一番だ。
ゲームセンターWings。
その前に近くのマックに行く。
新人のバイトの子がいて
すごく綺麗だが声が高いし
ぶりっこでムカつく。
店内にいる男子高校生の80%は
この子目当てらしく
それもまたムカつく。
奥には、よく見るベテランの女の人もいるが
この人はどうも取っ付きにくい。
適当に買って、お持ち帰りにする。
Wingsへは歩いて、数秒。
信号を挟んで向かいのカフェもなかなか好きだが
あそこはお金のある時か
中澤がおごってくれる時にご飯を食べに行く。
今日もうるさい店内。
まっすぐ奥の方のテーブルに行くと
案の定、市井と明日香がいた。
235L.O.D:02/01/23 00:08 ID:TSinCnsn
「おはよ」
市井はちらっと視線をこっちに向ける。
「まぁ、もう昼過ぎてんだけどね」
明日香が冷静に突っ込むと
ニヤリと笑って返してた。
「紗耶香、ご飯食べたの?」
「いや」
「ちゃんと食べろよ」
「ゲームしてたらさぁ、あんま減らないし」
「まったく、、、はい、ハンバーガー」
「誰かピクルス食って、、、」
「まりっぺにあげなよ」
「なんでだよぉー、明日香食えよ」
「野菜食わないと大きくならないぞ」
「自分だって小さいじゃん!」
そんなやりとりを続ける。
ハンバーガーとポテトで腹こしらえしたら
テーブルに腕で枕を作り、まずはお昼寝。
「よく寝れるよね」
「うるさくないのかな?」
本当は寝てなくて
目をつぶってるだけなんだけど
なんか落ち着く。
爆音で聞こえる音ゲーの音。
それに混じる挌闘ゲームの音。
UFOキャッチャーのBGM。
こんなにうるさいのに、店が流してる有線。
普通の人が聞けば、雑音なのかも知れないけど
矢口にとってみれば
この音はいつの間にか
すごく落ち着く音になっていた。
複雑に沸き起こる思考が目をつぶる事によって
はっきりと見えるようになる気がする。
236L.O.D:02/01/23 00:09 ID:TSinCnsn
「ねぇねぇ」
男の声。
「ヒマ?」
「あー、ヒマっちゃぁーヒマ」
「一緒にカラオケ行かない?」
ナンパ、日常茶飯事。
「うち、1人だよ」
「OK。これから適当に声かけよっかなーって」
「私も適当かよ!」
「いや、寝顔がかわいかったから」
「キャハハハハハハ、赤くなんなよ!」
矢口は髪をちょこちょこっと直して
立ち上がる。
真っ赤なベースボールキャップに紺のパーカー。
顔は悪く無い。
どうせヒマなんだし、付き合ってやるか。
そんな軽い気持ち。
その程度の付き合い。
それが、日常茶飯事。
市井と明日香はそれを目で追う。
別に気をつけろとかは言わない。
当たり前の事だから。
「あ、あのっ!」
「?」
市井は話しかけられて、顔をあげた。
「camiさんですよね?」
「そうっすけど」
「俺、remです」
「あーっ!!こないだカプコンvsSNKで
 ボコボコにしたでしょ!?」
「そうですー」
「あれは悔しかったなぁ」
明日香は市井の横顔を見ながら思いだしてた。
こないだ中澤の酒に付き合わされた時だ。
ちょうどみんないなくて
彩と3人、居酒屋に連れてかれた。
237L.O.D:02/01/23 00:10 ID:TSinCnsn
「明日香には感謝してるんやで」
「はぁ?」
「紗耶香がなぁ、よう笑うんよ」
「、、、」
「最初、なんか『・・・・・・(市井のまね)』って感じでな」
「それ、裕ちゃんが男の子と間違えてたからでしょー」
「それにしても、ほんま別人か思うぐらい
 冷たい顔してたんやて」
「ふーん」
「やっぱなぁ、好きな人が笑ってるのはええわなぁ」
「、、、まりっぺはどうなのよ」
彩が言うと、笑顔になって即答だった。
「愛してるでぇええ!!」
「立つな立つな!」
「すみません!申し訳ありません!!」
あれは恥ずかしかったが。
夜を迎えれば、街はもっと華やかになる。
人も増える。
このWingsにも人が増える。
なぜみんなここに来るのだろう。
なんのために来るのだろう。
自分の事だけどまったく答えは見つからなくて
明日香は閉口してしまった。
238L.O.D:02/01/23 00:13 ID:TSinCnsn
『ひさしぶり更新』
すみませんねぇ、、、ちょっと色々忙しかったもんで
企画の方も隙間作業なんですが、こっちは集中しないと
書けないからかおろそかになってしまいました。
239旧♪:02/01/23 00:31 ID:MOvTfXSv
しばらく(といっても中5日だけど)読めないと
けっこう新鮮なんだなぁ、なんて思ったり。

逢えない時間がアイを育てるっていうしね(w
240トロピカ〜ル名無して〜る:02/01/24 00:41 ID:KUqq/JUo
おっとヒサブリの更新ですねん♪
なんか今回の分読んでまたあややの「オシャレ!」をイメージしてしまった…

裏原宿あたりで出会った子と
適当に騒いでBYE-BYE
あだ名しか知らない関係


まあ保全はしときますから更新はマイペースでよろしいかと>L.O.D
241L.O.D:02/01/24 00:48 ID:OMTx8kQU
サンキューです。やっとこさ、お仕事が一段落ですので
ちょこーっとペースアップしておきたいですね。
242レク:02/01/24 22:19 ID:vgcmvfar
無理しないようにです。
243L.O.D:02/01/25 00:14 ID:fvF7gtxe
「矢口、おらんの?」
くわえタバコでやってきた彼女は
ハンドバッグを振り回してる。
学生の頃の様子が思い浮かぶ。
「なんか男の子と遊びに行っちゃったよ」
「なっちも一緒なん?」
「いたところでなにも変わらないと思うんだけど」
「、、、明日香」
「ごっつビックリしたわ」
「ところで、なんで安倍さんはいつも私を見てるんだろ?」
「さぁ」
「好きなんちゃうー?」
などと言いながら、
明日香を抱き締める中澤。
逃れようと暴れる明日香。
我関せずでゲームを始めた紗耶香。
しばらくすると、2人はギャーギャー騒ぎながら
離れていったと思ったら
ガンシューティングゲームを始めてる。
対戦者がいなくて、このままじゃクリアしてしまいそうな感じ。
100円無駄になる。
「ハァ、、、」
突然、躍り出るチャレンジャーの文字。
紗耶香はそっと向かいの台を覗き込む。
「おっす」
彩がいた。
244L.O.D:02/01/25 00:15 ID:fvF7gtxe
「負けないっすよ」
「こっちこそ」
ま、結果は言うまでもない。
彩は缶コーヒー片手にこちら側に回り込んでくる。
「どうした、紗耶香?」
「へ?」
「暗いぞー」
「いやぁ、元々こういう性格だし」
「悩みでもあるのかい?」
悩みが尽きた事なんてない。
だけど、紗耶香はなぜか少し
ニヤリと口元に笑みを浮かべていた。
「さっき彩っぺが乱入してこなかったら
 クリアしちゃって、100円が無駄になっちゃうとこだったんだ。」
「ふーん」
「なんかさ、私の人生ってそんなもんなんかなって思った。」
「どういう事?」
「ダラダラと生かされてる感じ。
 毎日、こんなとこにいても何も言われないし
 いつ帰っても怒らないし、やりたい事もないし」
「じゃぁ、死んでみっか?」
彩の言葉は速球で届いてくる。
「今の自分の生活に満足出来なきゃ、
 外に出てみりゃいいさ。
 道端の石ころがおもしろいと思えるかも知れないじゃん」
「・・・・・・」
「飲む?」
ほんの少し残ってたコーヒー。
受け取り、飲み干す。
「紗耶香、あんたにとってここはなんだい?」
「・・・・休む場所」
「いつまでも休んでるんじゃ、ダメだよ」
手をヒラリヒラリと振り
挑戦中のキーボードマニアに向かう彩の後ろ姿に
紗耶香は問う。
「彩っぺ!」
「ん?」
「彩っぺにとって、ここはなに!?」
「・・・・・ゲームセンター」
思い知らされる。
彼女はちょっと大人だった。
245L.O.D:02/01/25 00:34 ID:fvF7gtxe
中澤が携帯でしきりに誰かを誘ってる。
「なぁー、なっち、飲みにいこーやぁー」
「あの人、酔っぱらってる?」
「いや」
「裕ちゃん寂しーねぇん」
「気持ち悪いから、彩っぺどうにかしてよ」
「やだよー、絶対達悪いもん」
「頼むよ、姐悟ぉー」
市井と明日香が必死に頼むと
しょうがないという顔で動き出した途端
携帯は切れてしまった。
「やりぃー!」
「?」
「なっちが遊んでくれるってー!」
「はいはい、ようござんした。」
大学生呼び出して、一緒に遊ぶOLってどないやねん。
そんな一向のところにフラリと
矢口が帰ってきた。
「矢口っ!!」
「はぁー、、、」
いきなりの大きな溜息。
なにがあったかと心配する。
「どないしたん!?なんか変な事されたんか?」
中澤は目線を矢口のとこまで下げながら話す。
「変っていうか、キスされそうになって
 飲んでもいないのに出来るかっつーの」
「で、どうやって抜け出したの?」
「顔面殴って、逃げてきた」
「・・・・・・」
「あぁーあ、なんか喉乾いちゃった」
「裕ちゃんがおごったるからなぁー」
「マジ?やったぁ」
ほんとになんでもない様子で
歩いていってしまう矢口。
なんていうタフさ。
でも、それぐらいの根性が
この街には合ってるのかもしれない。
だって、この街は眠らない街・・・・・・

