小説『OLやぐたん 其の弐?』

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12L.O.D
市井が来たのは、30分も後の事。
座敷の戸がガラリと開き
姿を現した市井を見て
辻はポカンとする。
「のの・・・・・・」
「さやりん・・・・」
「石川、あーんってして」
「あーん」
「どした、のの?」
「さやりんっ!さやりんっ!!」
その感触を確かめるように抱き締める辻
肉の味を確かめるようによく噛む石川
飛びついてきた辻を抱きとめ、強く抱き返す市井
そんな様子は無視で、新しい肉を焼く矢口。
「さやりぃん、、、、」
「げふっ」
見ると、今にも窒息死しそうなくらい
締められてた。
「あーっ!!」
「のの!のの!!」
「・・・・・・」
開放されても、しっかりとつながれた手。
今度はポフンと市井の胸に顔をうずめる。
市井もその頭をきゅっと抱いてやって
耳元でささやくように問う。
「会いたかったよ、、ののは?」
「あいたかった、、、、」
「そか」
「いいねぇ、ラブラブで」
「矢口さん、私達も、、、、」
「きしょっ!なんで石川と、、、、」
「矢口さーん、、、、」
「どうして泣いてるの?」
「怖くて、、、、」
「そうか、矢口に怒られたんだ」
胸の中でふるふると頭を振る辻。
「違うの?」
こくんとうなづく。
そんな仕種一つ一つがかわいらしい。
13L.O.D:01/12/27 11:53 ID:xH+HHIn0
「市井に話してごらん、、、」
「あのねぇ、、、」
か細い声でしぼりだすようにつぶやく。
まるで雨の中にほうり出されたうさぎのような声。
「太っちゃったし、、、、
 歌も上手じゃないし、、、、、
 なんかね、、、、
 つまんないの、、、、、、
 疲れちゃった、、、、、、、」
「そかー、、、疲れちゃったんだ」
「うん、、、、」
まるで、幼い子供が添い寝されて
母親に肩をとんとんと叩かれながら眠るように
市井は辻の背を優しく叩く。
「じゃ、市井がおまじないしてあげる」
「?」
「楽しくなるおまじない」
「ほんと?」
「うん」
辻は顔をあげる。
そっと手を添えて、
軽いキス。
「ん、、、、」
「ふ、、、、、」
「どう?ドキドキしない?」
「するっ」
「ごめんね、市井気付いてあげれなくて。
 のの、、、苦しかったよね」
「ううん、さやりんは悪くないよぉ」
「怖くなくなった?」
「うん」
「じゃ、肉食うか?」
「食べる!」
市井はテーブルの方に視線を戻すと
矢口と石川がいなかった。
「あれ?」
出ていった気配もないし。
覗き込んでみる。
すると、テーブルの向うにいるにはいたのだが
矢口が石川に押し倒されてた。
「紗耶香ぁーーーー!」
「チュ、、、、」
「ののっ!石川を止めろ!」
「あいっ」

  バッ!!

辻は勢い良く踏み切り
重なってるところへフライングボディプレスッ!!
「ごふぅっ!!」
「エヘン!」
「矢口ーー生きてるかぁーーー?」
「もうダメ、、、、」
14L.O.D:01/12/27 11:54 ID:xH+HHIn0
帰りのタクシーの中
辻と市井はずっと手を握っていた。
「明日は、仕事?」
「うん」
「私もレコーディングだな」
「・・・・・・」
俯く辻。
市井は気付き、少し肩を抱き寄せた。
「帰りたくないよぉ」
「ダメだぞ、ちゃんと寝ないと」
「・・・・・・あい」
「今度さ、オフの時に遊ぼうな」
「うん」
タクシーが止まる。
辻の家の前。
「じゃね、のの」
「ばいばい、、、」
辻は、見えなくなるまで手を振っていた。
角を曲がって、市井は帽子をかぶり直し
鞄からMDを取り出す。
フと顔をあげると、窓の外に吉澤が歩いていた。
なにやら疲れた様子
「あのっ!止めてください!!」
「はい」
車はゆっくり沿道につき、止まった。
お金を渡して、走って追い掛ける。
「吉澤っ!」
「あ、、市井さん」
「帰るところ?」
「いや、、、、」
「時間あるなら、お茶してかない?」
「ナンパですか?」
「あははは」
真っ白なロングスカートが
背が高くて大人びて見えてしまう
吉澤の少女性を呼び起こす。
手近なカフェを探し
人目につかない席を見つけ、座る。
ちょっと年上ぶって
アイスコーヒーにした。
15L.O.D:01/12/27 11:55 ID:xH+HHIn0
「市井さん、なにしてたんですか?」
「ののに会ってたんだ」
「あ、そうですか」
「吉澤は?」
「ごっちんのところに行ってました」
「後藤か・・・・・・元気してる?」
「はい・・・・・・」
少しの間の沈黙を破るのは、吉澤
「市井さんはごっちんの事どう思ってるんですか?」
「・・・・・・」
すぐには答えれない。
「私、ごっちんの事が好きなんです」
「・・・・・・」
「だけど、ごっちんは市井さんの事が好きだから」
そう言って、吉澤はカフェオレを飲む。
ストロ−の中をスーッと駆け抜けてく。
それは市井の中での後藤の気持ちに重なっていく。
「嫌いじゃないよ、、後藤は大切だよ。
 でもね、私はののが好きなんだ。
 抱き締めるという行為は出来ても
 その意味は違うんだよ、、、、」
「・・・・・・」
「なんちゅーの、私が言うのもなんなんだけどさぁ
 吉澤、今までその気持ち、後藤に言った事ある?」
「ないです・・・・・・」
「やっぱそれからじゃないか?
 私もさ、ののに告白した時
 すげぇ怖かったよ。
 だってさ、年の差あるしさ
 それまで、あんま話した事なかったしさ」
「・・・・・・」
唇をキュッと結んだ顔は
何かを決心した様子。
りりしくて、それでいてその顔は
恋をする女の子の顔だった。
16L.O.D:01/12/27 11:56 ID:xH+HHIn0
「なぁ、吉澤」
「はい?」
「一つ、頼みごとがあるんだ」
「なんですか?」
「ののの事なんだけど」
「はい」
「なんか調子悪そうにしてたら
 教えてくれないか、、、?」
「分かりました」
「さっきさ、会ってたけど
 仕事のストレスで相当参ってるみたいだから
 私もさ、いっつも側に居てあげたいけど
 こっちも仕事始まっちゃったら
 なかなかさ、目も行き届かないだろうから、、、
 よろしくな」
「はい」
「ごめんな、付き合わせちゃって」
「いえいえ。市井さんのアドバイスもらって
 少し勇気が出ました。」
「この後はどうする?」
「ごっちんの家に行きます・・・・・・」
ストローが氷をかき混ぜる。
「がんばれよ」
「はい」
小さくうなづく吉澤。
頬が紅潮してたのは気のせいだろうか。
なんかそんな純真さがいいなと思う。
2人は店の前で別れ
吉澤は、後藤の家に向かって走り出した。
今まで心の奥深くに閉まっていた思い、
今、解き放つ。