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73第2章 言葉で心は伝わらない



16歳ながら異例の入隊を果たした飯田は、その1年後には部隊長に抜擢された。
飯田は、時、同じくして飯田同様フォース3の部隊長に抜擢された
安部なつみと作戦を共にすることが多く、いつのまにか
なっち、カオリと呼び合うほど仲もよくなっていた。
74第2章 言葉で心は伝わらない:02/01/04 21:31 ID:mTzR8AlB

「1、2、3・・・9、10っと」
カオリの言葉にナッチが「う〜」と、悔しそうにうなる
「カオリの勝ちだよ、なっち」
「・・・分かってるべさ・・・なにがいい?」
「んー、じゃぁ、Aランチ」
私たちは、つい今しがたまで銃撃戦を繰り広げた場所で
そんな会話をしていた。足下には、血塗れの死体が転がっている。
この会話は、私たちがいっしょに突入をすると必ず交わされる。
相手をより多く殺した者が、相手にランチを奢る。
だからもちろん、悔しがる方は毎回変わる。
そうやって、私たちは殺し合いを楽しんでいた。

「カオリは、容赦なさすぎだべ」
「なっちに言われたくないよー」
私たちは、死体を前にして笑いあう。
「じゃぁ、引き上げるべ」
なっちはそう言うと、カオリを置いてさっさと歩き出す。

私は、なっちの背中から足下の死体へと視線を移す。
さっきまで生きて動いていた者。
でも、今はただのモノになってしまった。
この戦場では、人間の命なんてとても薄っぺらに感じられる。
カオリは、そのことがなんだか寂しかった。
75クロラ:02/01/04 21:32 ID:mTzR8AlB
なんかもうこっからぐずぐずな話になりそうだ
まぁ、最後まで書き上げればいいけど・・・
76第2章 言葉で心は伝わらない :02/01/05 01:27 ID:FObvwNU0



それから、何度目かの作戦をこなしたあと、
カオリは山の中に潜むとされている未確認テロ組織の存在を確かめるため
単独でそびえたつ山へと入っていた。
そして潜入前にあれだけいろんな人から注意されていたにもかかわらず
少し傾斜のきついところで、案の定、足を滑らせてしまった。
77第2章 言葉で心は伝わらない:02/01/05 01:29 ID:FObvwNU0

「・・・のの、どうや?」
「ん〜、まら寝てるみらい」
顔の上で子供の声がする。

あぁ、カオリ死んじゃったんだ・・・天使が迎えに来てくれたのかな?
でも、カオリだったら悪魔かもね・・・

そんなことを思いながら薄く目を開けてみる。

「あっ、起きた!!」
八重歯を覗かせながら少女がカオリを覗き込んでいた。
(さっきの声はこの子?っていうか、ここ何処?)
「ホンマか!?」
その少女の声に、もう一人いた少女がカオリの布団の横にやってくる。
「大丈夫れすか?」
八重歯の少女が、舌っ足らずな調子で聞いてくる。
「・・・ここ、何処?」

とりあえず、まずはこれを聞かなきゃね。
まさか、こんな子供たちがテロリストってことはないだろうけど・・・

「ココは、ウチらの家や」
後からやってきた黒目がちな少女が即答する。

(・・・ん?)
この子、誰かを彷彿とさせる喋り方だ・・・
あっ、そーか・・・この間、一緒に仕事したフォース1のセクハラ隊長
これって確か関西弁って言うんだったっけ。
78第2章 言葉で心は伝わらない:02/01/05 01:30 ID:FObvwNU0

「・・・でな、飯田さん、聞いとる?」
関西弁の少女が、カオリを揺さぶる。
カオリ、またボーっとしてたみたい
・・・っていうか、イタッ・・・揺さぶられるとビッミョーに痛いんですけど・・・

「亜依ちゃん、ダメれすよ。いいらさん、ケガしてるんれすから」
私が、顔を少し歪めたのに気づいた八重歯の子が言う。
「あっ、せやった・・・・ゴメンなさい、飯田さん」
亜依ちゃんと呼ばれた少女は、素直に謝る。

(ところで、なんでカオリの名前知ってるの?)