其の四 終了
246L.O.D:02/01/25 00:46 ID:fvF7gtxe
其の四 ガングロギャルと天才的美少女

「やった!」
「おぉ!!」
今までクリアした事なかったステージを高得点で
パスして、思わず矢口に抱きつく安倍。
「おー、すごいやん」
見てた中澤や彩も賞賛の拍手を送る。
「見て!福ちゃん!!」
「あぁ、はいはい」
対応に困って苦笑している明日香。
安倍はしっかりと両手を握りしめて、飛び跳ねてる。
「いやぁー、これもね、まりっぺのおか・・・・・・?」
矢口は分かち合った喜びはどこに
入り口の方を凝視してる。
「どしたん、矢口?」
みんなつられて、そっちを見る。
真っ黒な顔に白いアイメイクにリップのガングロギャル。
金髪の髪、アクセサリーをいっぱいつけて
めちゃめちゃ厚底で歩いてる。
「いいなぁ、ガングロ」
「ダメ!」
「あかん!!」
同時に叫んだのは、言うまでもなく安倍と中澤である。
「なんでさぁーー」
「あんな格好、お母さん泣くべさぁ・・・・・・」
「うちのかわいい矢口があんななってもうたら
 裕子生きてけない・・・・・・」
「知るかよ!」
矢口がたったか走っていってしまう。
しょぼんとする2人をあやすのは、彩の役目。
で、矢口の方はというと
247L.O.D:02/01/25 00:47 ID:fvF7gtxe
「はぁーーーい!」
「はぁーーい。」
「ちょーかわいいね、メイク!」
「マジ?あんがと。ちっちゃくて、かわいーね。」
「へへっ、うち、マリね」
「私、マキ」
「マキちゃんかぁー。
 プリクラ交換しないー?」
「いいよいいよー」
女子高生の名刺交換ってな具合で
見事ガングロギャルに接触を計った模様。
その様子を見ながら、福田は市井の隣に座る。
0コンマ数秒の世界で相手の攻撃を避けていく格闘技ゲーム。
「明日香もやってみたら?」
「なにが?」
「ガングロ」
「似合うわけないじゃん」
「ルーズですら履かないもんなぁ」
「そうだよ」
画面にWINNERの文字。

Wingsの近くのクラブの前には
マキのような格好の女の子と
それにピッタリのギャル男や
B-BOYの連中でごった返している。
マキも店前の石段に腰掛け
さっき矢口から貰ったプリクラを貼ったりする。
ミニスカートからは日焼けの太股が伸び
その奥のショーツもまさに見えんかの勢い。
手帳の表紙には、ジャニーズJr.の一番人気の子の写真。
タッキーが息子とまで呼ぶほど可愛がってる子で顔も似ている。
Jr.って年でもないのに、デビューできないで
少年らしさを失ってくるタッキーファンが
その子に移ってたりするから皮肉なもんだ。
248L.O.D:02/01/25 00:47 ID:fvF7gtxe
「遊ぼー?」
軽そうな男達。
「あー、ごめーん。待ち合わせなんだ」
「そっかぁ。よくいるの?」
「うん」
「すげぇかわいいよ」
「あんがと」
去っていく彼等。
メインストリートだからまだいい。
1本奥に入れば、売春なんて当たり前だ。
マキはガングロギャルの格好をしてるものの
身持ちはよくて、あまりあの類いの誘いには乗らない。
遠くから友達が来てるのが見える。
立ち上がり、お尻をほろう。
その足で近くのマックへ。
「いらっしゃいませー」
今日はよりによって怖そうなベテランの人。
なにが怖いって、笑顔が怖い。
無理に作ってる感じの若々しい声もなんかヤダ。
ハンバーガー4つ頼んで夜食は十分。
鞄の中にはピスタチオやら梅こんぶやらも入ってる。
フと店の奥に目をやった。
一角がすごいにぎやかで
その真中に座る子のかざした指は
マキの目に焼き付いた。
スラッと長い指。
顔もまるで人形のように綺麗だった。
その顔でくったくのない笑顔を浮かべてた。
(いいなぁ、美人は)
249L.O.D:02/01/25 00:51 ID:fvF7gtxe
『今夜も更新中。もう終わりだけど』
、、、、ガングロギャルと天才的美少女は其の五やね。
無意識にマックで勢揃いしたプッチモニってすごいなぁ
250トロピカ〜ル名無して〜る:02/01/25 02:26 ID:1Sryk19x
まだ出演してないのはチビスケ2人だけかな?
あー圭織も出てないか…

これからの展開も結末もどうなるんだか読めないな〜
251名無しさん:02/01/25 18:15 ID:zwP3t2U4
>250石川って出たっけか?
252ねえ、名乗って:02/01/25 19:15 ID:Ngr+4sBM
石川は声の高い店員の事では?
248の最後は飯田?吉澤?
253レク:02/01/25 19:19 ID:9mK7Rtf+
>>248の14行目:ほろう→はらう の間違いでは?
>>245の最終行:其の四→其の三 なのでは?
ダメだしするのも作品に愛があるからこそってことで(w
あと娘。小説保存庫に『We are・・・・・・』と『愛しい貴方へ』が作品として
登録されてました。読み返したら感動しました(涙
更新頑張ってください
254L.O.D:02/01/25 19:37 ID:a4VsF//r
>ほろう→払う
これに関してはね、意図的というか悩んだのですよ。
やっぱりほろうは方言なんだべか?
意味は払うと同じなのね。

あと、233-245までは其の四ですよ。

248の最後はごっちんです、、、
ここまで説明しなきゃいけないって
俺、ちゃんと書けてねぇなぁ、、、、
255レク:02/01/25 22:38 ID:9mK7Rtf+
でもそうすると
246で其の四ってかぶってる気がするのですが・・・
256レク:02/01/25 22:41 ID:9mK7Rtf+
やべぇよく読んでなかった(滝汗
255は気にしないでください(てか無視してください
257名無しさん:02/01/25 23:40 ID:zOKmyf7A
小説保存庫はどこにあるんですか?
258レク:02/01/26 00:52 ID:d/Kq2AO0
259トロピカ〜ル名無して〜る:02/01/26 04:33 ID:LhBm2cvk
>>254
「ほろう」とも言うと思いますよ
それともL.O.Dと同じ地方人なのだろうか(w
あと>>252が言ってるのは

