10
辻と加護は目を丸くしたままお地蔵さんみたいに固まっている。
「・・・プッ」
私は、そんな2人がかわいくて笑ってしまう。
カオリにつられて辻も「テヘテヘ」と笑い出す。
加護もその隣で、「しゃーないなぁ」って感じに笑ってる。
私と、2人の目がしっかりと交錯した。
なんでかなあ?
だって、一緒に過ごしたのってたった1日だよ。
なのに、カオリの中で2人はこんなにも大きな存在になっちゃった。
カオリ、なんだかわかんないけどずっと寂しかったの・・・
でも、2人といると寂しくなかったんだよ
ううん、2人がいなくなっちゃったら、カオリまた寂しくなっちゃうよ
だから・・・
だからね、一緒に行こ−−。
私は、頭の中で言葉を反芻させる。
でも、そのどれを伝えるのにも言葉は要らない。
だって、カオリは知ってるから
言葉で伝わらない心があることを・・・
私は、2人を両手でシッカリと抱き締めた。
11
その後、カオリは2人を連れて断り続けてたフォース00
ANGELに入ることに決めたんだよね。
「!!」
何かが肩に触れるのを感じて、カオリは交信から戻る。
カオリの肩には、愛しき2人の小さな頭がもたれかかっていた。
−−そういえば、2人だけだね。
カオリが交信してても、こうやって隣で待っててくれるのは・・・
だから、ダメなんだよ、ナッチ。
2人の前で、人は殺せないよ。
でも、私はこの2人をどんなことがあっても守ってみせる。
だって、そのためにANGELに入ったんだもん・・・
私は、2人の頭を優しく撫でた。
94 :
間奏:02/01/06 23:51 ID:prKJIex5
抱き寄せた私の腕の中には
舞い降りてきた天使の寝顔
95 :
クロラ:02/01/06 23:54 ID:prKJIex5
あー、やっと2章終了っ!!
ホントぐずぐず。
っていうか、なんで飯田と加護かってゆーたらなんとなくなんだよな〜
普通は、飯田と辻が多いしな〜、たまにはってことで。
これからサクサク進めます。
っても、コレぶっちゃけ10章前後までいっちゃいそうだけど
でも、ぐずぐずした話なんでぱーっと終わらせちゃいます。
なんか他にかきたい話が出来ちゃったしな
1
雨音が激しくプレハブの屋根を叩いている。
その音に混じって、ドアを強く叩く音が聞こえる。
私は、やりかけていた実験を中断してドアを開ける。
この雨の中、傘もささずに走ってきたのだろう、
ずぶぬれに凍えた小さな少女が立っている。その顔に見覚えはない。
「保田博士ですね?」
少女は透き通った綺麗な声で尋ねる。
私は、頷く。少女のこわばった頬が安心で少し緩む。
「お願いがあってきたんです」
それでも、少女の瞳は真剣に私を見つめている。
−−かわいいな・・・
私は、そんなことを思いながら、少女を抱き寄せようとした。
2
「起っきろー!!!」
甲高い叫び声に、ハッと目を覚ますと私の上にはその声の主
矢口真理が乗っかかっていた。
(なんだ、夢か・・・だよね。私、あの時、矢口を抱き締めてないし)
「おもいー矢口・・・」
もちろんそれはウソだけど。
矢口は、現代人の平均よりもかなり小柄なので重いはずがない。
「失礼な!」
矢口は、そう言いながら私の上からおりる。
「・・・なんか用?朝っぱらから」
髪を掻き上げながら椅子に座る。
部屋には、いれたてのコーヒーのいい香りがする。
きっと矢口が入れてくれたんだろう。
「ちょっと、見て欲しいモノがあって・・・」
矢口は、肩にさげていたバッグから紙を取り出す。
どうやら、どこかの内部地図みたいだ。
「・・・で?」
私には、何処の地図なのか分からない。
「で?−じゃなくて、コレ官邸内の地図なんだよー」
かんてい??
−−ああ、官邸のことか・・・
「だから、なんなの?」
まだ思考できるほど目が覚めきっていない。
「圭ちゃんっ、いい加減起きてよーっ!」
矢口が、ちょっと苛立った口調で言う。
「これでつんくのところまで行けるじゃん」
つんくって?総統の・・・つんく・・・
−−そういうことね・・・って
「ちょっと、矢口、何言ってんの!?」
やっと頭がはっきりしてきた。
「なに、圭ちゃん、急に怒っちゃって」
「この地図が本物かどうか分かってんの?」
矢口は、ぎくっとした顔になる。
「やっぱり・・・」
私は、呆れてしまう。
「でっでもね」
「こんなので突入しても返り討ちにあうに決まってるじゃない」
矢口の言葉を遮る。
「うっ・・・」
矢口は、しかられた子犬のような目で私を見上げる。
正直、この目には弱い。
私は、矢口から目をそらすようして、手渡された地図を見る。
−−確かに、これまで矢口が騙されて買ってきたような
いかにも偽物って感じはしない。・・・けど、もしものこともある。
チラリと矢口のしょげたような顔を見る。
(仕方ない・・・か)
「−−私が、確かめてくるよ」
「えっ!?」
すぐさま矢口は反応する。
「私が、この地図のとおりか潜入してきてあげるよ」
「そ、そんなのダメだって、危ないじゃん!」
自分のことを棚に上げて矢口はそんなことを言う。
私は、コーヒーを口に運ぶ。少し濃いめのブラック。
「矢口が行くよりかは、遙かに安全だって」
「でもっ・・・」
私の言葉のもつ意味に矢口は気づき口ごもる。
「それに、私はこー見えても元軍人なんだから」
そう言って、矢口にウインクしてみせる。
すかさず矢口は「ウエー」と顔をしかめる。・・・って、失礼ね〜
「ともかく、私がつんくのいる所、つきとめてあげるから、行く気なら
それからにしなさい、分かった?」
子供に言い聞かせるように言う。
矢口は不服そうな顔をしたまま「分かった」と呟いた。
3
「ところでさー」
矢口は、話題を変えるように少しトーンの高い声を出す。
「ん?」
「この間の子、まだ見つからないの?」
私の体に、一瞬、緊張が走る。
「う、ん」
「そっか〜、ザーンネン」
「・・・なんで?」
心臓がバクバク音をたてる。
(もしかしたら、矢口は全て知っているのかもしれない)
そんな思いを抱きながらも、矢口の返事を待つ。
「だって、あの子かわいかったじゃん。矢口好みーっ!!」
私の気持ちと裏腹に、矢口はケラケラと笑う。
ばれてない・・・
私は、ホッとする。
「ま、見つかったら教えてよね、圭ちゃん」
「う、うん」
私は、不自然に見えないように笑い返す。
「じゃ、そろそろ私、帰る」
矢口は、そう言うと私に手を振って部屋を出ていく。
私は矢口の後ろ姿を見送りながら、少しぬるくなったコーヒーを飲み干した。