「いいらさんは、この山で戦うんれすか?」
突然、八重歯の少女が不安そうにカオリの顔を見る。
「どっ、どうして?」
「・・・らって」
そう言って、少女は部屋の端を見る。
そこには、カオリの荷物・・・というか、武器がまとめられている。
「飯田さんには、悪い思うたんやけど、勝手に荷物見さしてもらいました」
亜依ちゃんが、カオリの顔をじっと見ながら言う。
(そっか、それでカオリの名前が分かったのね)
「もし、この山で戦うんやったら、ココにいさせることはできひん」
きっぱりとした口調。

んー、どうしよう。ちょっと体痛いし、まだ動きたくないな〜
ココはごまかしておくか・・・って、もともと戦争しに来たワケじゃないしね

「戦わないよ、この山では。銃は、護身用だから」
「ホンマに?」
「うんっ、なんなら武器はどこかに捨ててもいいよ」
私がそう言うと、2人は安心したとでも言わんばかりの
とびっきりの笑顔を見せる。
「そや、ウチら名前言うてなかったで、のの」
「そうれすね、亜依ちゃん」
「ウチは、加護亜依言います」
「あたしは、辻希美れす」
2人の少女は、にこにこしながら言う。
「加護に辻か・・・助けてくれてありがとね」
あたしの言葉に、2人は今度は照れたように顔を見合わせて笑った。
79名無し募集中。。。:02/01/05 11:00 ID:gR7U9H3L
放置されなければ全然(・∀・)イイ!!
80第2章 言葉で心は伝わらない:02/01/05 17:12 ID:Ems8C6KB



「ところで、2人はなんでこんなとこに住んでるの?親は?」
「え?」
2人が・・・といっても、ほとんど加護が用意してくれたご飯を
食べながら、私がなにげなく聞いたことに、
辻は、お茶碗を持ったまま固まってしまった。

「あっ、飯田さん、おかわりいりませんか?」
加護がそんな辻を見て、話を遮るかのように言う。
「うん、ありがとう」
「いーえ。飯田さん、大きいから」
「大きいからなによー」
私は、ふざけて加護を抱き締める。
「や、やめてください、飯田さーん」

その時のカオリは、加護とじゃれ合うのに夢中になって、自分が聞いたことも、
少しこわばった顔をした辻のことも忘れていた。
81第2章 言葉で心は伝わらない:02/01/05 17:15 ID:Ems8C6KB

食事が終わると、2人はきちんと後かたづけを始める。
カオリも手伝おうと思って炊事場に行くと
「ケガにひびくとあかんから寝ててください」
と、加護に断られてしまった。

(もう、そんなに痛くないのに・・)

私は、仕方なく布団に潜り込む。
「こんな時間に眠るのっていつ以来かな〜」
いっつも、作戦とかで寝たり寝なかったりだもんね〜
だいたい、カオリってクマできやすいからしっかり睡眠取りたいのに
あんなに馬鹿みたいに作戦入れちゃってさ。
ま、今回は骨休めって感じ。
・・・でも、さすがにこの時間じゃな〜
チラリと腕時計を見る。まだ10時をまわったばかりだ。
「んー、寝れないよー」
と、ベッドの上を無意味にゴロゴロしていると、片づけが終わったのだろう、
さっきまでいた部屋の電気が蹴る。
(あの2人は、もう寝ちゃうのかな。まぁ、子供だもんね)

カオリは、ボケーッと天井を見る。
今ごろ、捜索隊とか出てるかな〜
なんたって、隊長様だしね、カオリ。

(・・・そういえば、通信機ってどこにいったのかな?)
今さらだけど、もし、山の中で迷ったときのためにとなっちから手渡されてた
通信機の存在を思い出す。
「確か、バッグの中に・・・」
起きあがって部屋の隅に置かれたバッグの中を探す。
その時、辻と加護のいる部屋から誰かのくぐもった声が聞こえてくる。
「ん?」
不思議に思って、ドアのすき間から2人の部屋をこっそり覗く。
そこには、泣いている辻を優しく抱き締める加護の姿があった。
82第2章 言葉で心は伝わらない:02/01/05 17:18 ID:Ems8C6KB