>スラッと長い指。
>顔もまるで人形のように綺麗だった。
>その顔でくったくのない笑顔を浮かべてた。

この人物の事だと思われ
おいらは>>249を見てよすぃこだと判断しましたが…
260L.O.D:02/01/27 01:17 ID:xZB8rk9z
NHKホールはジャニヲタにとって聖地ともいえる。
週に何度か仕事があるし
ここの玄関は出待ちもしやすい事で有名である。
マキもいつものようにカメラ片手に待っていた。
「まだかなぁ、、、」
頭一つ上から聞こえる少し低い声。
普段なら同じジャニヲタだと思って
見向きもしないんだが、
その時だけは後ろを見た。
あの時、マックにいた美人だ。
「あ」
思わず声をあげてしまう。
「ん?」
恥ずかしくて真っ赤になっても
ガングロメイクじゃ分からない。
マキは少し俯いた。
その瞬間に他のファンの声援が一際大きくなる。
ゾロゾロと出てくるメンバー。
マキも一緒になって騒いでたが
チラチラとさっきの子を見てた。
細長い首を伸ばして人込みの先を覗いてるようだった。
お目当てのものを見たので帰る準備を始めるファン達。
歩いていく方向、乗る列車、降りる駅、向かう場所
なにからなにまで一緒だった。
前を歩く女の子の集団。
一際目立つ彼女はリーダー格というか
常に中心にいた。
261L.O.D:02/01/27 01:18 ID:xZB8rk9z
Wingsの前のマック。
今日の店員は地味で背のちっちゃい女の子。
最近入ったばかりの新米で
その前からこの辺をフラついてるのを見た事がある。
隣を見る。
声の高いブリっこの店員を
彼女は口説いてた。
(あんた、女だろ)
「どう?遊びに行かない?」
「や、困りますー」
「うーん、そっかぁ」
そう言って、まるで物色するように周りを見渡した彼女と
目が合ってしまった。
「1人?」
「・・・・・・うん」
「遊びに行かない?」
「え、だって、お友達、、、」
「あの子達はここでバイバイだし」
「ふーん」
「こないだもこの店にいたよね?」
「・・・・・・」
「私、最近、ここらで遊ぶようになったから
 よく分からないんだよねっ」
お願いって顔の彼女がなんだかかわいく見えた。
悩んだ末、首を縦に振った。
2人で一緒に座る。
262L.O.D:02/01/27 01:19 ID:xZB8rk9z
「私、吉澤ひとみ。某近くの女子高に通ってます」
「あー、あそこかぁ」
「うん」
「うちはねー、マキ。コギャルやってます」
「玄関でもすげぇ目立ってたよ」
「マジ?」
「あんまいないじゃん、ガングロコギャルの出待ちなんて」
話してみると、案外、趣味も合うし
話も合う。
それに話してて、楽しい。
「そろそろ出よっか」
ひとみが小声で言う。
気付けば、もう1時間近くしゃべってる。
周りの客ももう一変してた。
2人はそそくさと店を出る。
「ね、プリクラ撮らない?」
「いいねぇー」
マキの提案に彼女も賛同して
Wingsにやってくる。
「こないだね、ここでちっちゃい金髪の人形みたいな
 女子高生と会ったよ。」
「マジ?かわいかった?」
「この子」
「あーすっげぇー、超かわいいじゃん」
「ねぇ、よっすぃってそのケあるの?」
「毛?」
「レ、、、ズ?」
「あー違う違う。なんかね、別に男とか女とか
 関係なく、よく感動すると声あげちゃうの
 リアクション、デカいんだよねー」
「うん、それはさっきから話してても思ったねー」
「デカいかな?」
「デカいねぇ〜」
「そっかぁ」
そんな事を話しながら、記念の撮影。
置かれたハサミで二つに分ける。
ひとみは早速携帯の裏に張り付ける。
263L.O.D:02/01/27 01:20 ID:xZB8rk9z
「最近、変えたばっかでさ、寂しいんだよね」
「なんか貼っちゃうんだよねー」
「そうそう」
後藤は自分の携帯の裏を見る。
色が薄くなってしまってる。
そこに映ってるみんな、もう全然連絡も取ってない。
なにげなく全部剥がして
ひとみと映した一枚を貼り直した。
「て、携帯番号も聞いてなかったや」
「あ、うん、私のこう」
「OK」
確認のコール。
ワンコールで切れる。
表示される電話番号。
こうやって何人の人間と電話番号を交換しただろう。
「よっすぃって入れておくね」
「じゃ、ごっちんって入れておく」
「うん」
操作を終わって、外に出ようとした時
自然とひとみが手を握ってきた。
そんな事するのもひさしぶりだった。
別に携帯で呼べば、誰か来てくれるけど
1人の方が楽だから。
普段はあまり友達と遊ばない。
遊んでも、2、3人で。
それでも、手つないだりはしない。
「よっすぃ、歩くの速いよ」
「ごめんっ」
驚く表情。
申し訳なさそうな表情。
豊かな表情。
マキは笑いながら、ひとみの歩幅に合わせて歩き出した。
264L.O.D:02/01/27 01:25 ID:xZB8rk9z
『更新終了』
あと3章くらいで終わる予定。
やすいしつじ
あいかお
ラスト・・・・・・
ってな具合にどんどん深みに。
265トロピカ〜ル名無して〜る:02/01/27 03:44 ID:Sh9GJaSi
>>261最初読んだ時、新米店員がブリッコの店員を
口説いてたのかと思ってしまった(w

>>L.O.D
マックの店員にもちゃんとストーリーがあるわけですな
圭織も出るらしいし楽しみだな♪
266旧♪:02/01/27 04:37 ID:okTGDjea
>>261
自分もカウンターの内側でのやりとりかと思ってしまった……
「そんな店員たち、ステキやん?」(w
267名無しさん?:02/01/27 22:48 ID:nWF9Lkdr
いつ読んでもおもしろい〜。
今回なぜかリンクが青に戻ってて
見つけられなくて焦ってしまいました。

あいかおってのが気になるな〜。
頑張ってください♪
268L.O.D:02/01/27 23:15 ID:q6ssBK+l
日が暮れる。
遊び慣れたこの街の端から端まで
歩いてみせた。
おそらくはどんな街に行っても
あるものなんて同じだろうけど
ここは違う。
眠らないから。
夜が始まる。
夜の顔がある。
今日もクラブの前には
人が集まる。
酔っ払いも出てくる。
「よしこ、門限は?」
「一応、9時までかな」
「そっかぁ」
「ごっちんは?」
「うちは放任だからー」
「へぇ」
「ね、ね、遊びに行かない?」
中年親父。
別に酔ってはいなさそうだが
片手に財布を握ってる。
「2人で8万でどう?」
「ダメー」
「やです」
「分かったよぉ、じゃぁ、10万」
「えぇー」
気ありげな顔をするマキ。
ひとみは心配そうにマキを見る。
援助交際。
「いいだろ、ご飯もおごってあげるからさ」
「うーん」
「なっ」
ひとみの手首を掴む手
「くぅっ!」
顔が歪む。
振払うように親父の手を引き剥がし
横っ面を引っ叩く。
「てめぇ!」
声を荒げる親父。
「よっすぃ!?」
自分のした事に呆然としてる。
親父は今すぐにでも乱暴に触れてきそう。
「ウワァアアアア!!!」
269L.O.D:02/01/27 23:16 ID:q6ssBK+l
ハッとすると、親父は1人身悶えていた。
マキに引っ張られる手。
マキも誰かに引っ張られてる。
親父の後ろでVサインする女の人。
2人はWingsに連れ込まれる。
「あぁーーー、マリちゃんだぁーーー」
マキがこないだプリクラで見せてくれたちっちゃな子。
本当に金髪でなんか人形みたいだ。
「よかったぁ」
「サンキュ、マリちゃーん」
「あいつさぁ、さっきうちにも誘ってきて
 すっごいウザかったから、裕ちゃん呼んだら
 ちょうど2人がさ、あんなだったしょー」
「親父ウゼェー」
などとのたまいながら、タバコに火をつける中澤。
さっき親父の後ろに立ってた人だ。
「ありがとうございました」
ひとみは深々と頭を下げると
くしゃくしゃ頭を撫でられた。
「ええねんええねん。金で女を買う奴なんざ逝ってよし」
「裕ちゃん、なにやったの?」
「あぁ、タバコ、背中に入れてやってん」
「キャハハハハハ、マジ!すっごーい」
「すごいねぇー」
マキと矢口はなにがそんなにおかしいのか爆笑。
中澤は少し微笑みながらひとみを見る。
「吸う?」
「いえ・・・・・・」
「あんた、ごっつ綺麗やなぁ」
「・・・・・・」
「どや、お姉さんと1発」
「1発とかいうなよ!」
矢口に蹴りを入れられて、うっと呻く。
270L.O.D:02/01/27 23:19 ID:q6ssBK+l
「ね、マキちゃん。」
「あー、ごっちんでいい」
矢口が遊んでほしそうに腕をからめると
マキは真顔でそう言った。
「ごっちん?」
「うち、後藤って言うのね。
 だから、普段はごっちんって呼ばれてるから」
「O.Kー、ごっちん、パラパラしない?」
矢口が指差したのは、パラパラパラダイス。
お立ち台状になったセンサータイプのコントローラーに
モニターが何個もついていて
パラパラの教則ビデオが流れてる。
「すごーーーー、パラパラだぁーーーーー」
厚底でパタパタと走ってく。
矢口も一緒にいってしまう。
店の奥から女の子が1人やってくる。
「裕ちゃん、福ちゃんはどこ?」
黒髪のやぼったそうなヘアスタイル。
服装のセンスは悪くないんだが
どこかしら田舎くささを感じる。
「明日香ならもうバイト行ったで」
「嘘!」
「そこのマック」
「なっち、なんも知らないっしょや」
「やーい、遅れてる」
なっちと呼ばれた彼女はマックに向かうべく、走っていく。
「みなさん、お知り合いなんですか?」
「まぁ、ここの常連みたいなもんやしな。
 なんか飲むか?」
「いいです」
271L.O.D:02/01/27 23:24 ID:q6ssBK+l
店の一番奥にある自販機の前のテーブルと椅子。
別なテーブルではショートカットの子が絵を描いてた。
「なんかスポーツやってたん?」
「バレーやってました」
「そかそか。いやぁ、背高いし、綺麗やなぁ」
「そんな事ないですよ」
「まーた、そんな事言っちゃってー」
「いえいえ」
「名前は?」
「吉澤ひとみです」
「ふーん」
中澤の吐き出したタバコの煙は
ゆらりと天井に吸い込まれていく。
「あの・・・・・・」
「ん?」
「あの金髪の子は、、、」
「矢口か?」
「はい」
「かわいいやろぉ」
「かわいいですね」
「なんや、あんたもそっちの口かいな」
「中澤さん、そうなんですか?」
「いやぁ、うちは綺麗なもん、かわいいもんが好きなだけよ」
「やっぱいいですよねっ」
(お前等、なんつー会話してんだよ)
市井は突っ込む気力もなく黙々と絵を描いていた・・・・・・

272L.O.D:02/01/27 23:24 ID:q6ssBK+l
道ばたに座り、大きな木の板を膝に乗せ
手には1本の筆。
大きな目はどこか遠くを見てる。
赤から紫へ、そして紺へと移り変わる空の向こう。
道の向うで男が2人喧嘩している。
周りを取り囲むように
人の壁が出来ているが
誰も止めようとはしない。
細く開けられた道を通る人は
まるでそんな光景は
日常の当たり前のような顔をして
通り過ぎていく。
「・・・・・・」
筆を置く手。
彼女のサラリとしたロングヘアが肩口を撫でる。
「つまんない」
ぽつりとつぶやいて
道具を片付けると
颯爽と人込みの中へと消えていってしまった。
彼女の存在がWingsの面々にとって
一つの問いかけとなる事は
まだ誰も知らない。

其の五 終わり
273L.O.D:02/01/27 23:29 ID:q6ssBK+l
『其の五終了記念』
やーっと、予想していた流れに乗ってきた感じが、、、
274ねえ、名乗って:02/01/27 23:45 ID:Kj0ZNys2
最高!
275レク:02/01/28 02:51 ID:LkUnVcSP
伏線に期待sage(謎
276アルマーニ濱口 ◆2ggkL5EU :02/01/29 01:42 ID:lQwZiTFg
よかった、このスレまだあったんだ
やっと見つけターヨ

いまから ゆっくり読みます

保全サゲ
277L.O.D:02/01/29 16:15 ID:LU3qED2H
其の六 冴えない大人、冴えない高校生、元気一発中学生。

「いらっしゃいませー!」
繰り返される言葉。
絶えず浮かべる笑顔。
装いの姿。
バイトだから仕方ない。

ロッカールームが唯一の救い。
石川梨華は帰る支度をしていた。
午後10時。
ドアが開いて、もう1人のバイトが入ってくる。
「ごくろうさーん」
「御苦労様です、保田さん」
保田圭は帽子をはずす。
「石川、これからどっか行くの?」
「帰りますよー」
「そっか、送ってく?」
「お願いします」
別に用事もないのでゆったりと着替える。
終えると、店の近くの駐車場に止めてある
保田の車に乗った。
「なんか聴く?」
「私、MDあるからそれかけていいですか?」
「どうぞ」
278L.O.D:02/01/29 16:16 ID:LU3qED2H
石川は自分のウォークマンからMDを取り出して
挿入口に差し込んだ。
この頃、よく街中でも耳にするメロディ。
「モーニング娘。?」
「大好きなんですよぉー」
「どこがいいのよ、、、」
「や、なんか、頑張ってダンスしてるとことか」
そう言う石川の横顔はなんかりりしくて
保田は少し吹き出してしまう。
「なんですかぁー」
「あんなもの、お遊びじゃない」
「保田さんは歌手になりたいんでしたっけ?」
「歌手っていうか、人前で歌えればいいんだけどね」
「なるほど」
オレンジ色の街灯を横目に
2人の間に静かな時が流れる。
信号は赤になって、止まると
しゃべりだしたのは保田の方からだった。
「石川はなんかあるの?」
「なにがですか?」
「夢、、とか?」
「夢ですかぁ」
改めて考えてるような様子。
「職業とか」
「お嫁さん」
「プッ」
「えー、ダメですか?」
「あんた料理ヘタじゃん」
「保田さんには負けませんよ!」
「そうよ、私はほとんど料理しないわよ!」
叫び返したところで2人は笑ってしまった。
なんて低レベルな戦いだったのだろうか。
「このままドライブ行っちゃおうか?」
「いいですねっ」
「あんた、家、大丈夫なの?」
「バイト遅くなったって言えばOKですよ」
「じゃー、海でも見に行くかー」
保田はアクセルを吹かす。
あっという間に加速して
車は走っていった。
279L.O.D:02/01/29 16:17 ID:LU3qED2H
・・・・・・風邪引いた。
部屋が寒い時は石油をケチらないで
ちゃんとつけましょう。
280名無しさん?:02/01/30 01:20 ID:uzD+eFXu
>279 お大事に。しっかり治してくださいね。
281トロピカ〜ル名無して〜る:02/01/30 12:59 ID:qhHoadA9
やったいいらさんの登場だ♪そろそろ佳境かな…

>>L.O.D
無理せずちゃんと養生しましょうね
厚着して布団3枚重ねて寝ちまいましょう(w
282L.O.D]:02/01/30 22:30 ID:Ryqif+zS
暖かい日射し。
やっぱり窓側の席はこの時期
昼寝にはもってこいである。
一見、廊下側の方がよさそうに見えるが
午後の授業ともなると
窓から差し込む温もりは
睡眠の世界へと
たやすく誘ってくれるものだ。
石川は保田と遅くまで遊んでしまい
少し眠たくて、ウトウトとしていた。
そんな中で昨夜、保田に言われた一言を思い出す
『石川はなんかあるの?、、、、夢、、、とか?』
そんなものない。
やりたい職業なんてない。
毎日、こうして学校に来て
時折ある試験はクリアして
無事に卒業する事しか考えてない。
おそらく、適当に進学するだろう。
結婚も思い付かない。
今、自分が主婦になったら
考えるだけで恐ろしい。
今日も放課後を迎える。
283L.O.D:02/01/30 22:31 ID:Ryqif+zS
テニスコートの横を抜ける。
足を止め、素振りをする同級生の影を見た。
中学の時はテニス一筋だった。
高校に上がっても続ける気だった。
へただったけど楽しかった。
だけど、部活が終わって
受験勉強をして
高校に受かって
いざとなると
面倒になってた。
走り込んだり
素振りをしたり
土まみれ、汗まみれになって
頑張るのがばからしかった。
他にする事なんてないのに
もっと高校生活を楽しもうなんて思ってた。
そこで反発するように始めたバイト。
最初は近所のコンビニ。
時折、中学の友達が来て
テニスは?なんて聞いてくる。
ウザくてやめた。
その後も何度かバイトを変えて
今はマックでバイトしてる。
仕事が楽な事はないが
保田がやさしいのでいい。
こないだ後輩が出来た。
自分よりちょっと小さくてころんとしてる
福田という子で、学年は一緒。
少し先輩だから、いいところ見せようなんてすると
反対にミスして、保田さんに怒られる。
でも、前のところよりは
少し長続きしそうな気がした。
さぁ、今日もバイト。
石川は駅に向かって、歩き出した。
284L.O.D:02/01/30 22:32 ID:Ryqif+zS
「いらっしゃいませー」
ジャージ姿の中学生。
髪を横で二つに束ねてるが
降ろしたら、そうとう長い気がする。
時折、店に来てる子だ。
「えっとぉ」
「・・・・・・」
部活の帰りなのだろうか
静汗剤の香りがする。
「ハンバーガー5個にぃ
 ポテトLのコーラL」
「お召し上がりですか?」
「ぁい」
厨房にオーダーを入れる。
待ってる間もポーッとした顔で立っている。
次々とトレイに乗せられる物の多さに
周りにいた人、店の中に居た人が
注目してた。
(これ、この子1人で食べるの?)
(たぶん、、、そうなんですよね、、、?)
そっと寄ってきた保田がつぶやく。
石川は営業スマイルに戻って
前に立った。
「お待たせしましたぁ」
会計を済ませ、彼女は窓際の席に座ると
あっという間に食い尽くした。
「・・・・・・すごっ」
それが、辻希美との出会いだった。
285旧♪:02/01/31 04:15 ID:vyk26MGP
さすがだ>のの(w
しかもフトコロに優しいカンジが○

質より量なのか>のの(w
286名無しさん?:02/01/31 21:45 ID:jfetRQya
福ちゃんがんばれ
287L.O.D:02/02/01 16:43 ID:XLSarZs0
今日もあの子はそこにいる。
今日はお金がないのか、ハンバーガー3つだけで
やけにゆったり食べてる。
時間も早いし
部活はなかったのだろうか。
「ありがとうございましたぁ!」
口を拭いながら、店から出ていく後ろ姿は
そのままゲームセンターへ向かう。
「あ」
隣でレジをやってた明日香が声をあげる。
「ん?どしたの、明日香ちゃん?」
「あそこ、よく行くんだよね」
「へぇー。ゲームうまいの?」
「や、あんましないんだけどさ」
「そっか」
そう言うと、明日香は直してたメニュー表に目を戻す。
なんか普段はあんまり自分の話をしてくれない明日香だったから
石川は嬉しかった。
「石川、交代だよ」
「あ、はいっ」
レジを保田と交代する時、
ちょうど明日香のところに客が来た。
「福ちゃぁーーーん」
「はいはい、なんにしますか?」
「えっとねー」
「矢口、シェイク!」
「うち、コーヒー。紗耶香は?」
「別にお腹空いてないし」
「あやっぺ、なにするん?」
「あたしもコーヒー」
うるさい客だ・・・・・・