「大丈夫や、のの。なんも怖いことないから」
「・・ひっく・・・亜依ちゃん・・・」
「もう、大丈夫やから、眠ってええよ。うちがずっと傍におるからな」
「・・・う、ん」
加護は、泣いている辻をなだめながら布団に入れている。

「亜依ちゃん、手・・・」
「ん」
2人の手がつながれる。

そのままの姿勢で数十分間、加護は辻の手を握っていた。
そして、辻が眠ったのを確認するとゆっくりその手を離し、
めくれている掛け布団を優しくかけてあげる。

「飯田さん?」
不意に加護が、ドアの前に突っ立っていたカオリの存在に気づく。
「どうしたんですか?」
辻を起こさないためだろう、その声は小さい。

(ん〜ちょっとやばい)
カオリ、実はひそひそ話できないんだよね
・・・電波ならとばせるけど。
カオリが、そんなことを思っていると加護がゆっくりとカオリの方に来てくれる。
目で外に行こうといっているのが分かる。
カオリは、加護の後に続いて家から出る。


「いつも・・・辻が寝るまであーしてるの?」
加護はうつむいたまま、何もこたえない。
かすかに虫の奏でる音色だけが聞こえる。
外の空気は、ひんやりとしていてケガで火照った体には
気持ちよく感じられる。
「辻は・・・どうして泣いてたの?」
何もこたえてくれない加護に、質問を変えて聞いてみる。

「飯田さん・・・」
ようやく、加護が口を開く。
その顔は、影になりどんな表情をしているのか分からない。
「関西空襲・・・覚えてます?」
「え?」
83第2章 言葉で心は伝わらない:02/01/05 17:20 ID:Ems8C6KB

関西空襲・・・かっての内戦でもっとも犠牲者を出したそれは
当時、最大勢力を誇っていたテロリスト集団と政府直属の制圧部隊との
何度目かの小競り合いの末に起こった事件だ。
確か、しぶとく抵抗を続けるテロリスト集団に
業をにやした制圧部隊隊長が、政府の許可なく
無差別的に関西全土へ火の雨を降らせたらしい。
そのおかげで、何万もの罪のない人々が死んだ。
もちろん、行きすぎた行動をしたその隊長は、即刻、処刑された。


(でも、それが加護たちと何か関係があるのかしら?)
84第2章 言葉で心は伝わらない:02/01/05 17:23 ID:Ems8C6KB

「ウチら、2人ともあの時あそこにおったんです。
 それで、ウチらの両親は死んでしまった。
 でも、ウチはまだええ。両親が死ぬとこ見てないから・・・
 けど、ののは・・・ののは、目の前で両親が吹き飛ぶのを見とったんや」
加護は、絞り出すように言う。
意外な加護の言葉に、私はかける言葉を見つけられない。
「ののは、それを夢に見るんやて・・・でも、ウチが手つないで
 あげたら、安心して眠ってくれるんや」
うつむいていた加護がはじめて私の顔を見る。
「ののは、ウチが守ったらなあかんのや」
加護は、そう言って健気に笑う。

(・・・加護が、辻を守る?それじゃぁ、それじゃぁ・・・)

「加護は?」
「え?」
「加護は、誰が守ってくれるの?」
だって、辻と加護は同い年なんだよ。
いくら両親が死ぬところ見てないからって辛いのは一緒のハズだよ。
それなのに、辻には甘えられる相手がいて、そしたら・・・
「加護は、誰に甘えるの?」
「・・・飯田・・さん?」
加護が、驚いた瞳で私を見ている。
85第2章 言葉で心は伝わらない:02/01/05 17:24 ID:Ems8C6KB

加護は、カオリに似てる。
似てるから分かる。
弱いところを見せまいとがんばってがんばって・・・
ホントは、心が泣いてるんだよね。
だって、カオリもそうだったもん。だから

カオリは、加護の目を見つめる。
「う、ウチは・・・」
加護が、なにかを言いかけた。