288L.O.D:02/02/01 16:44 ID:XLSarZs0
バイトが終わり帰る準備
ちょうど明日香と一緒になった。
「ご飯食べていかない?」
「あー、どうしよっかな」
「なんか用事あるの?」
「用事ってわけでもないんだけどね」
「無理なら今度でもいいけど」
「や、行くよっ。別にいいし」
「いいの?」
「うん」
ドアのところから保田が顔を出す。
「保田さん、顔だけだと怖いですよ」
「うるさいわね!」
「なんか用ですか?」
「ごめん、ちょっと遅れそうだから先行ってて」
「あ、はーい」
バッグを片手に立ち上がる石川
「じゃ、行こっか」
「うん」
明日香もつられるように立ち上がり、店を後にする。
2人がやってきたのは、すぐ近くのカフェ。
2人ともオレンジジュースを頼んで
一息つく。
「さっき来てたお客さんは友達?」
「うん」
「なんかすごく年上の人とかいたけど、、、」
「あぁ。うん、あのゲーセンで知り合ったんだ」
「ふーん」
その後はたわいもない学校の話とかしてた。
明日香がいたずらっこのような顔をして
恋の話をしてきたりもした。
すごくくだらないけど
なんとなくいい感じ。
289L.O.D:02/02/01 16:44 ID:XLSarZs0
そんな時、電話が鳴って、明日香がバッグから携帯を取り出す。
「ごめんね」
「ううん」
「はい?あぁ、えー、酔っぱらってない?
 絶対酔ってるじゃん。マジだってー」
「・・・・・・」
電話の向こうの人は誰なんだろう。
自分が知らない明日香の世界。
「うん、はいはい。やだよ、やだってー。」
グラスに刺さったストローをクルリと回すと
氷も一緒に回っていく。
「おまたせ、、、、」
明日香が電話してるのに気付き
やってきた保田は声を潜める。
「うん、はいはい、じゃね」
「もう頼んだの?」
「はい、頼みました」
「そっか」
保田が手をあげて、店員を呼ぶ。
「ビール飲みたいな・・・・・・」
「ダメですよ、保田さん、車じゃないですかっ」
「帰ってから飲むの寂しいんだよなぁ」
テーブルを挟んで向うで繰り広げられる
保田と石川の漫才に少しだけ微笑む明日香。
「保田さん、何歳なんですか?」
思い切って質問してみると
意外な答えが返ってくる。
「18」
「えっ」
「嘘よ」
「よかったぁ」
「よかったってなによー」
保田も笑って返してくれた。
場が和んで、遅い夕食を食べながら
3人はバイトの事などを話題に盛り上がる・・・・・・

290L.O.D:02/02/01 16:45 ID:XLSarZs0
食事を終え、2人と別れた明日香は
交差点向こうのWingsへ。
UFOキャッチャーしてた安倍を適当にあしらい
キスしてる中澤と矢口を後目に
市井の隣にでもいようと思ったら
48連勝中でなんかキテた。
「来い!来い!こーーーーーーーーーい!」
「誰かcamiを倒せーーーーー」
別にイベント日でもないのに
大会みたいになってしまってる。
「明日香」
名を呼ばれて振り返ると
彩がいた。
「あやっぺー」
「さっきはごめんねー。みんなで行っちゃって」
「いや、いいよいいよ。売り上げにはなるし」
「そっか」
「明日香だぁーーー」
矢口が抱きついてくる。
背中から腕を回してきて
持ってたプリクラ手帳を見せてくれる。
「今日ねー、すっごいかわいい子来たんだよー」
「へぇ」
「近くの中学生でプリクラすっごい好きなんだってーーー
 いっぱい交換したよーーー」
「あー、この子・・・・・・」
マックに来ては大食いしていくあの子である。
「この子、マック来て、いっつもハンバーガー5個とか食うんだけど」
「えっ!?」
「多くない!?」
「いや、多いでしょー」
「ふーん、そんな風に見えなかったけどなー」
「なになに、裕ちゃんも仲間に入れてー?」
「ほら、この子。マックでハンバーガー5個とか食べるんだってー」
「あー、辻ちゃんやん。なー、この子めっちゃ抱きここちええで」
・・・・・・初対面の子になにしてんのさ。

291L.O.D:02/02/01 16:46 ID:XLSarZs0
バイト先の近くの駅から出た途端
石川はため息をついた。
テストの点数が悪かった。
こんな日はバイトをさぼってどこかに行きたい。
しばらく歩いて、もうマックは目の前。
まだ入るには時間があって、Wingsの入り口の階段に腰掛けた。
「はぁー、、、」
「あのぉー」
「?」
顔をあげると、見なれたジャージ。
あどけない顔に整った目鼻。
大食い少女だ。
「あー、やっぱりそうだぁ」
「いっつも来る子だよね?」
「ぁいっ」
「いっぱい食べるよねー」
「部活した後はぁ、お腹が空いちゃうんですよぉ」
「そっか」
「これからバイトですか?」
「うん」
「辻はこれから練習試合なんですー」
「がんばってね」
「そだ!プリクラ撮りませんか?」
「いいよっ」
292L.O.D:02/02/01 16:47 ID:XLSarZs0
なんでだろう、この子と話してると
すごくリラックスする。
「名前、聞いていい?」
「辻希美ですっ。ののって呼んでくださーい」
「うんっ。私はー」
「石川さんですよねっ?」
「覚えてるの?」
「えへへぇ」
「石川梨華。梨華ちゃんでいいよ」
笑顔がかわいい。
石川も自然と笑顔が出てしまった。
2人でプリクラが出てくるのを待ってると
明日香のともだちの『なっち』が
辻を見つけて、走ってきた
「ののーー」
「安倍さぁーん」
「ギュー」
石川は時計を見た。
遅刻寸前の時間。
「あーっと、ごめん、辻ちゃん、私、バイト行かなきゃ!」
「じゃねー、梨華ちゃん。プリクラ、今度持っていくねー」
手を振って別れ、マックの裏口へと一直線に走っていく。
早番で入れ変わりの保田に出会う。
「お、どうした。嬉しそうな顔して」
「あの大食いの子とな仲良くなったんですよ」
「そう」
「いい子ですよー」
人との出会いなんて些細な事なのに
なんでこんなに嬉しいんだろう。
石川はテストの不安なんてもうどこかに飛んでいた。

293L.O.D:02/02/01 16:48 ID:XLSarZs0
あくる日
「こんにちはぁ」
レジにニコニコしながらやってきた辻。
今日は保田の前に来る。
「いらっしゃいませぇ」
なぜか保田は他の客には見せない優しい笑みを浮かべた。
「怖いですよぉ、保田さぁん」
「分かってるわよ」
「えっと、ハンバーガー6個にシェイクストロベリー」
辻は瞬く間にそれを平らげ、
店を出る時に振り返って
手を振ると、石川や保田が手を振ってくれた。
その足で、Wingsに行く。
部活→マック→Wingsが最近の流れだ。
ここにいけばプリクラを撮ってくれる人がいっぱいいる。
中澤に至ってはおごってくれるし。
だから、遊びに行く。
でも・・・・・・本当は。
辻の目にはある人が映っていた。
「よっすぃ!」
店の入り口から、奥まで聞こえたのではないかと
思うくらいの大きな声。
UFOキャッチャーで安倍に新作プーさんを取ってもらった矢口などが
辻を見た。
手に持っていた鞄を放り投げて
真直ぐにその人の元へと走っていく。
「・・・・・・?」
後藤とつないでた手がはずれる。
後藤は隣に立ってた彼女を見る。
「ののっ!!」
「よっすぃ!ダメだよぉ、いなくなっちゃぁ!」
「・・・・・・」
ワンワン泣きわめく辻。
吉澤はただジッと抱き締め続けてた。
夜がまた来る。
294L.O.D:02/02/01 16:49 ID:XLSarZs0
かすかに赤味を帯びた空が消えて行く。
紫紺の闇に掻き消される。
街にはオレンジ色の光がポツリポツリ。
市井はフと立ち止まった。
そこには、1人、女の人が座ってた。
大事そうに板を抱え、筆を手にしていた。
「絵、描くんですか?」
「うん、、」
「私も描くんすよ」
人工的な灯が彼女の黒髪に映り込む。
この街の中で彼女は異質な何かを発していた。
市井は惹かれた。
「あなた、、、、猫みたい」
「猫?」
「うん、黒猫」
「黒猫かぁ」
「なんか風にまぎれて、消えてしまいそう」
「・・・・・・」
つぶやきながら、彼女は瞬く間に
黒猫を描いてくれた。
しなやかな背中。
まさしく、自らの姿にかぶって見えた。
「なんかいいっすね、この絵」
「ありがと」
「もらって、、、、いいですか?」
「うん、あなたに描いた絵だから」
市井は絵を大事に丸めると
左手にしっかりと持った。
「じゃぁ、、、」
「ねぇ」
「?」
「どこに行けば、会える?」
「え?」
「私、もっと貴方の絵描いてみたいな」
肩にかかるロングヘアから覗いた目は
すごく澄んでいて
市井の心へ入ってきた。
一瞬・・・・・・全ての音が聞こえなくなった。
そんな瞬間だった。

其の六 終了

295L.O.D:02/02/01 17:02 ID:XLSarZs0
『3日ぶり?更新』
書けなかった反動で一気に更新。
296ねぇ、名乗って :02/02/01 23:23 ID:RKVE9UUQ
更新ご苦労様っす

新メン意外だと、あとは加護を残すのみかな
297トロピカ〜ル名無して〜る:02/02/02 04:01 ID:179kGH5W
神秘的な圭織が素敵…
ののはやっぱりみんなのマスコットか(w
でもよすぃことの関係が気になるやね

>>L.O.D
風邪療養中だったんすか?復活おめ
298旧♪:02/02/03 01:12 ID:q4oPz9cs
風邪から回復したっぽいね>作者
よかったよかった。
ここで無理するといかんのよね(w
299L.O.D:02/02/03 15:30 ID:NxrsPhd+
其の七 暗闇の底から。

「んっ、、、ふ、、、、」
闇の中に浮かぶようにつけられた
ベッドの脇の照明は頼り無く揺れた。
少女の小さな手はギュッと
シーツを握りしめ耐える。
「くっ、、」
「はぁっ、、、んぁっっ、、」
2人の吐息は混じり、重なり
消えていく。

「ほら」
男は残りの半分の金を差し出す。
「あんがと」
ホテル街から少し離れた大きな十字路の手前。
信号が変わり、男は道を行く人に紛れる。
少女は金をサイフに収めた。
これでまた遊べる。
携帯を取り出して、どこかへ電話をかけながら
少女もまた人の波の中へ消えていく。
「・・・・・・」
飯田圭織はその様子をじっと見てた。
2人が行ってたのは援助交際。
男は若い子を抱きたいと思い
少女はお金が欲しかった。
それだけの事。
ボーッとそんな事について考えてると
フラフラと歩く別な少女と目が合った。
髪をかわいらしく結っている。
ワッペンやバッジがいっぱい付いた明るい色の服。
見るからに中学生。
「なに?」
「・・・・・・別に」
少女は視線を人込みの中へと戻した。
携帯が鳴る。
「はぁーい、アイですよぉ。えっとー
 あ、はいはい、分かりましたぁ」
待ち人を見つけたのか
アイと名乗る少女は
タタッと走っていってしまう。
彼女もきっとさっきの子のように、、、、
飯田はそっと筆に手を伸ばした。
絵にしよう。
この悲しみを。
300L.O.D:02/02/03 15:33 ID:NxrsPhd+

Wings。
矢口のキンキン声が響く。
「えぇーー、なんだよぉ、それぇ」
「どないしたん?」
「なっち、彼氏とデートだって!」
「はぁ!?あいつ、彼氏出来たの?」
「ホッ」
1人、安堵の溜息をつく明日香。
そこにいた彩や中澤は信じられないといった表情。
「悪い男に掴まってなければええんやけど、、、」
「裕ちゃん、お母さんみたいだね」
「なんや、年やってか!」
「違うってばぁーー」
いつも通りのWings。
違う。
いるはずの人がいない。
(紗耶香・・・・・・)
近頃、来たり来なかったりする。
運良く顔を合わせた時に
彼女はこう言った。
『なんかね、やる事が見つかったつーか』
明日香は少し俯く。
汚れた床。
なにげない一言だったけど
あの時の紗耶香の笑顔は一回も見た事がなかった。
「私、帰るわ」
「え?」
「どしたん、明日香?」
「宿題もあるし・・・・・・」
「ふーん」
「そっか、じゃなー」
「ばいばーい、明日香」
301L.O.D:02/02/03 15:34 ID:NxrsPhd+
鞄を手にして、Wingsを出た。
夜の風は昼に比べ、少し冷たくなった気がする。
すぐの横断歩道。
ウォークマンを取り出してると
目の前に車が止まった。
「送るわよ」
「あ、保田さん」
「信号変わっちゃうじゃない」
まるで滑り込むように乗ると
車はすぐに発進した。
「浮かない顔ね」
「いやぁ」
「・・・・・・」
保田はそれ以上、何も言わない。
しゃべりたければしゃべりなさいという事か。
保田らしいといえば保田らしい。
「ちょっと自分がなにすればいいのか考えてて」
「そう」
保田は信号待ちの間にMDを変える。
洋楽のR&Bのバラード。
「やらなきゃいけないと思う事はあるの?」
「やらなきゃいけない事・・・・・・」
学校の勉強じゃない
なにを優先しなければいけないのか
「やりたい事は?」
「・・・・・・」
そういえば忘れていたような気がする。
いつの間にか。
「焦っても、何も手に入らないもんよ」
それは、あまりに自然な行為であり
欲求するものではなかった。
忘れてた。
(私は歌いたいんだ・・・・・・)
「保田さん」
「?」
「どっかいいライブやってるとこないですかね?」
「ライブねぇ・・・・」
保田の目が少し優しくなって
微笑んでくれた。
明日香はなんともいえない気持ちが
胸にうずまいて、笑った。

302L.O.D:02/02/03 15:35 ID:NxrsPhd+
「上手だね、、、」
無言でその先にある物をしゃぶる。
幼い口に収まりきれない分も
舌を絡ませていく。
「・・・・・・」
裸の肩口に置かれた手。
静かな部屋に響くクチュグチュという卑猥な音
唾液と先走りが混じる音。
「ふっ、、、はぁ、、、、ほら、こっちにおいで、、」
アイは身体を横にする。
男の手が乳房を包む。
「大きいね」
「へへっ」
開いた口と舌の間に唾液が糸状になって伸び
思わず目を背けた。
乳首に熱いうねりを感じる。
執拗に責めたて、くわえ、はさみ
刺激してくる。
顔が上気してくのが分かる。
別にSEXは嫌いじゃない。
肌と肌が触れて
敏感なところに触れられて
感じてしまうという恥ずかしい行為がいい。
「ちょっと感じてる?」
問いには答えない。
けど、男は嬉しそうに
手を下へと伸ばした・・・・・・

303L.O.D:02/02/03 15:37 ID:NxrsPhd+
『更新終了』
新しい羊の看板、よい。。
304トロピカ〜ル名無して〜る:02/02/03 16:11 ID:G9cFkKEV
なぜ加護だけこんな扱い(w
まあ展開としては面白いから良いけども

Wingsに集まってる連中もやがてそれぞれ
自分の居場所を見つけて去っていくのかな…
私も17歳で、すげー共感。
自分のやりたい事が見つからない…
苦悩がうまく描かれててイイっすね。
306レク:02/02/03 23:26 ID:mGk+PCKu
やりたいことがないってのは本当に共感できます。
今の俺がそのまんまだから。
やっぱLOD氏の小説はリアリティがあって面白いっす。
307L.O.D:02/02/04 00:02 ID:gp6/xCix

  パタン

手帳を閉じた。
鞄の中に仕舞って
どこに行く宛もないのに
立ち上がった。
(・・・・・・どこで遊ぼ)
後藤は周りを見回す。
同じような格好をした子達。
もっとヤバい格好の子達。
学校にも行ってなさそな子・・・・・・
遊ぶ事しか頭にない子・・・・・・
女をひっかける事しか脳のない子・・・・・・
男といちゃつく事しか考えない子・・・・・・
後藤はプイッと違う方向を見ると歩き出す。
ここには居場所なんてものはない。
そう、ここは誰のものでもない。
誰のものにもならない。
誰1人として、個人ではない。
同じ空間にいても赤の他人。
同じ格好でも、他の人。
交わることなんてない。
会話しても、それはすれ違っただけ。
目を見て話してるフリをして
向こうにいる何かを見てる。
誰1人として向き合おうとなんてしない。
後藤は、一度、立ち止まった。
308L.O.D:02/02/04 00:04 ID:gp6/xCix
しばらく吉澤に会ってない。
あんなに一緒に遊んだのに。
探しても、この街にいなかった。
どっか他のとこへ行ってしまったのだろうか。
自分が嫌いになったのだろうか。
いつもの後藤なら、そんなの気にならなかったのに
なぜだろう。
すごく不安だった。
なのに、携帯電話のアドレス帳を呼び出す事ができない。
一歩だけ踏み締めた瞬間
後藤はあの子を見つけた。
吉澤が来なくなった原因になったかもしれない子。
「待ってよ!」
その場にいた人は皆、何事かと後藤を見た。
厚底でガッポガッポと走ってくる後藤を
ボーッと見てるのは、辻希美。
「なんですかぁ?」
「あんた、よっすぃどうしたの!?」
「・・・・・・別に、どうもしないですけど」
「っていうか、パフェおごってあげるから
 そこで休ませてよ」
「はいぃ、、、」
いつものカフェ。
吉澤ともよく来た。
ここか、マクドナルド。
辻はおいしそうに苺パフェを食べていた。
309L.O.D:02/02/04 00:06 ID:gp6/xCix
「一口ちょうだい」
「はーい」
「んむ」
辻としてはいきなりガン黒ギャルが襲いかかってきたので
何事かと思ったのだが、よく考えれば
姉で慣れてるわけだし
そんなに怖くはなかった。
しかも、一口ちょうだいとか言ってくるし
どうやら怒られることはなさそうだ。
「でー、よっすぃはどうしたの?」
「ののは知らないですよ、、、」
「はぁ?こないだよっすぃに抱きついたのあんたじゃん」
そこで気がついたが、この人、こないだよっすぃと一緒にいた人だ。
「あんた、名前なんて言うの?」
「辻希美です」
「で、辻ちゃんはよっすぃとどういう関係なの?」
「部活の後輩です」
「ふーん」
「?」
「で、よっすぃは?」
「うちの中学校の卒業生でヒマな時は来てくれて
 練習に参加してくれてたんですけどぉ
 突然来なくなっちゃって
 学校とかに聞いたら・・・・・・」
伏し目がちの辻。
手遊びするスプーンがやけにはっきりと見えた気がした。

310L.O.D:02/02/04 00:07 ID:gp6/xCix
後ろ手に渡されるお金。
アイは鏡を取り出して、前髪を整える。
男の姿はもうない。
(・・・精液臭っ)
最後、なにバカな事を考えたのか
顔射された。
金払ってるからって無茶する奴も多い。
そういう時は文句言って
1枚増やさせたりする。
そんな事、別にどうって事なかった。
暗い道を抜けて、メインストリートに出てくる。
「あ」
ホテルに入る前に目があった不思議な女の人はまだいた。
地面に拡げた1枚の紙に書かれる原色の世界。
「あなたは、何歳?」
「14やけど、、、」
見つめられる。
大きくて、綺麗な目。
「なんでそういう事するの?」
アイは引き込まれるように
その絵の前に座った。
「別に」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
311L.O.D:02/02/04 00:08 ID:gp6/xCix
逃げようと思えば、すぐにでも
この場を離れる事なんてたやすい事なのに
なぜか立ち上がる事すら出来なかった。
女の人はゆっくりとなにかの歌を口ずさみ始めた。
よく知らない歌だったけど
心地よくて、もっと聞きたくなる。
絵は少しずつ出来上がっていった。
「あなたにあげる」
「うちに?」
「うん」
彼女は手を伸ばして、絵を受け取った。
けして、うまいわけじゃないけど
学校のプリントみたいに
そこら辺に捨てたりなんてしちゃいけない気がする。
「あ、お名前聞いていいかな?」
「加護、、、亜依」
女の人は、1本筆を取り出して
その絵に名前を加えてくれた。
「私は飯田圭織。よろしくね」
「・・・・・・」
手際良く片付けられる道具。
その様子を眺めていると
「じゃぁね、亜依ちゃん。」
と声をかけられ、ハッとする。
空白の時間。
そこにいたのに、時間の感覚がなかった。
去っていく圭織の顔は大人びた笑みを浮かべていて
加護にはまるで蜃気楼の中へ消えていくように見えた。

312トロピカ〜ル名無して〜る:02/02/04 03:08 ID:ClJctju2
圭織に触れて、加護はどうなる…?
313名無し募集中。。。:02/02/05 01:52 ID:t+bVAaN3
加護ちゃん……
314L.O.D:02/02/05 18:04 ID:A9XkUQe8
暗闇の中
吉澤は自分の手首を見つめる。
バレーが大好きだった。
高校もスポーツ推薦で入った。
なのに、怪我をして
バレーが出来なくなって
自分の意味がなくなって・・・・・・
学校には行きたくなかった。
特に体育がある日は。
教師の突き刺すような視線。
吐き気がする。
逃げていた。
「・・・・・・」
カーテンを閉め切ったままの部屋。
もう何日もここから出ていない。
あの日、辻を抱き締めた瞬間
保っていた何かさえ失った。
バレーから逃げだして
ただのオンナノコでいた自分を見失った。
当然だ。
そんなもの、装った、偽者でしかないから。
辻の笑顔は化けの皮を剥がしていった。
後藤がうらやましかった。
化粧をして、夜遅くまで遊んで
すごく楽しそうだった。
一緒にいたら、なにか変わるかなと思ってたけど
やっぱりイイ子の自分を裏切れなくて・・・・・・
迷う心を時計の針の音がさらに乱す。
315L.O.D:02/02/05 18:05 ID:A9XkUQe8
チャイムの音が聞こえて
飯田は筆を置いた。
いたるところに観葉植物が置かれた飯田の部屋。
ドアを開けると、市井が立っていた。
「いらっしゃい」
「お邪魔します」
リビングのソファに座ると
すぐに紅茶が出てきた。
市井の目には隣の作業部屋が見える。
「新しい絵だね」
「うん、昨日会ったの」
黒めがちの目が幼さを感じさせる女の子。
「援助交際してて、男の人と出てきたの」
「ふーん、、、」
「なんで、そんな事するんだろうって思って」
「あー、私は分かんねぇや」
「紗耶香も分からないか」
「なんだろうね、寂しいのかな?」
「かなぁ?」
飯田の悲しそうな顔。
溢れ出る感情が手に取るように分かる。
益々、引かれていく。
「圭織、私が書いた絵見てくれる?」
「うん」
彼女の一つ一つの表情が
市井の心を動かした。
刺激となって
絵を描かせる。
しばらくWingsにも行かないで
絵を書き続けていた。
なにかにこんなに真剣に取り組むことなんて
ほとんどなかった。
淡い色調と強いタッチで構成された
独特の人物画。
「いいね」
「いい?」
「私の絵とは違うけど、なんかいいね」
「やったぁ!」
誉められる事が嬉しい。
市井は心からの笑みを浮かべた。
316L.O.D:02/02/05 18:06 ID:A9XkUQe8
別にお金を持ってるからって
する事なんてない。
行く場所もない。
ただする事がないから
一緒に寝て、
お金を貰うだけなんだ。
口にだしては言わない。
だって、今だって、アイスがおいしいから。
段差に腰掛けて、アイスを食べる。
人が行き交う。
同じように座って
彼氏や友達を待ってる人がいっぱいいる。
「ねぇ、誰か待ってるの?」
ちょっとかっこいい男の人。
サラリーマン風じゃない。
「ちゃいますよ」
「関西?」
「まぁ」
「遊びに来てるの?」
「ううん」
「そう、俺と遊びに行かない?」
「あー、ごめんなー」
「えー、行こうよ、ヒマしてんでしょ?」
「もう帰るとこやねん」
「そっかぁー、残念」
誰でもいいのか、男は離れたと思ったら
今度は制服姿の子に声をかけている。
くだらない。
加護は立ち上がって
最後の一口を詰め込んだ。
「あのぉー8段アイスくださぁーい」
アイス屋の前には同じくらいの年の子がいた。
隣にはガングロコギャルが立ってる。
今度は別な男が寄ってきた。
「5万円でどう?」
「うち、中学生やで」
「へぇー、なに、もう1枚?」
8段アイスを受け取った女の子と目が合った。
コギャルが早く行こうと手を引っ張っていた。
「ん、ええよ」
こんな行為で心は満たされない。
だけど、やめる理由も見つからない。
317L.O.D:02/02/05 18:07 ID:A9XkUQe8
「矢口、飲みに行くけど、一緒に行くか?」
中澤が彩と肩を組んで聞いてきた。
矢口は首を横に振る。
「そっか」
「じゃ、また明日ね」
「うん」
UFOキャッチャー。
コインを入れる。
音が鳴って、ランプが一個つく。
ボタンを押すと、アームが動き出して
ちょうどよさげなところでストップ。
下へと降りていく。
掴めないぬいぐるみ。
矢口の表情は浮かない。
「つまんない・・・・・・」
『もーまりっぺはヘタなんだから』
矢口に覆い被さるようにして
安倍がやってくれる。
それがいつもの事だったのに
いない。
安倍の温もりがない。
店の奥を見る。
テーブル。
紗耶香がいない。
その隣に明日香もいない。
みんな、いなかった。

其の七 終了。
318L.O.D:02/02/05 18:12 ID:A9XkUQe8
『其の七 終了記念』

飼育ってどうなのよ?(w
319L.O.D:02/02/06 00:07 ID:BXa3gVKy
今から一気に最終章更新するんで
感想はあとからよろしく。
320L.O.D:02/02/06 00:09 ID:BXa3gVKy
終章 風

「お疲れ様でしたー」
石川梨華は、マックの通用口から出てくる。
携帯電話を取り出し、どこかへと電話をかける。
『はーい?』
「保田さーん、迎えに来てくださいよー」
『今、カラオケにいるから、来なさいよ』
「行っていいんですか?」
『明日香もいるわよ』
「いつものとこですよね」
『そう』
すぐ近くの打ち上げやなんやでよく使ういつものカラオケ屋。
行くと、ルームナンバーを教えられる。
部屋は少し薄暗い。
保田が気持ち良さそうにバラードを唄ってた。
「バイトないのに会ってたんだ?」
「まぁね」
明日香の横顔。
含み笑いがにくい。
「なにー?なんかあったの?」
保田に目配せするように見た後
笑いながら、石川の耳元に口を近付けた。
「バンドをね、組むんだ」
「え?保田さんと?」
「よく行くライブハウスでメンバー募集かけてね」
「へぇーっ、おめでとうございますっ!」
石川の他人事にも関わらず嬉しそうな表情を見て
保田も微笑んだ。
「石川、なんか唄いなさいよ」
「え、だめ!私、歌なんてっ!」
「いいっていいって、唄お?」
明日香が勝手にモーニング娘。を入れてしまった。
「笑わないでよー?」
「笑わないわよ」
「笑うけどね」
321L.O.D:02/02/06 00:09 ID:BXa3gVKy
眠る前、石川は明日香と保田の顔を思い出していた。
「いいなぁ・・・・・・」
寝返りを打つ。
すごく輝いていた笑顔。
やるべき事を見つけた人間の顔。
しっかりとした視線。
生き生きとした目。
「はぁ・・・・・・」
自信なさげな溜息はより大きく聞こえる。
思い悩んでみたところで
自分にはそんなものはない。
うっすらと窓からの光の中で
テニスのラケットが見えた。
もう、やりたくないのに。
「・・・・・・」
もう1度寝返りを打って、壁を向いて眠りについた。
322L.O.D:02/02/06 00:10 ID:BXa3gVKy
午前零時。
吉澤は鳴り止まない携帯電話を手にした。
液晶に映るごっちんの文字。
「は、、い?」
『よっすぃ?』
「そうだけど」
『元気?』
電話から聞こえてくる後藤の声は少しハスキーな気がする。
「んー、、、」
『よかったらさ、明日遊ぼうよ』
「え?」
『映画みたいんだけどさ、1人じゃやだから』
「映画?」
『うん、フランスのやつでー』
「ふーん」
『・・・・・・』
「ごっちん?」
『やだ?』
「えっ、や、そんな事ないよ!」
『無理して合わせなくていいからっ』
「違うっ!」
『だって、今、よっすぃ、、、』
「明日、何時?」
『10時半から、、、』
「じゃ、あのカフェで10時に待ち合わせ」
『うん・・・・・・』
電話が切れた。
きっと後藤なりに心配してくれてたんだと思う。
なんかその気持ちが嬉しくて
涙が出てきた。
323L.O.D:02/02/06 00:11 ID:BXa3gVKy
カフェ。
入って、辺りを見回すが
後藤の姿はない。
フッと見ると奥のボックスから手を振る影。
近付いていくと、ハイビスカスの帽子を目深にかぶった
色黒の少女。
健康的な小麦の肌に金髪の髪の毛がかかってる。
「ごっちん?」
特徴的なガングロメイクじゃない後藤を見る事自体はじめてかもしれない。
「座りなよー」
「あ、うん」
吉澤はバッグを脇に置いて、向側に座る。
「分からなかった?」
「全然」
「そっか」
「どうしたの?」
「なんか飽きちゃって」
飽きたなんて、嘘。
吉澤に会えない時間
ずっと考えていたのだ。
色白で綺麗な吉澤と並んで歩くには
自分のあのメイクはおかしい、と
そして、電話をかけるのさえ怖い自分はなぜか
全てはメイクで隠した心だから
吉澤と仲良くなりたかった。
分かりあいたくなった。
一歩、踏み出したかった。
だから、あのメイクはしなかったのだ。
「そろそろ行った方がいいかな?」
「そだね」
映画館へと歩いていく2人。
自然と手をつないでいた。
324L.O.D:02/02/06 00:13 ID:BXa3gVKy
彩はビールを片手に壁によりかかる。
静寂のステージ。
オ−ルスタンディング、客は満員。
ライトが全部消える。
現れたメンバー。
堂々とした調子の明日香。
圭もサックス片手に出てくる。
『どもー、まだ名前ありませーん』
客席がドッと湧く。
かぶさるようにして、ドラムのカウント。
一気に暴れるような演奏が爆発する。
ゴリゴリ唸るベースに
頭をつんざくようなギター。
バンドの演奏力は悪くはない。
「あかん、遅れてもうた」
隣に走ってきたらしい中澤が滑り込んできた。
「大丈夫、まだ始まったばっかだから」
きょとんとした中澤の表情。
「へ?」
「唄い出してもいないよ」
ステージの真中で明日香の息遣いまで聞こえる気がする。
スゥッと一呼吸吸って
マイクスタンドを掴む。
唄い出したその声は力強く
小さな彼女の身体を大きく見せた。
「飲む?」
「当たり前やん」
「そっか」
カウンター席に移る。
ステージからは遠くなるが
段差があるため、見やすくなった。
「かっこいいなぁ、明日香」
「うん、かっこいいね」
「うちも唄おうかな」
「やめときな、3曲唄って
 酸欠でブッ倒れちゃうから」
「まだまだ裕ちゃんだって若いでぇ」
そう言いながら、目を細くする中澤。
愛想のない明日香がバイトを始めて
圭と出会って、ステージに立った。
なんか、自分の娘でもないのに
成長する姿が見えたようで
嬉しかった。
「男いないかなぁー」
「いきなりなに言ってんのさ」
325L.O.D:02/02/06 00:14 ID:BXa3gVKy
道端に座り、飯田は今日もまた
絵を描いていた。
なにげなく手を止めて
手元のバッグから一つの封筒を取り出す。
市井からの手紙。
美術学校に進むために、高校に復学するとの事。
別になにをしてあげたわけでもないが嬉しかった。
「お絵書きしてるんですかぁ?」
うんこ座りで俯いてた飯田の顔を覗いてきたのは、辻希美。
「うん。描いてあげようか?」
「描いてくださーい」
ポカーンと口を開けた顔。
なんとなく愛らしい。
「中学生?」
「はい」
「ジャージだけど、部活は?」
「バレ−部ですよぉ」
「そう」
「お姉さん、笑顔だけど、なんかいい事あったんですかぁ?」
「うん、友達がね、夢を見つけて歩きだしたの
 あなたもいい笑顔だね。」
「ののはですねぇ、大好きだった先輩が練習に来てくれるようになりましたぁ」
「そかぁ、大好きだったんだ」
「はいっ」
子供らしい元気な返事。
「お名前は?」
「辻希美です。ののって呼んでくださーい」
「ののちゃんねー、よし」
飯田は描いた絵を辻に見せる。
オレンジや赤を多用した明るい絵。
「わぁー」
「あげるね」
「くれるんですかぁーー」
「うん」
「ありがとーございますぅ。
 お礼にー・・・・・・」
鞄を漁って、出てきたのはプリクラ手帳。
お悩みの様子で選んだ1枚。
「あげますー」
「ありがとっ」
筆入れにペタッと貼ってみせた。
「どう?」
「かわいいかわいいっ」
「へへっ」
「じゃぁねー、お姉さん」
「うん、じゃぁね」
辻は絵を丸めもせず掴んで歩いていく。
326L.O.D:02/02/06 00:15 ID:BXa3gVKy
今日も8段アイスを食しにお店へGo!
お金を払って、アイスを受け取り
ゆっくり座って食べれる場所はないかと探す。
溶けてしまわないように
食べながら歩いてると、ちょうどよい段差発見。
隣に同じような背格好の女の子。
とりあえず一心不乱にアイスを食べ
その子に話しかけてみた。
「プリクラ撮らない?」
「ん、えぇよ」
「関西の人?」
「奈良やねんけどな」
「鹿って食べるの?」
「そんな食べへんけど、、、」
「そっかぁ」
近くのゲームセンターで適当に空いてる台で
プリクラを取って、出てきたのを2人で分ける。
「はい。」
「あんがと」
辻が手帳に貼ってるのを横目で見てる。
「ののは携帯持ってへんの?」
「えっ!?なんで、ののだって分かったんですか?」
「いや、、、手帳に書いてあったから」
「ののは持ってるけど、あんまりかけないですねぇ」
「番号、、、教えて?」
「いいですよぉ」
不思議な感じだった。
辻の携帯番号を見て
ワンコールする。
「はーい、名前はぁ?」
「加護亜依」
「あ、いっと」
なんでだろう。
辻と話してると落ち着く。
SEXでさえ埋まらない心が満たされてくのを感じる。
「な、ののちゃん、どっか遊びに行かへん?」
「カラオケ行く?」
「うん、カラオケ行こ」
加護は辻の顔を見た。
口元についたコーンの欠片。
手を伸ばして、拭き取ってあげる。
327L.O.D:02/02/06 00:16 ID:BXa3gVKy
「・・・・・・」
矢口はWingsの奥へと足を運び
椅子に座ると、1冊のノートを取り出してみた。
みんながいたずら書きしたノート。
中澤がみんなで行った飲み会の費用を計算してたり
安倍や彩がkissとか書きまくってたり
辻、後藤、吉澤のプリクラが貼ってあったり
明日香が連載してた詩もあった。
市井からの最後のメッセージ。

『みんなに出会えた事で私はここから卒業できるよ。
 学校行っても頑張るし、たまに遊びにくるから
                  サヤカ    』

「みんな、いなくなっちゃったよ」
その後もノートは続いてる。
違う誰かが書き込んでいくから。
「・・・・・・」
いつか処分されてしまうノート。
みんなの思い出が消えてしまう。
店員の目を盗んで、鞄にしまった。
これでいいんだ。
思いでは守られた。
いつかこれを開いたら
この数カ月の事をきっと思い出すだろう。
328L.O.D:02/02/06 00:17 ID:BXa3gVKy
鞄を手にする矢口。
やけに明るい歌なんて口ずさみながら
昼間だってのに電気をつけてるこんな
天井の低いゲームセンターなんて抜け出して
いっぱい人がいるメインストリートへ・・・・・・
「なっち・・・・・・」
「あ、まりっぺー」
UFOキャッチャーの前。
小脇にこの前取れなかったプーさんのぬいぐるみを抱えた安倍が
そこにはいた。
「バッキャロォーー!!」
「わぁ!」
「顔見せないで、なにしてたんだよ!!」
「いやぁ、そりゃもう、毎日のように・・・・・・
 それがさ聞いてよ!あいつったらさぁーー!!」
「のろけ話なんて聞かないもんね!
 矢口をずっと放ってた奴なんてしーーーらないっ!」
「あぁ、、まりっぺ、待ってよ!
 プーさんあげないぞぉーー」
「いいもん、矢口にはしげるがいるもん!」
「しげるって誰だべ!ちょっと、まりっぺーー」

fin